ジェレミー・レナー主演の映画「ウインド・リバー」を映画館で観た。

インディアン居留地「ウインド・リバー」で起きた殺人事件を通して、アメリカの抱える闇を描く。


満足度 評価】:★★★★☆(4.5)

素晴らしい映画だった!

ただのサスペンス映画ではない。

果たしてインディアン居留地で何が起きたのか。

その絶望の地で暮らす人々の心の闇は深い。

けれど、ジェレミー・レナーの存在こそが未来を開くカギになる。

最後は涙が溢れた。


目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


『ウインド・リバー』予告編 動画

(原題:Wind River)



更新履歴・販売情報

・2018年8月3日 映画館にて鑑賞。

・2018年8月25日 感想を掲載。

・2019年5月19日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

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キャスト&スタッフ


出演者

ジェレミー・レナー

ジョン・バーンサル

〇ギル・バーミンガム

〇ケイシー・アスビル

〇グレアム・グリーン


監督

〇テイラー・シェリダン


2017年製作 アメリカ映画



映画「ウインド・リバー」



あらすじ

ワイオミング州にあるインディアン居留地ウインド・リバーで狩りをするハンターのコリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、若い女性の死体を発見する。

急遽、地元警察より連絡を受けたFBI捜査官のジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)は、現地に向かうが、全く土地勘がないために、コリーに道案内を依頼し、周辺住民に聞き込み調査を開始するのだが…。



映画「ウインド・リバー」ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン




感想(ネタばれあり)


アメリカから見捨てられた土地「ウインド・リバー」とは…


これは殺人事件を追うサスペンス映画だけれど、その殺人事件を糸口にして、インディアン居留地で暮らすネイティブアメリカンの人たちが抱えてきた闇を描いた作品だった。

舞台は、ワイオミング州にあるインディアン居留地 ウインド・リバー。



アメリカの中でも、ワイオミング州は最も人口の少ない土地の一つだという。

なぜなら、切り立った山に囲まれたその土地は、特に石炭が取れるわけでも、石油が取れるわけでもないため、町が発展せず人が集まらなかったからだ。

逆に言えば、そこはアメリカの中で最も土地が余っている場所であり、アメリカ政府は、そこへネイティブアメリカンを強制的に住まわせ、インディアン居留地の「ウインド・リバー」と命名したのだ。



そこは町が発展していないため、近くに繁華街があるわけでもなく、いわば「見捨てられた土地」だった。

そこへ追いやられたネイティブアメリカンたちは、そこを「絶望の地」と呼んでいた



そこで生活している彼らをみて、「アメリカだけどアメリカではない」という印象を受けた。

地元警察には居留地「ウインド・リバー」で事件が起きても捜査する権利がなく、いちいちFBIを呼んで許可を取らなければならない

それはまるで、どこかの国の大使館の敷地内で殺人事件が起きたかのような扱いだ。

そこは、たとえ同じアメリカ人が住んでいる土地であっても、「取扱注意」が必要なのだ。



そのため、FBI捜査官のジェーンはラスベガスに出張していたところを呼ばれるわけなのだが、彼女がラスベガスから移動している間にどんどん証拠が消滅してしまう。

犯人だって州外に逃げようと思えば逃げられるのではないか。

そんな、あまりにも悠長な捜査の様子を見ていると、事件を解決する気がないのかな?と思えてしまう。



つまり、そのインディアン居留地で起きた殺人事件は、形式上FBIが事件の捜査はするけれど、その後の捜査は担当したFBI捜査官のやる気次第なのだ。

実際、この映画の中で、亡くなった女性の死因(「他殺ではない。寒さからくる窒息死」)ではFBIの応援を呼ぶことができず、急に呼ばれたジェーンが一人で事件を解決しなければいけなくなってしまう。

もしも、やる気がない捜査官だったら、「他殺ではない=殺人事件ではない=事件性がない」と判断され、捜査が終了していた可能性もある



インディアン居留地「ウインド・リバー」とは、そんな「アメリカ政府から見捨てられた土地」なのだ。



映画「ウインド・リバー」ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン



絶望の土地で暮らすことにどこまで耐えられるか

ネイティブアメリカンがインディアン居留地へ強制的に移住させられたのは、19世紀後半のことだった。

本来ならば、広い大地を転々としながら生活していた彼らが、その土地に入植してきた白人たちによって、その何もない絶望の土地に閉じ込められて生活するようになってから100年以上が経っている

それ以来、彼らはそこでまるで忘れられたかのように、ひっそりと暮らしていた。



そのウインド・リバーに石を切り出す小さな採掘場ができ、会社が雇った白人たちが仕事をするためにやってきた。

なんの娯楽もなく、四方は4,000m級の山に囲まれた土地に置かれたトレーラーハウスに閉じ込められた白人男性たち。

そこで起きるべくして起きたのが、殺人事件だったのだ。



ネイティブアメリカンは100年以上も絶望と闘いながら、ひっそりと暮らしてきたその土地で、白人たちは数ヶ月間だけでもそこにいることに耐えられず、フラストレーションが溜まり、欲望の塊となって若い女性を襲う

日頃から身近に娯楽がある彼らにとって、「ただ自然しかない」その場所は耐えることのできない「地獄」なのだ。



そこで起きたレイプ事件は、絶対あってはいけないことだ。

しかし、その何もない土地に閉じ込められ、頭がおかしくなってしまう気持ちは理解できる。

それが仕事なのは分かっているし、永遠にそこに住むわけではないのもわかっているけれど、私だったらその雪しかない場所の静けさから一刻も早く逃げ出してくなってしまうだろうと思った。



問題はそこではなく、ネイティブアメリカンたちも彼らと同じ気持ちでその場所に住んでいるということなのだ。

しかも、彼らの場合は、長い間、引っ越しをすることも許されず、そこで一生を終えることを強制させられていたのだ。

そこに彼らを閉じ込めることに決めた人たちは、ネイティブアメリカンだから、広大な自然さえあればいいと思っていたのではないだろうか。



彼らだって同じ人間で、遊びたくなる時だってあるし、羽目をはずしたくなるときもある。

そもそも、アメリカは彼らの土地だったのに、白人たちが彼らの住む場所を勝手に決めてしまったのだ。

この「ウインド・リバー」という映画は、ネイティブアメリカンの置かれている立場を白人と置き換えて、彼らが長い間耐えてきた「闇」を彼らに分かりやすく伝えているのだ。



映画「ウインド・リバー」ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン



ネイティブアメリカンを象徴する狼とバランスを保つコリー

そのインディアン居留地における、ネイティブアメリカンと白人の関係をとてもよく表しているのが、オープニングの「狼」である。



アメリカでは20世紀前半に家畜を守ることを理由に狼を絶滅させていた

しかし、ネイティブアメリカンにとって狼は神聖な生き物だった。

そのため、ネイティブアメリカンからの要望により、その後、アメリカ政府はカナダからアメリカへ狼を導入させていた。



ワイオミング州でも1995年に狼の導入をしたが、いまだに牧場主の反発は大きいのだという。


そこで、コリー(ジェレミー・レナー)のような役所に雇われたハンターが、牧場の家畜を襲わないように狼の頭数の調整をしているのだ。



つまり、コリーは「ウインド・リバー」の中で白人たちとネイティブアメリカンの間に立ち、バランスを保つ役割をしているのだ。

元妻も、息子もネイティブアメリカンというのも、その彼の立場をよく表している。

そこで暮らす白人たちがみな、コリーのようにネイティブアメリカンの生活を尊重し、彼らの声を聞き、助け合って生活するようになれば、その殺人事件は起きなかったのだ。



コリーは「ウインド・リバー」で暮らすネイティブアメリカンと白人をつなぐ通訳的な立場であり、その土地のネイティブアメリカンたちの希望なのである。




映画「ウインド・リバー」ジェレミー・レナー



ネイティブアメリカンの立場になって考えるための作品

この「ウインド・リバー」は、絶望という土地に強制的に追いやられ、その後、全く見放されてしまったネイティブアメリカンの生活を、白人の目を通して描かれたものである。

亡くなった女性は他殺ではなかったけれど、コリーに追い詰められた首謀者は「寒さによる窒息死」がどういうものなのか身をもって思い知ることになった。

長い距離を歩いて逃げていた彼女に比べ、白人男性は数分ともたなかった。



そんな我慢強い彼らの生活を案内するためのガイド役として、世界的に人気のあるMARVELコンビが主役に選ばれたのだろう。



多様性が叫ばれるこの時代に、いまだに忘れられ、目を背けられて暮らしている人たちがそこにはいるのだ。

本編の終わりには、インディアン居留地で行方不明になってしまった女性たちの数が描かれているが、そのほとんどが、捜査もされないまま終了してしまっているという。

なんとも胸が締め付けられる話だった。



白人たちは、彼らの土地を奪ってアメリカに住んでいることを忘れてしまったのではないだろうか。



この映画は低予算で製作され、小規模公開からスタートしたのだが、その後異例のヒットとなり拡大公開されている。

それだけでも、意義があったことのように思う。

私もこの映画を観て、思い知らされることが多かったし、1人でも多くの人がネイティブアメリカンたちの現状を考えるきっかけになれば良いと思う。




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