ユアン・マクレガー主演の映画「ゴーストライター」をWOWOWで観た。
イギリス元首相の自叙伝執筆を依頼されたゴーストライターが、元首相に関する疑惑について秘密を知ってしまい陰謀に巻き込まれていくサスペンス。
【満足度 評価】:★★★★☆
予想とは全く違う展開をしたサスペンス映画だった。
しかし、その一つ一つをよくよく考えると、全てが結末に向かって収束していて、「アメリカ=悪」の構図が見えてくる。
それは、ロマン・ポランスキー監督だからこそ描ける世界だった。
◆ネット配信で観る:「ゴーストライター」 (字幕版)
◆DVDで観る:「ゴーストライター」
…(「プーと大人になった僕」、「T2 トレインスポッティング」、「美女と野獣」、「われらが背きし者」、「8月の家族たち」、「天使と悪魔」、「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」、「スター・ウォーズ/エピソード2 クローンの攻撃」、「スター・ウォーズ エピソード3/シスの逆襲」、「トレインスポッティング」など)
〇ピアース・ブロスナン
…(「さよなら、僕のマンハッタン」、「サバイバー」、「クーデター」、「幸せになるための5秒間」、「おとなのワケあり恋愛講座」、「スパイ・レジェンド」)
〇トム・ウィルキンソン
…(「否定と肯定」、「スノーデン」、「エミリー・ローズ」、「パーフェクト・プラン」、「フィクサー」、「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」、「グランド・ブダペスト・ホテル」など)
〇キム・キャトラル
〇ティモシー・ハットン
…(「ゲティ家の身代金」、「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」、ドラマシリーズ「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」など)
〇ジョン・バーンサル
…(「ウインド・リバー」、「ベイビー・ドライバー」、「ザ・コンサルタント」、「We Are Your Friends ウィー アー ユア フレンズ」、「 ボーダーライン」、「ぼくと彼女とアールのさよなら」、「フューリー」、「リベンジ・マッチ」、ドラマシリーズ「デアデビル」、「パニッシャー」など)
〇オリヴィア・ウィリアムズ
…(「告白小説、その結末」、「戦場のピアニスト」など)
2010年製作 フランス、イギリス、ドイツ合作映画

イギリスの元首相アラム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を執筆するため、アメリカ東部の小さな島に滞在することになったゴーストライター(ユアン・マクレガー)。
元々は、ラングの側近がゴーストライターとして執筆していたが、泥酔して島へ向かうフェリーから転落して亡くなったのだという。
ラングが一時的に滞在している建物が仕事場となり、気難しいラングの妻・ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)や、秘書のアメリア(キム・キャトラル)が共に生活していた。
始めは気乗りがしなかったものの、締め切りが迫っていたため、仕事を始めたゴーストライターだったが、ラングの過去を調べているうちに、様々な謎が浮かび上がってくる…。

ユアン・マクレガーが出てて、ロマン・ポランスキーが監督しているサスペンス映画か。
なにやら、面白そうだなぁという軽い気持ちで、この映画を観始めた。
しかし、映画を観進めていくと、先が読めず、最後には、思いもしない光景が広がっていた。
それぞれのシーンに、うまいこと伏線が引かれていて、少しずつそれを回収し、最後に全てがつながっていく。
思わず、うーーんと唸ってしまうサスペンス映画だった。
そして、後からよくよく考えてみれば、主人公がゴーストライターなのも、元首相と奥さんの出会いから、秘書の役割、側近たちがゴーストライターとして彼をスカウトした思惑まで、全てにキチンと意味がある。
しかし、それを、よくよく考えて観ていかないと、見落としてしまうし、この映画の面白さが分からない。
そんな、観客を試すような作りがニクイ作品でもあった。
最近のサスペンス映画は単純で物足りないと思う人にこそ、おススメの作品である。
そして、できれば、この感想は映画を観終わってから読んで欲しい。

最初から、元首相のラングという人は不思議な人だった。
イギリスの元首相なのに、アメリカで暮らしている。
側近たちが言うには、「彼はアメリカで基金を設立していて、そのための活動をアメリカで行っているから」という理由だった。
その「なぜ、イギリスの元首相がアメリカに?」という疑問から物語はスタートし、
その後、「テロとの戦いで逮捕した容疑者を、首相の一存でCIAに引き渡し、拷問させた」という疑いがかけられ、ますますイギリスとアメリカの関係に疑いを持つようになる。
そこから見えてくるのは、アメリカは悪であるという大前提。
もしも、アメリカが正しい行いをしていて、身柄の引き渡しをしていたなら、そんなに大騒ぎにならないはず。
ところが、国民感情として、「人権侵害をしているアメリカ」という大前提があるから、ラングは『殺人者』だと言われる羽目になる。
そもそも、なぜ、アメリカで起きている事件の容疑者を、イギリスがそんなに簡単に引き渡すのか。
容疑者の尋問は、イギリスでするべきだという国民たちの思い。
結局、ラングは国民のことよりも、アメリカの方が大事なんじゃないかと国民は疑うようになる。

そのアメリカとイギリスの関係から見えてくるのは、『アメリカの操り人形と化しているイギリスの実態』である。
それは、ポランスキー監督によるイギリス批判である。
「911同時多発テロ」の捜査に協力し、英国軍をアフガニスタンに送り、容疑者は簡単にアメリカに引き渡し、その一方でイギリス国内で起きているテロは放置。
一体、イギリスはどこへ向いているのか。
結局、イギリスはアメリカの操り人形なんじゃないかというのが、ポランスキーの考えなのだと思った。
では、「どのようにしてアメリカはイギリスを手なづけているのか」
ここでは、アメリカがその「操り人形」をじっくりと育てている実態が徐々に明らかになっていく。
CIAがラングの妻・ルースに近づいたのは、ルースが学生時代の頃だった。
そのルースはラングに目をつけ、彼を政党に誘い込む。
そして、彼を首相にするまで育て上げる。
ラングの何が良かったか。
それは演劇を学んでいた彼の「演説の上手さ」だった。
「イデオロギーではなく、彼の演技の上手さが、彼を首相にした」
というゴーストライターのセリフが映画の中にもあった。
アメリカの操り人形に考える脳は必要ない。
大事なのは、国民をだませる説得力である。
そして、アメリカはラングを使えるだけ使って、いらなくなったら見事に切り捨てる。
それが、アメリカのやり方だとポランスキー監督は主張する。

そして、この物語の語り部として必要なのが、『ゴーストライター』だった。
そもそも、ゴーストライターとはいないはずのものであり、表に出てきてはいけないもの。
首相の自叙伝を書いたのだとしたら、首相の影武者のような存在である。
つまり、その人の作家としての経歴があるとすれば、自叙伝が1万部売れようが、100万部売れようが、その経歴の中にゴーストライターとして書いた作品が著作として出てくることはない。
ということは、彼が不慮の事故で亡くなった場合、その事故の記事が新聞に載ったところで、「フリーライター死亡」と書かれ、彼の特に売れていない作品が代表作として掲載されるだけで、「首相の自叙伝」は一切出てこない。
誰も、彼と政府の関係を疑う者はいない。
彼は、「もしも、不測の事態があった時に殺しても大丈夫な人材」であり、独身で、家族がいないということも幸いしていた。
関係者以外、彼が元首相のゴーストライターをやっていたことを知る者はいない。
スカウトマンたちは、そこまで綿密に計算した上でゴーストライターを雇っていたのだ。
しかも、そのことについて、妻のルースも、秘書のアメリアも全て承知している上で、出版記念パーティにゴーストライターを招待している。
本当だったら、そこにいてはいけない人なのに、ゴーストライターも招待されて良い気になって出席している。
この物語の最初から最後まで、全てアメリカの仕組んだできごとだとしたら…。
なんとも恐ろしい話である。
そこには、アメリカやCIAに対する不信感がにじみ出ている。
それもそのはず、ポランスキー監督はアメリカで淫行疑惑をかけられ現在も逃亡中で、アメリカに入国できないという彼自身の問題を抱えている。
(参考:Wikipedia ロマン・ポランスキー)
それゆえ、この作品には、彼自身のアメリカに対する恨みが随所に込められている。
ということで、この映画にはロマン・ポランスキーのかなり斜めから見たアメリカ批判や私怨が込められているけれども、上手く練られた陰謀を描いたサスペンス映画としても面白い作品だった。
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◆DVDで観る:「ゴーストライター」
イギリス元首相の自叙伝執筆を依頼されたゴーストライターが、元首相に関する疑惑について秘密を知ってしまい陰謀に巻き込まれていくサスペンス。
【満足度 評価】:★★★★☆
予想とは全く違う展開をしたサスペンス映画だった。
しかし、その一つ一つをよくよく考えると、全てが結末に向かって収束していて、「アメリカ=悪」の構図が見えてくる。
それは、ロマン・ポランスキー監督だからこそ描ける世界だった。
「ゴーストライター」予告編 動画
(原題:The Ghost Writer)◆ネット配信で観る:「ゴーストライター」 (字幕版)
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キャスト&スタッフ
出演者
〇ユアン・マクレガー…(「プーと大人になった僕」、「T2 トレインスポッティング」、「美女と野獣」、「われらが背きし者」、「8月の家族たち」、「天使と悪魔」、「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス」、「スター・ウォーズ/エピソード2 クローンの攻撃」、「スター・ウォーズ エピソード3/シスの逆襲」、「トレインスポッティング」など)
〇ピアース・ブロスナン
…(「さよなら、僕のマンハッタン」、「サバイバー」、「クーデター」、「幸せになるための5秒間」、「おとなのワケあり恋愛講座」、「スパイ・レジェンド」)
〇トム・ウィルキンソン
…(「否定と肯定」、「スノーデン」、「エミリー・ローズ」、「パーフェクト・プラン」、「フィクサー」、「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」、「グランド・ブダペスト・ホテル」など)
〇キム・キャトラル
〇ティモシー・ハットン
…(「ゲティ家の身代金」、「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」、ドラマシリーズ「ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス」など)
〇ジョン・バーンサル
…(「ウインド・リバー」、「ベイビー・ドライバー」、「ザ・コンサルタント」、「We Are Your Friends ウィー アー ユア フレンズ」、「 ボーダーライン」、「ぼくと彼女とアールのさよなら」、「フューリー」、「リベンジ・マッチ」、ドラマシリーズ「デアデビル」、「パニッシャー」など)
〇オリヴィア・ウィリアムズ
監督・脚本
〇ロマン・ポランスキー…(「告白小説、その結末」、「戦場のピアニスト」など)
2010年製作 フランス、イギリス、ドイツ合作映画

あらすじ
イギリスの元首相アラム・ラング(ピアース・ブロスナン)の自叙伝を執筆するため、アメリカ東部の小さな島に滞在することになったゴーストライター(ユアン・マクレガー)。
元々は、ラングの側近がゴーストライターとして執筆していたが、泥酔して島へ向かうフェリーから転落して亡くなったのだという。
ラングが一時的に滞在している建物が仕事場となり、気難しいラングの妻・ルース(オリヴィア・ウィリアムズ)や、秘書のアメリア(キム・キャトラル)が共に生活していた。
始めは気乗りがしなかったものの、締め切りが迫っていたため、仕事を始めたゴーストライターだったが、ラングの過去を調べているうちに、様々な謎が浮かび上がってくる…。

感想(ネタばれあり)
先の展開が読めない、良く練られたサスペンス映画
ユアン・マクレガーが出てて、ロマン・ポランスキーが監督しているサスペンス映画か。
なにやら、面白そうだなぁという軽い気持ちで、この映画を観始めた。
しかし、映画を観進めていくと、先が読めず、最後には、思いもしない光景が広がっていた。
それぞれのシーンに、うまいこと伏線が引かれていて、少しずつそれを回収し、最後に全てがつながっていく。
思わず、うーーんと唸ってしまうサスペンス映画だった。
そして、後からよくよく考えてみれば、主人公がゴーストライターなのも、元首相と奥さんの出会いから、秘書の役割、側近たちがゴーストライターとして彼をスカウトした思惑まで、全てにキチンと意味がある。
しかし、それを、よくよく考えて観ていかないと、見落としてしまうし、この映画の面白さが分からない。
そんな、観客を試すような作りがニクイ作品でもあった。
最近のサスペンス映画は単純で物足りないと思う人にこそ、おススメの作品である。
そして、できれば、この感想は映画を観終わってから読んで欲しい。

アメリカは悪であるという大前提
最初から、元首相のラングという人は不思議な人だった。
イギリスの元首相なのに、アメリカで暮らしている。
側近たちが言うには、「彼はアメリカで基金を設立していて、そのための活動をアメリカで行っているから」という理由だった。
その「なぜ、イギリスの元首相がアメリカに?」という疑問から物語はスタートし、
その後、「テロとの戦いで逮捕した容疑者を、首相の一存でCIAに引き渡し、拷問させた」という疑いがかけられ、ますますイギリスとアメリカの関係に疑いを持つようになる。
そこから見えてくるのは、アメリカは悪であるという大前提。
もしも、アメリカが正しい行いをしていて、身柄の引き渡しをしていたなら、そんなに大騒ぎにならないはず。
ところが、国民感情として、「人権侵害をしているアメリカ」という大前提があるから、ラングは『殺人者』だと言われる羽目になる。
そもそも、なぜ、アメリカで起きている事件の容疑者を、イギリスがそんなに簡単に引き渡すのか。
容疑者の尋問は、イギリスでするべきだという国民たちの思い。
結局、ラングは国民のことよりも、アメリカの方が大事なんじゃないかと国民は疑うようになる。

アメリカの操り人形のつくり方
そのアメリカとイギリスの関係から見えてくるのは、『アメリカの操り人形と化しているイギリスの実態』である。
それは、ポランスキー監督によるイギリス批判である。
「911同時多発テロ」の捜査に協力し、英国軍をアフガニスタンに送り、容疑者は簡単にアメリカに引き渡し、その一方でイギリス国内で起きているテロは放置。
一体、イギリスはどこへ向いているのか。
結局、イギリスはアメリカの操り人形なんじゃないかというのが、ポランスキーの考えなのだと思った。
では、「どのようにしてアメリカはイギリスを手なづけているのか」
ここでは、アメリカがその「操り人形」をじっくりと育てている実態が徐々に明らかになっていく。
CIAがラングの妻・ルースに近づいたのは、ルースが学生時代の頃だった。
そのルースはラングに目をつけ、彼を政党に誘い込む。
そして、彼を首相にするまで育て上げる。
ラングの何が良かったか。
それは演劇を学んでいた彼の「演説の上手さ」だった。
「イデオロギーではなく、彼の演技の上手さが、彼を首相にした」
というゴーストライターのセリフが映画の中にもあった。
アメリカの操り人形に考える脳は必要ない。
大事なのは、国民をだませる説得力である。
そして、アメリカはラングを使えるだけ使って、いらなくなったら見事に切り捨てる。
それが、アメリカのやり方だとポランスキー監督は主張する。

いつ消されても大丈夫なゴーストライター
そして、この物語の語り部として必要なのが、『ゴーストライター』だった。
そもそも、ゴーストライターとはいないはずのものであり、表に出てきてはいけないもの。
首相の自叙伝を書いたのだとしたら、首相の影武者のような存在である。
つまり、その人の作家としての経歴があるとすれば、自叙伝が1万部売れようが、100万部売れようが、その経歴の中にゴーストライターとして書いた作品が著作として出てくることはない。
ということは、彼が不慮の事故で亡くなった場合、その事故の記事が新聞に載ったところで、「フリーライター死亡」と書かれ、彼の特に売れていない作品が代表作として掲載されるだけで、「首相の自叙伝」は一切出てこない。
誰も、彼と政府の関係を疑う者はいない。
彼は、「もしも、不測の事態があった時に殺しても大丈夫な人材」であり、独身で、家族がいないということも幸いしていた。
関係者以外、彼が元首相のゴーストライターをやっていたことを知る者はいない。
スカウトマンたちは、そこまで綿密に計算した上でゴーストライターを雇っていたのだ。
しかも、そのことについて、妻のルースも、秘書のアメリアも全て承知している上で、出版記念パーティにゴーストライターを招待している。
本当だったら、そこにいてはいけない人なのに、ゴーストライターも招待されて良い気になって出席している。
この物語の最初から最後まで、全てアメリカの仕組んだできごとだとしたら…。
なんとも恐ろしい話である。
そこには、アメリカやCIAに対する不信感がにじみ出ている。
それもそのはず、ポランスキー監督はアメリカで淫行疑惑をかけられ現在も逃亡中で、アメリカに入国できないという彼自身の問題を抱えている。
(参考:Wikipedia ロマン・ポランスキー)
それゆえ、この作品には、彼自身のアメリカに対する恨みが随所に込められている。
ということで、この映画にはロマン・ポランスキーのかなり斜めから見たアメリカ批判や私怨が込められているけれども、上手く練られた陰謀を描いたサスペンス映画としても面白い作品だった。
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