クォン・ヘヒョ主演の韓国映画「それから」を試写会で観た。
若い女性と不倫する出版社社長。不倫相手と疑われる新入社員。
【満足度 評価】:★★★★☆
面白かった!
優柔不断なダメ男が身を固める決意をするまで。
そのダメ男はホン・サンス監督自身かと思わせつつ、それを冷ややかに見つめるキム・ミニという構図が恐ろしく面白い。
酷い目にあったキム・ミニに希望を感じさせるラストも良い。
「それから」予告編 動画
(原題:그 후(その後))
更新履歴・公開情報
・2018年5月30日 試写会で鑑賞。
・2018年6月28日 感想を掲載。
現在、公開中。劇場情報は公式サイトをご参照のこと。
「それから」公式サイト
◆夏目漱石「それから・門」
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キャスト&スタッフ
出演者
〇キム・セビョク
監督・脚本
2017年製作 韓国映画
あらすじ
小さな出版社で新入社員として勤め始めたアルム(キム・ミニ)。
ある時、社長夫人が会社を訪れ、アルムは夫人からいきなり殴られる。
アルムは社長・ボンワン(クォン・ヘヒョ)の不倫相手だと勘違いされたのだ。
その日の夜、社長はアルムを食事に誘うが、誤解されたことに納得がいかないアルムは会社を辞めるという。
そんなアルムを社長は引き留めるが、そこへ社長の浮気相手であり、前任者のチャンソク(キム・セビョク)が訪ねてくる。
感想(ネタバレあり)
ホン・サンス監督のプライベートを潔く赤裸々に語る映画
キム・ミニとホン・サンス監督は公開恋愛中である。
これだけなら、特に問題はない。
韓国芸能界で恋愛を公開することはよくあることだ。
しかし、ホン・サンス監督は妻子ある身である(現在、離婚調停中)。
つまり、キム・ミニとホン・サンスは不倫関係にあるのだ。
この映画を観る前に、その2人の関係を知ることが大前提である。
日本では公開時期が前後するが、ホン・サンス監督の作品「正しい日 間違えた日」にキム・ミニが出演した際、二人は不倫関係にあるのではと騒がれるようになる。
その後、ホン・サンス監督は離婚調停を申し出る。
しかし、監督夫人がその申し出に応じない中、その次のコンビ作「夜の浜辺にひとり」の試写会後、二人はお互いに不倫関係にあることを認める。
それから2ヶ月後、この映画「それから」が、韓国で公開され、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれる。
つまり、これは公認の不倫カップルとなってからはじめて公開された作品なのである。
そんな、ホン・サンス監督とキム・ミニの関係を大前提として、この映画を観ると、普通の「不倫関係映画」とは違った趣がある。
どう見ても主人公のダメ男を演じているクォン・ヘヒョはホン・サンス監督に見えてくるし、キム・ミニは、煮え切らない社長の不倫関係を冷めた視線で冷ややかに眺める役で登場する。
監督が作り出す世界というのは、自身の世界観が投影されるものだと思っているけれど、これはあまりにもプライベートすぎるのではないか。
しかし、そんなダメ男っぷりもひっくるめて非常に面白い作品になっている。
世界から尊敬される監督だって人間だし、ダメ男なのだ。
この映画「それから」は、そんな人間の潔さと赤裸々さを感じさせる作品になっている。
新入社員アルムの衝撃的な一日
主人公のボンワンは呆れるほどに優柔不断なダメ男だ。
愛情など既に遠い昔に失くしてしまった妻に罵られても、強く出ることができず、若い不倫相手のチャンスクの言いなりになってしまう
それが仕事にも影響し、新入社員のアルムを平気で犠牲にしてしまう。
アルムからしたら、何とも酷い話だ。
本が大好きで時々文章を書いては、将来は小説家になりたいと思っていた彼女が小さい出版社に就職する。
しかし、仕事について右も左もわからないうちに、社長夫人が訪ねてきて罵倒された上に殴られる。
さらに、仕事の前任者である社長の不倫相手チャンソクが現れて、アルムの仕事を奪ってしまう。
それから1年後。
ボンワンが文芸評論で賞を取ったというので、そのお祝いにアルムは会社を訪れる。
アルムからしたら1日しかいなかった会社だけれど、衝撃的な一日だったからこそ、頭に残っていたのだ。
ところが、訪ねてきたアルムをボンワンは「知らない。覚えていない」という。
わざと忘れたフリをしていのか、本当に覚えていないのか。
それは分からないけれど、アルムの「衝撃的な一日」はボンワンにとって「忘れたい一日」だったことは間違いない。
アルムがいたあの一日は、ボンワンにとって「都合が悪いこと」であり、「さっさと忘れたい一日」だったのだ。
そんな、あまりにも自分勝手でご都合主義なボンワンには呆れてしまい、口があんぐりしてしまった。
何より、目の前で幼稚な不倫関係を見せつけられ、挙句の果てに存在すらも忘れられているアルムが一番ボンワンに呆れているのではと思う。
いつか監督の目の前から去っていく冷ややかな視線のキム・ミニ
そこで、思うのだ。
このボンワンはホン・サンス監督本人ではないかと。
妻に不倫を気付かれ罵られる一方で、自分よりもずっと若い女性との不倫から逃れることができない。
かといって離婚を切り出すこともできず、どっちつかずの優柔不断なダメ男。
このボンワンは、ホン・サンス監督の言い訳なのか。
そして、そんなボンワンから離れたところで冷ややかに眺めているのがキム・ミニ演じるアルムなのだ。
「あんたがハッキリしないからこういうことになるんでしょう。奥さんから殴られた私は迷惑してる」と言いたげなアルムは、キム・ミニ本人ではないだろうか。
そんなキム・ミニの視線が恐ろしい作品だと思った。
ホン・サンス監督は、アルムが会社から去っていくように、いつか美しいキム・ミニに捨てられる日がやってくるのを恐れているのではと思った。
そして、それからしばらくたってキム・ミニが何事もなかったかのようにホン・サンス監督を訪ねてきて映画賞を取ったお祝いを言ってくれる。
その時、ホン・サンス本人も二人の過去は何事もなかったかのように対応し、将来キム・ミニにプラスになるような本を渡して爽やかに別れる。
それはホン・サンス監督の妄想なのか、それとも希望なのか。
しかし、現実は泥沼の三角関係から抜け出せないでいるのだ。
ホン・サンスとキム・ミニの「それから」
結局、ボンワンは「子供のために」不倫関係を解消し、家に帰る決断をする。
ボンワン(=ホン・サンス)にとって、妻への愛情はなくなったといえ、子供のことが心残りなのだろう。
この結末は夏目漱石の「それから」がモチーフになっている。
「それから」では、遊んで暮らすボンボンの主人公が、好きな女性を真面目な親友に譲り、2人を結婚させるが、その真面目なはずの親友が実は遊び人で、好きな女性が苦労していることを知り、その女性を親友から奪い、家族とも縁をきって就職し、身を固める決意をする。
ボンワンにとって、その「好きな女性」が「愛する娘」なのだ。
その「愛する娘」のために不倫相手と縁を切り、仕事にまい進する。
その結果、文芸評論が賞を取り、仕事も上向きになっていく。
ホン・サンスも、いつかボンワンのように「決断する時」が必要なのだと思っているのだろう。
そして、キム・ミニを自分の手から解放し、世界に羽ばたく女優にしてやりたいと思っているのでは…。
そんな希望を感じるラストだった。
ホン・サンス監督は、誰よりも美しいキム・ミニをカメラに収めるが、キム・ミニは優柔不断な彼に呆れており、いつか彼女が監督の手を離れて去っていったとしても、そんな彼女を応援する人間でありたい。
そんな時がきたら、監督は娘のために人生を捧げようと思っているのだろう。
しかし、現実はそう美しくはいかないだろう。
キム・ミニにはキム・ミニの、妻には妻の感情があるからだ。
この後、二人の関係はどう変化し、それがどう映画に反映されていくのか。
今後のホン・サンス監督作が楽しみである。
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『それから』優柔不断なダメ男が修羅場を乗り越え身を固める決意をする。そのダメ男は監督自身かと思わせつつ、それを冷ややかに見るキム・ミニという構図が恐ろしく面白い。酷い目に遭ったキム・ミニに希望を感じさせるラストも良い #映画それから https://t.co/7dLJbeKGya
2018/05/30 23:48:08
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