ジョエル・エドガートン主演の映画「ラビング 愛という名前のふたり」を試写会で観た。
アメリカで異人種間の結婚が許されなかった時代に、愛し合って結婚した白人男性と黒人女性の夫婦の姿を描く。
【満足度 評価】:★★★★☆
多くを語らない夫婦の静けさの中にある愛が心に沁みる映画だった。
◆ネット配信で観る:「ラビング 愛という名前のふたり」(字幕版)
◆DVDで観る:「ラビング 愛という名前のふたり」
…(「イット・カムズ・アット・ナイト」、「レッド・スパロー」、「ブラック・スキャンダル」、「ディーン、君がいた瞬間」、「ウォーリアー」<兼 監督作>「ある少年の告白」、「ザ・ギフト」など)
〇ルース・ネッガ
〇マイケル・シャノン
…(「ホース・ソルジャー」、「シェイプ・オブ・ウォーター」、「ドリームホーム 99%を操る男たち」、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、「マン・オブ・スティール」、「マッド・マザー 生贄の少年」など)
2016年製作 アメリカ映画

白人男性のリチャード(ジョエル・エドガートン)と黒人女性のミルドレッド(ルース・ネッガ)はそれまで同棲していたが、ミルドレッドの妊娠を機に結婚を決意する。
しかし、彼らが住んでいるバージニア州では異人種間の結婚が認められていないため、特別に許されているワシントンDCで結婚届を提出する。
そして、そこから2人の結婚生活がスタートするのだが、結婚して間もなく「一緒に生活している」という理由でリチャードとミルドレッドは警察に逮捕されてしまう…。

昔は、「愛してるよーーー!!」と世界の中心で愛を叫ぶような恋愛に憧れた。
それも、ちょっとやそっとの叫び方でなく、愛に溺れちゃうような、かなりしつこいぐらいの激し目のものが好みだった。
それが最近は、「見つめ合えば分かり合える愛」がとても心に沁みるようになった。
歳をとったってことなのかな(笑)
一緒にいて居心地がよくて、話をしていて楽しくて、目を見れば言葉を口にしなくてもお互いの気持ちが分かる。
そんな長年付き合った落ち着いたカップルのような落ち着いた愛が良い。
この映画の主人公であるリチャードとミルドレッドは、まさにそんな落ち着いたカップルだった。
若い頃からずっと一緒にいて、多くを語らなくてもお互いのことは分かり過ぎる程に分かり合っている。
そんな二人の静かな愛の姿がとても心に沁みた。
たとえ法律であっても、強く結ばれた彼らの絆を引き裂くことはできない。
これは、彼らの裁判がきっかけで、異人種間の結婚について法整備化されたという実話に基づいて映画化されたものだ。
しかし、この映画にとって、その裁判の話はただのサイドストーリーにしか過ぎない。
メインで描かれるのは、あくまでも「彼らが愛し合った記録」だ。
一組の男女が出会い、愛し合い、妊娠が発覚して結婚。
彼らの願いは「互いの家族や友人たちが多く住む故郷で一緒に暮らしたい」という思いだけ。
そんな日常生活にフォーカスを当てている。
彼らは何も悪いことはしていない。
普通の人たちが思うように、家族や友人たちと毎日楽しく過ごす生活が欲しいだけだった。
そんな彼らの姿を見て、私たちは「なんで、彼らは逮捕されなければいけないのか」と考えさせられる。

今でこそ、白人と黒人のカップルは「特別なこと」ではない。
日本でも、異人種間の国際結婚はそんなに珍しいことでもなくなった。
しかし当時は、彼らが一緒にいるだけで「普通ではない異質な人たち」だった。
彼らが「逮捕されなければならない理由」として、バージニア州判事の言い訳がひどかった。
「神は私たちをお作りになった時、白人、黒人、黄色人種など、それぞれの人種が混じらないよう、それぞれに大陸を分け与えた。
だから、異人種間が交わるなんてことは神がお許しにならない」
といった感じの判決理由だった。
その時に、「えーーだったら、アメリカ大陸はネイティブ・アメリカンのものだから、白人はアメリカから出て行きなよ」と思ったし、「アフリカからアメリカ大陸へ勝手に黒人を連れてきたのは白人でしょ」と思った。
その白人優位主義的な判決内容に思わずのけ反ってしまった。
しかし、それが何年も昔の話だと笑ってもいられない。
未だに世界では同姓婚が認められない地域が多く、移民などのマイノリティを追い出そうという動きも起きている。
そんな現代だからこそ、彼らの純粋で美しい愛を観て、それぞれが何かを感じ取ることが必要なのだ。
そして、私がこの映画の中で一番泣いてしまったのは、ラストに出てくる妻ミルドレッドが2008年に語ったという言葉だった。
「私はリチャードのことがとても恋しいです。彼はいつも私のことを守ってくれました」
この一言に号泣だった。
リチャードは、いつも寡黙で無骨で多くを語らない。
わりと九州男児のような男らしいタイプの男性。
そんな不愛想な彼だけど、いつもミルドレッドと家族のことを第一に考えていた。
彼女ために土地を買い、家族のために家を建てる。
いつも厳しいのかと思いきや、テレビを観ている時は彼女に甘える姿を見せる。
(この時のLIFE誌の写真が最高だった)
そんな寡黙なリチャードを演じているジョエル・エドガートンも本当に素晴らしかった。
彼は、映画に出るたびに表情からガラリと変えてくるけど、今回もこれまでの彼とは別人かと思うぐらい今までとは違う人で登場したことに驚かされてしまった。
ミルドレッドはそんなリチャードが家庭を守っていてくれたからこそ、安心して生活することができた。
そんな二人の「言葉にしない愛情」が、この映画の全てに染み渡る作品だった。
この当時は異人種間の結婚だったけれども、現在ではそれが同姓間の結婚へとシフトチェンジしている。
それが異人種だろうと同姓間だろうと一緒。
心の奥底で愛し合っている二人は、法律で引き裂こうとしても引き裂くことはできない。
それがたとえ神様であっても。
本当に素敵な映画だった。
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◆DVDで観る:「ラビング 愛という名前のふたり」
アメリカで異人種間の結婚が許されなかった時代に、愛し合って結婚した白人男性と黒人女性の夫婦の姿を描く。
【満足度 評価】:★★★★☆
多くを語らない夫婦の静けさの中にある愛が心に沁みる映画だった。
「ラビング 愛という名前のふたり」予告編 動画
(原題:LOVING)【掲載履歴・DVD販売情報】
この感想は、試写会で鑑賞後、2017年2月23日に掲載したものです。
2018年5月25日 WOWOWでの放送(21時より)に合わせて加筆・修正いたしました。
DVD・ネット配信共に販売中です。
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キャスト&スタッフ
出演者
〇ジョエル・エドガートン…(「イット・カムズ・アット・ナイト」、「レッド・スパロー」、「ブラック・スキャンダル」、「ディーン、君がいた瞬間」、「ウォーリアー」<兼 監督作>「ある少年の告白」、「ザ・ギフト」など)
〇ルース・ネッガ
〇マイケル・シャノン
…(「ホース・ソルジャー」、「シェイプ・オブ・ウォーター」、「ドリームホーム 99%を操る男たち」、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、「マン・オブ・スティール」、「マッド・マザー 生贄の少年」など)
監督・脚本
〇ジェフ・ニコルズ2016年製作 アメリカ映画

あらすじ
白人男性のリチャード(ジョエル・エドガートン)と黒人女性のミルドレッド(ルース・ネッガ)はそれまで同棲していたが、ミルドレッドの妊娠を機に結婚を決意する。
しかし、彼らが住んでいるバージニア州では異人種間の結婚が認められていないため、特別に許されているワシントンDCで結婚届を提出する。
そして、そこから2人の結婚生活がスタートするのだが、結婚して間もなく「一緒に生活している」という理由でリチャードとミルドレッドは警察に逮捕されてしまう…。

感想(ネタバレあり)
「見つめ合えば分かり合える愛」が心に沁みる
昔は、「愛してるよーーー!!」と世界の中心で愛を叫ぶような恋愛に憧れた。
それも、ちょっとやそっとの叫び方でなく、愛に溺れちゃうような、かなりしつこいぐらいの激し目のものが好みだった。
それが最近は、「見つめ合えば分かり合える愛」がとても心に沁みるようになった。
歳をとったってことなのかな(笑)
一緒にいて居心地がよくて、話をしていて楽しくて、目を見れば言葉を口にしなくてもお互いの気持ちが分かる。
そんな長年付き合った落ち着いたカップルのような落ち着いた愛が良い。
この映画の主人公であるリチャードとミルドレッドは、まさにそんな落ち着いたカップルだった。
若い頃からずっと一緒にいて、多くを語らなくてもお互いのことは分かり過ぎる程に分かり合っている。
そんな二人の静かな愛の姿がとても心に沁みた。
たとえ法律であっても、強く結ばれた彼らの絆を引き裂くことはできない。
何も悪いことをしていないのに、なぜ逮捕されるのか
これは、彼らの裁判がきっかけで、異人種間の結婚について法整備化されたという実話に基づいて映画化されたものだ。
と言われると、「どんな風に裁判で戦ったのか」とか、「どれ程酷い差別を受けたんだろうか」など、社会派的な側面が描かれるんだろうと思ってしまう。
実際、私もこの映画を観るまでは、そういう映画なんだと思っていた。
実際、私もこの映画を観るまでは、そういう映画なんだと思っていた。
しかし、この映画にとって、その裁判の話はただのサイドストーリーにしか過ぎない。
メインで描かれるのは、あくまでも「彼らが愛し合った記録」だ。
一組の男女が出会い、愛し合い、妊娠が発覚して結婚。
彼らの願いは「互いの家族や友人たちが多く住む故郷で一緒に暮らしたい」という思いだけ。
そんな日常生活にフォーカスを当てている。
彼らは何も悪いことはしていない。
普通の人たちが思うように、家族や友人たちと毎日楽しく過ごす生活が欲しいだけだった。
そんな彼らの姿を見て、私たちは「なんで、彼らは逮捕されなければいけないのか」と考えさせられる。

「異質なもの」は排除しようとする人々
今でこそ、白人と黒人のカップルは「特別なこと」ではない。
日本でも、異人種間の国際結婚はそんなに珍しいことでもなくなった。
しかし当時は、彼らが一緒にいるだけで「普通ではない異質な人たち」だった。
彼らが「逮捕されなければならない理由」として、バージニア州判事の言い訳がひどかった。
「神は私たちをお作りになった時、白人、黒人、黄色人種など、それぞれの人種が混じらないよう、それぞれに大陸を分け与えた。
だから、異人種間が交わるなんてことは神がお許しにならない」
といった感じの判決理由だった。
その時に、「えーーだったら、アメリカ大陸はネイティブ・アメリカンのものだから、白人はアメリカから出て行きなよ」と思ったし、「アフリカからアメリカ大陸へ勝手に黒人を連れてきたのは白人でしょ」と思った。
その白人優位主義的な判決内容に思わずのけ反ってしまった。
しかし、それが何年も昔の話だと笑ってもいられない。
未だに世界では同姓婚が認められない地域が多く、移民などのマイノリティを追い出そうという動きも起きている。
そんな現代だからこそ、彼らの純粋で美しい愛を観て、それぞれが何かを感じ取ることが必要なのだ。
法律では愛し合う2人を引き裂くことはできない
そして、私がこの映画の中で一番泣いてしまったのは、ラストに出てくる妻ミルドレッドが2008年に語ったという言葉だった。
「私はリチャードのことがとても恋しいです。彼はいつも私のことを守ってくれました」
この一言に号泣だった。
リチャードは、いつも寡黙で無骨で多くを語らない。
わりと九州男児のような男らしいタイプの男性。
そんな不愛想な彼だけど、いつもミルドレッドと家族のことを第一に考えていた。
彼女ために土地を買い、家族のために家を建てる。
いつも厳しいのかと思いきや、テレビを観ている時は彼女に甘える姿を見せる。
(この時のLIFE誌の写真が最高だった)
そんな寡黙なリチャードを演じているジョエル・エドガートンも本当に素晴らしかった。
彼は、映画に出るたびに表情からガラリと変えてくるけど、今回もこれまでの彼とは別人かと思うぐらい今までとは違う人で登場したことに驚かされてしまった。
ミルドレッドはそんなリチャードが家庭を守っていてくれたからこそ、安心して生活することができた。
そんな二人の「言葉にしない愛情」が、この映画の全てに染み渡る作品だった。
この当時は異人種間の結婚だったけれども、現在ではそれが同姓間の結婚へとシフトチェンジしている。
それが異人種だろうと同姓間だろうと一緒。
心の奥底で愛し合っている二人は、法律で引き裂こうとしても引き裂くことはできない。
それがたとえ神様であっても。
本当に素敵な映画だった。
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