ジム・ブロードベント主演の映画「ベロニカとの記憶」を試写会で観た。

40年前の親友が残した遺品からよみがえる初恋の思い出をミステリアスに描く人間ドラマ。


満足度 評価】:★★★★☆

これは、人間ドラマでありながらミステリーの部分もあって面白かった。

死者が残した素敵な思い出は、同じ記憶であるはずなのに、ある人にとっては苦痛の記憶であり、ある人にとっては初めて知る出来事だった。

これは、「人は思い出を自分の都合のいいように塗り替える」ことを描いた物語であり、それは、誰の身にも起きること。

私は、自分の過去をさらい、いつか過去に復讐されることはないだろうか…と考えてしまった作品だった。


この感想にはネタバレを含みます。ここから先は映画をご覧になってからお読みください。

「ベロニカとの記憶」予告編 動画

(原題:THE SENSE OF AN ENDING)




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キャスト&スタッフ


出演者

ジム・ブロードベント
…(「パディントン2」、「イーグル・ジャンプ」、「パディントン」、「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」、「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」、「ウィークエンドはパリで」、「ビッグゲーム」、「ブルックリン」、「ターザン:REBORN」、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」など)

シャーロット・ランプリング
…(「レッド・スパロー」、「さざなみ」、「リスボンに誘われて」、「クリーンスキン 許されざる敵」、「評決」、「ハイヒールを履いた女」など)

エミリー・モーティマー
…(「シャッター アイランド」など)

〇ミシェル・ドッカリー

〇ハリエット・ウォルター

監督

リテーシュ・バトラ
…(「めぐり逢わせのお弁当」など)


2017年製作 イギリス映画



ベロニカとの記憶



あらすじ


定年退職後、町で小さなカメラ店を経営しているトニー・ウェブスター(ジム・ブロードベント)は、40年前に付き合っていたガールフレンド ベロニカの母 セーラ(エミリー・モーティマー)の訃報を受け取る。

そこには、セーラがトニーに残した遺品があると記してあったため、訃報を送ってきた弁護士を訪ねる。

弁護士によれば、セーラがトニーに残したのはトニーの親友・エイドリアンの日記であるが、弁護士の手元にはなく、現在はセーラの娘・ベロニカ(シャーロット・ランプリング)が所有しているという。

トニーは弁護士を通じてベロニカに会えるようセッティングをするのだが…。



ベロニカとの記憶5



感想(ネタバレあり)


トニーが記憶していた40年前の失恋の思い出



辛いことがあって、それでも前に進まなければいけない時、私たちは辛い記憶にふたをして、前を向いて進み始める

それから時間が経つにしたがって、ふたをされた記憶はその人の都合のいいように塗り替えられ、40年も経った頃には、その辛い記憶は事実とは違うできごとに仕上がっている。

この映画は、主人公のトニーが40年前に起きたできごとについて記憶のふたを開けてみたところ、これまで事実とは全く違うできごととして記憶していたことに気付くという物語だった。



なぜ、彼は記憶を塗り替えたのだろうか。



40年前、トニーはベロニカと付き合っていた。

それは、トニーにとって初恋だった。

しかし、トニーは周りの友人たちから「トニーの親友のエイドリアンがベロニカと熱愛中」だと聞かされる

その話を聞きながら友人たちの前でクールにふるまったトニーも、嫉妬からくる激情にかられ、親友のエイドリアンに対してたっぷりと嫌みのこもった呪いの手紙を送る



その後、エイドリアンは謎の自殺をしてしまい、トニーはエイドリアンとベロニカの記憶にふたをしてしまう

それから40年、二人のことをすっかり忘れていたトニーだったが、ベロニカの母セーラが大切にしていたエイドリアンの日記と、ベロニカから渡された「トニーが40年前に書いた嫌みたっぷりの手紙」で少しずつその時のできごとを思い出していく。

そして、40年前のできごとがトニーの勝手な思い込みだったことに気付かされる…



ベロニカとの記憶4


噂を信じ込み、確かめなかった「真相」



ベロニカとトニーが恋に落ちた後、トニーは友人たちから「エイドリアンとベロニカが付き合っている」という話を聞かされる。

ベロニカの家に足しげく通うエイドリアンの姿が目撃され、ベロニカとトニーの関係を知らない友人たちは、てっきりトニーがベロニカとエイドリアンの間を取り持ったと思ったのだ。

その話を聞かされたトニーは、ベロニカに捨てられたと思い、エイドリアンに「二人の仲を呪う」手紙を送る。



この時、トニーは最大のミスを犯す。

彼は、ベロニカとは会わず、真相も確かめないまま「二人を許せない」という手紙を送ったのだ。

もしも会って事実を確認していたら、勘違いをすることも、間違った記憶を持ち続けることもなかったのだ




40年後に知った真相は「親友のエイドリアンが恋していたのは、ベロニカの母・セーラだった」という事実だった。

エイドリアンとセーラが出会う前、ベロニカとトニーが知り合ったばかりのころから、恐らくセーラと夫はうまくいってなかったのだ。

セーラは寂しい女性であり、明らかにトニーにも色目を使っていた

しかし、その彼女の色目に対し、トニーは見て見ぬふりをする



このトニーの現実を理解しようとしない「見て見ぬふり」が過去の記憶を捻じ曲げてしまったのだ。

「エイドリアンとベロニカが付き合っている」という噂を聞いて捨てられたと思い込み、「セーラは寂しい女性である」という事実から目を背ける。

そして、親友のエイドリアンに酷い呪いの手紙を書き、結果、エイドリアンは自殺してしまう。



ベロニカとの記憶3


40年前と同じ過ちを繰り返すトニー



それから、40年が経ち、またしてもトニーはその頃と同じ過ちを繰り返す。

ベロニカが面倒を見ている知的障がい者の「エイドリアン」を、ベロニカの息子だと思い込んだのだ。

しかし、その「エイドリアン」はセーラの息子だったのだ。

エイドリアンが自殺してしまったことを受けて、セーラは生れてきた子供に「エイドリアン」と名付ける。



そして、セーラはエイドリアンが残した日記を大切に持ち続け、二人の大切な思い出をよりによってトニーに託そうとしたのだ。

しかし、ベロニカは二人の思い出が周りを不幸にするだけだと思い、燃やしてしまっていた。

結局、セーラとエイドリアンの間にあったできごとは、ベロニカの心の中だけに残り、闇に葬り去られてしまった。



トニーは、エイドリアンがセーラの息子だと知り、そこで初めて「40年前に起きたと思ったできごと」の全てが「彼の思い込みだった」ことに気付く

エイドリアンに出会ったトニーは、彼をベロニカの息子だと思い込み、40年前と同じ過ちを繰り返そうとしていたのだ。

こっそりベロニカの後をつけるようなことをしないで、正面から挨拶して彼女の話を聞けばよかったのだ。



トニーは再び「エイドリアンはベロニカの息子」という思い込みからくる間違った記憶を重ねようとしていた。

人は40年も経てば少しは大人になるだろうと思うけど、実際は大して成長しないものなのだと、トニーを観ているとよくわかる



ベロニカとの記憶2


人は過ちを犯す生き物だからこそ愛おしい



若い男の子に色目を使い、寂しい女アピールをするセーラを見て見ぬふりをし、親友のエイドリアンに真相も確かめないまま呪いの手紙を書き、産気づいた娘よりも、久しぶりに思い出したベロニカに心を奪われているトニー。

そんな彼を観ていると、なんて鈍感で偏屈でデリカシーのない人なんだろうと思って、イライラしていた

しかし、次第に時折、彼が私の父とダブって見えるようになり、やがて愛おしくなっていった



人は間違いを犯す生き物であり、だからこそ愛おしいのだ

間違えた時は「ごめんなさい」と謝罪すればいい。

だから、彼が手紙で犯した過ちに対し、ベロニカに手紙で謝罪するところには感動してしまった。

ずいぶんと長い時間がかかってしまったけど、もう一度二人の関係をやり直せばいい。

そして、トニーはそんな彼でも必要としてくれる家族がより一層愛おしくなる



そして、この映画を観て私も学んだことがある。

かつて、人と出会い、別れるときに、特に若い頃、ちゃんと「さようなら」を言わずにお別れした経験が何度かあるし、「この人はこういう人だから無理」と勝手に思い込んだ経験もある。

これからは、人との関係でそういう終わり方はやめようと思った



私たちは人と会話でコミュニケーションがとれる生き物である

目と目を合わせて「ありがとう」も「ごめんなさい」も言うことができる。

お別れするのは心が痛いし、面倒だと思うこともあるけれど、互いの今後のために、きちんとわだかまりを取り除き「さようなら」を言うべきなのだと思った。

それが、大人になるということなのだ。



この映画の場合は、母親が同級生と恋に落ち妊娠、その同級生は自殺してしまい、恋人は勝手に怒っている…そんなベロニカがとにかく気の毒な映画だった。

しかし、ベロニカもまた、自分の本心をさらけ出せないミステリアスな性格の持ち主で、それが全て裏目に出てしまったところがある。

結局のところ、ベロニカもトニーもコミュニケーションが必要だったのだ。

でも、若すぎた二人はまだまだ不器用で、うまく立ち回ることができなかったのだ



そんな彼らを見て、私も自分自身に起きた昔のできごとをいろいろさらいながら、「何か勘違いしていることはないだろうか」と考えてしまった。

「自分の都合よく記憶を塗り替える」ということは、誰の身にも起きることだから

そして、忘れ去ったはずの過去から、いつか復讐される時が来るのでは…と思うと、ちょっとゾッとした




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