ナタリー・ポートマン主演の映画「ブラック・スワン」を町山智浩さん解説付きの上映会「町山智浩の映画サーチライト」で観た。

「白鳥の湖」で主役に選ばれたバレリーナが、役になりきるために自分の心を壊していってしまう姿を描く。


満足度 評価】:★★★★☆

人の人格が崩壊していく恐ろしさが怖くて面白い映画だった。

「白鳥の湖」の白鳥を演じることへの様々なプレッシャーから、人格が破壊され、内なる自分が別人格となって出現し、最後には狂気へと変わっていく、その変遷していく様に思わず見入ってしまった。


「ブラック・スワン」予告編 動画

(原題:BLACK SWAN)




「ブラック・スワン」Blu-ray

ブラック・スワン [Blu-ray]

新品価格
¥926から
(2017/3/31 12:18時点)



キャスト&スタッフ


出演者

ナタリー・ポートマン
…(「プラネタリウム」、「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」、「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」、「スター・ウォーズ/エピソード2 クローンの攻撃」、「スター・ウォーズ エピソード3/シスの逆襲」、「レオン」など)

ヴァンサン・カッセル
…(「たかが世界の終わり」、「ジェイソン・ボーン」、「チャイルド44」、「美女と野獣」、「リオ、アイラブユー」、「バースデイ・ガール」、「避暑地で魔が差して」など)

ミラ・クニス
…(「ジュピター」、「余命90分の男」、「オズ はじまりの戦い」、「テッド」など)

ウィノナ・ライダー
…(「おとなの恋は、まわり道」、「スター・トレック」、「シザーハンズ」など)

〇バーバラ・ハーシー

監督

〇ダーレン・アロノフスキー
…(「レスラー」、「レクイエム・フォー・ドリーム」など)

2010年制作 アメリカ映画

第83回アカデミー賞(2011年)主演女優賞 受賞作品


ブラック・スワン

あらすじ


バレリーナのニナ・セイヤーズ(ナタリー・ポートマン)はニューヨークのバレエ団に所属している。

そして、次回の公演「白鳥の湖」で念願の主役である白鳥を演じることになった。

しかし、その役は清純派の白鳥の部分と、王子を誘惑する悪女である黒鳥の部分の両方を演じなければならず、おとなしい性格のニナは黒鳥の内面を表現することができない。

それを振付師のトーマス・ルロイ(ヴァンサン・カッセル)から指摘され、「もっと自分の内面を解放しろ!」と指導されてしまい、いつか自分の役がライバルのリリー(ミラ・クニス)に奪われるのでは…という恐怖に怯え始める…。

ブラック・スワン3


感想(ネタバレあり)


主役を演じる重圧が心を破壊する


人前に立つことが嫌いだ。

子供の頃は、学芸会の主役を演じたり、全校生徒の前で作文を読んだりしても平気だったのに、大人になるにつれ、人前に出ることが嫌いになった。

それはきっと、大人になって「恥じらい」なんていうやっかいな感情が強くなった結果なんだろうと思う。

今となっては、少人数の前でプレゼンをすることさえもうんざりし、時には声が震え、泣きそうになってしまうことさえもある。

まったく情けない。

そんな私からしたら、「喜んで」舞台の上に立って表現をするアーティストの方たちが羨ましくて仕方がない。

彼らは「人前」というプレッシャーを楽しんでいるようにしか見えないからだ。

しかし、この映画を観ると、全ての舞台人がそんな「プレッシャー」を楽しんでいるわけでもないことが分かる。

中には、私と同じようにプレッシャーに押しつぶされ、心が壊れてしまう人もいるんだ…ということを知る。

主人公のニナは、ニューヨークにあるバレエ団に所属するバレリーナだ。

そんな彼女が、バレエ団の次回演目「白鳥の湖」念願の主役の座をつかむが、「主役」という重圧に耐えきれず心が破壊されていく…。

その心が破壊されていく様をサスペンスタッチで描いているのが、この「ブラック・スワン」という映画だった。

ブラック・スワン2


「白鳥」と「黒鳥」ニナの心から「分裂」した2人の自分


「白鳥の湖」は、呪いをかけられて白鳥になってしまったお姫様の物語である。

お姫様にかけられた呪いは、本当に愛し合える王子と出会うことで解けるのだが、王子は悪魔の使いである黒鳥に誘惑されてしまい、黒鳥に恋してしまう。

それを悲観した白鳥は、自ら命を絶ってしまう…。

この「白鳥の湖」で大変なのは、白鳥と黒鳥を同じバレリーナが演じること。

清楚な白鳥演じた直後に、悪女の黒鳥を演じなければならない。

主人公のニナは、清楚な「白鳥」そのものの性格をしていた。

しかし、悪女的な面を持っていなかったため、振付師のルロイにダメ出しをされてしまう。

このままでは、代役のリリーに「白鳥」を奪われてしまうと恐れたニナの心はやがて分裂し、いつしか心の奥底に眠る「悪女」がリリーに姿を変えてニナの前に登場するようになる。

この部分、町山さんの解説で気付いたのは、ニナがリリーとクラブに行くシーンで、クラブにいる客のほとんどの顔がニナ、あるいはリリーになっているということ。

これは、映画を観た時は全然気づかなかった。

その時は、リリーにもらったドラッグの幻覚か…と思いきや、その後も「悪女」のリリーが登場し、その回数も多くなっていく。

その様子は映画『ファイト・クラブ』とよく似ている。

あの映画も、内気なエドワード・ノートンの「強い男になりたい」という願望がブラッド・ピットという幻想を生み出していく。

ニナへの「悪女を演じなければ」というプレッシャーが、リリーを生み出し、清純派のニナを誘惑する。

ニナは自分が気付かないうちに、清純派と悪女の両面を持つようになる。

ブラック・スワン5

「いつか自分の居場所がなくなる」という恐怖


さらに、ニナを苦しめたのは「リリーに役を奪われる」という恐怖だった。

ニナは、これまで女王と言われてきたウィノナ・ライダー演じるベテランのバレリーナ べスを追い出し、新しい女王に君臨する。

しかし、ニナとはタイプが全く異なり、自由奔放で魅力的なリリーに自分の役を奪われるのでは…と恐れるようになる。

そして、べスへの罪悪感からか、度々病院にいるべスを訪ねていくようになる。

ニナは、そんなべスを観て「明日は我が身」と思ったのだろうか…。

「黒鳥」の感情を表現できないことで自分の演技に自信が持てず、一方でいつも魅力的なリリーはいつも自信満々に見えてしまう…。

そんな劣等感は誰でも持つことである。

選ばれたのはリリーではなくニナだったにも関わらず。

そんな彼女の様子を観ていると、どんなに素晴らしい実力があって、日々努力をし、トップに立っている人間でも、常に「いつかこの場所から落ちる」という恐怖と戦っているんだなということが良くわかる。

トップの人から底辺の人たちまで、みんなが「居場所がなくなる」と恐れるからこそ、日々努力を惜しまない。

しかし、嫌でもいつかべスのように肩を叩かれてしまう時がやってくる。

ここに現実の恐ろしさがある。


ブラック・スワン4

「分裂」と「恐怖」の先にある「狂気」


そして、初演の日。

「分裂」と「恐怖」に打ちのめされた彼女にやってきたのは、「狂気」だった。

彼女の心は「悪女」リリーの他に、「悪魔」というキャラクターも生み出すようになる。

それが、清純派のニナをぶち壊し、「白鳥の湖」を演じるバレリーナとして「完璧」になった瞬間だった。

私は、ニナの背中から羽が生え始め、最後に黒鳥になった瞬間に、思わず拍手をしそうになった。

それぐらい、心が「破壊」され、「分裂」し、「恐怖」に打ちのめされた後にやってきた「狂気」までの過程に圧倒されっぱなしだった。

それはきっと、私自身の中にも閉じ込めている感情があって、それを解き放ちたいと思っている部分があるからなんだろうと思う。

だから、未だに人前に立つのが怖い自分がいるんだろうと思う。

そんな「恐怖」は解放してやればいい。

そうして私は、その感情をどうやったら解き放てるかに興味を持ち、ニナはどう変化していくのかに注目していたんだろう。

結果、ニナは「完璧」に演じきった上で死んでいく。

それは、もしかしたらバレリーナとしては最高の死に方だったのかもしれない。



町山さんの解説で面白いなと思ったのは、町山さんは、この映画をアメリカのサンフランシスコで観たそうで、アメリカでは客席が爆笑だったそう。

特にニナとリリーのラブシーンは大ウケだった様子…。

町山さんも言っていたけど、これは明らかに民族性の違いだね…(笑)





↓ 人気ブログランキングに参加しています。クリックをお願いします

映画 ブログランキングへ

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村





「ブラック・スワン」Blu-ray

ブラック・スワン [Blu-ray]

新品価格
¥926から
(2017/3/31 12:18時点)