チュウォン主演の映画「あいつだ」をWOWOWで観た。
釜山の小さな漁村で起きた殺人事件。妹を殺された兄は、ある一人の男を犯人だと断定し、粘り強く追い続ける…。
実話を元に映画化。
【満足度 評価】:★★★★☆
釜山の小さな漁村の貧しさや薄汚さ、娯楽のない町でくすぶる悪、鎮魂祭が示す犯人…。
どれもが少しオカルトっぽくて、胡散臭い雰囲気を放っているのが面白かった。
◆ネット配信で観る:「あいつだ」(字幕版)
◆DVDで観る:「あいつだ」
〇ユ・ヘジン
…(「1987、ある闘いの真実」、「タクシー運転手 約束は海を越えて」、「コンフィデンシャル/共助」、「LUCK-KEY/ラッキー」、「国選弁護人 ユン・ジンウォン」、「極秘捜査」など)
〇イ・ユヨン
2015年制作 韓国映画

妹を殺された兄ジャンウ(チュウォン)は、妹の鎮魂祭で、ある1人の男に目を付ける。
魂を解き放つために海に流した赤いヒモが途中で切れてしまい、そこにつながれた器がその男の前で止まったのだ…。
ジャンウは、その時、その男を追うが逃げられてしまう。
しかし、彼の姿から、その町で暮らす薬剤師のミン(ユ・ヘジン)が怪しいと断定し…。

世の中には、言葉ではうまく説明できないことがある。
夢にみたことが実際に起きたり、虫の知らせや嫌な予感が的中することだってある。
この映画は、そんな「不思議な話」を映画化したものである。
私は、この映画を観終えた時に「実話を映画化した」と聞いたので、ちょっとビックリした。
この映画は、霊感や、神のお告げのようなオカルト的な要素が満載で、とても全てが実際に起きた話とは思えない。
そこで、どこまでが実話だったのかを調べてみた。
すると、これまた面白い話が出てきた。
シネマートのサイトで、この映画のことを説明しているページにそのことが書かれていた。
映画では、殺されたのが女子高生であり、犯人を追うのは父親ではなく、兄である。
しかし、兄が鎮魂祭で赤い布が切れ、その器が犯人の前で止まったというのは、全く同じ描写があった。
あそこが、実話だったのか!!
だから、兄が「あいつだ!」と思った瞬間をタイトルにしたのか。
あそここそ、なんともオカルトっぽいと思って、あれこそが演出だと思ったのに。
非常に不思議な話だ。
そんなことが実際にあるんだなぁと思う。

この映画の中で、何とも言えない恐ろしさを演出しているのは、釜山のさびれた漁村の風景である。
この町には悪魔の顔があると思った。
再開発をすると言ってしないまま時が過ぎ、多くの住民がその村を去り、一部の貧しい漁民たちが暮らしている寂しい町。
男性たちの楽しみは女と博打であり、女子高生たちは、売春をしておこずかいを稼ぐ。
「貧困」と「退屈」は、悪を生み出す重要な要素であるが、この町は、明らかに「なにか潜んでいそうな顔」をしている。
入り組んだ路地裏と薄汚れた町、何も起きてなくても、なんだか薄気味悪い。
夜中に普通に歩いているだけで、どこからか、何者かが出てきて足元から引きずられていきそうな雰囲気を持っている。
実話があったのも釜山の町だから、映画の舞台も釜山になったのだろうけど、それにしても、この町の描写が恐ろしさを増していることは確かである。

「鎮魂祭」の話を出発点に描いたから、「霊能力のある少女」というキャラクターが生まれたのだろう。
彼女の存在が、この映画をありがちなサスペンスにちょっとしたオカルト的な要素を加えている。
そもそも、この犯人は妹の最後のセリフ
「あんたなんか、絶対うちのお兄ちゃんが見つけ出すんだからね」
と言った時の執念が魂に宿り、鎮魂祭で犯人を示し、さらに霊能力を持つ少女と、犯人の亡くなった妹に道案内をさせている。
犯人を捕まえたのは、「執念」と「怨念」である。
あの霊能力のある少女シウンが、とても自信なさげで暗いのが良い。
常に青白い顔をして、びくびくと背中を曲げているその姿は、これからきっと何か起きるのだろうと予想させる。
そして、彼女は、この映画にとって恐怖であると同時に、希望でもある。
彼女がうまくお兄ちゃんを犯人の元へ導いて欲しいと思うし、報われない魂たちを救ってあげて欲しいとも思う。

結局、犯人もまた虐待の犠牲者だったことが分かる。
元々は裕福だった家庭に育った彼だったが、目の前で妹を殺されるという事件が起きてしまう。
その時に「恨み」を持ち、それから長い年月をかけてその「恨」という感情を心の中に蓄積していく。
それ以来、妹を殺した「男に媚びる女」を憎むようになり、彼の中で蓄積した「恨」が「売春する女子高生たち」に向けて爆発してしまう。
まさに、彼は釜山のさびれた漁村の「貧困」と「退屈」が生み出した「悪」なのであり、また、自分の中で長い間蓄積して、ある時爆発させるという「恨」の描き方も非常に韓国らしい話だった。
最近、韓国映画が世界に誇る輸出産業の1つが、このサスペンス映画市場である。
サスペンスというジャンルでは、ハリウッドを凌ぐ面白さを誇る韓国映画では、毎年多くのサスペンス映画が量産されている。
その中でも、「面白い映画」として海外に輸出されるには、他にはない、その映画だけが持つ個性が必要になる。
今回の映画のように「オカルト」的な部分の不気味さや、「釜山」という町の表情、そして、犯人に蓄積する「恨」という、それぞれの個性を組み合わせてできたのが、この作品だったように思う。
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◆ネット配信で観る:「あいつだ」(字幕版)
◆DVDで観る:「あいつだ」
釜山の小さな漁村で起きた殺人事件。妹を殺された兄は、ある一人の男を犯人だと断定し、粘り強く追い続ける…。
実話を元に映画化。
【満足度 評価】:★★★★☆
釜山の小さな漁村の貧しさや薄汚さ、娯楽のない町でくすぶる悪、鎮魂祭が示す犯人…。
どれもが少しオカルトっぽくて、胡散臭い雰囲気を放っているのが面白かった。
「あいつだ」予告編 動画
(原題:그놈이다)◆ネット配信で観る:「あいつだ」(字幕版)
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キャスト&スタッフ
出演者
〇チュウォン〇ユ・ヘジン
…(「1987、ある闘いの真実」、「タクシー運転手 約束は海を越えて」、「コンフィデンシャル/共助」、「LUCK-KEY/ラッキー」、「国選弁護人 ユン・ジンウォン」、「極秘捜査」など)
〇イ・ユヨン
…(「22年目の記憶」など)
監督・脚本
〇ユン・ジョンヒョン2015年制作 韓国映画

あらすじ
釜山にある小さな漁村で、1人の女子高生ウンジ(リュ・ヘヨン)が殺されてしまう。妹を殺された兄ジャンウ(チュウォン)は、妹の鎮魂祭で、ある1人の男に目を付ける。
魂を解き放つために海に流した赤いヒモが途中で切れてしまい、そこにつながれた器がその男の前で止まったのだ…。
ジャンウは、その時、その男を追うが逃げられてしまう。
しかし、彼の姿から、その町で暮らす薬剤師のミン(ユ・ヘジン)が怪しいと断定し…。

感想(ネタバレあり)
どこからどこまでが実話なのか…
世の中には、言葉ではうまく説明できないことがある。
夢にみたことが実際に起きたり、虫の知らせや嫌な予感が的中することだってある。
この映画は、そんな「不思議な話」を映画化したものである。
私は、この映画を観終えた時に「実話を映画化した」と聞いたので、ちょっとビックリした。
この映画は、霊感や、神のお告げのようなオカルト的な要素が満載で、とても全てが実際に起きた話とは思えない。
そこで、どこまでが実話だったのかを調べてみた。
すると、これまた面白い話が出てきた。
シネマートのサイトで、この映画のことを説明しているページにそのことが書かれていた。
本作は1999年釜山で実際に発生した、ある女子大生の死を弔う薦度(チョンド)斎(ジェ)(仏教における死者儀礼。
魂が極楽に行けるよう道を開く儀式)で起きたことをヒントに作られている。薦度斎の最後の儀式である救魂祭がとり行われている最中、儀式で使っていた赤い布が強く引っ張られた挙句に切れてしまい、使っていた真鍮製の器だけが海に流され、ある青年の前で留まった。
死んだ被害者の父親は、直感的にその青年が犯人だと確信し、粘り強く追跡したという。
「【韓国エンタメ】韓国初登場No.1 大ヒット!《実話》を元に描く執念のリベンジスリラー チュウォン主演『あいつだ』公開日&予告編解禁!」より
映画では、殺されたのが女子高生であり、犯人を追うのは父親ではなく、兄である。
しかし、兄が鎮魂祭で赤い布が切れ、その器が犯人の前で止まったというのは、全く同じ描写があった。
あそこが、実話だったのか!!
だから、兄が「あいつだ!」と思った瞬間をタイトルにしたのか。
あそここそ、なんともオカルトっぽいと思って、あれこそが演出だと思ったのに。
非常に不思議な話だ。
そんなことが実際にあるんだなぁと思う。

釜山という町に漂う恐ろしさ
この映画の中で、何とも言えない恐ろしさを演出しているのは、釜山のさびれた漁村の風景である。
この町には悪魔の顔があると思った。
再開発をすると言ってしないまま時が過ぎ、多くの住民がその村を去り、一部の貧しい漁民たちが暮らしている寂しい町。
男性たちの楽しみは女と博打であり、女子高生たちは、売春をしておこずかいを稼ぐ。
「貧困」と「退屈」は、悪を生み出す重要な要素であるが、この町は、明らかに「なにか潜んでいそうな顔」をしている。
入り組んだ路地裏と薄汚れた町、何も起きてなくても、なんだか薄気味悪い。
夜中に普通に歩いているだけで、どこからか、何者かが出てきて足元から引きずられていきそうな雰囲気を持っている。
実話があったのも釜山の町だから、映画の舞台も釜山になったのだろうけど、それにしても、この町の描写が恐ろしさを増していることは確かである。

魂のガイド役は霊能力のある少女シウン
「鎮魂祭」の話を出発点に描いたから、「霊能力のある少女」というキャラクターが生まれたのだろう。
彼女の存在が、この映画をありがちなサスペンスにちょっとしたオカルト的な要素を加えている。
そもそも、この犯人は妹の最後のセリフ
「あんたなんか、絶対うちのお兄ちゃんが見つけ出すんだからね」
と言った時の執念が魂に宿り、鎮魂祭で犯人を示し、さらに霊能力を持つ少女と、犯人の亡くなった妹に道案内をさせている。
犯人を捕まえたのは、「執念」と「怨念」である。
あの霊能力のある少女シウンが、とても自信なさげで暗いのが良い。
常に青白い顔をして、びくびくと背中を曲げているその姿は、これからきっと何か起きるのだろうと予想させる。
そして、彼女は、この映画にとって恐怖であると同時に、希望でもある。
彼女がうまくお兄ちゃんを犯人の元へ導いて欲しいと思うし、報われない魂たちを救ってあげて欲しいとも思う。

犯人の中で蓄積する「恨」
結局、犯人もまた虐待の犠牲者だったことが分かる。
元々は裕福だった家庭に育った彼だったが、目の前で妹を殺されるという事件が起きてしまう。
その時に「恨み」を持ち、それから長い年月をかけてその「恨」という感情を心の中に蓄積していく。
それ以来、妹を殺した「男に媚びる女」を憎むようになり、彼の中で蓄積した「恨」が「売春する女子高生たち」に向けて爆発してしまう。
まさに、彼は釜山のさびれた漁村の「貧困」と「退屈」が生み出した「悪」なのであり、また、自分の中で長い間蓄積して、ある時爆発させるという「恨」の描き方も非常に韓国らしい話だった。
最近、韓国映画が世界に誇る輸出産業の1つが、このサスペンス映画市場である。
サスペンスというジャンルでは、ハリウッドを凌ぐ面白さを誇る韓国映画では、毎年多くのサスペンス映画が量産されている。
その中でも、「面白い映画」として海外に輸出されるには、他にはない、その映画だけが持つ個性が必要になる。
今回の映画のように「オカルト」的な部分の不気味さや、「釜山」という町の表情、そして、犯人に蓄積する「恨」という、それぞれの個性を組み合わせてできたのが、この作品だったように思う。
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