岸部一徳主演の日本映画「鈴木家の嘘」を試写会で観た。

長男が自殺した家族が、その死を受け入れていく姿を描く。


満足度 評価】:★★★★☆

家族の自殺という重いテーマを描きながら、それをユーモラスに時にはクスッと笑わせながら、力強く描いた作品だった。

酷い悲しみに襲われた時、無理にその事実を受け入れようとせず、時には嘘というオブラートで包んでゆっくり咀嚼しても良いんだなと思った。

目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


『鈴木家の嘘』予告編 動画



更新履歴・公開、販売情報

・2018年11月5日 試写会にて鑑賞。

・2018年11月20日 感想を掲載。

現在、全国順次公開中。詳しい上映劇場情報につきましては、下記公式サイトをご参照ください。
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キャスト&スタッフ


出演者


…(「空飛ぶタイヤ」、「座頭市」、「その男、凶暴につき」など)

〇原日出子

…(「菊とギロチン」など)


…(「HANA-BI」など)

…(「アウトレイジ 最終章」など)

〇吉本菜穂子

〇宇野祥平

〇山岸門人

〇川面千晶

監督・脚本

〇野尻克己


2018年製作 日本映画



鈴木家の嘘





あらすじ

鈴木家の長男・浩一(加瀬亮)が自殺した。

自室で自殺しているのを見つけた母・悠子(原日出子)は、その場で倒れ意識を失ってしまう。

数日後に目覚めた母は、浩一が自殺した時の記憶を失っていた。

それを知った娘の富美(木竜麻生)は、とっさに「お兄ちゃんはアルゼンチンにいるよ」と母に嘘をついてしまう…。



鈴木家の嘘5






感想(ネタばれあり)


ラッシュ時の通勤電車の遅延は日常茶飯事


日本は先進国の中でも、自殺率が高い国で知られている。




朝の通勤ラッシュの時間帯に人身事故によって電車が遅延するのは日常茶飯事だ。

その理由の全てが自殺とは言わないけれど、かなりの確率で「会社に行きたくない」と思った人が、そのまま電車に飛び込んでしまう人が多いことを物語っている。

そして、多くの人が電車の遅延に足止めをくい、会社に謝りの電話を入れ、うんざりするような朝を迎えることになる。



その割に、その「自殺」と正面から向き合った映画は少ないように思う。

物語の中で、主人公の友人が自殺で亡くなってしまうというような要素としての描き方はあっても、自殺した本人と、その周りの人々について描かれるというような作品はあまりない。



それは、見て見ぬふりをしているのか。

自殺などなかったことにしているのか。

中には「自殺を扱った重い映画など誰も観ない」と言われてGOサインが出なかった企画もあるだろう



この映画「鈴木家の嘘」は、そんな日本の映画界のタブーを破った作品である。

「自殺」を扱っていながら、決して重くならず、時にはユーモアを交え、クスッと笑わせながら、力強く描いている

そして、この映画を観終えたところで、自殺を減らすヒントも得られたような気がした。



なので、ぜひ「重たいんじゃないか」という先入観を捨てて、この映画を観て欲しいと思う。

そして、一人一人が「自殺」について考えれば、日本の社会も少しは変わるんじゃないかと期待してしまう。



鈴木家の嘘3



悲しいことと向き合うための時間稼ぎ


物語は、鈴木家の長男・浩一(加瀬亮)が自殺するところから始まる。



そのことに対する家族の反応が、この映画はとても特徴的だ。

浩一が自室で首をつっているのを見た母(原日出子)は気を失い、昏睡状態になり、目覚めた時には浩一が自殺したという記憶を失くしてしまう。



浩一の妹である富美(木竜麻生)は、そんな母に対し「お兄ちゃんは、引きこもりをやめてアルゼンチンで働いてるよ」と嘘をついてしまう。

その富美の嘘に合わせるために、家族は振り回されてしまう。



人は酷く悲しいことがあった時、その現実をなかなか受け入れることができないこともある。

そんな時、人それぞれの「現実逃避」をして、受け入れるまでの時間を稼ごうとする。

そして、いつか必ずその現実と向き合わなければいけない時がやってくる。



富美は、母が記憶を失っていることを知って、とっさに嘘をついてしまうが、その嘘は母が「息子の自殺」という事実を受け入れるまでの良い時間稼ぎになったと思った。

叔母さん(岸本加代子)は富美に対し、

「なんで嘘なんてついたよの。生きている人間は気持ちの整理をつけなきゃだめだ。」

と責めたけれど、そんなに強く生きていける人ばかりではない。



辛い現実を受け入れるのにかかる時間は人それぞれだ。

首をつっている息子を見て気を失った母が、そんなに簡単に現実と向き合えるとは思えない。

そんな母に、現実を「嘘」というオブラートでくるんで、少しずつ咀嚼させたのは正解だったと思う。



その嘘に救われたのは母だけではない

母に嘘を貫き通すために、家族も「浩一が死んだ」という事実よりも、母を支えることに神経を使うことで、浩一の自殺を忘れられる時間もあったはずだ。



そんな彼らを見ていると、家族の自殺のような酷く悲しいことがあった時、その問題とすぐに向き合わなくてもいいんだなと思った。

悲しいことと向き合う時間は人それぞれ。

時には「嘘も方便」で、時間稼ぎをしてもいい。

ゆっくり考えればいい時もあるのだ。



鈴木家の嘘2



野尻監督ならではのリアリティ


目覚めた母に対し、「お兄ちゃんはアルゼンチンにいる」と富美が言った場面がとてもユーモアに溢れ、思わず「ククッ」と笑ってしまう。

そこだけではない。

なぜか、浩一は保険の受取先をソープ嬢にしていたり、みんなで浩一がアルゼンチンにいる風を装ったり、めちゃくちゃありがちなゲバラのTシャツをみんなで着たり(これで騙されちゃうお母さんもおああさんだけど)。

この映画には、思わず「えっ」と思ったり、笑ってしまうシーンが多い



だからこそ、重い気分になることなく最後まで見れてしまう

自殺を扱った作品なのに笑えてしまうというのがとても意外だった。

それに、「嘘」で母の現実逃避をさせたのも、すごくリアリティある発想だと思った。



それもそのはず、この映画がデビュー作となる野尻監督はお兄さんを自殺で亡くしているという。

だからこそ、家族から浩一への目線にリアリティがあるのだ。

そうじゃなかったら、こんなに笑ってしまうような作品を作るのは難しい。

「自殺で笑う」なんて、遺族の人が良い気分がしないだろうと思ってしまうからだ。



しかし、野尻監督自身が遺族だからこそ、そのユーモアが生れるのだ。

そこが、この映画の他の映画とは違う長所でもある。



鈴木家の嘘4




希望は「時間と会話」にある


とても辛いことがあった時、その痛みを癒すには「時間と会話」が必要なんだと、この映画を観て思った。

そのために、嘘を利用するなら、それも「嘘も方便」だ。

ゆっくり時間をかけて自分の中で処理をしていけば良い。



そして、もう一つ必要なのが会話だ。

兄の自殺を受け入れることができず、家族は兄の自殺のことに頭がいっぱいで、自分はどうしたらいいのか分からない富美は、グループカウンセリングに通い始める。



そこで、様々な人と出会い、会話をすることで、富美自身の辛さも緩和されていく。



一日中自室に引きこもり、ご飯も家族と食べることなく、誰とも会話をしないまま一日を終えた浩一。

浩一が亡くなってしまったのは、会話がなかったからではないかと思った。



両親が手を差し伸べても、浩一自身が会話をしようとしなかったので、両親に問題はなかったと思う。

両親が手を差し伸べた時に、浩一が少しでも心を開いて、罵り合いでもいいから少しでも会話をしていたら…と思う。



だからも、もしも、一日中引きこもっているいるような人がいたら、この映画を観て、誰かと会話をして欲しいと思う。

相手を罵って、嫌われてもいいじゃないか。

どんな人生でも、死んでしまったら、周りの人が悲しむということを知って欲しい



ぜひ、一人でも多くの人に観て欲しい作品である。





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