ソル・ギョング、イム・シワン主演の韓国映画「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」を試写会で観た。
マフィアと刑事のだまし合い、腹の探り合いを描くハードボイルド作品。
【満足度 評価】:★★★★☆
面白かったなぁ。
この話はどう決着するのかと考えながら観つつ、最後まで気を抜けない展開が面白かった。
ソル・ギョングとイム・シワンでなければ成り立たない作品で、そこがとても良かった。
◆「名もなき野良犬の輪舞」(字幕版)
◆DVDで観る:「名もなき野良犬の輪舞」
…(「22年目の記憶」、「1987、ある闘いの真実」、「殺人者の記憶法」、「監視者たち」、「ソウォン/願い」、「ザ・スパイ シークレット・ライズ」など)
〇イム・シワン
…(「ワンライン/5人の詐欺師たち」など)
〇キム・ヒウォン
…(「王様の事件手帖」、「女は冷たい噓をつく」など)
〇チョン・ヘジン
…(「黄泉がえる復讐」、「詩人の恋」、「王の運命(さだめ)歴史を変えた八日間」など)
〇イ・ギョンヨン
…(「国選弁護人 ユン・ジンウォン」、「インサイダーズ 内部者たち」、「メモリーズ 追憶の剣」、「パイレーツ」、「提報者~ES細胞捏造事件」、「群盗」、「テロ,ライブ」など)
〇ホ・ジュノ
2017年製作 韓国映画
犯罪組織でナンバー1になるという野望を持つジェホ(ソル・ギョング)は、刑務所の中で出会ったヒョンス(イム・シワン)と意気投合。
その後、共に行動するようになるが、ヒョンスは刑務所にいる間に母が事故死。
その時、葬式をだしてくれたのがジェホだったこともあり、ヒョンスは自分が警察の潜入捜査官であることをジェホに告白する…

これはかなり男臭い話だったけど、先の展開が読めない面白い作品だった。
裏社会を舞台に、マフィアでNo.1を目指すジェホと、マフィアを摘発するために送り込まれた潜入捜査官ヒョンスが出会う。
そこで、本来なら敵同士の彼らが、意気投合し友情を育むようになる。
そこへ、彼らの周りにいるマフィアや刑事たちも巻き込んで、腹の探り合いとだまし合いを繰り返し、生き残りをかけた戦いへと発展していく…。
その物語を成立させているのは、キャスティングの成功にあると思った。
マフィアの世界で「神」の立場を目指すジェホ。
彼はいつも笑顔でいるのだが、その向こうにある本心が見えない。
その「何を考えているのかわからない」薄気味悪さを、ソル・ギョングは非常に巧みに演じている。
また、ドラッグを売りさばくマフィアの世界の中で、「掃き溜めに鶴」のように舞い降りてくるのがヒョンスである。
その野獣の群れに放たれた子羊であるヒョンスを演じるのがイム・シワンなのであるが、彼は見事にその羊の皮をはいで化けて見せる。
この映画は、主演のふたりを彼らが演じているからこそ成立しているのである。
特にイム・シワンは、大先輩ソル・ギョングの前で臆するどころか、彼を食ってしまう演技を見せる。
イム・シワンがいなければ、この映画は成り立たなかったと思う。

これは、二人の男のバディムービーであり、ブロマンスでもある。
刑務所で出会ったジェホとヒョンスは、意気投合し、兄弟の仲になる。
ここまでは、韓国ドラマによくある話である。
この韓国の男性同士の兄弟の関係っていいなぁといつも思う。
ときには本当の家族のように、場合によっては家族以上の関係になることもあって、韓国特有の人と人の距離の近さをいつも感じながら観ている。
ただし、ジェホには欠点があった。
彼は「徹底的に他人を信用できない」のである。
いくら意気投合したヒョンスと兄弟の関係になったといっても、信用できない。
そこで、ジェホはヒョンスの心をつかむために、ある仕掛けをするのだが、これが、後々ジェホ自身の首をしめることになる。
「人を信用できない」という悲しい彼の欠点が、彼自身を不幸に追い込むことになるのだ。
そんな風に「本心が見えない」ジェホだけど、彼の心の底ではヒョンスは他の人とは明らかに違っていた。
それなのに、ヒョンスの忠誠心を疑ってしまった。
ジェホは他人を疑わなければ生きていけない悲しい性分なのだ。
この映画の中で印象に残っているセリフは、イ・ギョンヨン演じるマフィアのボスのものだ。
「野良犬を拾って、立派な忠犬になるように手間をかけて育てていたら、思った以上に育ってしまって主人にかみつくようになったら、どうすればいい?」
それは、マフィアの中でボスをしのぐ勢いで勢力を拡大させていくジェホのことを言ったセリフだけど、ヒョンスを拾ったジェホの心境を表しているセリフでもある。
ちなみにその答えは、「こっちが食われないうちに処分してしまえ」だった。
しかし、人間には「情」があって、飼い犬が飼い主に噛みつくことより、愛情かけた飼い犬を処分することの方が難しいのである。
神になりたい男・ジェホは、迷える子羊・ヒョンスを拾って飼いならしたつもりでいたけれど、ヒョンスは裏社会で思った以上に頭角を現していく。
自分の目の前でたくましく成長していく弟を笑顔で見守りつつも、内心、自分の領域が侵されていくことにジェホは不安になっていくのだった。
その反面、迷える子羊のヒョンスは、母一人、子一人で育ち、その母は病気でありながら、貧しい家庭のため満足な治療を受けられずにいた。
だから、彼は手っ取り早く金が稼げる裏社会に足を入れたのだが、そんな彼の母親の治療をすれば、彼はひれ伏すに違いないと読んだ警察に利用されてしまう。
しかし、その母が亡くなってしまったため、頼れるのがジェホだけになってしまう。
ジェホが母の葬式代まで出してくれたことで、ジェホはヒョンスにとって兄というだけでなく、父親代わりにもなった。
しかしそれは、ヒョンスの忠誠心を警察からジェホへシフトチェンジさせるためにジェホにが仕組んだ罠だったことが発覚する。
結局、はじめはありふれた野良犬だったヒョンスは、警察とジェホの間で踊る相手を変えながらくるくると振り回されることになってしまったのだ。
だから、この映画の邦題は「名もなき野良犬の輪舞」なのだ。

この映画の面白いところはそこから先だ。
無残にもヒョンスの母を殺したことで彼の忠誠心を得たジェホ。
ジェホのたくらみをヒョンスにばらすことでヒョンスのリードを握っておきたい警察。
父のように信頼しきっていたジェホに騙されていたことを知って愕然とするヒョンス。
この腐りきったトライアングルの中で、誰が生き残り、どう決着をつけるのか。
きっと、誰もが想像できない終わりを迎えたに違いない。
最後に生き残った人間は、この中で、最も無慈悲な人だった。
目と目を合わせた時に、相手に情を感じ、躊躇して殺せなかった者は、生き残れずに死ぬ運命なのだ。
なんとも世知辛いけれど、それこそが彼らの生きる世界なのだ。
そうして、彼は裏社会で絶対的なポジションを手に入れるだろうと思わせながら映画は終わっていく…。
しかし、彼はこの先、誰も信用できない孤独な道を歩いていかなければならないのだ。
それは、なんとも皮肉な結末ではないか…。

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◆「名もなき野良犬の輪舞」(字幕版)
◆DVDで観る:「名もなき野良犬の輪舞」
マフィアと刑事のだまし合い、腹の探り合いを描くハードボイルド作品。
【満足度 評価】:★★★★☆
面白かったなぁ。
この話はどう決着するのかと考えながら観つつ、最後まで気を抜けない展開が面白かった。
ソル・ギョングとイム・シワンでなければ成り立たない作品で、そこがとても良かった。
目次
「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」予告編 動画
(原題:불한당:나쁜 놈들의 세상(訳:不汗党(強盗:悪者たちの世界)/英題:The Merciless(無慈悲))更新履歴・公開、販売情報
・2018年4月29日 試写会で観た感想を掲載。
・2019年3月4日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。
現在、DVD、ネット配信、共に販売中。
◆「名もなき野良犬の輪舞」(字幕版)
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キャスト&スタッフ
出演者
〇ソル・ギョング…(「22年目の記憶」、「1987、ある闘いの真実」、「殺人者の記憶法」、「監視者たち」、「ソウォン/願い」、「ザ・スパイ シークレット・ライズ」など)
〇イム・シワン
…(「ワンライン/5人の詐欺師たち」など)
〇キム・ヒウォン
…(「王様の事件手帖」、「女は冷たい噓をつく」など)
〇チョン・ヘジン
…(「黄泉がえる復讐」、「詩人の恋」、「王の運命(さだめ)歴史を変えた八日間」など)
〇イ・ギョンヨン
…(「国選弁護人 ユン・ジンウォン」、「インサイダーズ 内部者たち」、「メモリーズ 追憶の剣」、「パイレーツ」、「提報者~ES細胞捏造事件」、「群盗」、「テロ,ライブ」など)
〇ホ・ジュノ
監督
〇ビョン・ソンヒョン2017年製作 韓国映画

あらすじ
犯罪組織でナンバー1になるという野望を持つジェホ(ソル・ギョング)は、刑務所の中で出会ったヒョンス(イム・シワン)と意気投合。
その後、共に行動するようになるが、ヒョンスは刑務所にいる間に母が事故死。
その時、葬式をだしてくれたのがジェホだったこともあり、ヒョンスは自分が警察の潜入捜査官であることをジェホに告白する…

感想(ネタバレあり)
ソル・ギョングとイム・シワンだからこそ、この映画は面白い!
これはかなり男臭い話だったけど、先の展開が読めない面白い作品だった。
裏社会を舞台に、マフィアでNo.1を目指すジェホと、マフィアを摘発するために送り込まれた潜入捜査官ヒョンスが出会う。
そこで、本来なら敵同士の彼らが、意気投合し友情を育むようになる。
そこへ、彼らの周りにいるマフィアや刑事たちも巻き込んで、腹の探り合いとだまし合いを繰り返し、生き残りをかけた戦いへと発展していく…。
その物語を成立させているのは、キャスティングの成功にあると思った。
マフィアの世界で「神」の立場を目指すジェホ。
彼はいつも笑顔でいるのだが、その向こうにある本心が見えない。
その「何を考えているのかわからない」薄気味悪さを、ソル・ギョングは非常に巧みに演じている。
また、ドラッグを売りさばくマフィアの世界の中で、「掃き溜めに鶴」のように舞い降りてくるのがヒョンスである。
その野獣の群れに放たれた子羊であるヒョンスを演じるのがイム・シワンなのであるが、彼は見事にその羊の皮をはいで化けて見せる。
この映画は、主演のふたりを彼らが演じているからこそ成立しているのである。
特にイム・シワンは、大先輩ソル・ギョングの前で臆するどころか、彼を食ってしまう演技を見せる。
イム・シワンがいなければ、この映画は成り立たなかったと思う。

「神」を目指す男の悲しい欠点
これは、二人の男のバディムービーであり、ブロマンスでもある。
刑務所で出会ったジェホとヒョンスは、意気投合し、兄弟の仲になる。
ここまでは、韓国ドラマによくある話である。
この韓国の男性同士の兄弟の関係っていいなぁといつも思う。
ときには本当の家族のように、場合によっては家族以上の関係になることもあって、韓国特有の人と人の距離の近さをいつも感じながら観ている。
ただし、ジェホには欠点があった。
彼は「徹底的に他人を信用できない」のである。
いくら意気投合したヒョンスと兄弟の関係になったといっても、信用できない。
そこで、ジェホはヒョンスの心をつかむために、ある仕掛けをするのだが、これが、後々ジェホ自身の首をしめることになる。
「人を信用できない」という悲しい彼の欠点が、彼自身を不幸に追い込むことになるのだ。
そんな風に「本心が見えない」ジェホだけど、彼の心の底ではヒョンスは他の人とは明らかに違っていた。
それなのに、ヒョンスの忠誠心を疑ってしまった。
ジェホは他人を疑わなければ生きていけない悲しい性分なのだ。

ジェホと警察の間で振り回されるヒョンス
この映画の中で印象に残っているセリフは、イ・ギョンヨン演じるマフィアのボスのものだ。
「野良犬を拾って、立派な忠犬になるように手間をかけて育てていたら、思った以上に育ってしまって主人にかみつくようになったら、どうすればいい?」
それは、マフィアの中でボスをしのぐ勢いで勢力を拡大させていくジェホのことを言ったセリフだけど、ヒョンスを拾ったジェホの心境を表しているセリフでもある。
ちなみにその答えは、「こっちが食われないうちに処分してしまえ」だった。
しかし、人間には「情」があって、飼い犬が飼い主に噛みつくことより、愛情かけた飼い犬を処分することの方が難しいのである。
神になりたい男・ジェホは、迷える子羊・ヒョンスを拾って飼いならしたつもりでいたけれど、ヒョンスは裏社会で思った以上に頭角を現していく。
自分の目の前でたくましく成長していく弟を笑顔で見守りつつも、内心、自分の領域が侵されていくことにジェホは不安になっていくのだった。
その反面、迷える子羊のヒョンスは、母一人、子一人で育ち、その母は病気でありながら、貧しい家庭のため満足な治療を受けられずにいた。
だから、彼は手っ取り早く金が稼げる裏社会に足を入れたのだが、そんな彼の母親の治療をすれば、彼はひれ伏すに違いないと読んだ警察に利用されてしまう。
しかし、その母が亡くなってしまったため、頼れるのがジェホだけになってしまう。
ジェホが母の葬式代まで出してくれたことで、ジェホはヒョンスにとって兄というだけでなく、父親代わりにもなった。
しかしそれは、ヒョンスの忠誠心を警察からジェホへシフトチェンジさせるためにジェホにが仕組んだ罠だったことが発覚する。
結局、はじめはありふれた野良犬だったヒョンスは、警察とジェホの間で踊る相手を変えながらくるくると振り回されることになってしまったのだ。
だから、この映画の邦題は「名もなき野良犬の輪舞」なのだ。

最後に生き残るのは最も無慈悲な者
この映画の面白いところはそこから先だ。
無残にもヒョンスの母を殺したことで彼の忠誠心を得たジェホ。
ジェホのたくらみをヒョンスにばらすことでヒョンスのリードを握っておきたい警察。
父のように信頼しきっていたジェホに騙されていたことを知って愕然とするヒョンス。
この腐りきったトライアングルの中で、誰が生き残り、どう決着をつけるのか。
きっと、誰もが想像できない終わりを迎えたに違いない。
最後に生き残った人間は、この中で、最も無慈悲な人だった。
目と目を合わせた時に、相手に情を感じ、躊躇して殺せなかった者は、生き残れずに死ぬ運命なのだ。
なんとも世知辛いけれど、それこそが彼らの生きる世界なのだ。
そうして、彼は裏社会で絶対的なポジションを手に入れるだろうと思わせながら映画は終わっていく…。
しかし、彼はこの先、誰も信用できない孤独な道を歩いていかなければならないのだ。
それは、なんとも皮肉な結末ではないか…。

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