キム・ミニ主演、パク・チャヌク監督の韓国映画「お嬢さん」を試写会で観た。

日本統治下の朝鮮で、ある詐欺師が富豪の日本人令嬢をたぶらかして結婚し、財産を奪い取るという計画を立てる。

その計画に乗った1人の孤児が、令嬢の侍女としてお屋敷に入り込んだのだが…。


満足度 評価】:★★★★☆(4.5)

変態たちが集う豪邸を舞台にした痛快なエンターテインメント作品だった。

その変態も見せかけの表面的なものであり、その裏側では抑圧された世界に閉じ込められた女性たちがうめき声をあげていた。

エロティックな女たちにドキドキし、滑稽な男たちに笑い、先の読めない展開に何度もダマされた

そして最後には、檻を飛び出した彼女たちの幸せな開放感に溢れていた。


「お嬢さん」予告編 動画

(原題:아가씨)




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キャスト&スタッフ


出演者


…(「1987、ある闘いの真実」など)

ハ・ジョンウ
…(「1987、ある闘いの真実」、「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」、「群盗」、「テロ、ライブ」、「ラブ・フィクション」、「ベルリンファイル」、「チェイサー」など)

チョ・ジヌン
…(「悪魔の倫理学」、「最後まで行く」など)

ムン・ソリ
…(「悪魔の倫理学」、「ザ・スパイ シークレットライズ」、「オアシス」など)

キム・ヘスク
…(「黄泉がえる復讐」、「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」、「善惡の刃」、「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」、「ソウォン/願い」、「カンチョリ オカンがくれた明日」など)

監督・脚本

〇パク・チャヌク
…(「JSA」、「オールド・ボーイ」、「親切なクムジャさん」など)

原作

〇サラ・ウォーターズ著・「荊の城」


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2016年製作 韓国映画



韓国映画「お嬢さん」


あらすじ


日本統治下にあった1930年代の朝鮮。

孤児で詐欺師一家に育てられたスッキ(キム・テリ)は、藤原伯爵を名乗る詐欺師(ハ・ジョンウ)と手を組み、日本人の令嬢・秀子(キム・ミニ)から莫大な財産を奪う計画を立てる。

そこでスッキは、秀子が叔父、上月(チョ・ジヌン)と共に暮らす豪邸で秀子の侍女として住み込み、伯爵は秀子をそそのかし、ゆくゆくは秀子と結婚し、日本へ連れて行ってから財産を奪った後、精神病院に入れてしまう計画だったのだが…。



韓国映画「お嬢さん」キム・ミニとキム・テリ


感想(ネタバレあり)


なぜ、昭和初期の日本が舞台だったのか


映画の舞台は1930年代、昭和初期の日本。

朝鮮の人里離れた豪邸に富豪たちが集まり、夜な夜な朗読会が開かれる。

ここで読まれるのは普通の小説ではない。

エロティックな描写が満載の官能小説だ。



それを一家の令嬢・秀子に読ませ、男たちはジッと聞いている…。

まさに、官能小説フェチな変態のための朗読会だ。



私はその変態ぶりを観て、この当時に活躍した日本を代表する小説家、谷崎潤一郎や江戸川乱歩を思い出した

彼らの世界観が、この映画にはふんだんに溢れて出ている



みずみずしい桃に「ぶしゅっーー」っと音を立てながらかぶりつく伯爵、地下室でうごめく大ダコ、秀子の口に指を入れ、出し入れさせながら歯を磨くスッキ。

その全てのエロティシズムが、谷崎潤一郎であり、江戸川乱歩の世界観を感じさせていた



それは、彼らの世界観を表現するために、時代背景を彼らの活躍した昭和初期にし、わざわざ日本語のセリフを多用したのではと思うほどだった。

谷崎潤一郎や江戸川乱歩の香りに導かれながら、ここにはめくるめく変態の世界が広がっている

この映画は、世界各国の映画祭や映画賞で非常に高い評価を得ている作品ではあるけど、もしかしたら、日本人が最もこの世界観を受け入れやすい国民なのかもしれない。



韓国映画「お嬢さん」キム・ミニ


観客をダマすための三部構成


この映画は、観客をダマすための三部作で構成されている。



第一部は、「お嬢さん」の侍女になったスッキの視点から描かれ、「えっ??この先どうなるの??」というところで終了している。

そこで、第二部は、その続きから新たな世界が展開されるんだろうな…と期待する。

ところが、その期待はあっさりと裏切られる。



第二部が始まったところで、物語は、また最初に戻る。

第二部はお嬢さんからの視点で、物語の裏側が描かれる

また、同じことの繰り返しかと思いきや、この映画は、この第二部が異常に面白い。



第一部は前菜でしかなく、第二部がお腹いっぱいのメインディッシュだった。

全ての事柄には裏があったのだ。



豪邸に閉じ込められ、夜な夜な変態な伯爵たちのために読書をしていた「お嬢さん」。

「お嬢さん」は、そんな変態の館を出たいと思っていた。



そこへ現れた救いの天使「スッキ」と、良いカモの「藤原伯爵」。

彼らのおかげでお嬢さんに脱出のチャンスが巡ってきた。

これは、「お嬢さん」の性奴隷からの解放を描いていたのだ。



そしてついに、お嬢さんがスッキの手を握り初めて家の敷居を越えた時、彼女の顔に現れた満面の笑みが何よりも印象的だった。



それだけでは終わらない。



第三部では、「お嬢さん」による叔父様と伯爵への復讐が描かれる。

ただ脱出するだけではなく、最後には落とし前をキチンとつけている

第一部で始まった物語が、第二部で全部覆され、「あ~騙された」と思っていると、第三部では、これまで恵まれなかった彼女たちに幸せが訪れる。

この三部までの構成が、全く想像がつかなくて、先の読めない展開に最初から最後までドキドキしっぱなしだった。



韓国映画「お嬢さん」ハ・ジョンウとキム・ミニとキム・テリ



虐げられて育った女性たちの復讐の物語


さっきもちょっと書いたけど、この三部構成を通して思ったのは、「抑圧された女性たちの解放」だった。



常にエロティックな描写がある本の朗読を強制させられる秀子。

彼女は、官能小説フェチたちの性奴隷だった。



そして、孤児であり、幼い頃から人をダマすことを教えられて育ったスッキ。

詐欺師たちの道具のように扱われていた彼女も、まるで奴隷のような生活を送っていた



そんな彼女たちが出会い、愛し合い、男たちをダマす計画を立てる。

力で戦ったら負けてしまう彼女たちは、色気で勝負する。



それは【秀子版】「上手な男の落とし方」だった。

キスをする、触らせる、伯爵の前で裸になる。

でも、最後まではいかせない。



そこは徹底的にじらす。じらす。じらす。

とことんじらした末、伯爵が自分に夢中になった瞬間が、復讐の機が熟した時

そこから全てが急展開する。



あの口移しのワインのシーンは、ドキドキしっぱなしだった。



韓国にしろ、日本にしろ、現代になっても女性の地位がまだまだ低く、家庭にしばられ、自由な生活を送れない女性たちがたくさんいる。

そんな女性たちへのメッセージのような映画だった。



どんな状況下であっても、勇気を持って自分の喜びを追及すれば、超えられない壁はない。

その向こうには、誰にも邪魔できない幸せがある。

だからこそ、女性たちよ、抑圧された世界から立ち上がれ!

そんなポジティブなメッセージを感じた作品だった。

いや~すごい映画だった。




韓国映画「お嬢さん」ハ・ジョンウとキム・ミニ


女性たちを解放したいと思ったのは、パク・チャヌク自身なのか


監督は「オード・ボーイ」のパク・チャヌク。

常に唯一無二の存在であり、誰にも真似できない世界観を持っている。



インタビュー記事を読んだところでは、パク・チャヌクは、原作「荊の城」を読んだ時に侍女がお嬢さんの歯を磨く場面を読んで映像化したい!と思ったそう。



ところが、この映画「お嬢さん」と「荊の城」では、ラストが違うのだという。

この「お嬢さん」では、パク・チャヌク監督自身が「こうなったらいいなぁ」という願望を込めてラストを書いたらしい

だから、完全な原作というよりも、インスパイアされたと言った方が近いらしい



なる程、虐げられて育った女性たちが解放されたら良いなぁと思っていたのは、パク・チャヌク自身だったのか

そんなことを言われたら、「荊の城」のラストが気になり、原作が読みたくなってしまった。



そして、これまでパク・チャヌクといったら、痛いとか、グロいというイメージが先行していた。

(もちろん、「オールド・ボーイ」のせいだけど…)

それが今回は、そのイメージを払拭し(多少痛いシーンはあるけれど)、痛快で、爽快な作品に仕上がっていたのが、パク・チャヌクの新しい魅力かと思った。



これまでの「暗」のイメージが一転して「明」に変わったぐらい、ガラリと変わった世界を観た気分になった。

となると、この「お嬢さん」を経たパク・チャヌクが次に見せてくれるのは、どんな世界のなのか…

次回作が、早く観たくなってきた…。




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