トム・マッカーシー監督の映画「扉をたたく人」をWOWOWで観た。

妻に先立たれ、特に生きがいもなく、ただなんとなく日々を過ごしていた大学教授が、シリアとセネガルから移住してきた若いカップルと知り合うことで、人生が変わっていく様子を描く。

【満足度】:★★★★★

とても心の奥底を打たれる良い映画だった。

この世の中には、「自由に生きること」さえも許されない人たちがいるということを思い知らされる映画だった。


「扉をたたく人」予告編 動画

(原題:THE VISITOR)




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あらすじ


コネティカットで大学教授をしているウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、共著した本についてNYで講演するように大学から依頼を受ける。

25年ぶりにNYに滞在するウォルターは、彼の持っているアパートへ行くと、見知らぬカップルが彼の部屋に住んでいた。

彼らはシリア人のタレク(ハーズ・スレイマン)と、セネガル人のゼイナブ(ダナイ・グリラ)のカップルで、知り合いから紹介されたという。

夜遅くに、その事実を知ったウォルターは、行き場のない彼らに、彼の部屋に泊まるようすすめる…。

扉をたたく人


感想(ネタバレあり)「911」以降のアメリカの移民問題


この映画では、アメリカの移民問題が描かれている。

これが本当にどうにもならない話で、すごく心が痛くなる。

今回、政府によって処分の対象となってしまうのは、シリア人の男の子と、セネガル人の女の子のカップル。

彼らは、愛し合っているとても素敵なカップルなんだけど、二人とも不法滞在。

だから、ちょっとした問題が起きただけで、強制送還されてしまうため、すごくおとなしく真面目に生活している。

そんな彼らが知り合うのは、アメリカ人で大学の教授をしているウォルター。

彼は愛する妻に先立たれ、特に生きがいもなく、惰性で日々を過ごしていた。

そんな彼がNYで彼らと出会い、その善人ぶりに心をひかれ、窮地に追い込まれた彼らに部屋を提供する。

しかし、ウォルターの善意も空しく、シリア人のタリクは何も罪をおかしていないのに、逮捕され、拘留され、送還されてしまう

これが、とても心の痛む話だった。

彼を連れて行かないで!!

本当に、心の底からそう思った。

扉をたたく人4



「911」以降の移民の現実


なぜなら、私もウォルターと同じく、彼らカップルのことがすごく好きになったから。

ジャンベという打楽器を演奏するタリクと、手作りのアクセサリーを露店で売っているゼイナブは、とても真面目て、清潔感があり、とてもしっかりしている。

まずしくも、慎ましい生活をしている彼らだけど、特に、ミュージシャンのタリクは明るく社交的で、一目で友達になりたい!と思うような人だった。

だから、タリクが逮捕された時も、ウォルターが弁護士を手配した時に、なんとかなるんじゃないかと思っていた。

しかし、そうは簡単にはいかなかった。

なぜなら、「911」以降、政府が移民に対する締め付けを強くしたからだという。

このアメリカの「移民に対する現実」は、とてもショックだった。

こんなに真面目に生きている素敵な若者なのに。

なぜ、こんな目に遭ってしまうんだろうと、考えさせられずにはいられなかった。


扉をたたく人2


最後の鍵を握るのはウォルターだった


しかし、全く解決策が無かったわけではなかった。

ウォルターが、タリクの母モーナと再婚するというウルトラ技があった。

ウォルターもモーナもパートナーに先立たれ、独身。

それなら、アメリカ人のウォルターがモーナと結婚すれば、グリーンカードが手に入る。

自動的に、タリクはアメリカ人の息子になるわけで、かなり事態は有利に進むはず。

シリアから呼び寄せることだって、できるのではないのか。

扉をたたく人3

なぜなんだ!ウォルター


ウォルターとモーナはお互い共感を持っていて、最後の夜にモーナはウォルターの部屋を訪ねている。

これは、明らかにモーナはウォルターのプロポーズを待っていた!!!

あんなに美人で、知的で、素敵なモーナが待っていた。

それなのに、ウォルターは結婚の一言が言い出せなかった。

それ程までに、元奥さんのことを愛していたのか。

しかし、私にはウォルターが、それからもその時の罪を背負って生きているように見えた

最後に、タリクが「あそこで演奏したい」と言っていた駅のホームで、無心になってジャンベを連打するウォルターの姿がなんだか切なく見えたから。

でもなぁ。最後に言いたい。

「なんで、モーナと結婚しなかったの?ウォルター!!」

扉をたたく人6


出演者はリチャード・ジェンキンス、監督はトム・マッカーシー


主人公の大学教授ウォルターを演じるのは、リチャード・ジェンキンス

この映画の演技でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたそうで。

分かるなぁ。

冒頭の数分。ピアノの先生とのやり取りを観ているだけで、ウォルターという人の気難しさが伝わってきて、「演技うまいなぁ」と思って観ていた。

最後に留置場でウォルターが職員たちに対して、「あんな いい青年に対して、こんなことをしていいのか」「こんなの間違っている」と激昂するシーンは、強く心を打つ場面だった。

他の出演作には、「LBJ ケネディの意志を継いだ男」、「シェイプ・オブ・ウォーター」、「恋するふたりの文学講座」など

扉をたたく人7


監督は、今年のアカデミー賞で作品賞(「スポットライト 世紀のスクープ」)を受賞したトム・マッカーシー

スポットライト 世紀のスクープ」を観る前に、この映画を観て良かったような気がする。

スポットライト 世紀のスクープ」と通じるものが、この映画にはありそうだから。

これからも、弱者の人権に注目した作品を作り続けて欲しいと願う。

他の作品には、「靴職人と魔法のミシン」、「ミリオンダラー・アーム」(脚本のみ)など


扉をたたく人5

たとえ困難であっても、それぞれの人権を尊重した世の中になって欲しい


確かに、「911」のような事件が起きてしまうと、移民に対する締め付けが厳しくなるのも分かる気がする。

それに対し、「もっと移民の人権を尊重すべき」なんて、簡単に言えないことも分かっている。

でも、それでも、一人一人の移民に、それぞれの人生がある。

人種が同じだからと言って、まるっと同じくくりで考えるのもどうかと思う。

人間を、動物園のカテゴリー分けみたいに人種で分類して住む場所を決めたところで、問題は解決しない

たとえ、それが困難な道のりだったとしても、人間、一人一人が、それぞれ尊重され、自由に生きられる世の中になって欲しいと心から願う。



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