レニー・ゼルウィガー主演、メリル・ストリープ共演の映画「母の眠り」を観た。
新聞社に勤務する20代女性が、母の病気をきっかけに実家に帰り、両親と共に暮らしながら家族について見つめ直す物語。
【満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)
いつか自分にもこんな時がくるのかも…と思いながら観た作品。
家族だから腹が立つこと、家族だから言えないこと。
「家族」それぞれへの想いについて考えさせられる作品だった。
◆「母の眠り」DVD
◆原作本「母の眠り」
…(「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」、「砂上の法廷」、「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月」、「ブリジット・ジョーンズの日記」、「ふたりの男とひとりの女」など)
〇メリル・ストリープ
…(「メリー・ポピンズ リターンズ」、「マンマ・ミーア!ヒア・ウィーゴー」、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」、「未来を花束にして」、「マダム・フローレンス!夢見るふたり」「幸せをつかむ歌」、「イントゥ・ザ・ウッズ」、「8月の家族たち」、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」、「ジュリー&ジュリア」、「大いなる陰謀」など)
〇ウィリアム・ハート
…(「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」、「ニューヨーク 冬物語」など)
〇トム・エヴェレット・スコット
…(「すべてをあなたに」、「マネー・ゲーム」など)
…(「タイム・リミット」、「ハイ・クライムズ」、「青いドレスの女」など)

NYで働くジャーナリストのエレン(レニー・ゼルウィガー)は、実家から連絡を受け、母のケイト(メリル・ストリープ)が末期癌であることを知らされる。
父ジョージ(ウィリアム・ハート)から実家に帰ってきて介護と手伝いをするよう頼まれたエレンは、仕事を抱えたまま実家へ帰省する。
仕事を持ち帰ったエレンだったが、思うようにはかどらず、そのことに焦りを感じる日々だったが、母の病状は少しずつ悪化していった。
さらに、そんな状況で父が家族には言えない秘密を抱えていることを知ってしまい…。

男女平等の時代だと言われているが、家族が病気になったり、介護が必要になった時、家事を切り盛りしたり、病人の介護をしたりするのは、今でも女性の役目になる場合が多い。
20代後半から30代にかけて独身女性がキャリアアップを目指そうとした時、キャリアよりも家族の世話を選んだことで、昇進を断念してしまう女性たちを良く見る。
この映画の主人公エレンも、そのタイプの女性の1人だ。
野心溢れるジャーナリストの彼女は、もう少しで大物政治家のスキャンダルを暴露できると思った頃、母の病気が発覚し、実家へ帰らざるをえない状況になってしまう。
そして、その結果、夢に見てきた「NYの花形ジャーナリスト」の地位を見送ることになってしまう。
しかし、果たしてそれが本当に彼女にとってマイナスのことだったのか。
田舎に帰り、家族の世話をすることがキャリアを失うことであり、その人の人生にとってマイナスのことだったのか。
私もどちらかと言えば、家庭よりもキャリアを優先したいタイプの人間だったのだが、この映画を観ることで、それが全てではないし、家族と向き合うことで見えることもあるなと考えるようになった。

野心家にとって「田舎で過ごす時間」というのは、不安でしかない。
特に、この映画が作られた時代は今と全く状況が違っていた。
携帯電話を持っているのは、一部の特権階級の人間であり、パソコンもなければ、もちろんインターネットもない。
そんな状況でジャーナリストが原稿を抱えて実家に帰ったところで、流れている時間が違い過ぎる。
ライバルたちが足を使って積極的に取材を進めている時、自分はやったこともないケーキ作りをしたり、トイレ掃除をする毎日。
「このままでは自分は忘れ去れた存在になってしまう」と焦り始め、NYへ戻って取材をしても、NYにいた頃の自分と、田舎へ帰った自分では、全く考え方が違っていた。
そうなってようやく、エレンは「今の自分」を徐々に受け入れるようになる。
今、自分にとって目の前にある危機は「大物政治家のスキャンダル」ではなく、「病気の母の衰弱」であり「父の不倫」であり、家庭の不和だった。
その自分の置かれた状況を少しずつ受け入れていくことで、エレンも少しずつ人間として成長していく。

そのエレンが成長していくきっかけとなったのは、自分の人生を家族のために犠牲にすることを何年も前に受け入れた上で生きてきた「母」の偉大さだった。
私がこの映画の中で、とても印象に残る母のセリフがある。
それは、母の癌の症状が進んでいく中、自分のキャリアアップが思うようにいかず、田舎にいる自分とのジレンマや、父の浮気に気付いてイライラしているエレンに対して母が言った言葉だった。
「あなたが幸せになると分かっていたら、今すぐにでも死ねるのに。
私は、あなたの結婚式の手伝いをしてあげることもできない。
幸せになることはすごく簡単なことなのよ。
今、目の前にあるものを全て愛すればいいの。
過ぎ去ったものにしがみついても空しいだけ」
母は自分の病気と闘いながらも、父の不倫も、エレンのキャリアアップへの焦りも全て気付いて受け入れていた。
その上で、エレンに「自分の人生を愛しなさい」と語りかけていた。
「自分の人生を犠牲にすることで、家族が幸せになるのなら、喜んで自分の人生を受け入れる」と母は言いたかったんだろうと思う。
だからエレンにも、「自分の人生を受け入れて、家族の幸せを考えた時、きっと幸せが訪れる」と言いたかったんだろうと思った。

もちろん、それは「夫の不倫を受け入れることが素晴らしいこと」だと言っているワケではない。
それは、あくまでもこの映画の中での母の考え方であり、彼女の人生哲学である。
しかし、常に「あの時、ああしてれば」とか、「なんでお父さんはそんな行動をするんだろう」と考えるよりも、一歩引いて人生の全体像を観た上で世界の全てを愛したら、その向こうには幸せがきっとやってくる。
そんな母の言葉から感じたのは、彼女の大きさであり、まだ大人の考えができないエレンに対して「もう少し大人になりなさい」というメッセージなんだなと思った。
そうやってエレンは、母の哲学を受け入れ、受け継ぎ、成長していくんだと思った。
NYにいた頃は、「田舎で暮らすことは負け犬であり、敗北だ」と思っていたのに、その頃には、母のような生活をすることも悪く無いなと思えていたはずだ。
エレンにとって、母と過ごした最後の日々は彼女の人生を受け入れ受け継いでいく時間だったように思う。
この映画を観ながら思ったのは、自分の母の存在だった。
私の母も同じく、自分の人生を犠牲にして家族のために生き、父の欠点も受け入れて日々を生きている。
そんな彼女を横目に観ながら、もしかしたら、そのうち私も母のような生き方をするのかもしれない。
それは決してネガティブなことではなく、それもまた、「私の愛すべき人生」になる。
そう思えた作品だった。
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◆原作本「母の眠り」
新聞社に勤務する20代女性が、母の病気をきっかけに実家に帰り、両親と共に暮らしながら家族について見つめ直す物語。
【満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)
いつか自分にもこんな時がくるのかも…と思いながら観た作品。
家族だから腹が立つこと、家族だから言えないこと。
「家族」それぞれへの想いについて考えさせられる作品だった。
「母の眠り」予告編 動画
(原題:ONE TRUE THING)◆「母の眠り」DVD
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キャスト&スタッフ
出演者
〇レニー・ゼルウィガー…(「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」、「砂上の法廷」、「ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月」、「ブリジット・ジョーンズの日記」、「ふたりの男とひとりの女」など)
〇メリル・ストリープ
…(「メリー・ポピンズ リターンズ」、「マンマ・ミーア!ヒア・ウィーゴー」、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」、「未来を花束にして」、「マダム・フローレンス!夢見るふたり」「幸せをつかむ歌」、「イントゥ・ザ・ウッズ」、「8月の家族たち」、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」、「ジュリー&ジュリア」、「大いなる陰謀」など)
〇ウィリアム・ハート
…(「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」、「ニューヨーク 冬物語」など)
〇トム・エヴェレット・スコット
…(「すべてをあなたに」、「マネー・ゲーム」など)
監督
〇カール・フランクリン…(「タイム・リミット」、「ハイ・クライムズ」、「青いドレスの女」など)

あらすじ
NYで働くジャーナリストのエレン(レニー・ゼルウィガー)は、実家から連絡を受け、母のケイト(メリル・ストリープ)が末期癌であることを知らされる。
父ジョージ(ウィリアム・ハート)から実家に帰ってきて介護と手伝いをするよう頼まれたエレンは、仕事を抱えたまま実家へ帰省する。
仕事を持ち帰ったエレンだったが、思うようにはかどらず、そのことに焦りを感じる日々だったが、母の病状は少しずつ悪化していった。
さらに、そんな状況で父が家族には言えない秘密を抱えていることを知ってしまい…。

感想(ネタバレあり)
キャリアアップが全てだと思っていた女子が実家へ強制送還
男女平等の時代だと言われているが、家族が病気になったり、介護が必要になった時、家事を切り盛りしたり、病人の介護をしたりするのは、今でも女性の役目になる場合が多い。
20代後半から30代にかけて独身女性がキャリアアップを目指そうとした時、キャリアよりも家族の世話を選んだことで、昇進を断念してしまう女性たちを良く見る。
この映画の主人公エレンも、そのタイプの女性の1人だ。
野心溢れるジャーナリストの彼女は、もう少しで大物政治家のスキャンダルを暴露できると思った頃、母の病気が発覚し、実家へ帰らざるをえない状況になってしまう。
そして、その結果、夢に見てきた「NYの花形ジャーナリスト」の地位を見送ることになってしまう。
しかし、果たしてそれが本当に彼女にとってマイナスのことだったのか。
田舎に帰り、家族の世話をすることがキャリアを失うことであり、その人の人生にとってマイナスのことだったのか。
私もどちらかと言えば、家庭よりもキャリアを優先したいタイプの人間だったのだが、この映画を観ることで、それが全てではないし、家族と向き合うことで見えることもあるなと考えるようになった。

「今の自分」を受け入れるということ
野心家にとって「田舎で過ごす時間」というのは、不安でしかない。
特に、この映画が作られた時代は今と全く状況が違っていた。
携帯電話を持っているのは、一部の特権階級の人間であり、パソコンもなければ、もちろんインターネットもない。
そんな状況でジャーナリストが原稿を抱えて実家に帰ったところで、流れている時間が違い過ぎる。
ライバルたちが足を使って積極的に取材を進めている時、自分はやったこともないケーキ作りをしたり、トイレ掃除をする毎日。
「このままでは自分は忘れ去れた存在になってしまう」と焦り始め、NYへ戻って取材をしても、NYにいた頃の自分と、田舎へ帰った自分では、全く考え方が違っていた。
そうなってようやく、エレンは「今の自分」を徐々に受け入れるようになる。
今、自分にとって目の前にある危機は「大物政治家のスキャンダル」ではなく、「病気の母の衰弱」であり「父の不倫」であり、家庭の不和だった。
その自分の置かれた状況を少しずつ受け入れていくことで、エレンも少しずつ人間として成長していく。

「母の偉大さ」に気付く時
そのエレンが成長していくきっかけとなったのは、自分の人生を家族のために犠牲にすることを何年も前に受け入れた上で生きてきた「母」の偉大さだった。
私がこの映画の中で、とても印象に残る母のセリフがある。
それは、母の癌の症状が進んでいく中、自分のキャリアアップが思うようにいかず、田舎にいる自分とのジレンマや、父の浮気に気付いてイライラしているエレンに対して母が言った言葉だった。
「あなたが幸せになると分かっていたら、今すぐにでも死ねるのに。
私は、あなたの結婚式の手伝いをしてあげることもできない。
幸せになることはすごく簡単なことなのよ。
今、目の前にあるものを全て愛すればいいの。
過ぎ去ったものにしがみついても空しいだけ」
母は自分の病気と闘いながらも、父の不倫も、エレンのキャリアアップへの焦りも全て気付いて受け入れていた。
その上で、エレンに「自分の人生を愛しなさい」と語りかけていた。
「自分の人生を犠牲にすることで、家族が幸せになるのなら、喜んで自分の人生を受け入れる」と母は言いたかったんだろうと思う。
だからエレンにも、「自分の人生を受け入れて、家族の幸せを考えた時、きっと幸せが訪れる」と言いたかったんだろうと思った。

「人生を受け入れ、愛する」という生き方
もちろん、それは「夫の不倫を受け入れることが素晴らしいこと」だと言っているワケではない。
それは、あくまでもこの映画の中での母の考え方であり、彼女の人生哲学である。
しかし、常に「あの時、ああしてれば」とか、「なんでお父さんはそんな行動をするんだろう」と考えるよりも、一歩引いて人生の全体像を観た上で世界の全てを愛したら、その向こうには幸せがきっとやってくる。
そんな母の言葉から感じたのは、彼女の大きさであり、まだ大人の考えができないエレンに対して「もう少し大人になりなさい」というメッセージなんだなと思った。
そうやってエレンは、母の哲学を受け入れ、受け継ぎ、成長していくんだと思った。
NYにいた頃は、「田舎で暮らすことは負け犬であり、敗北だ」と思っていたのに、その頃には、母のような生活をすることも悪く無いなと思えていたはずだ。
エレンにとって、母と過ごした最後の日々は彼女の人生を受け入れ受け継いでいく時間だったように思う。
この映画を観ながら思ったのは、自分の母の存在だった。
私の母も同じく、自分の人生を犠牲にして家族のために生き、父の欠点も受け入れて日々を生きている。
そんな彼女を横目に観ながら、もしかしたら、そのうち私も母のような生き方をするのかもしれない。
それは決してネガティブなことではなく、それもまた、「私の愛すべき人生」になる。
そう思えた作品だった。
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