中国映画「長江 愛の詩(うた)」を試写会で観た。

一冊の詩集を読みながら長江を船でさかのぼる青年ガオ・チュンが見た情景を描く。


満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)

長江の美しい景色と共に流れる詩。

詩集のようであり、写真集のようでもあった映画だった。


目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「長江 愛の詩(うた)」予告編 動画

(原題:長江図 英題:Crosscurrent)



更新履歴・公開、販売情報

・2018年2月15日 試写会で観た感想を掲載。

・2019年2月14日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVD販売中。



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キャスト&スタッフ


出演者

〇チン・ハオ

〇シン・ジーレイ

〇ワン・ホンレイ



監督

〇ヤン・チャオ

2016年製作 中国映画



映画「長江 愛の詩(うた)」




あらすじ


ガオ・チュン(チン・ハオ)は、父が亡くなった直後、父を弔いつつ、父が残した貨物船で上海から長江をさかのぼる旅に出る。

機関室には父の詩集「長江図」を見つけ、そこには、さまざまな長江にまつわる詩が書かれていた。

そして、ガオ・チュンは行く先々でアン・ルー(シン・ジーレイ)と出会う。



映画「長江 愛の詩(うた)」




感想(ネタバレあり)


これといったストーリーはなく、映像を見ながら感じ取る作品


幼い頃によく行っていた場所に大人になってから行ってみると、その間に経済発展し、ガラリと姿を変えていた。

経済発展したのは喜ばしいことだけど、思い出の場所が失われたようで、なんだか切なくて悲しい

そんな経験はないだろうか?

この映画「長江 愛の詩(うた)」は、静かに流れる時間の中で、そんな切なさを感じる作品だった。



私がこの映画の試写会に参加したとき、上映前に翻訳家のサミュエル周さんによるトークイベントがあった。

サミュエルさんは、この映画が日本で公開されるにあたり、監督にインタビューを行ったのだという。

その中で

この映画はストーリーを追う映画ではなく、観て感じるタイプの作品です。観た人の感性で自由に感じて欲しい

と監督はおっしゃっていたと言われた。



その話を聞いた後に、この映画を観始めると、確かに、ここにストーリーはなく、スクリーン上にあるのは美しい長江の映像とそこに流れる詩、そして、船でさかのぼる一人の青年と、一人の美女だけだった。

アジアで最長、世界でも第3位の長さがあるという壮大な長江をさかのぼりながら、景色と時代の移り変わりを感じた作品だった。



映画「長江 愛の詩(うた)」



川の流れは時間を、アン・ルーは亡き母の若き日の姿を表す


私は、この「長江 愛の詩(うた)」を観て、「長江の流れ」は「時の流れ」を表しているのではと思った

亡くなった父が残した古い貨物船と詩集「長江図」を受け継ぎ、詩を読みながら長江をさかのぼるガオ・チュン。



父が亡くなった直後に、上海からスタートし、川をさかのぼっていく。

その過程で、時折出くわす美女アン・ルーは、父にとっての妻、ガオ・チュンにとって母の若き日の姿なのではないかと思った。

父もまた、ガオ・チュンのように長江で美女に出会い、恋に落ちたのである。



彼女は、時折姿を見せ、何も言わずにミステリアスな雰囲気を残して去っていく。

それは、父が母と会った時の思い出であり、長江をさかのぼると共に、ガオ・チュンは時間をさかのぼり、手元にある詩集には彼女への思いが込められ、父と母の美しい思い出を追想していく



ガオ・チュンは、父が残した詩集を読みながら、母への愛に共感し、最後に父はガオ・チュンの身体を借りて最愛の母の元へとたどり着く

そこにあるのは、母の墓だったのだ。



映画「長江 愛の詩(うた)」



経済発展と共に失ってしまったものと心の痛み


ところが、その道中で、長江は父と母が出会った頃のものとは姿を変えてしまっていた

三峡ダムの出現である

父が母と出会って結婚し、母が亡くなるまでの間に、長江には「三峡ダム」という巨大なダムが建造されたのである。



中国が誇りにするその巨大ダムは、経済発展の象徴であるけれど、歴史的に重要な遺跡を水の下に沈め(中にはそっくりそのまま移設したものもある)、多くの美しい景観を失ってしまった

それ以降、父の思い出の長江は失われてしまったのだ。



貨物船から失われた空っぽの積み荷は、父の心の空しさを表し、乗組員に刺されたガオ・チュンの痛みは、父が愛していた景観を失ったことで、身を引き裂かれるような痛みを表している。

そして、ガオ・チュンはアン・ルーに導かれるようにさらに上流へと向かっていく。



すると、かつては激流下りなどを楽しんだ上流地域もダムの出現によって水位が低くなり、環境破壊が進み、水墨画のような美しい景観も失われつつあった。



中国が誇りとする経済発展の象徴である「三峡ダム」ができたのは、素晴らしいことであり、その技術は感動的でさえあるけれど、その一方で、多くの歴史的建造物や愛する景観と思い出を奪い去ってしまった。

そこに残るのは、空しさと心の痛みなのである。



映画「長江 愛の詩(うた)」



これからも発展を続けていく長江への思い


ガオ・チュンは、詩集「長江図」を元に、そんな父と母の美しい思い出をたどりつつ、経済発展をとげた長江の歴史を知ることとなる。

前述したトークイベントでは川をさかのぼっていくうちに、上流になると、川岸の地表がむき出しになり、下側は上側に比べて白っぽくなっている部分の話があった。



それは、ダムができたことで水位がさがったために、地表がむき出しになり、そんなことになってしまったのだいう。

その地表に現れた白い線を監督は「みっともない」と言っていたという。



そうやって、かつては多くの画家によって水墨画に残されたような美しい景色も、経済発展と引き換えに失ってしまったのである。



しかし、2009年に完成したダムももうすぐ10年が経ち、やがて、「三峡ダム」後の長江しか知らない世代がやってくる

そうなる前に、長江への思いを残すために、この映画は作られたのではと思った。



多くの美しい景観や自然は失われても、たくさんの大型船が川を行き交い、揚子江のイルカはそれでもたくましく生きている。

ガオ・チュンの父と母はチベットにある長江の源で、これからもその発展を見届けてくのではと思った。

ただし、チベットの僧侶が言うように「もう、これ以上触るな」という願いを込めて



「映画はストーリーありき」という人は苦手かもしれないけど、詩集や画集をぼんやりと眺めているのが好きな人にはおススメの作品。




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