ギレルモ・デル・トロ監督の映画「シェイプ・オブ・ウォーター」を東京国際映画祭で観た。

1962年冷戦時代のアメリカで発見された半魚人と心を通わせる女性のSFファンタジー作品。


満足度 評価】:★★★★☆

愛に溢れ、心温まる優しい映画だった。

ここにあるのは、海の中の王様と、口のきけないお姫様の運命の恋。

なぜ、彼らは出会い、愛し合うことになったのか。

ギレルモ・デル・トロ監督が描く、「多様性の時代」にあるべき愛の姿。


目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「シェイプ・オブ・ウォーター」予告編 動画

(原題:The Shape of Water)



更新履歴・公開、販売情報

・2017年11月11日 東京国際映画祭で観た感想を掲載。

・2018年11月25日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVD、ネット配信、共に販売中。


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キャスト&スタッフ


出演者

サリー・ホーキンス
…(「パディントン2」、「僕と世界の方程式」、「パディントン」、「ブルージャスミン」など)

マイケル・シャノン
…(「ホース・ソルジャー」、「ラビング 愛という名前のふたり」、「ドリームホーム 99%を操る男たち」、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、「マン・オブ・スティール」、「マッド・マザー 生贄の少年」など)

リチャード・ジェンキンス
…(「LBJ ケネディの意志を継いだ男」、「アウトロー」、「扉をたたく人」など)

オクタヴィア・スペンサー
…(「gifted/ギフテッド」、「ドリーム」、「ギリー・ホプキンズの不機嫌な日常」など)

〇ダグ・ジョーンズ

マイケル・スタールバーグ
…(「君の名前で僕を呼んで」など)



監督・脚本・製作・原案

ギレルモ・デル・トロ
…(「パンズ・ラビリンス」、<製作総指揮のみ>:「MAMA」、「永遠のこどもたち」)


2017年製作 アメリカ映画



映画「シェイプ・オブ・ウォーター」



あらすじ


1962年、冷戦時代のアメリカでは、科学技術の分野でアメリカとソ連が競い合っていた。

そんな中、アメリカの調査隊はアマゾンの山奥で「神」と崇められている半魚人(ダグ・ジョーンズ)を発見する。

その半魚人が収容されている研究所で掃除の仕事をしているイライザ(サリー・ホーキンス)は、研究所で恐れられている半魚人に興味を持ち始め、手話でその思いを伝え始める…。



映画「シェイプ・オブ・ウォーター」サリー・ホーキンス



感想(ネタばれあり)


『異質なもの』に対して不寛容だった時代に出会ったイライザと半魚人


物語の舞台は1962年のアメリカ。

その当時は冷戦時代で、アメリカとソ連は科学技術力を競い合っていた。

その頃のアメリカは、今と比べて同性愛者、有色人種、障がい者への差別・偏見がまだまだ強かった時代だった。



主人公のイライザは、幼い頃に声帯を切られた状態で発見され、孤児として育つ。

人とのコミュニケーションは手話で行い、隣人の独身男性ジャイルズと助け合いながら生活していた。

そのジャイルズは同性愛者なのだが、当時は同性愛者に対する周囲の理解がなく、そのそぶりを見せようものなら、異常者扱いをされてしまっていた。

イライザは、夜間、研究所で掃除の仕事をして働いていたが、同僚のゼルダは黒人で、彼女もまた偏見の目にさらされながら生活していた。



そんな時、イライザとゼルダが働く研究所に半魚人がやってきた。

幼い頃から『異質の存在』として好奇の目にさらされてきたイライザにとって、その半魚人は『同類』であり、出会った瞬間から気持ちが分かり合えるような気がして、半魚人が威嚇してきても、臆することなく近づくことができた。

そして、そこから半魚人とイライザの心の交流が始まる。



映画「シェイプ・オブ・ウォーター」サリー・ホーキンス、リチャード・ジェンキンス



未知のものを恐れる人たちと、受け入れようとする人たち


ここに登場する人々は、当時のアメリカがその存在を認めなかった人たちである。

障がい者のイライザ、黒人女性のゼルダ、ゲイのジャイルズ、そして半魚人。

マイケル・シャノン演じるストリックランドや、ジャイルズが通うパイ屋さんの店員は、当時の典型的なアメリカ人を体現したものである。



なぜ、彼らはそれ程までにマイノリティの人たち嫌い、差別的な態度をとっていたのか

それは、彼らが「自分たちとは異なるもの」だからこそである。

人は、未知のものと出会った時、相手の行動が読めず、恐れを抱くようになる。

当時のアメリカにとって理想的なものは、ノーマンロックウェルが描くような世界であり、そこには、黒人や障がい者や、ゲイや半魚人は出てこない。

彼らは、「自分たちとは異なる」未知のものを恐れ、威圧し、時には暴力を使って彼らを服従させていた



半魚人は、そんな時代のマイノリティを象徴している存在であるが、だからこそ、同じくマイノリティのイライザは半魚人に興味を持ち、彼の言葉を理解しようとし、心を通わせようとした。

それは、ギレルモ・デル・トロ監督がこれまで一貫して描いてきた「人と異なることは素晴らしいこと」がここにも通じていて、彼らへの愛情に満ち溢れた作品となっている



映画「シェイプ・オブ・ウォーター」サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、オクタヴィア・スペンサー



言葉がつうじなくても、身振り手振りで分かり合える…それが、多様性の時代のコミュニケーション能力


やがて、イライザと半魚人は愛し合うようになるが、そのイライザと半魚人の恋を通じて描かれるのは、「言葉がなくても分かり合える世界」である。



観光地でよく見かける光景の一つとして、「外国人に話しかけられて、逃げてしまう日本人の姿」がある。

それは、「自分が英語を話せないから」という英語コンプレックスからくるものだけど、実際は、英語を話せなくても、身振り手振りと、知っている単語だけでなんとかなることがほとんど。

そこには、英語コンプレックスに加えて『外国人』という未知のものに対する恐れもある。

それは、島国で育った日本人が、どうしても異文化とのコミュニケーションがうまくなれない原因の一つである。



声を発することができないイライザにとっては、彼女以外の全ての人たちが『言葉の通じない人たち』である

相手が、白人だろうと、黒人だろうと、ゲイだろうと、半魚人だろうと、誰であっても『ゼロからコミュニケーションをスタート』させることに違いはないし、常に、『相手の表情を読む』ことでコミュニケーションを成立させてきた。

だから、イライザはいつも通り半魚人と初めて出会った時に、相手に恐れを抱くよりも、まず表情を読んだのだろう

そして、彼に好意を抱くようになる。



半魚人にとって、そんなイライザは『他の人間』と明らかに違っていて、初めて心を開く相手になった。

イライザが幼い頃から口がきけなかったからこそ、これは海の中の王様と、口のきけないお姫様の運命の恋の物語なのである。



これは冷戦時代の話であるが、現在のような『多様性の時代』だからこそ、イライザのように「言葉がなくても相手と通じ合えるコミュニケーション能力」が必要であることを、2人の恋は示している

他の人と見た目や話す言葉が違っていても、見つめ合えば分かり合えることがある

そして、そこから恋に発展することだってある。

相手を恐れるよりも、まずは理解しようとする気持ちが大切だと、ギレルモ・デル・トロ監督は訴えたかったのだと思った。



映画「シェイプ・オブ・ウォーター」



大人になった「パンズ・ラビリンス」


私たちが水の中に潜った時、周りを水に覆われて全く音の無い状態になる。

それは、イライザと半魚人にとって言葉のいらない、愛に覆われた世界である。

外でどんなに恐ろしいことが起きたとしても、水の中にいる彼らの世界は幸せな世界

だからこそ、この映画のタイトルは「The Shape Of Water」なのであり、それが彼らの愛の形なのである。



しかし、「外の世界で何が起きようとも、プリンセスには幸せな世界が待っている」という、おとぎ話の世界観は、ギレルモ・デル・トロ監督の「パンズ・ラビリンス」とどうしてもダブってしまう。

パンズ・ラビリンス」は第二次大戦の話で、こちらは冷戦の話だし、「パンズ・ラビリンス」は少女の話で、こちらは大人の恋愛の話だけれど、どうしても既視感があって新鮮味を感じなかった。



これまでアメリカが描いてきたノーマン・ロックウェル的な『理想の家庭』の時代は終わり、これからは多様性の時代であることを示唆する愛に溢れた世界観は素晴らしいけれど、どうしても、「パンズ・ラビリンス」を思い浮かべてしまい、私としては絶賛という気持ちにまではなれなかった。

むしろ、私としては「パンズ・ラビリンス」と出会った時の衝撃が強く、この「シェイプ・オブ・ウォーター」はそれを越えられなかった。

監督としては、「パンズ・ラビリンス」の少女が成長して、ここでは洗練された愛の形を示したんだろうけど、もっと違う形の結末を見せて欲しかったなと思った。





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