ルーカス・ヘッジズ主演の映画「ある少年の告白」を映画館で観た。

アメリカに実在する同性愛者を矯正する施設の実態を実話を元に映画化。


映画「ある少年の告白」

満足度 評価】:★★★★☆

観ていてとても苦しかった。

人に恋をすることは素晴らしいことなのに、なぜ「悪魔の仕業だ」と言って矯正しようとするのか。

主人公を演じるルーカス・ヘッジズが素晴らしく、彼の困惑と葛藤に胸が締め付けられ涙した作品だった。

目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


『ある少年の告白』予告編 動画

(原題:Boy Erased)



更新履歴・公開、販売情報

・2019年5月8日 映画館にて鑑賞。

・2019年5月9日 感想を掲載。

より詳しい作品情報につきましては、下記公式サイトをご参照ください。
 ↓




キャスト&スタッフ


出演者

ルーカス・ヘッジズ

ニコール・キッドマン
…(「アクアマン」、「パーティで女の子に話しかけるには」、「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」、「LION/ライオン~25年目のただいま~」、「シークレット・アイズ」、「パディントン」、「リピーテッド」、「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」、「バースデイ・ガール」、「レイルウェイ 運命の旅路」、「ザ・インタープリター」、「ファング一家の奇想天外な秘密」など)



〇トロイ・シヴァン


監督

ジョエル・エドガートン



2018年製作 アメリカ映画





あらすじ


ジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は、アメリカの田舎町にある牧師(ラッセル・クロウ)の息子として育った。

高校時代はガールフレンドがいたジャレッドだったが、親元を離れ、大学に通うようになると、女性よりも男性のことばかり考えてしまう自分に気付く。

そして、そのことを両親に告げると、父は牧師仲間に相談し、ジャレッドをある施設に入所させることを決める。

ジャレッドは母(ニコール・キッドマン)に連れられ、その施設に行くが、そこは同性愛を矯正し、異性愛に治すという施設だった…。



映画「ある少年の告白」ルーカス・ヘッジズ



感想(ネタばれあり)


アメリカに実在する「同性愛者矯正施設」


この映画を観て、まず驚かされたのは、この映画の舞台になっている「同性愛者矯正施設」の存在だった。

「人を好きになる」という気持ちは、誰もが持つ自然なことなのに、それを矯正するというのは、どういうことなのだろうか。

歯並びをきれいに矯正するのと同じレベルで考えているのだろうか…と思い、それがアメリカには実在しているということが不思議でならなかった。



この作品は、その施設に入所した人の体験談を元に映画化されている。

公式サイト(映画「ある少年の告白」オフィシャルサイト)によれば、現在もまだその施設は存在し、これまで約70万人もの人がそこでセラピーを受け、そのうち約35万人もの人が未成年者なのだという。



その実態に驚かされながら観ていたのだが、話が進んでいくうちに、その背景には、無神論者の私には理解できない「キリスト教の教え」があることが分かった。



キリスト教では、神はこの世に男と女を作った。

しかし、男性でも女性でもないゲイを神は作っていないと考える信者たちがいるのだ。



神の意志に反しているということは、悪魔の仕業に違いないから、セラピーをすることで彼らから悪魔を追い出そうと考えたのだ。

いや、恐らく彼らにとって「人とは違う」セクシャリティを持つゲイの人たちに嫌悪感を持っているだけで、理由は後からついてきたのではないかと思ってしまう。

それは、なんというこじつけだろうか…と呆れるばかりなのだが、かつてナチスドイツがユダヤ人だけでなくゲイの人たちも迫害したのは、きっと根底に同じ考えがあるからだろうと思った。



この映画は、自身のセクシャリティがストレートなのか、ゲイなのか、まだはっきりと自覚できずに悩んでいる少年ジャレッドが、そのことを親に相談した結果、施設に入れられてしまったことからスタートする。

牧師である彼の父は、息子の考えが間違っていることを諭すために、その施設に入れたのだが、その結果、息子は自分の意志を固めることになったのだ。



そのことを、彼は神に感謝すると言っている。



映画「ある少年の告白」ジョエル・エドガートン



牧師の父と、父の期待に応えたい息子


そんな宗教的な背景があるため、牧師であるジャレッドの父は、ジャレッドの「男性のことばかり考えてしまう」という告白は相当な衝撃だったに違いない。

田舎の小さな教会で、毎週日曜日に信者に説教をし、真剣に神に仕えることを考えて生きてきた父にとって、その息子の告白は受け入れがたいものがあったのだろう



一方で、ジャレッド自身も、大学へ行って友人にレイプされた後も、男性のことばかり考えてしまう自分に戸惑い、自身のセクシャリティに悩まされていた。

それでも、「父の期待に応える息子でありたい」という気持ちがあったからこそ、両親が進める施設に入所したのだろう。



どんなに大人っぽく見えたって、高校生から大学生ぐらいの年齢は、親の意向が大きく影響する年頃だ。

もしかしたら、本当に「僕は病気かもしれない」と思い悩んでいたのかもしれない。



映画の中でも、施設に通い始めた当初のジャレッドに、それほどの施設への嫌悪感は見られなかった。

その時は、「ただ、親の期待に応えたい息子」だったのだろう。



映画「ある少年の告白」ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ



ゲイと悪魔祓い。本当におかしいのはどちらなのか


ジャレッドが通いはじめた頃は、自身のセクシャリティに悩む青年たちをカウンセリングする施設に見てた。

しかし、やがて、彼らの「指導」はエスカレートしていく。

施設長(ジョエル・エドガートン)の説教からはじまり、やがてイジメのようになり、拷問から、最終的には「悪魔祓い」へと移行していく。



そこに集められた少年たちは、間違っているのは自分ではなく、施設の方であることに、やがて気付き始める

そして、それぞれが、彼らなりの対処をするようになる。



トロイ・シヴァン演じる入所者のゲイリーはジャレッドに対して「ゲイが治ったフリをして、早くここから出られることを考えろ」とジャレッドにアドバイスする。

しかし、他の入所者が「悪魔祓い」されている様子を見て、ジャレッドはその異常さに耐えられなくなり、そこを逃げ出すのだ。



そこまでの施設の様々なできごとを観て、ジャレッドは「自分がゲイであること」をはっきりと認識し、「悪魔の仕業だ」という彼らの方こそ異常だということに気付いたのだ。



私がその時の施設の異常さを見て思い出したのは、映画「フルメタル・ジャケット」だった。

その中には、軍隊を教育する鬼軍曹に追い詰められた兵士が、頭がおかしくなって自殺してしまう場面があるが、この映画の指導もまるでそんな感じだった。

「悪魔祓い」を受けた入所者は、その結果、頭がおかしくなって自殺してしまうからだ。

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ジャレッドのように正気を取り戻すことができればいいけれど、もしも、本当に真面目で、自分がおかしいかもしれないと悩んで入所してきた青年たちは、その施設で追い詰められ、心の病になってしまうだろう。

なぜ、そこまでしなければいけないのか

その「追い詰められる様子」を見ているこちらが、心が苦しくなってしまった。



映画「ある少年の告白」ルーカス・ヘッジズ、セオドア・ペレリン



自分の気持ちに素直に生きることが一番幸せなこと



その矯正施設は、私には最初から最後まで違和感しかなかった。

初めから、彼らはゲイのことを「依存症」と同じレベルで考えていたからだ。

アルコール依存症や、ドラッグ依存症や、ギャンブル依存症と並列でゲイを考えている。



ゲイは、病気でも依存症でもない

人を好きになるということは、相手が同性であれ、異性であれ、とても自然なことなのだ。

その思いは、両親にも、牧師にも、神様にも止める権利はない。



人が誰を好きになろうが、周りに何を言われようが、それは本人の自由なのだ。



ジャレッドが、その施設で目にしたことは、あまりにも辛いことが多すぎて後半は泣きっぱなしだった。

何より残念だったのは、最後の最後まで、父と息子が理解し合えなかったことだった。



「他人を許すこと」がキリスト教なら、人とは違うセクシャリティを受け入れることもできるのではないかと思ったのだ。

しかし、お父さんの中では「ゲイは絶対あってはいけないこと」なのだと思った。



けれど、良いこともあった。

その施設に通ったことで、ジャレッド自身が自分のセクシャリティを認識し、受け入れることになったことだ。



それは、不幸中の幸いだったと思う。

ラストに出てきたジャレッドは自信に満ち溢れ、堂々としていたからだ。

彼は、その施設に通うという辛い経験を経て、立派な大人に成長したのだ。



もしも、自分のセクシャリティが人とは違うと思い悩んでいる人がいたら、ぜひ、この映画を観て欲しいと思う。

そして、自分の気持ちに素直に生きることが、一番幸せな道であると知って欲しい。

自分の人生は、他人のものでもなく、自分自身のものなのだ。




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