是枝裕和監督の映画「万引き家族」を試写会で観た。

一見、どこにでもいる家族だったが、彼らは寄せ集めの家族だった…。

家族のあり方について考える作品。



満足度 評価】:★★★★☆

彼らは寄せ集めの家族。

法律的には間違っていても助け合いながら幸せな日々を過ごしていた。

そんな彼らの愛情を法律で引き裂くことが正しいことなのか。

家族とは何でつながっているのか。そのあり方を問いかける作品だった。



目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「万引き家族」予告編 動画




更新履歴・公開情報


・2018年5月29日 「万引き家族」試写会で鑑賞。

・2018年6月26日 感想を掲載。

・2019年5月6日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

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キャスト&スタッフ


出演者

…(「SUNNY 強い気持ち・強い愛」、「凶悪」、「バクマン。」など)

〇安藤サクラ

…(「勝手にふるえてろ」など)

〇城桧吏

〇佐々木みゆ





監督



2018年製作 日本映画




受賞歴


・第71回 カンヌ国際映画祭(2018年)最高賞 パルムドール受賞 



映画「万引き家族」



あらすじ


古くて小さい平屋で暮らす一つの家族。

治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)の夫婦、その息子 祥太(城桧吏)、信代の妹の亜紀(松岡茉優)が、おばあちゃん(樹木希林)の年金を当てにしつつ、貧しいながらも笑いの絶えない家庭を築いていた。

そこへ、夜中に一人で外で遊んでいた女の子 ゆりを治が連れて帰ってくる。

そして、ゆりの身体には虐待されたと思われる痕があり…。



映画「万引き家族」安藤サクラ



感想(ネタバレあり)


寄せ集めの「万引き家族」


スーパーへ買い物に行ったときに、お母さんと息子が楽しそうに話をしていたり、衣類コーナーでお母さんと娘が嬉しそうに水着を選んでいる姿を見たら、間違いなくそれは親子であり、仲が良さそうな家族だと思うだろう。

笑いあったり、ふざけ合ったりする姿は微笑ましいとさえ感じる。



逆に、町中で親から子供が怒鳴られていたり、険悪な雰囲気だったりする親子を見ると、彼らは本当に親子なのかと思ってしまうこともある



この映画では、「血はつながっていないけれど幸せな家族」と、「血はつながっているけど不幸な家族」の姿を描き、家族のあり方について問いかける。

是枝裕和監督は、以前、「誰も知らない」で育児放棄され家に置き去りにされた子供たちを描いた。

そして、この「万引き家族」では、治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)が、そんな育児放棄された子供たちを家に連れてきてしまう



祥太は、パチンコ屋の駐車場に止められていた車の中に放置されていた赤ん坊だった。

もしも、治がその時、祥太を見つけなければ、祥太は死んでいたかもしれない。



そして、夜中に一人で外で遊んでいるゆりを連れてきてしまう。

ゆりの家からは、両親の罵り合う怒鳴り声が聞こえてくる。

お腹を空かせてそうなゆりを見た治は、何か食べさせてあげようと家に連れてきたのだ。



祥太もゆりも治に家に連れてこられ、拒絶反応を示すどころか、本当の家族のように幸せな毎日を過ごすようになる。

治と信代にとって彼らは、育児放棄した家庭から万引きしてきた「万引き家族」なのだ。

そんな彼らの姿を見ていると、祥太もゆりも、本当の家族と一緒にいるよりも、この「万引き家族」と一緒にいる方が幸せだろうなと思うようになる。



たとえ、法律的に間違っていても、おばあちゃんの年金が目当てで貧しい暮らしであっても、子供たちにとっては、「誰と一緒にいるのが幸せなのか」が大事なことなのだと感じた。



映画「万引き家族」リリー・フランキー



みんなが寄り添いあえば、本物の家族のように見える


そんな彼ら寄せ集めの家族を表現しているのが「スイミー」だ。

Wikipediaによると、童話「スイミーは」1977年から小学校2年生の国語の教科書に掲載されているので、日本で最も知られている童話の一つだ。

(参考:Wikipeida スイミー



その「スイミー」について、祥太が治に説明する場面がある。

赤い魚のスイミーは、一匹一匹はすごく小さい魚だけれど、みんなが集まって泳ぐと大きな魚のように見える。

その中には、一匹だけ黒いスイミーが混ざっていて、その黒いスイミーを目にすれば、ますます本物の魚のように見える。



一匹だけだと弱い魚も、見た目が他とは違う魚も、仲間はずれにすることなく、みんなで力を合わせれば、自分よりもずっと身体の大きな魚に勝つこともできると、子供たちに教える童話である。

祥太は、その「みんなで力を合わせれば自分よりも強い相手に勝てる」ことに感動して、治に熱心に語るのだ。

そんな祥太の賢さに関心しながら、治は話を聞いている。

そんな場面だった。



ゆりも祥太も彼らの本当の子供ではないけれど、いつも一緒にいれば、治や信代に寄り添っていれば、本物の家族に見えるよね、いつも一緒にいられるよねと、子供ながらに考えたのだろうと思った。

祥太は、祥太なりに楽しい毎日だったけれど、それなりに不安も感じていたんだろうと思う。



それでは、彼ら寄せ集めの「万引き家族」が、力を合わせて戦う「自分たちよりも強い者」とは、一体誰のことなのか。

それは、彼らを散り散りに引き離そうとする法律ではないかと思った。



映画「万引き家族」



法律的に正しくても不幸な家族と、法律的に間違っていて幸せな家族


この映画の中で最も印象的だったのは、安藤サクラ演じる信代の「母親の愛情」だ。

自分と同じ「虐待された痕」が身体にあるゆりに対して、まるで本当の子供のように愛情を注ぐ信代。

「本当の家族はねぇ、子供のことを殴ったりしないんだよ」と言って、そのゆりをギュッと抱きしめるシーンは、とても心に残っている



彼女自身はクリーニング工場で働いているが、リストラされてしまう。

その時、タイミング悪くおばあちゃんが亡くなってしまう。

そこで、おばあちゃんの死亡を届けずに年金を不正受給してしまうことで、彼女は法律で罰せられてしまう。



その後、留置場で児童相談所の職員からゆりが本当の家族に戻されたことを知らされるのだが、この時に彼女が泣く姿には、胸を締め付けられる

ゆりが、本当の家族の元に帰って幸せになれるはずがないことや、その後どんな目に遭わされるのかを一番よく知っているのは信代だからだ。



治も信代も、自分たちの子供が欲しくてもできずにいて、それなのに、駐車場に置き去りにされていたり、夜中に放置されている子供たちがいるのを見て、放っておくことができなかったのだ。

本当の家族の元に帰そうと思えば、帰らせることもできた。

しかし、子供たちが貧しいながらも、幸せそうに、そして楽しそうにしているから、そのまま一緒に暮らそうと思ったのだ。



そんな彼らの優しさについて、職員たちは何の事情も聴かず、「法律的に白か黒か」で線引きしようとしているのだ。

もちろん、法律を守ることは大切だけれど、ゆりの家族が「どれだけDVをしてきたのか。これまでゆりがどんなに酷い目に遭わされてきたのか」の調査ぐらいしてくれてもいいんじゃないかと思った。

人間の感情とは、コンピューターと違ってYesかNoかで区切れるものではなく、「間違ってはいるけれど同情できる」感情もあり、そのために「情状酌量する」という言葉もある

四角四面に仕切ることが、平和的な解決になるとは思えないこともあるのだ。



映画「万引き家族」安藤サクラ



子供たちの希望の受け皿となるのが「本当の家族」


そして考える「家族とは一体何のためにあるのか



意外かもしれないが、同じテーマを描いている作品に「デッドプール2」がある。

最愛の妻を殺され、自暴自棄になってしまったヒーローのデッドプールが、養護施設で虐待されて育った少年 ラッセルと知り合う。

その後、ラッセルが怒りのパワーを増殖させ殺人鬼になると知り、デッドプールがラッセルの心をケアし、一人ぼっちのヒーローたちを集めて家族を作ろうとする物語である。



ラッセルは、虐待されていた怒りを誰にも理解してもらえず、世界の全てが敵に見えてしまう。

しかし、デッドプールはラッセルに優しさがあることを知っていた。

そこで、デッドプールがラッセルの怒りの受け皿になることで、家族になろうとしたのだ。



この二つの映画を通して、子供たちが必要としている家族とは、そういう居場所のことだと思った。

つまり、話をしたい時に話を聞いてくれたり、一緒に花火を見たり、海に遊びに行ったり

そういう当たり前のことを、当たり前のようにしてくれるのが家族であって、イライラしながら殴ったり、パチンコしている間に駐車場に放置したりするのは、家族の姿ではないのではないか。



児童相談所の職員も法律を遵守しなければいけない立場なのは、よくわかる。

しかし、この映画で描かれた彼らの対応に納得がいかないのは、「子供たちが何を望んでいるのか」を一切聞こうとしないところだった。

子供たちは誰と一緒にいたくて、何をしている時に幸せを感じているのか



実際に治や信代と一緒に暮らすことはできなくても、せめて「これから先どうしたいのか」を話を聞くだけでも聞いてあげて欲しいと思った。

そうでなかったら、法律とは、一体、誰にためにあるのか

国を潤滑に運営するお役所のためにあるのであって、国民のためにあるのではないのか。

本来なら、国民を救うためにあるのが法律なのではないのか。



最後に外をぼんやりと眺めるゆりの姿が心に残る

祥太が治と再会したように、ゆりも外にいれば、また治が迎えに来てくれるのではないかと思っているのではないか。

本当に、そんな時がくればいいけれど…。

それはそれで、何とも言えない切なくなる結末だった。


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