三部作の完結編「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」を映画館で観た。

類人猿と人間の対決を描く完結編。

前作で類人猿のリーダーとなったシーザーと、猿ウィルスという疫病により破滅へと向かう人間たちを率いる大佐との対決が描かれている。


満足度 評価】:★★★★☆

かわいい赤ちゃんの頃からシーザーを観てきた者としては、人間と争わなければならず、その葛藤に苦しめられるシーザーを観ているのが、とても切ない作品だった。

しかし、そのシーザーの心根の優しさが、この惑星を『猿の惑星』にしたんだということが分かった作品だった。

それにしても、第一作目に『創世記』という邦題を付けた人、天才だと思った

その理由も、この感想の中に書いてある。


「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」予告編 動画

(原題:War for the Planet of the Apes)




更新履歴・販売情報


・2017年10月21日 映画館にて鑑賞した感想を掲載。

・2018年8月4日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、ネット配信・DVD共に販売中。

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キャスト&スタッフ


出演者

アンディ・サーキス
…(「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」、<監督のみ>「ブレス しあわせの呼吸」など)

ウディ・ハレルソン
…(「LBJ ケネディの意志を継いだ男」、「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」、「スリー・ビルボード」、「スウィート17モンスター」、「ファーナス 訣別の朝」など)

スティーヴ・ザーン
…(「はじまりへの旅」など)

〇アミア・ミラー

監督

マット・リーヴス
…(「クローバーフィールド/HAKAISHA」など)


2017年製作 アメリカ映画



猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)



あらすじ


人間が作ったウィルスから発生した疫病により、人類は破滅の道へと向かっていた。

そんな中、生き残った人間たちは、類人猿との戦いを続けていた。

類人猿のリーダー・シーザー(アンディ・サーキス)は、争いをやめ、人間との共存を願っていたが、軍隊を率いる大佐(ウディ・ハレルソン)により妻と息子を殺されてしまう。

シーザーは復讐の鬼と化し、類人猿たちを別の居住地へと避難させ、一人で大佐の元へと向かうが、モーリスなど、数名の側近たちは彼に付いて行くことに。

その後、シーザーたちが大佐の元へ向かっている途中、一人の口のきけない少女に出会う…。



猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)5



感想(ネタばれあり)


最初から結末の筋書きが分かっている作品



この「猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)」は、「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」、「猿の惑星 新世紀(ライジング)」と続く三部作の完結編。

この完結編では、前作で類人猿のリーダーとなったシーザーと、ウィルスによる疫病により破滅へと向かう人間たちのを率いる大佐との対決が描かれている。



この映画のキャッチコピーは

あなたは、最後を見届ける 最初の人類になる

そこから、「人類の最後」が描かれるんだなということが読み取れる。

私も、最初、このキャッチコピーが書かれたポスターを観た時に、「これはネタバレじゃないか」と思った。

さらに、初代、チャールトン・ヘストン版「猿の惑星」を観た人なら、余計に結末が分かってしまうはず。



しかし、この物語が伝えたいのが、「人類が破滅するのか、しないのか」ではなく、「なぜ、破滅するのか」だということが、だんだんと分かってくる

私たちがこの映画を観て感じ取るべきなのは、『結果』ではなく、その『過程』なのだ。



ここには、2人の対照的なリーダーが登場する。

人間の軍隊を率いる『大佐』と、類人猿を率いる『シーザー』

何から何まで対照的な2人の行動を見ていると、指導者の判断一つで、一方は破滅へ向かい、もう一方は繁栄していくのが分かる。



なぜ人類は破滅へ向かい、類人猿は繁栄し、この星は『猿の惑星』になったのか。

その理由を考えてみた。



猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)4


大佐とシーザー、対照的なリーダーの対比から見えること



人間の軍隊を率いる大佐は、カリスマ的な威厳を持ち、恐怖を植え付けることで軍人たちを従わせ、率いている典型的な独裁者。

その様子は、まるで『地獄の黙示録』そのもの

恐らく、長い戦闘状態の間に気がふれてしまい、人を殺すことに何の感情持たなくなってしまった恐ろしき指導者



その彼が軍隊に植え付けている「恐怖」というのが、「類人猿」であり、「ウィルス」である。

人は、未知のものに遭遇すると、その多くが最初は恐怖を抱く。

大佐は、その多くの人間が抱く「恐怖」をうまく利用する



「ウィルスに罹ったものは殺せ」、「類人猿のリーダーを殺せと」というスローガンを掲げると、恐怖におびえ、将来に不安を感じていた人間たちに具体的な目標ができ、モチベーションが上がっていく。

それは、ヒトラーがナチスを率いる時に用いていた「ユダヤ人を殺せ」のスローガンと同じである。



大佐の考えに異論を唱える者は容赦なく殺されていく。

するとそのうち、独裁的な大佐についていけなくなる者が現れる。

そして、人間の間でも大佐派と、反大佐派に別れ、人間同士が殺し合うようになる



その大佐とは対照的な行動をしたのが、類人猿のリーダー、シーザーである。

どんなことがあっても、「殺戮をやめよう」と考えていたシーザーは、人間を捕えても捕虜にすることなく、人間の元へ返していた

彼のかけた慈悲が、互いの平和を生むと考えていたからだった。

しかし、大佐はそのシーザーの優しさを利用し、彼の家族を殺してしまう。



その時、シーザーの中には憎悪や恨みといった悪の感情が生まれる。

ところが、そこで「人間たちに復讐を」とならないところが、指導者シーザーが独裁者の大佐と違うところである。

あくまでも憎いのは大佐本人であり、人間ではない

類人猿の中に、シーザーの意見に反対する者がいても、それをとがめることをせず、引き留めることもしない。



その2人のリーダーが指導した結果、人間たちの殺し合いは加速し、類人猿たちは共に手を取り合い助け合うようになっていく。

本来あるべきリーダーの姿は、どちらが正しいのか

この映画では、大佐とシーザーを対比させることで、「戦争」や「恐怖政治」からは憎しみや破滅しか生まれないことを描いている。

真の平和と繁栄は、互いの存在を認め合うことから始まるのだ。



猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)3


次世代の人類の形 少女・ノバ



そもそも、その疫病の元となったウィルスを作り出したのは人間だった。

アルツハイマーの特効薬を研究していた化学者が作り出した薬が原因で『猿インフルエンザ』という病気に発展する。

一方で、その薬を投与されたチンパンジーは知能が向上する。



このできごとは、神の怒りをかうことになる

聖書に出てくる「バベルの塔」では、人間たちは言葉を巧みに使ってコミュニケーションをし、自分たちの高い技術力を過信し、天にも届く程の高い塔を作ったことで神の怒りをかってしまう。

その結果、互いに言葉が通じないようにさせられてしまう。



この映画で化学者たちは、最先端の技術を駆使し、類人猿の知能を発達させ、神が作ったチンパンジーとは違う生き物にしてしまう。

そうして、神の領域に踏み込んだ人間たちに制裁を加えるため、神は同じ薬で疫病を蔓延させ、彼らの口をきけないようにしてしまう。



その「バベルの塔」が象徴するのが、口のきけない少女・ノバである。

ノバ(イタリア語で“新しい”の意)は、新世代の人間の形だ。

口がきけないため、他の人間たちとコミュニケーションが取れず、類人猿たちと手話で会話するようになる。

そして、「私も類人猿になりたい」と願うようになる。



それは、「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」で、人間並みの知能を持ったシーザーが「人間になりたい」と願っていたのと立場が逆転したことを示している。

ノバの登場こそが、この星が『猿の惑星』になったことを示しているのだ。



ちなみに、聖書で「バベルの塔」が登場するのは、旧約聖書の「創世記」だそうで、邦題の上手さに思わずうなってしまった



本来、科学は人間の生活を助け、豊かにするためのものであり、自然の摂理を壊すものではない。

神の領域を犯したものは、必ず、神から制裁を受けることになる。

ノアはその結果として登場するが、彼女が猿たちと共存していくことができれば、人間にとって希望となるし、それができなければ、人間は絶滅する

彼女は人類が生き残るためのカギを握っている。



猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)2


憎しみ合いからは何も生まれない。互いの存在を認め合うことが平和への道のり



目の前に起きている恐怖(類人猿や猿ウィルス)と向かい合うことができず、恐怖の対象となるものは全て殺し、ついには人間同士が殺し合うようになる。

さらに、科学の進歩を過信し、治療不可能なウィルスを蔓延させることになってしまった人間の科学技術

そこから浮かび上がってくるのは、人間の愚かさと傲慢さ

それらが、人間を破滅へと導くことになる。



その一方で、類人猿にとって脅威となる人間との共存を模索し、殺戮を終わらせ、常に平和への道のりを考えていた類人猿たち

彼らは繁栄の一途をたどり、この星は類人猿のものとなる。



その対照的な二つのできごとの中で、最も怖いのは、指導者の選び方一つで吉にも、凶にもなるということ。

指導者選びを間違えれば、人類は破滅する可能性だってある。



そこから感じたのは、政治の大切さだった。

恐怖におののき、ヒトラーのような強い指導者を選んでしまうと、逆に世界は恐怖に包まれる。

それよりも、勇気を持って和平を模索する指導者が人類を繁栄に導くことができる



「創世記」の頃は、かわいい、かわいいシーザーの成長記を観るような軽い気持ちで見始めたら、とても奥が深いことに驚かされた。

言葉は、凶器にもなるし、平和の使いにもなる。

これからの時代は、その言葉を巧みに操る政治家たちにだまされず、最もふさわしい指導者を見抜く目が必要であると考えさせられた作品だった。



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