エミリー・ブラント主演の映画「ボーダーライン」をWOWOWで観た。
アメリカとメキシコの国境付近で麻薬カルテルの撲滅のために働いてきたFBI捜査官が国の特別捜査チームに配属される。
彼女がそこで見たものとは。
【満足度 評価】:★★★★☆(4.5)
最初から最後まで緊張感が解けることなく一気に見てしまった。
麻薬戦争を描く社会派ドラマかと思いきや、ある男の復讐の物語だった。
しかし憎しみによる復讐は、また新たな憎しみを生む。
そこに終わりはない。
◆ネット配信で観る:Amazonプライム「ボーダーライン」(字幕版)
◆DVDで観る:【Amazon.co.jp限定】「ボーダーライン」スチールブック仕様・日本オリジナルデザイン
◆オリジナルサウンドトラック「Sicario」
…(「メリー・ポピンズ リターンズ」「クワイエット・プレイス」、「ジェイン・オースティンの読書会」、「アジャストメント」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、「イントゥ・ザ・ウッズ」、「プラダを着た悪魔」など)
〇ベニチオ・デル・トロ
…(「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」、「ロープ 戦場の生命線」、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」、「ガーディアンス・オブ・ギャラクシー」など)
〇ジョシュ・ブローリン
…(「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」、「オンリー・ザ・ブレイブ」、「デッドプール2」、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」、「トゥルー・グリット」、「とらわれて夏」など)
〇ジョン・バーンサル
…(「ウインド・リバー」、「ぼくとアールと彼女のさよなら」、「ザ・コンサルタント」、「We Are Your Friends ウィー アー ユア フレンズ」、「フューリー」、「リベンジ・マッチ」、「ゴーストライター」、ドラマシリーズ「デアデビル」、「パニッシャー」など)
〇ダニエル・カルーヤ
…(「ゲット・アウト」など)
…(「メッセージ」、「プリズナーズ」など)
2015年制作 アメリカ映画

FBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)はメキシコ国境付近の麻薬カルテル撲滅のために従事してきた。
その仕事が評価されたのか麻薬カルテル特別捜査班に配属される。
国防総省のコンサルタントだというマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)の指揮の元、同じくコンサルタントのアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と共にメキシコのフアレスへ向かう。
フアレスで麻薬カルテルの証人を確保した捜査班は再びアメリカへ戻るが、国境付近で銃を持った民間人に取り囲まれてしまう…。

主人公は女性FBI捜査官のケイトである。
彼女はこれまでアメリカとメキシコの国境付近で麻薬カルテル撲滅のため戦ってきた。
仕事のためにプライベートをないがしろにし、離婚してしまい、同僚には「女を捨てている」とさえ言われてしまう。
それでも、「最前線で戦ってきた」というキャリアに対する誰にも負けない自信とプライドは持っていた。
そんな彼女が国の麻薬特別捜査班に配属される。
それは、国防総省が主体になる外部と連携した組織だった。
これまでのケイトの働きが評価されたという証なのか。
仕事内容を聞いても教えてもらえないまま、不安と期待を抱いて現場へと向かう。
しかし、そこでは彼女の期待を大きく裏切る現実が待っていた。

「私はこれまで女を捨ててがんばってきた」と言いたくなる気持ちはよく分かる。
一般的な企業でさえ、心の中では「男性と同等に扱って欲しい」と願いながら、「残業できません」と言えば、「デートでもあるのか?」と言われてしまう。
それが悔しくて残業を進んでする。
文句も言わず、お化粧する時間を減らしたって責任をもって仕事を全うしたい。
きっとキャリアアップしたら自由な時間ができるはずと微かな希望を心に抱いて。
そうやって必死に仕事をしているうちに、時間はあっという間に過ぎていき、女であることさえ忘れてしまう。
しかし現実は残酷で、周りの男性たちは女性にそんなにまで仕事に必死になることを求めていない。
このケイトもまさにそうだ。
彼女は「麻薬戦争の最前線」という全国で一番キツイ現場のリーダーとして戦ってきた。
男性と共に仕事をし、命の危険を感じるような修羅場を何度もくぐり抜けてきた。
しかし、同僚たちはそんなに「男勝り」にしなくても良いと思っていて、むしろもっと女らしくしてくれよと思う。
ケイトはそんな「女扱い」をされることが嫌なのに。
そして、今回、自分のこれまで働きが認められ、麻薬最前線のリーダーとして迎えられたはずの特別捜査班で屈辱を受ける。
彼女の仕事は「ただそこにいるだけ」で、自分の身を自分で守るぐらいのことしかやることがない。
彼女が最前線(だと思っていた)現場での経験は一切必要とされないし、これまでの経験を聞かれることさえもない。
彼らはケイトに対し、仕事に口出しをしないFBI捜査官を求めていただけなのだ。
だから、ケイトが女性だと知った瞬間に「最適だ」と思ったのだ。
ケイトからしてみれば何のために女であることを忘れてまで必死になって戦ってきたのか、男性たちと同等の扱を受けるためではなかったのか。
これまでの戦いを評価してもらうためではなかったのか。
ただの「おとなしい女性FBI捜査官」が欲しかっただけなのか…。

では、ケイトが配属された特別捜査班とは何だったのか
特別捜査班というのは表向きで、その実情は元メキシコの検察官だったアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)の復讐を果たすための組織だった。
アレハンドロは妻と娘を無残な方法でメキシコのフアナにある麻薬カルテルのリーダーに殺されてしまった。
そのため、アレハンドロは彼らに復讐をするために、対立するコロンビアの麻薬カルテルと手を組んで暗殺者(SICARIO)となり、カルテルのリーダーを殺すことだけを考えていた。
CIA捜査官のグレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)は彼の復讐心に目をつけ、彼と手を組んでアメリカとメキシコの国境を行き来しながらカルテルを潰す作戦だった。
しかし、CIAは国内を自由に捜査できないため、FBI捜査官でイエスマンになりそうなケイトが必要だった。
残念ながら、この捜査班にケイトが配属されたのは、有能だからでも、これまでのキャリアがあったからでもない。
彼女の知識なんて最初から必要としていなかった。
ただ、サインをしてくれる人が欲しかっただけなのだ。
これまで女を捨ててがんばってきたことなんて、誰も評価してくれないのだ。
それは、彼女がFBIの元でしてきた捜査は、アメリカとメキシコの間にある麻薬戦争の表面的な部分にしか過ぎないということでもあった。
その本質は、それ程大々的に違法捜査をしないと探れない部分にあり、彼女がとうてい知りえないもっと奥深いところにあった。

トランプ政権の目玉の政策として、「メキシコとアメリカの国境に壁を立てる」という計画があるが、そんなことをしても麻薬や移民の流入に対し、なんの解決にもならないことがこの映画を観ていると良くわかる。
FBIが命がけでしてきたことも、ただのいたちごっこでしかなく、どんなに戦っても敵が減ることはない。
もっと大きな力がアメリカ、メキシコ、そしてコロンビアの間で働いている。
巨大な壁など作ったところで、相手は巨大なトンネルを掘って行き来しているから無駄なだけ。
そして、アレハンドロが家族を殺した人間に復讐をするが、次はアレハンドロによって親を殺された子供がアレハンドロに復讐心を抱くようになる。
そうして報復の連鎖は続いていく。
ケイトは散々無視された上に、捜査が無事に完了したことを示すサインをしろと迫られる。
その実態は違法捜査だったのに。
自分の命が惜しくてサインをしたものの、後悔が残る。
彼女がその捜査班に呼ばれたのは、そのサインをするためだけだったのだ
しかし、ケイトがその違法捜査を訴えたところで麻薬カルテルの撲滅へと前進できるのか。
かと言って、カルテルを撲滅するためだったら何をしても良いのか。
規則正しく捜査をしていては、本物の悪を捕まえることはできない。
だからといって、違法捜査をしてもいいのか。
そのどうにもならないジレンマが心に残る作品だった。
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◆オリジナルサウンドトラック「Sicario」
アメリカとメキシコの国境付近で麻薬カルテルの撲滅のために働いてきたFBI捜査官が国の特別捜査チームに配属される。
彼女がそこで見たものとは。
【満足度 評価】:★★★★☆(4.5)
最初から最後まで緊張感が解けることなく一気に見てしまった。
麻薬戦争を描く社会派ドラマかと思いきや、ある男の復讐の物語だった。
しかし憎しみによる復讐は、また新たな憎しみを生む。
そこに終わりはない。
「ボーダーライン」予告編 動画
(原題:SICARIO)◆ネット配信で観る:Amazonプライム「ボーダーライン」(字幕版)
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◆オリジナルサウンドトラック「Sicario」
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キャスト&スタッフ
出演者
〇エミリー・ブラント…(「メリー・ポピンズ リターンズ」「クワイエット・プレイス」、「ジェイン・オースティンの読書会」、「アジャストメント」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、「イントゥ・ザ・ウッズ」、「プラダを着た悪魔」など)
〇ベニチオ・デル・トロ
…(「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」、「ロープ 戦場の生命線」、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」、「ガーディアンス・オブ・ギャラクシー」など)
〇ジョシュ・ブローリン
…(「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」、「オンリー・ザ・ブレイブ」、「デッドプール2」、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」、「トゥルー・グリット」、「とらわれて夏」など)
〇ジョン・バーンサル
…(「ウインド・リバー」、「ぼくとアールと彼女のさよなら」、「ザ・コンサルタント」、「We Are Your Friends ウィー アー ユア フレンズ」、「フューリー」、「リベンジ・マッチ」、「ゴーストライター」、ドラマシリーズ「デアデビル」、「パニッシャー」など)
〇ダニエル・カルーヤ
…(「ゲット・アウト」など)
…(「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」など)
監督
〇ドゥニ・ヴィルヌーヴ…(「メッセージ」、「プリズナーズ」など)
2015年制作 アメリカ映画

あらすじ
FBI捜査官のケイト(エミリー・ブラント)はメキシコ国境付近の麻薬カルテル撲滅のために従事してきた。
その仕事が評価されたのか麻薬カルテル特別捜査班に配属される。
国防総省のコンサルタントだというマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)の指揮の元、同じくコンサルタントのアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)と共にメキシコのフアレスへ向かう。
フアレスで麻薬カルテルの証人を確保した捜査班は再びアメリカへ戻るが、国境付近で銃を持った民間人に取り囲まれてしまう…。

感想(ネタバレあり)
女であることを忘れて最前線で戦ってきたプライド
主人公は女性FBI捜査官のケイトである。
彼女はこれまでアメリカとメキシコの国境付近で麻薬カルテル撲滅のため戦ってきた。
仕事のためにプライベートをないがしろにし、離婚してしまい、同僚には「女を捨てている」とさえ言われてしまう。
それでも、「最前線で戦ってきた」というキャリアに対する誰にも負けない自信とプライドは持っていた。
そんな彼女が国の麻薬特別捜査班に配属される。
それは、国防総省が主体になる外部と連携した組織だった。
これまでのケイトの働きが評価されたという証なのか。
仕事内容を聞いても教えてもらえないまま、不安と期待を抱いて現場へと向かう。
しかし、そこでは彼女の期待を大きく裏切る現実が待っていた。

女を捨ててまで必死に働くことを求められない現実
「私はこれまで女を捨ててがんばってきた」と言いたくなる気持ちはよく分かる。
一般的な企業でさえ、心の中では「男性と同等に扱って欲しい」と願いながら、「残業できません」と言えば、「デートでもあるのか?」と言われてしまう。
それが悔しくて残業を進んでする。
文句も言わず、お化粧する時間を減らしたって責任をもって仕事を全うしたい。
きっとキャリアアップしたら自由な時間ができるはずと微かな希望を心に抱いて。
そうやって必死に仕事をしているうちに、時間はあっという間に過ぎていき、女であることさえ忘れてしまう。
しかし現実は残酷で、周りの男性たちは女性にそんなにまで仕事に必死になることを求めていない。
このケイトもまさにそうだ。
彼女は「麻薬戦争の最前線」という全国で一番キツイ現場のリーダーとして戦ってきた。
男性と共に仕事をし、命の危険を感じるような修羅場を何度もくぐり抜けてきた。
しかし、同僚たちはそんなに「男勝り」にしなくても良いと思っていて、むしろもっと女らしくしてくれよと思う。
ケイトはそんな「女扱い」をされることが嫌なのに。
そして、今回、自分のこれまで働きが認められ、麻薬最前線のリーダーとして迎えられたはずの特別捜査班で屈辱を受ける。
彼女の仕事は「ただそこにいるだけ」で、自分の身を自分で守るぐらいのことしかやることがない。
彼女が最前線(だと思っていた)現場での経験は一切必要とされないし、これまでの経験を聞かれることさえもない。
彼らはケイトに対し、仕事に口出しをしないFBI捜査官を求めていただけなのだ。
だから、ケイトが女性だと知った瞬間に「最適だ」と思ったのだ。
ケイトからしてみれば何のために女であることを忘れてまで必死になって戦ってきたのか、男性たちと同等の扱を受けるためではなかったのか。
これまでの戦いを評価してもらうためではなかったのか。
ただの「おとなしい女性FBI捜査官」が欲しかっただけなのか…。

これまでのキャリアが泡となって消えていく瞬間
では、ケイトが配属された特別捜査班とは何だったのか
特別捜査班というのは表向きで、その実情は元メキシコの検察官だったアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)の復讐を果たすための組織だった。
アレハンドロは妻と娘を無残な方法でメキシコのフアナにある麻薬カルテルのリーダーに殺されてしまった。
そのため、アレハンドロは彼らに復讐をするために、対立するコロンビアの麻薬カルテルと手を組んで暗殺者(SICARIO)となり、カルテルのリーダーを殺すことだけを考えていた。
CIA捜査官のグレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)は彼の復讐心に目をつけ、彼と手を組んでアメリカとメキシコの国境を行き来しながらカルテルを潰す作戦だった。
しかし、CIAは国内を自由に捜査できないため、FBI捜査官でイエスマンになりそうなケイトが必要だった。
残念ながら、この捜査班にケイトが配属されたのは、有能だからでも、これまでのキャリアがあったからでもない。
彼女の知識なんて最初から必要としていなかった。
ただ、サインをしてくれる人が欲しかっただけなのだ。
これまで女を捨ててがんばってきたことなんて、誰も評価してくれないのだ。
それは、彼女がFBIの元でしてきた捜査は、アメリカとメキシコの間にある麻薬戦争の表面的な部分にしか過ぎないということでもあった。
その本質は、それ程大々的に違法捜査をしないと探れない部分にあり、彼女がとうてい知りえないもっと奥深いところにあった。

何が正しいのか。どうにもならないジレンマが残る
トランプ政権の目玉の政策として、「メキシコとアメリカの国境に壁を立てる」という計画があるが、そんなことをしても麻薬や移民の流入に対し、なんの解決にもならないことがこの映画を観ていると良くわかる。
FBIが命がけでしてきたことも、ただのいたちごっこでしかなく、どんなに戦っても敵が減ることはない。
もっと大きな力がアメリカ、メキシコ、そしてコロンビアの間で働いている。
巨大な壁など作ったところで、相手は巨大なトンネルを掘って行き来しているから無駄なだけ。
そして、アレハンドロが家族を殺した人間に復讐をするが、次はアレハンドロによって親を殺された子供がアレハンドロに復讐心を抱くようになる。
そうして報復の連鎖は続いていく。
ケイトは散々無視された上に、捜査が無事に完了したことを示すサインをしろと迫られる。
その実態は違法捜査だったのに。
自分の命が惜しくてサインをしたものの、後悔が残る。
彼女がその捜査班に呼ばれたのは、そのサインをするためだけだったのだ
しかし、ケイトがその違法捜査を訴えたところで麻薬カルテルの撲滅へと前進できるのか。
かと言って、カルテルを撲滅するためだったら何をしても良いのか。
規則正しく捜査をしていては、本物の悪を捕まえることはできない。
だからといって、違法捜査をしてもいいのか。
そのどうにもならないジレンマが心に残る作品だった。
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