アンジェリーナ・ジョリー監督の映画「不屈の男 アンブロークン」を試写会で観た。
陸上のオリンピック選手であるルイ・ザンペリーニが、第二次大戦に空軍兵士として配属されたことから、壮絶な運命をたどることになった実話の映画化。
【満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)
すごく胸を打つシーンも多いし、最後には涙もしたけど、傑作というには少し物足りない作品だった。
私が「ここをもっと知りたい」と思ったところと、監督が伝えたいと思うところに差異があって、そこが埋まらないまま終わってしまったのが残念だった。
◆ネット配信で観る:「アンブロークン 不屈の男」(字幕版)
◆DVDで観る:「アンブロークン 不屈の男」
◆「UNBROKEN」DVD【輸入版】
◆原作本「Unbroken: An Extraordinary True Story of Courage and Survival」
…(「チューリップ・フィーバー」、「マネー・モンスター」、「ベルファスト71」など)
〇ドーナル・グリーソン
…(「グッバイ・クリストファー・ロビン」、「ピーターラビット」、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」、「バリー・シール/アメリカをはめた男」、「レヴェナント/蘇りし者」、「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」、「FRANK-フランク-」、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、「ブルックリン」など)
〇ギャレッド・ヘドランド
…(「マレフィセント」、「ソルト」、「ボーン・コレクター」、「60セカンズ」など)
2014年製作 アメリカ映画
イタリア移民の息子としてアメリカで育ったルイ・ザンペリーニ(ジャック・オコンネル)は、1936年、ベルリンオリンピックに陸上5000mの選手として出場する。
その後、第二次大戦では、空軍パイロットとしてハワイ島に配属される。
ある日、味方空軍機が海へ墜落したのを受け、救助に向かうが、自分たちの乗っていた戦闘機が墜落してしまう。
運よく助かったルイだったが、それから47日間海上を漂流し、生き残った仲間のフィル(ドーナル・グリーソン)と共に助けられたのは、日本の戦艦だった…。

この映画の監督は、アンジェリーナ・ジョリー。
彼女は、国連難民高等弁務官の親善大使をここ10年間ほど行っている。
そのため、難民や人権の問題には誰よりも敏感になるはずで、この映画では「捕虜の人権」について最も強くスポットライト当てて描かれている。
きっと、ルイ・ザンペリーニの壮絶な人生を知り、「戦時下における人格の崩壊」や「捕虜の不当な扱い」について、事細かに全て伝えたくなった…のだろうという、彼女の強い意志が伝わってくる作品になっている。
ただし、「捕虜の人格」について描くのであれば、先日観た「ブリッジ・オブ・スパイ」の方が、とても分かりやすく、またとても身近な問題として上手に描かれている。
奇しくも、脚本は同じコーエン兄弟。
ここは、熟練監督のスピルバーグと、新人監督のアンジェリーナ・ジョリーの差が出てしまったかなという気がしなくもない。

だからといって、この作品が力のない酷い作品だというわけではない。
捕虜収容所での兵士たちの酷い扱いには目を伏せたくなるし、それでも生き延びようと立ち上がるルイの姿には強く心を打たれる。
しかし、私が最も強く感動したのは、最後におじいちゃんになったルイが笑顔で聖火ランナーをしている姿だった。
それは、きっともう二度と行きたくないと思ったはずの日本で、沿道の人たちに笑顔で手を振っている姿にとても心を打たれたからだ。
だからこそ、「なぜ、おじいちゃんになったルイは日本人に笑顔を見せることができたのか」を私はとても知りたかった。
残念ながら、この映画では、そこの部分が描かれることは無く、数行の説明文で察することしかできない。

遭難 → 大森捕虜収容所 → 直江津捕虜収容所と、収容所を転々とした後に終戦を迎えたルイは、帰国後に酷いPTSDに悩まされたという。
なぜ、ここのPTSDの部分を描いてくれなかったのか。
アンジーが伝えたかったのは、「捕虜収容所での不当な扱い」であって、「ルイの人生ではない」からなのか。
映画のタイトルは「UNBROKEN(不屈)」なのに、当のルイは終戦後に「心が折れている」
PTSDで苦しんだルイが、なぜ、日本人を許す気になったのか、その理由を知りたかった。
正直、捕虜収容所の部分の描写が長過ぎて、もういいだろう…と思ったことも。
だったら、最後のPTSDの部分は文章だけで済まさずにきちんと描いて欲しかったなぁと思う。
そうすれば、おじいちゃんになったルイがあんな素敵な笑顔でいられる理由が分かったのに。
でも、第二次大戦中に日本軍の捕虜となり、同じように酷い経験をした軍人が、PTSDを乗り越えて日本人を許すことになったという映画は既にある。
コリン・ファース主演の「レイルウェイ 運命の旅路」は、まさにそんな映画だった。
その辺の詰めの甘さは、新人監督ならではといったところか。
もう少し、監督として映画の勉強が必要なのかもしれないし、「捕虜の人格問題」にスポット当て過ぎたようにも思う。
そんなに延々と描かなくても、捕虜収容所の辛さは十分伝えられたように思った。

主役のルイを演じるのは、ジャック・オコンネル。
私は、この映画で初めて認識した。
今後の活躍が期待される若手俳優の一人。
ルイの友人フィルには、ドーナル・グリーソン。
日本軍の捕虜になって、ゲッソリとしていくシーンは、ジャック・オコンネルよりもドーナル・グリーソンの方が死にそうな感じで恐ろしかった。
今となっては、メジャー作品に引っ張りだこのドーナル・グリーソン。
もう、この規模の作品に出ることはないのでは…とさえ思えてくる。
日本の捕虜収容所の所長・渡辺には、雅(MIYAVI)。
音楽は聴いたことがあるだけど、動いている姿は初めて観た。
俳優として堂々としてて、違和感がなかったから、今後も映画に出て欲しいなぁと思う。
そして、監督はアンジェリーナ・ジョリー。
最近は、女優業よりも監督業の方が興味がありそう。
この映画ではいろいろな部分で詰めの甘さが見えてしまったけど、今後の作品に期待したい。
脚本には、共同脚本としてコーエン兄弟も参加している。
その割に、笑えるところが無いけど、どの辺がコーエン兄弟だったんだろうかが、とても気になった。

しかし、それにしても、このルイが最後まで生きててくれて良かった。
時折、この映画が反日的だと言われているという記事を見るけど、どこが反日的なのか分からなかった。
アメリカ映画で第二次大戦描いてて、日本が敵国なんだから、悪役として描かれるのは当たり前だと思うけど、それ以上のものはなかったように思う。
大事なことは、二度と同じことを繰り返さないということではないだろうか。
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◆原作本「Unbroken: An Extraordinary True Story of Courage and Survival」
陸上のオリンピック選手であるルイ・ザンペリーニが、第二次大戦に空軍兵士として配属されたことから、壮絶な運命をたどることになった実話の映画化。
【満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)
すごく胸を打つシーンも多いし、最後には涙もしたけど、傑作というには少し物足りない作品だった。
私が「ここをもっと知りたい」と思ったところと、監督が伝えたいと思うところに差異があって、そこが埋まらないまま終わってしまったのが残念だった。
「不屈の男 アンブロークン」予告編 動画
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キャスト&スタッフ
出演者
〇 ジャック・オコンネル…(「チューリップ・フィーバー」、「マネー・モンスター」、「ベルファスト71」など)
〇ドーナル・グリーソン
…(「グッバイ・クリストファー・ロビン」、「ピーターラビット」、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」、「バリー・シール/アメリカをはめた男」、「レヴェナント/蘇りし者」、「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」、「FRANK-フランク-」、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、「ブルックリン」など)
…(「ギャングース」など)
〇ギャレッド・ヘドランド
監督
〇アンジェリーナ・ジョリー…(「マレフィセント」、「ソルト」、「ボーン・コレクター」、「60セカンズ」など)
2014年製作 アメリカ映画
あらすじ
イタリア移民の息子としてアメリカで育ったルイ・ザンペリーニ(ジャック・オコンネル)は、1936年、ベルリンオリンピックに陸上5000mの選手として出場する。
その後、第二次大戦では、空軍パイロットとしてハワイ島に配属される。
ある日、味方空軍機が海へ墜落したのを受け、救助に向かうが、自分たちの乗っていた戦闘機が墜落してしまう。
運よく助かったルイだったが、それから47日間海上を漂流し、生き残った仲間のフィル(ドーナル・グリーソン)と共に助けられたのは、日本の戦艦だった…。

感想(ネタバレあり)
「捕虜の人格」を描きたいのなら…
この映画の監督は、アンジェリーナ・ジョリー。
彼女は、国連難民高等弁務官の親善大使をここ10年間ほど行っている。
そのため、難民や人権の問題には誰よりも敏感になるはずで、この映画では「捕虜の人権」について最も強くスポットライト当てて描かれている。
きっと、ルイ・ザンペリーニの壮絶な人生を知り、「戦時下における人格の崩壊」や「捕虜の不当な扱い」について、事細かに全て伝えたくなった…のだろうという、彼女の強い意志が伝わってくる作品になっている。
ただし、「捕虜の人格」について描くのであれば、先日観た「ブリッジ・オブ・スパイ」の方が、とても分かりやすく、またとても身近な問題として上手に描かれている。
奇しくも、脚本は同じコーエン兄弟。
ここは、熟練監督のスピルバーグと、新人監督のアンジェリーナ・ジョリーの差が出てしまったかなという気がしなくもない。

なぜ、最後に登場したルイは笑顔で沿道の人たちに手を振れたのか
だからといって、この作品が力のない酷い作品だというわけではない。
捕虜収容所での兵士たちの酷い扱いには目を伏せたくなるし、それでも生き延びようと立ち上がるルイの姿には強く心を打たれる。
しかし、私が最も強く感動したのは、最後におじいちゃんになったルイが笑顔で聖火ランナーをしている姿だった。
それは、きっともう二度と行きたくないと思ったはずの日本で、沿道の人たちに笑顔で手を振っている姿にとても心を打たれたからだ。
だからこそ、「なぜ、おじいちゃんになったルイは日本人に笑顔を見せることができたのか」を私はとても知りたかった。
残念ながら、この映画では、そこの部分が描かれることは無く、数行の説明文で察することしかできない。

本当に描いて欲しかったところとは…
遭難 → 大森捕虜収容所 → 直江津捕虜収容所と、収容所を転々とした後に終戦を迎えたルイは、帰国後に酷いPTSDに悩まされたという。
なぜ、ここのPTSDの部分を描いてくれなかったのか。
アンジーが伝えたかったのは、「捕虜収容所での不当な扱い」であって、「ルイの人生ではない」からなのか。
映画のタイトルは「UNBROKEN(不屈)」なのに、当のルイは終戦後に「心が折れている」
PTSDで苦しんだルイが、なぜ、日本人を許す気になったのか、その理由を知りたかった。
正直、捕虜収容所の部分の描写が長過ぎて、もういいだろう…と思ったことも。
だったら、最後のPTSDの部分は文章だけで済まさずにきちんと描いて欲しかったなぁと思う。
そうすれば、おじいちゃんになったルイがあんな素敵な笑顔でいられる理由が分かったのに。
でも、第二次大戦中に日本軍の捕虜となり、同じように酷い経験をした軍人が、PTSDを乗り越えて日本人を許すことになったという映画は既にある。
コリン・ファース主演の「レイルウェイ 運命の旅路」は、まさにそんな映画だった。
その辺の詰めの甘さは、新人監督ならではといったところか。
もう少し、監督として映画の勉強が必要なのかもしれないし、「捕虜の人格問題」にスポット当て過ぎたようにも思う。
そんなに延々と描かなくても、捕虜収容所の辛さは十分伝えられたように思った。

若手俳優たちの共演が楽しい
主役のルイを演じるのは、ジャック・オコンネル。
私は、この映画で初めて認識した。
今後の活躍が期待される若手俳優の一人。
ルイの友人フィルには、ドーナル・グリーソン。
日本軍の捕虜になって、ゲッソリとしていくシーンは、ジャック・オコンネルよりもドーナル・グリーソンの方が死にそうな感じで恐ろしかった。
今となっては、メジャー作品に引っ張りだこのドーナル・グリーソン。
もう、この規模の作品に出ることはないのでは…とさえ思えてくる。
日本の捕虜収容所の所長・渡辺には、雅(MIYAVI)。
音楽は聴いたことがあるだけど、動いている姿は初めて観た。
俳優として堂々としてて、違和感がなかったから、今後も映画に出て欲しいなぁと思う。
そして、監督はアンジェリーナ・ジョリー。
最近は、女優業よりも監督業の方が興味がありそう。
この映画ではいろいろな部分で詰めの甘さが見えてしまったけど、今後の作品に期待したい。
脚本には、共同脚本としてコーエン兄弟も参加している。
その割に、笑えるところが無いけど、どの辺がコーエン兄弟だったんだろうかが、とても気になった。

しかし、それにしても、このルイが最後まで生きててくれて良かった。
時折、この映画が反日的だと言われているという記事を見るけど、どこが反日的なのか分からなかった。
アメリカ映画で第二次大戦描いてて、日本が敵国なんだから、悪役として描かれるのは当たり前だと思うけど、それ以上のものはなかったように思う。
大事なことは、二度と同じことを繰り返さないということではないだろうか。
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コメント
コメント一覧 (2)
ぼくはアンジェリーナ ジョリーを信じている。
彼女がルイス ザッペリーニに出会い、ほんとうに尊敬した。
インスパイアされ、映画を作ろうと決意したことも。
でも、その思いが空回りしてしまった。
漂流シーンや収容所シーンは三分の二にしていれば、もっと締まった作品になったろう。でも、まだ監督2作目だ。
アンジーの視点は確かなのだから、ぼくは期待している。これからも。
コメントありがとうございます。
私も、この映画のどこを観て反日的と言われているか、全く理解できないです。
そうなんです。
まだ、ちょっと監督としの経験が足りないだけで、彼女の思いは伝わる映画になっていたと思います。
アンジーには、今回の一部の人の非難に懲りず、また日本に来て、あの素敵な笑顔を見せて欲しいと思います。