木村拓哉、二宮和也主演の映画「検察側の罪人」を試写会でで観た。

ある殺人事件をめぐる二人の検察官の対立を描く。


満足度 評価】:★★★★★

見応えありの傑作!

「上司が絶対」とか「忖度」という悪しき慣習が、殺人事件を捜査する検察の現場に持ち込まれたら。

ベテランと若手、2人の検事の心理的駆け引きに緊迫感があって目が離せない。

サスペンスや法廷モノ好きな人におススメ。



「検察側の罪人」予告編 動画


 


更新履歴・公開情報


・2018年7月30日 試写会にて鑑賞

・2018年8月10日 感想を掲載

・2018年8月24日 全国ロードショー


劇場情報につきましては、下記公式サイトをご参照ください。
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キャスト&スタッフ


出演者

〇木村拓哉

…(「硫黄島からの手紙」など)

〇吉高由里子

…(「アウトレイジ 最終章」など)

〇平岳大

〇大倉孝二

〇八嶋智人

…(「モリのいる場所」など)

〇酒匂芳



監督



2018年製作 日本映画



検察側の罪人




あらすじ



都内で起きた殺人事件の担当になったベテラン検事の最上(木村拓哉)は、補佐役として若手検事の沖野(二宮和也)を指名し、橘(吉高由里子)が沖野付きの事務官となって、容疑者の聴取を始める。

すると、その容疑者の中にかつて時効が成立した殺人事件の容疑者だった松倉(酒匂芳)が浮上し、最上は松倉の聴取を執拗に行う。

明らかに「クロである」という雰囲気を漂わせた松倉に対し、沖野も証拠となる証言を引き出そうとするが、最上の捜査方法に疑問を抱き始め…。



検察側の罪人2




感想(ネタバレあり)


カリスマ的ベテラン検事と将来を期待される若手検事



「地検」とか、「検察」と言われると、ちょっと敷居が高い気がしてしまう。

なにせ、彼らはいつも世の中で起きているできごとと法律を照らし合わせ、世にはびこる悪を裁くために働いているような人たちだ。

きっと、私のような凡人とは頭の出来が違うんだろうなと思ってしまう。



この映画は、私たちが目にすることのない、そんな「地検の裏側」を描いている。

当たり前だけど、検事も普通の人たちで、部署の中には一般の会社と同じように上司と部下の上下関係があるし、社内恋愛だってある

むしろ、そうやって、彼らの日常を一般人の日常に近づけることで、地検の中で起きている問題を身近な問題にし、観客に向かって「あなたならどうするのか」と考えさせる

そこに、この映画の面白さがあるのだ。



主人公は、2人の検事。

1人はカリスマ的ベテラン検事の最上(木村拓哉)。

そして、もう一人は将来が期待される若手検事の沖野(二宮和也)。

沖野にとって最上は「あこがれの先輩」であり、「神的な存在」である



沖野は、一見、やる気がなさそうで、果たして検事としての仕事ぶりはどうなのかと疑問視されるタイプなのだが、最上は周りの反対を押し切って「きっと成果を出すに違いない」と沖野を難しい事件の担当に指名する。

実際、沖野は見た目以上に仕事ができるタイプの人間なのだ。

最上は、そんな沖野の良さを誰よりも見抜いていた。



しかし、果たしてその判断が最上にとって良かったのか、悪かったのか。

沖野を引き抜いたことで、最上は最後の最後まで頭を悩まされることになる。



検察側の罪人3



ベテランと若手の間を引き裂くのは「法律」と「忖度」



この映画に緊迫感を与え、とても面白いサスペンスにしているのは、その2人の検事の心理的駆け引きである。



地検にとって、何よりも重要なことは「法律にのっとった正義」である。

しかし、困ったことに、この世には「法律で裁けない悪」というものが存在する。

最上と沖野はその「法律で裁けない悪」に直面してしまい、葛藤するのだ。



そのじりじりとしたジレンマが、観ているこちらもなんとも悩ましく、私だったどうするだろうか…と考えながら先に進んでいく。



その中で、最上も沖野も「それぞれの思う正解」を導き出すのだが、それが互いに真逆の方向を向いていた。

そこで2人を分けたのは「法律」だ。

法律がどうあろうと、容疑者の松倉を「クロ」にしたい最上と、法律を守って正しく裁きたい沖野



これまでカリスマ的手腕で悪を裁いてきた最上が、「法律がどうあろうと」松倉をクロにしたいと思い、そんな最上には、「どうしても譲れない理由」があったのだ。

しかし、若手のホープである沖野は、そんな「最上の理由」を理解したうえで、それでも最上のやり方が間違っていると思い、最上と対立する立場に身を置くことになる。



ところが、沖野は憧れの先輩である最上を前にすると、意見を主張することができず、最上の暴走を止めることができない

沖野の前に、日本に古くからある「上司の意見は絶対」とか「忖度」という悪しき慣習が立ちふさがり、上に意見を通すことができないのだ。



検察側の罪人4



第二次世界大戦の「インパール作戦」の血が、ここによみがえる



それは、きっと社会人なら誰でも身に覚えがあることだろうと思う。



例えば、日頃から目をかけてもらい、かわいがってくれ、その人本人の人柄もとても尊敬できるカリスマ的な憧れの先輩がいるとする。

ある日、その人がいきなり理不尽なことを言い出したら、どうするだろうか。

今まで、そんなことはなかったのに…。



そしたら、「それは間違っているなぁ」と思いつつも、「なんか辛いことでもあったかな」と自分を納得させつつ、面倒になることを避けるために「見て見ぬふり」をしながら、スルーしてしまう。

きっと、多くの人にそんな経験があるはずだ。



しかし、ここは地方検察庁であり、「法を守らなければならない場所」なのだ。

相手のことを「忖度」していたら、裁かれるべき人間が野放しになってしまう。



その日本人の「上司を敬う」気持ちが、物事を悪い方向へ導く事例として登場するのが、「インパール作戦」である

インパール作戦とは、1944年の第二次世界大戦でインド北東部の都市インパール攻略を目指した日本軍の作戦だ。

軍内部で反対的な意見があったものの、その時の中将の強硬な主張によって実施され多くの被害者を出したとされる。

それ以来、「インパール作戦」とは「無謀な作戦の代名詞」として引用されているのだ。

(詳しい内容は、Wikipedia「インパール作戦」へ)



最上の祖父は、そのインパール作戦の数少ない生き残りであり、松重豊演じる武器商人の祖父は、そのインパール作戦の犠牲者である。

無謀な作戦の生還者は、孫の代になっても無謀な作戦を強行させようとし、犠牲者の孫は「喜んであなたの犬になります」と言って、その作戦を強行突破する

こういうのを血は争えないというのだろうか



日本の社会の体質というのは「第二次世界大戦」の頃からちっとも変っていないのだ。

「忖度」や「上司の命令が絶対」という体質は、部下を間違った方向に誘導し、死ななくていい人間を殺してしまう



検察側の罪人5



希望を探してみるけれど…



さらに問題なのは、最上の心情が理解できるところだ。

そもそも「日本に時効がなければ…」と思ったら、やるせない気持ちになってしまう。

そこでも、なかなか法律が変わらないという日本の現状が裏目に出ている。



だがそれでも、検事という仕事は「心情」ではなく、「法律」で善悪を決める人々なのだ。

検事が法律を守らなければ、日本は無法地帯になってしまう

この「忖度」は、一般の会社で起きていることなら人の命が関わるようなことはないだろうが、それが「地検」で起きると、「法律で裁くべき善と悪」が揺らいでいくのだ。



もしも、そこで沖野のような若手の意見が通り、「日本も変わりつつある」と思えれば希望ある。

しかし、沖野が外に出てしまったことで、ますます地検の内部は不透明になり、その背景では政治家と大企業の癒着や、右傾化する社会を描き、ますます「上に意見を言いにくい社会」になっていることを描いている。

最上の友人で政治家の秘書官をしている丹野(平岳大)がその日本の背景で起きていることを象徴している。



そこで、「果たして、この世に『ものが言える社会』はやってくるのか」と考えてしまう

そう思うと、暗澹たる気持ちになってしまう

私も、ニノと一緒に雄叫びを上げたい気分になった…




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