レイチェル・ワイズ主演の映画「否定と肯定」を映画館で観た。

「ホロコースト」はなかったという歴史学者がホロコーストを専門とする大学教授を訴え、教授側が「ホロコースト」の真相を証明することになった裁判の実話を映画化。


満足度 評価】:★★★★☆

とても素晴らしい映画だったので、多くの人に見て欲しい作品

特に、法定ものが好きな人におススメしたい。

「正義」とは、真実が導く場所にあると強く感じられる映画だった。



日本とイギリスの裁判制度の違いを楽しみつつ、フェイク・ニュースの時代をどう生きるかについて考えさせられる作品。


目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「否定と肯定」予告編 動画

(原題:Denial)



更新履歴・公開、販売情報

・2017年12月29日 映画館で観た感想を掲載

・2019年1月27日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVD、ネット配信、共に販売中。


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キャスト&スタッフ


出演者

レイチェル・ワイズ
…(「女王陛下のお気に入り」、「光をくれた人」、「グランド・フィナーレ」、「ロブスター」、「アレクサンドリア」、「ニューオーリンズ・トライアル」、「オズ はじまりの戦い」、「ナイロビの蜂」、「コンスタンティン」など)

トム・ウィルキンソン
…(「スノーデン」、「エミリー・ローズ」、「パーフェクト・プラン」、「フィクサー」、「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」、「グランド・ブダペスト・ホテル」、「ゴーストライター」など)

…(「輝ける人生」、「英国王のスピーチ」など)

〇アンドリュー・スコット


監督

〇ミック・ジャクソン

2016年製作 アメリカ・イギリス合作映画



否定と肯定




あらすじ


1994年。「ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺(=ホロコースト)はなかった」と主張するデヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール)について、ホロコーストを専門とする大学教授のデボラ・E・リップシュタット(レイチェル・ワイズ)は、「歴史を歪曲するエセ歴史学者」とだと批判。

すると、デヴィッド・アーヴィングが「名誉を傷つけられた」として、ロンドンの裁判所にデボラを訴える。

そこで、アメリカ人のデボラはロンドンで名誉棄損の裁判を専門としている弁護士・アンソニー・ジュリアス(アンドリュー・スコット)に相談し、アーヴィングと戦うことになったのだが、イギリスの裁判では訴えられた側に立証責任があることが分かる。

つまり、この裁判では訴えられたデボラが「ホロコーストは実際にあった」ことを証明することになり…。



否定と肯定2




感想(ネタバレあり)


イギリスだからこそ起きた裁判だった



「人気俳優○○、10年不倫発覚!!隠し子の存在が明らかに…!?」

なんていう見出しが電車の中刷り広告に踊っていると、それが事実どうかもわからないまま、「あの人、意外と女好きなんだな」と思ってしまう。

それが本当か嘘かよりも、ショッキングな見出しに心を奪われ、つい、鵜呑みにしてしまうからだ。

ショッキングな見出しと言うのは、それぐらい人を引き付ける魅力を持っている



そんな記事が書かれた俳優側は、もしもそれが嘘だった場合、「精神的ショックを受けたし、仕事も減ってしまった」として、記事を掲載した週刊誌を名誉棄損で訴えるだろう。

その場合、日本の裁判所では、訴えた側の俳優が「不倫をしていない」ことを示す証拠を提出しないといけない。

それが、訴えた俳優が負うべき「立証責任」である。



その「訴えた側が真実を明らかにする」という裁判の方法は、世界で見ても一般的だけれど、イギリスでは違っていて、訴えられた側に立証責任がある

そこが、この映画を面白くしている要素の一つだった。



主人公はアメリカ人でホロコーストを専門とする大学教授 デボラ・E・リップシュタット。

彼女は「ナチスドイツによる、ユダヤ人大虐殺(=ホロコースト)はなかった」というイギリス人の歴史学者のデヴィッド・アーヴィングの主張を全否定する。

すると、デヴィッド・アーヴィングが「名誉を傷つけられた」としてデボラを「イギリスで」訴えた



ということは、訴えられたデボラが「ホロコーストがあった証拠」を提出しなければならない

もしもデヴィッドがこの訴えをアメリカでおこしていたら、彼自身が「ホロコーストはなかった、ユダヤ人がねつ造したものだ」という証拠を提出しなければならない。

だからこそ、イギリスで裁判を起こしたんだなと思わずにはいられない。



というわけでデボラ側の弁護団が「ホロコーストの証拠」を集めることになったのだが、終戦間近のナチスドイツはホロコーストに関する多くの証拠を処分していて、証拠が残っていなかった

その中で、どうやって「ホロコーストが事実」を証明していくのかが、裁判の争点になっていった。



この、国が違えば裁判の方法も変わってくるっていうのは、とても面白かった

日本やアメリカでは、刑事事件で、訴えた側が十分に証拠を集められなかった場合には「証拠不十分により無罪(推定無罪)」となるけれど、イギリスの場合は、この「推定無罪」がないのだという。

イギリスでは、訴えられた側が十分な証拠を集められなければ敗訴になってしまう。



そのため、この映画の中では「証拠集め」について、デボラと弁護団がたびたび衝突することもあった。



否定と肯定3



一番恐れていたのは「嘘が人々の記憶の中で真実になる」こと



先ほどの例えで出てきた「不倫俳優」の場合、裁判になる頃には多くの人が記事のことをすっかり忘れていて、その人がテレビに出てくるたび「あぁ、この人は不倫した人だ」という目で見られることになる。

たとえ、その不倫記事がライバルのねつ造したものであって、事実とは異なっていたとしても。

その結果、その俳優は、それ以降ダーティな役ばかりがオファーされてしまうようになることにもなりかねない。

それがフェイク・ニュースの恐ろしさである。



デボラが、この裁判を受けるにあたって最も恐れていたことは、その「嘘の記事が真実だと思われること」だった

デヴィッドから訴えられた時に、デボラは多くのユダヤ人から「そんな奴は相手にすべきではない。示談にすべきだ」と言われた。



「示談にする」ということは、相手に謝罪して認めることになってしまい、「ホロコーストはユダヤ人がでっちあげたプロパガンダ」という彼の主張が「真実」になってしまう

デボラはそうして、人々の記憶の中から「ホロコーストが薄れていく」ことを一番恐れていたのだ。

それでは、デボラが生涯かけて研究してきたことが全てなし崩しになってしまう。



これは「誰も思いつかなかったようなショッキングなネタは、人の記憶に残りやすい」ということを示している。

表現の自由が認められている以上、何事も言ったもん勝ちなのだ。

きっと誰もが「ホロコーストはなかった。ユダヤ人のねつ造だ」などと言われると、一瞬、自分の中の常識を疑い、本当になかったのかな…と思い、信じてしまう人もいるだろう。

それぐらい、ショッキングな見出しには人を引き付ける魅力がある



否定と肯定4



真実を証明するのは感情論よりも動かぬ証拠



「ホロコーストはなかった」と聞いた時、私の頭の中に浮かんだのは、アンネ・フランクであり、ガス室に送り込まれた人々の体験談だった。

デボラもそれを思い、生還者たちに裁判で主張させることが一番の証拠だと考えた。



しかし、彼女の弁護団はそれを許さなかった。

デヴィッドによれば、ガス室に送り込まれた人々の腕に彫られた番号もユダヤ人の彫師が後から彫ったものだと主張していたからだった。

きっと、生還者たちを証言台に座らせたら、デヴィッドによって「世界の笑いものにされるに違いない」というのが弁護団の考えだった。



結局は、弁護団の考え方が正解だった。

その様子を見て思ったのは、ある出来事が「真実」か「嘘」かを証明しなければいけない時に必要なのは、「感情論」よりも「目に見える証拠」だということ。



裁判所でホロコーストからの生還者たちの悲しい体験談を聞いて心に訴えかけても、それは証拠にはならない。

たとえそれが真実だったとしても、「演技しているのでは」と言われたら、それで終了してしまう

むしろ、生還者たちが「笑いもの」になる可能性が高い

それよりも動かぬ証拠こそが、「そこで起きたこと」を証明することができる。



だからこそ、弁護団はアウシュビッツに行き、距離を測り、細かく写真を撮って「50年前にそこで起きたこと」を忠実に再現する。

むしろ、そこに「かわいそう」とか「気の毒」などという感情を入れると真実が曇ってしまう

考えるべきは、「50年前にその施設で何が行われたか」だった。



それにしても、50年経って多くの証拠が隠滅されても「大量に人を殺していた」という形跡が残っているアウシュビッツの恐ろしさ

見れば見るほど、「ホロコーストはなかった」と主張する歴史学者の頭の中を疑ってしまう。



否定と肯定5



大量に流出するフェイク・ニュースに惑わされないために



映画の中では、莫大な資料の中から「ヒトラーの言動」や、アウシュビッツの建物の構造や、その周辺の様子まですべて細かく調べて、一つ一つ丁寧に「ホロコーストはあった」という証明をしていく。

たとえ、デヴィッドがもっともらしい嘘をついていても「証拠」はその嘘を見破ってしまう。

デボラの弁護団の質問に、次第にしどろもどろになっていくデヴィッドを見ていると胸がスッとした。



そんな裁判を通して学んだのは、日頃からの「ニュースの読み方」だった。



この映画のデヴィッドのように強い調子で「ホロコーストはなかった」なんて言われると、そのショッキングな見出しに、一瞬でも自分の常識を疑ってしまう。

しかし、そこでいったん立ち止まって「証拠はどこにあるのか」を考える時間を作るべきなのである。



もしも、記事の中に書かれていることが全て「推測」なのだとしたら、それは「真実」ではない

インタビューの内容も、本人のものでなく「関係者の言葉」なのだとしたら、ますます怪しい。

そんな「証拠のない」記事はフェイク・ニュース認定して信じない



SNSが発達したことで、誰もが発言できる時代になり、はじめは小さな噂話が、後々立派なフェイク・ニュースになることだってある。

誰かを陥れたり、批判したりすることは誰にでもできるし、とても簡単なこと。

だからこそ、これからはそういうフェイクに惑わされない「記事を読む目」を養うことが必要なんだろうと思う。



それにしても、真実がデヴィッドを打ち負かしていく様子は、見ていてとても爽快だったし、胸がスッとした。

何よりも強いのは「証拠」である。

「証拠」だけが、真実を語ることができる


 ↓ デボラ・E・リップシュタット本人(右)とレイチェル・ワイズ(左)
否定と肯定6



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