エマ・トンプソンブレンダン・グリーソン主演の映画「ヒトラーへの285枚の葉書」を映画館で観た。

第二次世界大戦のベルリン。

戦争で息子を殺された中年夫妻が、ペンと絵葉書を使い、ナチスを批判し続けた実話の映画化。



満足度 評価】:★★★★☆

仕事をしている人なら、職場での会議の時や、学生なら、クラス全員が参加する学級会の席など、日常生活の中で「それは、間違っています。考え直しませんか?」と言うことが、とても難しい時がある

そんな時、「明らかに私の意見が正しいけど、面倒だし、早く終わりたいから、ここは黙っておこう」と思うことがある。

しかし、そんな『面倒』を通り越し、どうしても意見を言わなければならない時もあって、そういう時は、相手が大きければ大きい程、強いパワーが必要とされる。

この映画では、『息子を殺された苦しみ』を正義を貫くパワーに変え、ナチスに立ち向かって行った夫妻の実話が描かれている。


「ヒトラーへの285枚の葉書」予告編 動画

(原題:ALONE IN BERLIN)




更新履歴・販売情報

・2017年8月6日 映画館で観た感想を掲載。

・2018年7月1日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVDが販売中。



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キャスト&スタッフ


出演者

エマ・トンプソン
…(「美女と野獣」、「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」、「ロング・トレイル!」、「二つ星の料理人」、「ウォルト・ディズニーの約束」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」、「パイレーツ・ロック」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」など)

ブレンダン・グリーソン
…(「ロンドン、人生はじめます」、「パディントン2」、「夜に生きる」、「アサシン・クリード」、「未来を花束にして」、「ある神父の希望と絶望の7日間」、「白鯨との闘い」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」など)

ダニエル・ブリュール
…(「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」、「黄金のアデーレ 名画の帰還」、「コロニア」、「二つ星の料理人」、「フィフス・エステート/世界から狙われた男」、「誰よりも狙われた男」「ラッシュ/プライドと友情」など)

監督

〇ヴァンサン・ペレーズ


2016年製作 ドイツ・フランス・イギリス合作映画

ヒトラーへの285枚の葉書

あらすじ


1940年 第二次大戦中、対仏戦争で勝利を収めたと戦勝ムードに湧いていたドイツ・ベルリン。

労働者階級であるクヴァンゲル夫妻の元に届いた一通の手紙。

それは、息子の戦死を伝えるものだった。

悲しみに打ちひしがれ、善良で無実の息子を殺すような戦争は間違っていると考えるようになる。

そして、夫のオットー(ブレンダン・グリーソン)は、ナチスを批判する文章を絵葉書に書き、町中の公共施設に起き始める。

やがて、妻のアンナ(エマ・トンプソン)も、オットーの活動を手伝うようになる。


ヒトラーへの285枚の葉書3


感想(ネタバレあり)


「間違っている」ことを「間違っています」と言う勇気


大切に育てた一人息子が、夢と希望を抱いて希望の会社に就職して喜んでいたのもつかの間、過酷な労働に耐えきれず、過労死してしまったとしたらどうするだろうか。

息子の命は、もう帰ってこない。



それでも、相手が大きな会社で勝ち目がなかったとしても、息子が間違っていなかったことを証明するために、その会社を訴えようと思うのではないだろうか。

その時、両親の心を支えるのは、『同じ過ちを他の人に繰り返して欲しくない』という思い。

たとえ誰も味方になってくれなくても、裁判で負けたとしても、『現状を訴え、周りの人たちに知らせること』に、とても意義があるし、『他の人たちを救いたい』という思いが、希望となり、生きがいになる



この映画の主人公であるクヴァンゲル夫妻は、戦争で大切な一人息子を失ってしまった

やはり、彼らも『ナチスドイツが間違っている』と思い、『この悲しみを早く終わらせる』ために

毎日、毎日、匿名のポストカードで『ナチスは間違っている。戦争を終わらせろ!』と訴え続けた

そんな彼らの勇気ある行動に、私は涙があふれ続けた。



現在の平和な国で暮らす私たちですら、「この会社は間違っています」と訴えることがとても難しいのに、

戦時中、周りはナチスを強く信じている人たちばかりの中で

あのナチスドイツを訴え続けた夫妻の勇気はどれ程のものだったか



しかし、彼らはそんなプレッシャーに押しつぶされるどころか、自分たちの反戦運動に生きがいを感じ

ナチスのために生活していた頃よりも、人間らしさを取り戻していくようになる。

やはり、人間は『正しいことをしている時』が、一番イキイキとする時なのではと思う。



ヒトラーへの285枚の葉書5



自分たち以外みんな敵!!の中で行われたナチスとの戦い


クヴァンゲル夫妻は、「ナチスの体制は間違っている」「戦争をいますぐやめるべき」という、

ナチスを批判する文章をポストカードに書き、ベルリン市内のさまざまな公共施設に置き続けた

それは、約2年間の間で、285枚になったという。

しかし、その大多数(9割以上)が、市民によって警察に届けられている。



それは、当時の9割以上の市民が、『ナチスを批判する者は、逮捕しなければならない』と感じ、通報したという結果である。

つまり、多くの市民が、当時のナチスが掲げていた『ユダヤ人を殺せ』『政府批判をするものは殺せ』『戦争で世界征服しよう』というスローガンを何も疑うことなく、強く信じていたということだ。



そんな中、クヴァンゲル夫妻は『誰も味方してくれない』という孤独を感じながらも、ナチス批判をする活動を続けていた

夫妻が誰にも知られないように、そっとカードを置くシーンでは、

それを見ている私まで、なんだか共犯者になったような気分になってドキドキし、一人でも多くの人に、彼らの声が届くようにと思いながら観ていた。



でもきっと、通報した人たちの中にも、そのカードの内容に共感しながらも、『通報しなければ、自分が殺される』という恐怖心から、警察へ届けた人たちもいたはず

それも含めての孤独なのだが、そう思うと、やはり彼らの勇気と意志の強さには頭が下がる



ヒトラーへの285枚の葉書4



ナチスのために働くことが正しいことだと信じていた警部の気づき


当時のベルリンで孤独を感じていたのはクヴァンゲル夫妻だけではない。



小鳥を飼いながら、帰らぬ夫の帰りを待っていたユダヤ人のおばあさん。

そのおばあさんを、家の中に隠そうとした判事。

彼らも、ナチスの「ユダヤ人迫害」を間違っていると思いながら、ひっそりと生活していた。




また、クヴァンゲル夫妻を追い続けた警部(ダニエル・ブリュール)も、捜査をしていくなかで、ナチス幹部の自分勝手で理不尽な態度に疑問を感じるようになっていた。

その警部がクヴァンゲル夫妻を逮捕した時、夫妻はあっさりと罪を認め、なおかつ堂々としていた

その夫妻の態度に警部は打ちのめされる。



夫妻は、息子を失った時に、『もう生きている意味がない』と語っている

彼らには、もうこれ以上失うものがない

だから、堂々としているし、自ら進んで死刑台へと向かうのだ。

彼らが死刑宣告をされた時の晴れやかな顔がとても印象的だった。



その一方で、警部はナチスの行動を間違っていると思い始めていた。

そこで、彼は夫妻のポストカードを改めて読み返し、彼らの言葉に共感し、自ら命を絶ってしまう。

彼らの思いに共感した以上、もう警部としては生きていけないと思ったのだろう。



誰も表立った味方をしてくれなくて、クヴァンゲル夫妻は孤独だったかもしれないが、

ユダヤ人を助けようとした判事や警部たちのようすを見ていると、

カードを見つけて、通報しなかった僅かな人たちも含め、心の奥底では賛同していた人たちは確実にいたし、それが、この映画の正義であり、希望なんだろうと思った。

クヴァンゲル夫妻の思いは、必ず誰かの心に届き、響いている



ヒトラーへの285枚の葉書2



「これは間違っている」と訴え続けることの大切さ


人は洗脳されると感覚が麻痺してしまい、正しいものが正しいと判断できなくなる

この映画では、当時のベルリンで9割以上の国民がナチスドイツに洗脳されていたことになる。

だから、だれもクヴァンゲル夫妻に賛同しないし、後に続かないし、味方しない。



ということは、ナチスのような独裁政権が力を握る前に、『間違っていることは、間違っている』と意見を言い続けることと、その意見を聞き入れる耳を持つことは非常に大切なことなんだと教えられた。



戦争で大切な息子が殺された時に「戦争なんかあるから息子は殺されたんだ」と思うのは、正常な人としての反応だと思うし、「お国のために戦ったんだだから仕方がない」と思うのは、国に洗脳されてしまった人の反応だと思う。

しかし、たとえ、洗脳されてしまったとしても、善良な国民には罪はない

その状態を作り出した戦争と政治に問題がある



「戦争で息子を殺されるという悲しみを、他の人たちの味あわせてはいけない」というクヴァンゲル夫妻の願いは

こうして映画化されることで、世界中に伝えられ、これからも語り継がれていくことだろう。

彼らの闘いは、今も続いている






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