ジョエル・エドガートン主演のサスペンス映画「イット・カムズ・アット・ナイト」を映画館で観た。
原因不明の疫病が蔓延する世界を舞台に、密室で暮らす2つの家族が、やがて互いを疑い始めることで精神が崩壊していく姿を描く心理サスペンス。
【満足度 評価】:★★★★☆
面白かった!6人の登場人物を追い詰める密室劇。
人は寛容さを求められれば求められる程、狭量になっていく。
本当に恐ろしいのは疫病ではなく人間の心に潜む暗闇。
それこそが人間の本質だと思うと恐ろしくも悲しい
目次
『イット・カムズ・アット・ナイト』予告編 動画
(原題: It Comes at Night)更新履歴・公開、販売情報
・2018年11月28日 映画館にて鑑賞。
・2018年12月14日 感想を掲載。
・2019年9月28日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。
現在、ネット配信、DVD、共に販売中。詳しい作品情報につきましては、下記公式サイトをご参照ください。
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キャスト&スタッフ
出演者
〇ジョエル・エドガートン〇クリストファー・アボット
…(「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」、「エイリアン:コヴェナント」など)
〇ケルビン・ハリソン・Jr
〇グリフィン・ロバート・フォークナー
監督
〇トレイ・エドワード・シュルツ
2017年製作 アメリカ映画

あらすじ
原因不明の疫病が蔓延する世界。
彼らは、森につながる扉を「夜間は絶対に開けないこと」というルールを守って暮らしていた。
それは、深夜にやってくると信じていたからだ。
そんな彼らに対し、夜中にその扉を叩く者がやってくる。
ポールが完全防備をして扉を開けると、そこにいたのは一人の男性ウィル(クリストファー・アボット)だった。
ウィルは、「家族のために、水を分けて欲しい」と言うのだが…。

感想(ネタばれあり)
「怖いもの見たさ」に負けてしまう意志の弱さ
誰の心にも「怖いもの見たさ」はある。
それは、昔から童話や昔話でも描かれてきた。
「絶対開けてはいけませんよ」と言われていたのに、「怖いもの見たさ」の好奇心に負けて開けてしまう。
例えば、「鶴の恩返し」がそうだ。
「やってはいけません」と言われるとやりたくなるし、「見てはいけません」と言われると見たくなる。
人間とは、そういう生き物だ。
ダイエットの時だって「食べてはいけない」と言われれば言われる程食べたくなるし、学生時代は試験の時ほど、テレビを観たくなるし、眠たくなってしまう。
そういう「やったらだめ」という制限に負けてしまう意志の弱い人間こそ太っていくし、試験に落ちるように、世の中はできているのだ。
この映画「イット・カムズ・アット・ナイト」は、そういう人間の心の奥底に潜む欲望を恐怖心に結びつけて描いている心理サスペンスだ。
舞台は、原因不明で死に至る疫病が蔓延するディストピアな近未来。
森の中に立つ一軒家で暮らす二つの家族。
その家の森へつながる扉は「夜間は絶対に開けてはいけません」と言われていた。
その扉を通じて「それ」がやってきて感染すると信じられていたからだ。
果たして、彼らはその扉を開けることなく生き延びることができるのか。
それとも、意志の弱さが、その扉を開けてしまうのか…。
そこから生まれる緊迫感が非常に恐ろしくて面白いサスペンス映画だった。

ふたつの家族の立場を決めるのは「水」
登場するのは二つの家族。
ポール、サラ、トラヴィスの一家には「水」があり、ウィル、キム、アンドリューの一家には「食糧」がある。
ウィルの家には水がなく、ポールの家に「水を分けて欲しい」と言って訪ねてきたことをきっかけに共同生活をするようになる。
ついこの間まで、日本では「水道民営化」について議論されていた。
将来的に、世界では水が不足し、人々は水を求めて争い合うことが予想されている。
その水を求める争いは「マッドマックス 怒りのデス・ロード」でも描かれている。
そんな未来を見越し、蛇口をひねれば飲み水が出てくる日本の「水資源」を輸出産業の一つにすることで経済効果を期待しているのも、民営化の理由の一つだと言われている。
遠くもない未来、「水」を持つ者が強い時代は確実にやってくるのだ。
この映画の主人公家族にも、その「水」が重要なキーワードとして登場する。
「水」を持つ家族と、「食糧」を持つ家族。
優位に立つのは「水」を持つ家族であり、「食糧」を持つ家族は「水」を持つ家族の言うことに従わなけれならない。
食糧は作り出すことができるが、「水」はなければ生きていけないからだ。
しかし、共に暮らすうちに、自分たちの貴重な「水」が奪われるのでは…と警戒するようになり、やがて「水」の家族は、「食糧」の家族を疑うようになっていく…。
それほどまでに、「水」の存在が、彼らにとってとても重要なのだ。

ルールが破られた瞬間に噴出する疑いの気持ち
その緊迫感の中で、彼らの均衡を保っていたのは、その家で暮らしていくための「夜間はドアを開いてはいけない」というルールだった。
みんなが、同じルールを守って暮らしているうちは、心の底で何を思おうが平和を維持していくことができる。
しかし、ある時、その均衡は破られる。
何者かが夜中にドアを開けてしまったのだ。
その瞬間をきっかけに、それまでの疑いが堰を切ったように放出し、ポールはウィル一家を追い詰めていく。
本当は、一番最初にドアのことに気付いたのがトラヴィスだったのに、そのトラヴィスが「アンドリューだと思う」と言ってしまったからだ。
そこから一気にポールはアンドリューの感染を疑い、やがてそれは「感染したに違いない」という確信に変わっていく。
その扉こそが、開けた瞬間に全てが終わってしまう「鶴の恩返し」の戸なのだ。
深夜に眠れないことに悩んでいたトラヴィスが、物音に気付き、愛犬が帰ってきたのではと確信。
我慢しきれずに扉を開けてしまったのに、何の罪もないアンドリューのせいにしてしまう。
その結果、トラヴィスは感染してしまうのだ。

疑いの気持ちが暗闇に鬼を生む
これは「疑心暗鬼」についての物語なのだ。
「疑心暗鬼」について、詳しい意味を引用すると
疑いの心があると、なんでもないことでも怖いと思ったり、疑わしく感じることのたとえ。疑いの深さからあらぬ妄想にとらわれるたとえ。疑いの心をもっていると、いもしない暗闇くらやみの亡霊が目に浮かんでくる意から。
「goo辞書」より
人は、疑いの心を持っていると、いもしない暗闇の亡霊が目に浮かんでくる生き物なのだ。
本当は、そこにゾンビがいるわけでも、疫病があるわけでもないのに「夜間に扉をあけてはいけません」というルールを決める。
そして、そのルールが破られた途端、心の均衡が崩壊し、全てのことが疑わしく思えてきてしまうのだ。
ポールは「アンドリューは感染している」と決めつけていたけれど、果たして、誰か血が噴き出るところを見たのか。
アンドリューが泣き叫び、ウィルもキムも、その家から出て行きたいと言っただけなのだ。
恐らく、ポールの疑いの目に耐えられなくなったのではと思う。
本来なら、時々水をもらいに来るぐらいの距離感が良かったのだろう。
しかし、共に暮らし始めたことでウィル一家は「水源を狙っている」という疑いをもたれ、さらに「扉を開けたに違いない」と決めつけられてしまう。
全ては、ポールの心にある「自分以外は誰も信じられない」という疑いの気持ちから生まれた「疑心暗鬼」であり、ウィル一家は、誰も感染していなかったかもしれないのだ。
本当に感染していたのは、トラヴィスだったからだ。
そして、物語のラストは、一つのテーブルに向かい合うポールとサラの姿で終了する。
その時、ポールの疑いの気持ちは、妻であるサラに向けられているのだ。
結局のところ、6人いたのが、最終的には2人になってしまった。
4人亡くなったうち、3人は死ななくてもよかった可能性がある。
なのに亡くなってしまったのは、心の奥底にある「疑心暗鬼」から生まれた鬼の仕業なのだ。
本当に恐ろしいのは、疫病でも、ゾンビでもなく、人間なのだ…。
これは、非常に面白い心理サスペンスだった。
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映画 『イット・カムズ・アット・ナイト』| ★4.0 | https://t.co/Fy1BKZsQ9s |【本当に怖いのは疫病か人間か】面白かったなぁ
極限状態で表れる人間の本質
この世で何が怖いかって、人間が一番怖いんじゃ… https://t.co/D8LOlp5Bvi2018/12/01 17:43:00
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