チョ・ジョンソク主演の映画「造られた殺人」をWOWOWで観た。

テレビ局の過熱報道が、事件をねつ造していく様子を描くサスペンス映画。


満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)

今一つパンチが足りない映画ではあったけど、テレビ局が十分に裏を取らないまま事件を報道し、それが思わぬ方向へと発展してしまう様子が非常に面白かった。

実際に、テレビの報道一つで「罪のない善良な市民」が「悪人」に仕立てられてしまうことは度々あることで、多少誇張されている部分はあるにしても、この映画が描こうとしていることは的外れではないと思った。

「造られた殺人」予告編 動画

(原題:특종: 량첸살인기(特ダネ:リャンチェン殺人記))




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キャスト&スタッフ


出演者

チョ・ジョンソク
…(「王の涙 イ・サンの決断」、「観相師」など)

〇イ・ミスク

〇イ・ハナ

…(「ゴールデンスランバー」など)

ペ・ソンウ
…(スウィンダラーズ」、ザ・キング」、「大好きだから」、「奴隷の島、消えた人々」など)

監督・脚本

〇ノ・ドク

2015年製作 韓国映画


造られた殺人


あらすじ


テレビ局に勤務する記者のムヒョク(チョ・ジョンソク)は、局の大口スポンサーである財閥の事件をニュースにしたことで、財閥の反発を買い、スポンサーを失うという事態に発展、長期謹慎処分を言い渡されてしまう。

家庭を顧みず、仕事に熱中していた結果、妻のスジン(イ・ハナ)とは別居中。

妻は、妊娠6か月の身重であるにも関わらず、ムヒョクと別れることを既に決意していた。

このままでは、仕事も家庭も失ってしまう危機に直面したムヒョクは、一般視聴者からの情報を元に、世間を騒がせている連続殺人事件の犯人だと思われる人物の家へと向かう。

その家には、さまざまな凶器や、連続殺人事件の記事の切り抜き、血痕などがあり、ムヒョクはその家の持ち主が犯人だと断定して上司に報告する。

すると、スクープを待ち望んでいたテレビ局は、ムヒョクのネタを警察に確認しないまま報道してしまい…。

造られた殺人2


感想(ネタバレあり)


「視聴率至上主義」のテレビ局で起きる「殺人犯捏造」事件


テレビを中心としたマスコミの過熱報道はたびたび問題になる。

例えば、芸能人や政治家の「不祥事」(不倫問題や金銭関係の問題)が起きた場合、平日の朝から夕方まで放送されるワイドショーでは繰り返し報道され、それまでとても良い人だったイメージの人でも、一日にして悪人に様変わりしてしまう。

それも、「事実関係を正しく」報道されたなら仕方がないけれど、その多くが記者会見を「悪意ある」編集で悪者に仕立てられてしまう場合が多い。

それはひとえに、「より過激でショッキングな情報」を求める視聴者のために番組を演出しているからに他ならない。

番組を作るスタッフたちも、「視聴率」を上げて、より高額なスポンサーを得るために必死なのだ。

また、その問題は日本だけで起きているものではない、お隣の韓国でも、それは深刻な問題なようだ。

この映画「造られた殺人」では、テレビ局の過熱報道によって、見事に殺人事件がねつ造されていく様子を描いている。

主人公はテレビ局の記者・ムヒョク。

仕事もプライベートも最悪の状況になってしまった彼は、視聴者からの情報提供に飛びついて、「連続殺人犯」だと思われる人物の家へ向かう。

そして、彼はたまたま留守だった容疑者の家に侵入し、「この家の家主が犯人ではないか?」と思われる証拠の数々を見つける。

さらに、その家から「殺人の独白」のような手書きのメモを持って帰ってしまう。

そのことをテレビ局の上司に報告すると、上司は警察に確認せず、裏も取らないまま、朝のニュースで「犯人と思われる人物の手書きのメモを入手」と報道、それが大反響を呼び、テレビ局のサーバーがダウンする程、視聴者が殺到する事態になってしまう。

そして、この初動で裏を取らなかったことが、後々、ドンドン話が大きくなっていくきっかけになった。

彼がつかんだネタが独り歩きし、ムヒョクは犯人ではない人を犯人だと勘違いしていることに気付く。

しかし、それは後の祭りで、視聴者はその時既に、より過激な情報を求めるようになっていた…。


造られた殺人3

「視聴率至上主義」が、より過激なネタをテレビに要求する


普通に考えて恐ろしくなるのは、テレビ局が「正確な情報」よりも、「過激な情報」を「誰よりも早く」求めているというところにある。

韓国の映画やドラマを観ていて面白いなぁと思うのは、テレビや新聞の記者たちは、警察署に寝泊まりして情報を入手している。

だから、もしも、テレビ局が警察にメモを持ち込み、「これは容疑者のものですか?」などと確認しようものなら、他のメディアにも知られてしまう。

だから、他者を出し抜くということができない。

日本だったら、それを防ぐために「捜査妨害をしないための」報道規制がある。

「これは出しても良いよ」と警察が認めたものだけを報道することができる。

捜査中の情報をテレビに流したことで、自分が容疑者だと気付いた犯人が逃げないようにするためのものだったり、それが誘拐事件だったりしたら、犯人が焦って人質を殺してしまうかもしれない。

しかし、どうも韓国はその辺の規制が日本よりも緩いように思う。

もしも、このメモが本当に犯人のものだったら、テレビを観て、自分が容疑者だと知った犯人は逃げてしまう可能性が高い。

テレビ局は、そんな「警察の事情」よりも、自分たちの「視聴率」のために番組作りをしてるのだ。

だから、常に他者よりも過激なネタを、より早く報道したがっている。

恐らく、ムヒョクが財閥のネタをニュースにしたのも、その「視聴率至上主義」のためのものだっただろう。

「特ダネ」を取れば、社内の待遇が良くなるのだ。

だから、仕事もプライベートも崖っぷちのムヒョクは迷うことなく、一発逆転のために、この「特ダネ」に飛びついたのだ。


造られた殺人4

テレビ局によるねつ造で、誰かが犠牲になるべきだったのかも…


ところが、彼が取り上げた容疑者は、ニセモノというより、彼が「容疑者だ」と早合点しただけだった。

ムヒョクがそのことに気付いた時には、国民の全てが「殺人者のメモ」だと信じて疑わず、「逮捕される」という「続報」を待っていた。

ムヒョクも引くに引けない状況に追い込まれてしまっていた。

落ち着いて考えてみてば、あの家にあった血痕だって、「ただの血のり」だっていうことに気付いたはず。

そんな冷静な判断を失ってしまうぐらい、そのときのムヒョクは追い詰められていたのだ。

同じく冷静な判断を失っていたのは、警察だった。

それまで地道に捜査をしていたのは警察なのに、マスコミの情報に振り回され、国民からは「早く逮捕しろ」とせっつかれ、テレビ局が出した嘘の情報に対して余計な捜査に時間を取られ、犯人を絞り込めないことに焦りの色を見せる。

国民も、警察も、たった一枚の「殺人メモ」に気を取られてしまったのだ。

これは、まさに木を見て森を見ずの状況だった。

より過激でショッキングな情報に心を奪われてしまい、全体像を見ようとしない。

本当に大事な情報は、「犯人はどんな人をこれまでターゲットにしてきたか」なのだ。

肝心な犯人は、嘘の情報を捏造したムヒョクのおかげで、偽の犯人を隠れ蓑にすることができた。

結局、真犯人はムヒョクによって殺されることになるが、その後、テレビの報道によって「ヒーロー扱い」されることになったのは、とても皮肉な話だ。

これでは、殺された人たちが報われない。

ムヒョクが真相を話さない限り、殺人犯不詳のまま事件は結末を迎え、以後、この連続殺人犯によって誰かが殺されることはない。

そして、国民は「次の過激な事件」へと関心が移っていく。

この話が非常にラッキーだったのは、ムヒョクが犯人像を勝手に作り上げたことで、誰かが犠牲にならなかったことだ。

もう少しムヒョクの到着が遅かったら、誰かが殺されていたのかのしれない。

私が思うに、もしかしたら、この映画はムヒョクのせいで、誰かが犠牲になるところを描いても良かったのかもしれない。

そしたら、「テレビ局が負うべき責任」について問える作品になったし、現在の過熱報道に対する警笛にもなった。

そこまでしなかったのが、この映画の優しさであり、物足りなさだったように思う。


造られた殺人5

大事なのは「ショッキングな出来事」よりも、「何が起きているか」という真実


最後、とても印象的だったのは、ムヒョクの「父親鑑定」である。

妻のスジンは、ムヒョクが家庭を顧みず仕事ばかりしていた時に浮気をして妊娠していた。

それでも、スジンは「ムヒョクが父親だ」と言い切っていた。

そこで、生まれた娘がDNA的に自分の娘なのかどうかを、ムヒョクは検査に出していた。

しかし、彼はその結果を見ないまま、書類を燃やしてしまう。

それは、彼にとって「DNAが示す真実」よりも、「娘の父親であること」が大切だと考えた結果だった。

それは、この一連の事件の中で、「殺人メモ」という些末なことに気を取られ、事件の本質が全く見えていなかったことへの反省から来ているのかと思った。

問題は、「人をゾッとさせるようなショッキングなネタ」ではなく、「そこでは実際に何が起きているのか」なのだ。

これまで、「特ダネ」ばかりを追いかけてきたことで、家族を失いかけたムヒョク。

これからは、「特ダネ」よりも、一歩引いた立場で「今そこにある事実」を優先するよう改心したのかもしれない。

しかし、この映画のぬるさでは、今の過熱報道に釘をさすような作品にはなり得ない。

それが、とても残念なところだ。

あと一歩、激烈なパンチが欲しいところだった。





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