ポーランド、ブルガリア合作の戦争映画「4デイズ・イン・イラク(「カルバラ ~イラク戦争・奇跡の4日間~」)」をWOWOWで観た。
【満足度 評価】:★★★★☆
今さらながら、「これは誰のための、何のための戦争なのか」について考えさせられる作品だった。
◆ネット配信で観る:「4デイズ・イン・イラク」(字幕版)
◆DVDで観る:「4デイズ・イン・イラク」
2015年製作 ポーランド、ブルガリア合作映画
2003年、アメリカはイラクで開戦した“イラクの自由作戦”で、打倒フセインを掲げ、イラク軍を壊滅状態に追いこむ。
2004年、ポーランドはアメリカ軍の応援のために2500名の兵士を派兵する。
部隊長カリツキが率いる部隊は、イラクの都市カルバラの市庁舎とそこに捕らえられた捕虜たちを守る任務を与えられる。
その部隊で始めての任務についたカミルは任務の途中に隊とはぐれてしまい、民家に潜伏して過ごす羽目になる。
一方で、市庁舎は敵に包囲され、絶体絶命の危機に陥るが、アメリカ軍の助けが来ないという絶望的な状況に置かれてしまう…。

そもそも、アメリカの戦争にポーランドが派兵しているっていうことを、この映画を観て初めて知った。
それも、2500人も。
これまでは、ロシアの友好国である東欧の国というポジションにいたポーランドが、冷戦が終結し、民主主義化が進む中、ポーランドが生き抜くためにすべきことが、この「多国籍軍への加盟」だったのかと、思い知らされる。
それは、ポーランドだけでなく、この映画の中でポーランドと共に戦うことになるブルガリアにも言えること。
これはあくまでもアメリカが始めた戦争で、そこに「友人として」参加したポーランドは、イラクの町が安定することをサポートする立場であり、積極的に戦う予定はなかった。
ところが、カルバラの市庁舎の見張りに従軍すると、イラクの過激派に包囲され、そこから一歩も出られず、一触即発の状態に追いこまれてしまう。

「失うものがない聖戦」を闘っているイラクの過激派たちは、自分たちのアジトの入口に女性と子供たちを並べ、彼女たちの命を楯にして自分たちを守り、少年兵にロケットランチャーを持たせ正面突破させるという、「人の命を何とも思っていない」捨て身の作戦で、市庁舎奪還に向かってくる。
「一般市民を殺したら軍法会議」という国際ルールのために、一切手を出せなくなっているポーランド軍。
そして、バックアップがあるはずのアメリカ軍からは何の支持も、支援も無い。
しかも、彼らはこんなに緊迫した状況下に置かれる予定はなかったために、そんな人質奪還計画の訓練もしていないし、ノウハウもない。
隊長は打つ手がないと考え、白旗をあげることも考えるが、それでは過激派に皆殺しにあってしまうと判断。
共に戦うブルガリア軍の提案で、少数精鋭の部隊で敵陣に突入し、女性と子供を救い、アジトを落とす計画を立てる。
自分たちの国民を捨てるような事をするイラクの過激派と、彼女たちを必死で助けようとする多国籍軍。
結局、彼らの独自の判断が功を奏し、4日後、緊迫した状況を一変させ、市庁舎を守りぬくことができた。
「命の壁」から解放され、彼らに保護され市庁舎の中庭ではしゃぐイラクの子供たち。
大切な命が助かった子供たちの姿にホッとして涙が溢れ、これは戦争というより、問題はイラクの国内にあるのではと考えさせられてしまう。
イラクの地に外国の人たちがいるから、憎しみが生まれ、自分たちの命を振りかざして報復しようと考える。
本来は国内問題なのに、多くの国がそこに介入することで、よりややこしいことになっているような印象を受けた。

結局、このイラク過激派に取り囲まれた4日間、ポーランド軍は一人として死者を出さず、人質となったイラク市民も助けたことになった。
これが、アメリカ軍が行った出来事であれば、「プライベート・ライアン」的な美談として語られ、隊長は勲章をもらって大騒ぎになったに違いない。
しかし、多国籍軍はあくまでも「安全な地域を安定化する」ために派兵された人たちであり、こんな最前線の状況に置かれる予定ではなかった。
また、それが世界に知られたくないと判断したアメリカは、ポーランド軍が、その非常事態を無事に切り抜けたことを讃えた上で、「なかったことにして欲しい」と言いだす。
これは「イラク市民が自分たちで切り抜けた問題」だと。
アメリカのシナリオでは、フセイン政権を倒したことでイラクに平和をもたらしていることにしたかったんだろう。
ところが、イラクは市民が次々と蜂起し、過激派というテロリストに変化し、平和どころか深刻化していた。

もちろん、褒められるために戦地に行っているわけではないし、アメリカに認められたいわけでもないだろう。
しかし、アメリカが起こした戦争のためにイラクに派兵し、多くの命を落としても、「なかったことにしたいから、内密に」と言われたら、彼らは何のために戦場へ行っているのだろうか。
それは、一人一人の命をあまりにも軽く見過ぎているのではないだろうか。
ラストシーン。生活費を稼ぐために軍隊に入った青年が、膝から下を無くしてしまった体でぐったりと肩を落として帰る姿がとても印象的だった。
アメリカの主体の「イラクの自由作戦」とは、市民を独裁政権から解放するという目的だったはず。
しかし、市民はアメリカに感謝するどころか憎み、蜂起し、次から次へとテロリストに変化している。
そんな様子を、こうまざまざと見せられると、軍事的制裁がイラクの市民にとって本当に平和への道なのかと考えてしまう。
もう時間は巻き戻せないけど、違う道を模索する余地はまだあるのではと考える。
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◆ネット配信で観る:「4デイズ・イン・イラク」(字幕版)
◆DVDで観る:「4デイズ・イン・イラク」
劇場未公開の作品をどこよりも早く放送する「WOWOWジャパンプレミア」の作品。
※タイトルが二つあります。
WOWOW放送時タイトル:「カルバラ ~イラク戦争・奇跡の4日間~」
劇場公開時、DVDタイトル:「4デイズ・イン・イラク」
ポーランド軍がアメリカ主導の戦争“イラクの自由作戦”に従軍し、予定にない戦闘に入り、孤立無援の状態から突破した4日間の実話を描く。
【満足度 評価】:★★★★☆
今さらながら、「これは誰のための、何のための戦争なのか」について考えさせられる作品だった。
「4デイズ・イン・イラク(「カルバラ ~イラク戦争・奇跡の4日間~」)」予告編 動画
(原題:Karbala)◆ネット配信で観る:「4デイズ・イン・イラク」(字幕版)
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キャスト&スタッフ
出演者
〇バルトーミェイ・トパ
〇 アントニー・クロリコフスキ
〇フリスト・ショポフ
〇ミハウ・ジュラフスキ
監督・脚本
〇クシシュトフ・ウカシェヴィッチ2015年製作 ポーランド、ブルガリア合作映画
あらすじ
2003年、アメリカはイラクで開戦した“イラクの自由作戦”で、打倒フセインを掲げ、イラク軍を壊滅状態に追いこむ。
2004年、ポーランドはアメリカ軍の応援のために2500名の兵士を派兵する。
部隊長カリツキが率いる部隊は、イラクの都市カルバラの市庁舎とそこに捕らえられた捕虜たちを守る任務を与えられる。
その部隊で始めての任務についたカミルは任務の途中に隊とはぐれてしまい、民家に潜伏して過ごす羽目になる。
一方で、市庁舎は敵に包囲され、絶体絶命の危機に陥るが、アメリカ軍の助けが来ないという絶望的な状況に置かれてしまう…。

感想(ネタバレあり)
昨日の敵は今日の友というポーランドの社会事情
そもそも、アメリカの戦争にポーランドが派兵しているっていうことを、この映画を観て初めて知った。
それも、2500人も。
これまでは、ロシアの友好国である東欧の国というポジションにいたポーランドが、冷戦が終結し、民主主義化が進む中、ポーランドが生き抜くためにすべきことが、この「多国籍軍への加盟」だったのかと、思い知らされる。
それは、ポーランドだけでなく、この映画の中でポーランドと共に戦うことになるブルガリアにも言えること。
これはあくまでもアメリカが始めた戦争で、そこに「友人として」参加したポーランドは、イラクの町が安定することをサポートする立場であり、積極的に戦う予定はなかった。
ところが、カルバラの市庁舎の見張りに従軍すると、イラクの過激派に包囲され、そこから一歩も出られず、一触即発の状態に追いこまれてしまう。

捨て身の市民がテロリストになる時
「失うものがない聖戦」を闘っているイラクの過激派たちは、自分たちのアジトの入口に女性と子供たちを並べ、彼女たちの命を楯にして自分たちを守り、少年兵にロケットランチャーを持たせ正面突破させるという、「人の命を何とも思っていない」捨て身の作戦で、市庁舎奪還に向かってくる。
「一般市民を殺したら軍法会議」という国際ルールのために、一切手を出せなくなっているポーランド軍。
そして、バックアップがあるはずのアメリカ軍からは何の支持も、支援も無い。
しかも、彼らはこんなに緊迫した状況下に置かれる予定はなかったために、そんな人質奪還計画の訓練もしていないし、ノウハウもない。
隊長は打つ手がないと考え、白旗をあげることも考えるが、それでは過激派に皆殺しにあってしまうと判断。
共に戦うブルガリア軍の提案で、少数精鋭の部隊で敵陣に突入し、女性と子供を救い、アジトを落とす計画を立てる。
自分たちの国民を捨てるような事をするイラクの過激派と、彼女たちを必死で助けようとする多国籍軍。
結局、彼らの独自の判断が功を奏し、4日後、緊迫した状況を一変させ、市庁舎を守りぬくことができた。
「命の壁」から解放され、彼らに保護され市庁舎の中庭ではしゃぐイラクの子供たち。
大切な命が助かった子供たちの姿にホッとして涙が溢れ、これは戦争というより、問題はイラクの国内にあるのではと考えさせられてしまう。
イラクの地に外国の人たちがいるから、憎しみが生まれ、自分たちの命を振りかざして報復しようと考える。
本来は国内問題なのに、多くの国がそこに介入することで、よりややこしいことになっているような印象を受けた。

「なかったことにして欲しい」というアメリカの事情
結局、このイラク過激派に取り囲まれた4日間、ポーランド軍は一人として死者を出さず、人質となったイラク市民も助けたことになった。
これが、アメリカ軍が行った出来事であれば、「プライベート・ライアン」的な美談として語られ、隊長は勲章をもらって大騒ぎになったに違いない。
しかし、多国籍軍はあくまでも「安全な地域を安定化する」ために派兵された人たちであり、こんな最前線の状況に置かれる予定ではなかった。
また、それが世界に知られたくないと判断したアメリカは、ポーランド軍が、その非常事態を無事に切り抜けたことを讃えた上で、「なかったことにして欲しい」と言いだす。
これは「イラク市民が自分たちで切り抜けた問題」だと。
アメリカのシナリオでは、フセイン政権を倒したことでイラクに平和をもたらしていることにしたかったんだろう。
ところが、イラクは市民が次々と蜂起し、過激派というテロリストに変化し、平和どころか深刻化していた。

本当に必要な軍事介入なのか
もちろん、褒められるために戦地に行っているわけではないし、アメリカに認められたいわけでもないだろう。
しかし、アメリカが起こした戦争のためにイラクに派兵し、多くの命を落としても、「なかったことにしたいから、内密に」と言われたら、彼らは何のために戦場へ行っているのだろうか。
それは、一人一人の命をあまりにも軽く見過ぎているのではないだろうか。
ラストシーン。生活費を稼ぐために軍隊に入った青年が、膝から下を無くしてしまった体でぐったりと肩を落として帰る姿がとても印象的だった。
アメリカの主体の「イラクの自由作戦」とは、市民を独裁政権から解放するという目的だったはず。
しかし、市民はアメリカに感謝するどころか憎み、蜂起し、次から次へとテロリストに変化している。
そんな様子を、こうまざまざと見せられると、軍事的制裁がイラクの市民にとって本当に平和への道なのかと考えてしまう。
もう時間は巻き戻せないけど、違う道を模索する余地はまだあるのではと考える。
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