キャスリン・ビグロー監督の映画「デトロイト」を試写会で観た。

1967年にアメリカで起きたデトロイト暴動の実話を映画化。



満足度 評価】:★★★★★

衝撃だった。

1967年にアメリカのデトロイトで起きた暴動の実話。

そこで行われたのは白人警官による黒人たちへの不当な拷問だった。

しかし、私たちはそこから目を背けずに、「この事実」があったことを知るべきなのだと思った。



以下の感想の中にはネタバレを含みます。映画をご覧になってからお読みください。

目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「デトロイト」予告編 動画

(原題:Detroit)




更新履歴・公開、販売情報

・2018年1月13日 試写会で観た感想を掲載。

・2019年1月6日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVD、ネット配信、共に販売中。


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キャスト&スタッフ


出演者

ジョン・ボイエガ
…(「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」など)

ウィル・ポールター
…(「メイズ・ランナー 最期の迷宮」、「レヴェナント:蘇りし者」、「メイズ・ランナー」、「なんちゃって家族」など)

ジャック・レイナー
…(「フリー・ファイヤー」、「シング・ストリート 未来へのうた」、「人生、サイコー!」、「リチャードの秘密」など)

〇ベン・オトゥール

〇オースティン・エベール


〇アンジー・スミス

アンソニー・マッキー
…(「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」、「トリプル9 裏切りのコード」、「アントマン」、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」、「フィフス・エステート/世界から狙われた男」、「崖っぷちの男」、「アジャストメント」、「イーグル・アイ」など)



監督

〇キャスリン・ビグロー


2017年製作 アメリカ映画



映画「デトロイト」

あらすじ


1967年のアメリカ デトロイトでは、法律的には黒人に対する差別が撤回されたが、黒人用の居住区があるなど、生活レベルでの差別はまだまだ続いていた。

そんな中、ある黒人居住区のナイトクラブで「酒類販売許可」を所有しないまま販売していた店の摘発があり、そこでパーティをしていた多くの黒人たちが警察に移送されるという事態が発生する。

本来ならば裏口の人目のつかないところで行われるはずが、そのビルは裏口が開かなかったため、大通りの人目がつくところで行われ、それを見ていた黒人たちが「これは、白人よる黒人差別だ!!」として暴動をはじめる。

たちまち、街中は騒乱状態になり、白人警官たちは沈静化を図るが、暴動はますます激しくなる。

そんな中、黒人居住区にあるモーテルで銃声がしたため、警官のクラウス(ウィル・ポールター)や近くで警備員をしているディスミュークス(ジョン・ボイエガ)は、銃声がしたモーテルへと向かう…。



映画「デトロイト」


感想(ネタバレあり)


「ちょっとした悪ふざけ」だったのに…



夏休みに友達と旅行に行ったら、泊まっていたホテルに警察官たちが押し寄せてきて、

「お前は今、銃を撃っただろう。今すぐに銃を出せ!!」と言われた上に、殴られたり服を破られたりしたら、どんな思いがするだろうか。

そして、もしも、その時一緒にいた友人のうちの一人が「黄色人種だから」という理由で、何も悪いことはしていないのに目の前で殴られて撃たれて殺されたら、どんなに恐ろしいだろうか。



まさか、そんなことは起きないだろうと思うかもしれないが、そんな理不尽なことが実際にアメリカで起きたのである。

それが、この映画で描かれている「デトロイト暴動」である。

彼らはただ、分別のつかない若者らしくモーテルの一室でふざけていただけだった

そして、楽しかったはずの夜が一転、地獄の一夜になってしまった



きっかけは「違法酒類販売の摘発」だった。

刑事が酒類の販売許可のないナイトクラブを摘発し、そこで酒を飲み、パーティをしていた黒人の若者たちが大勢警察へと送り込まれることになった。

その店の周辺で、次々と逮捕される彼らを見ていた黒人たちが「これは、黒人への差別である」として抗議をすると、その中には近隣の店へ火を放つ者もあらわれ、抗議が暴動へと発展していく



しかし、それはただの始まりに過ぎなかった

その暴動が過激化し、町中が騒乱状態へと発展し、警官隊がバリケードを組み、軍隊が沈静化を図るようになり、緊迫感が張り詰め、劇場でコンサートを楽しんでいた人たちは途中で打ち切られ、「すぐに家に帰るように」主催者側が謝罪するという事態になる。



その緊張した状態の中で、黒人居住区にあるモーテルでは、黒人の青年たちが悪ふざけで「レース用のピストル」を外にめがけて数発撃ったところ、その音を聞いただけで、警官たちは「銃撃された」と誤認しモーテルへと押し寄せる

そこで、警官による「銃撃犯探し」の尋問が始まるのである。



映画「デトロイト」ウィル・ポールター


同じ国民同士なのに、まるで戦場のような悲惨さ



この時モーテルで、たとえ空砲であってもピストルを撃った黒人青年に対しては、「なんてバカなことをしたんだろう」と正直思った

その時、外には白人警官だけでなく、米軍や警備員たちも銃を持って構えていて、一触即発の状態にあったからだった

その状態で、ピストルの音が数発鳴り響いたら、実弾を撃ち返されても仕方がないような気がした。

それぐらい、その場は緊張状態にあったからだ。



問題は、その後の尋問だ

ピストルを発砲した音がしたからといって、誰も被害者が出ていないし、銃が見つかっていない中、容疑者を殺していいという理由にはならない

にもかかわらず、「その場から逃げ出そうとした」という理由で、一人撃ち殺している。

その撃ち殺された人こそ、「悪ふざけをした」当人であったため、その後に残された人々は誰も犯人だとして名乗りを上げることができない。



それでも、証拠が出てこないため、警察官たちは「銃を撃ったものは正直に言え」と言い、一人ずつ尋問を始める。

それ以前に、そもそもそこには銃はなかったし、だれも実弾など撃っていないのだ。

そこにいた若者たちは、「銃など誰も持っていないし、誰も撃っていない」と主張するが、警官たちはその主張を信じようとせず、尋問を続け、時には殴り、そしてまた一人殺される…。



この映画の大半を占めるのは、この尋問の場面であり、これが本当に恐ろしくて、それを観ていた私も体が硬直してしまった。

それは、まるで戦争映画の拷問の場面を観ているようだった



その中で、最も恐ろしいと思ったのは、白人警官たちが黒人たちを「人間として見ていない」ことだった。

差別主義的な白人警官たちは、まるで森にハンティングに行って鹿やウサギでも狩るような雰囲気で、簡単に黒人たちを撃ち殺す

そして「あぁ、死んじゃったよ。しかたない、ナイフで襲われたことにしとくか」という雰囲気で、撃ち殺された青年のそばにナイフを置き、次のターゲットを探しに行く。



恐らく、それはかつてナチスドイツがユダヤ人を平気で殺していたのと似たような感覚なのではと思う。

その人の思想の中に歴然とした「人種差別」があって、差別の対象(この場合は黒人)は「人間ではない」と本気で思い込んでいる

だから、平気で殺せるし、殺した後も平然としていられるのだ。



そして、衝撃なのは、これが事実であるということ。

この時の真相はこれまで隠ぺいされてきたのだが、その当時現場にいた人たちに話を聞いて、この映画が作られていったのだという。

これがフィクションではなく、事実だということは、本当に人間はどこまでも恐ろしくなれるものなんだなと思った。



映画「デトロイト」アンソニー・マッキー


白人の中にも善人はいるし、黒人の中にも悪人はいる



しかし、その中で救いだったのは、この映画がステレオタイプに「白人=悪」、「黒人=善」とは描いていないところだった。

白人警官や軍人たちの中にも良い人たちは確実にいた

モーテルの中からこっそり逃がしてくれた人もいたし、血だらけになって逃げているところを「誰にこんなにひどい目に遭わされたんだ」と言って助けてくれた人もいた。



その一方で、黒人たちのなかにも、ひどい人たちはいた

暴動が始まれば店に火をつけたり、商店のガラスを割って商品を略奪したり、モーテルで空砲を撃ったのも、決して良い行為とは言えない。

彼らは、確かに逮捕されるべき者たちであり、決して良くないことだし、そんな彼らが騒ぎを大きくしていったのは間違えない



しかし、それまで日常的に行われていた人種差別が、黒人の若者たちをそんな状況に追い込んでいたのも事実



白人も黒人も、その状況で「良い行い」をするか、「悪い行い」をするかは、本人次第なのだ。

この映画の素晴らしいところは、あくまでも、その一人一人の行動を人間として描いているところであり、「白人 VS 黒人」の図式を助長してはいないところだった。



ウィル・ポールターが演じた警官クラウスは、明らかに差別主義者の凶悪な殺人犯であるが、全ての白人が彼のように差別主義者だったわけではない。

それとは対照的に、ジョン・ボイエガ演じる警備員のディスミュークスは、白人たちに友好的で穏やかな人間だけれども、黒人たちがみな、彼のように友好的なわけではない。

むしろ、彼は黒人たちからも「アンクル・トム」(白人寄りの黒人だということのたとえ)と呼ばれてからかわれるような立場だった。



また、警察がクラウスに対して「黒人たちをなんとかしろ」と言っていたわけでもない。

むしろ、クラウスの上司は無実の黒人を背中から撃つような彼に対して、日頃から手を焼いていて、処分を考えていたぐらいだった。



つまり、この映画はあくまでも「個人の倫理観」に問いかける作品になっていたのが良かったと思った。

これは戦争ではなく、国内で起きた暴動の問題なのだ。

どんなに差別主義者がたくさんいる地域であっても、正しい倫理観や、人としての良心を持った人は必ずいる

随所でそう思えることが救いだった



映画「デトロイト」ジョン・ボイエガ


「差別を受ける側」の人間として知っておくべきこと



そして、その「地獄の尋問」から数か月後、このモーテルでの件が裁判にかけられる。

あぁ、これで助かった…と思ってはいけない

衝撃はまだまだ続くのだ。

なんと、モーテルで若者たちを殺した警官は「無罪」になってしまう。



なぜ、こんなにも世の中は理不尽なのか

それは、裁判所が「アメリカには『正義がない』」と宣言した瞬間だった。

そして、その後もアメリカでは人種問題が続いている。



周りを海に囲まれた日本で暮らしていると、日本人がマジョリティ(多数派)であり、海外で暮らさない限り差別を受けることもない。

だからこそ、この映画を観るべきだと思った。

この映画を観れば、これまでアメリカでは黒人たちがどんな仕打ちを受けてきたのかが分かる



そして、現在もニュース見れば白人警官によって殴られている黒人たちの映像が流れている。

あの時、裁判所が「無罪」を言い渡した結果、不当な仕打ちを受けた黒人たちの名誉は回復せず、警官たちに対する不信感は消えないまま、50年の月日が流れてしまった。

そして、差別は今も続いているのだ。



そんな彼らを見れば、「人種差別の問題に対して、ちょっと鈍感になっている」日本人だって、「アメリカで何が起きているのか」を理解することができるだろう。

そして、いまだに白人警官におびえて生活している黒人たちがいることを知るはずだ。

そういう境遇にいる人を一人でも減らすために、私たちは映画を通じて「人権の大切さ」を知るのである



もしも、日本人がアメリカで暮らせば、いまだに地域によっては「イエロージャップ」と言われて「差別を受ける側」の立場になる。

そうなれば、この映画のように不当な尋問を受けることだってあるかもしれない。

だからこそ、もっとたくさんの人に「人権」について理解してもらうことが必要だし、海外で暮らす機会がなかったとしても、彼らが経験した理不尽な拷問の実態を知っておくべきである。



そのうえで、アメリカで暮らす黒人たちの今があるのである。

「人種差別」は、決して他人事ではない。

私たちも「差別される側」の人間なのだから。




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