池松壮亮 主演、塚本晋也 監督の映画「斬、」を映画館で観た。

江戸時代末期の小さな村を舞台に「人を斬ること」について葛藤する武士の姿が描かれる。


映画「斬、」



満足度 評価】:★★★★☆

「やられたらやり返せ」という考えから生まれる報復の連鎖。

「平和を守るために」という大義の元で行使された武力がもたらしたのは破滅と狂気だったという皮肉。

これまでの時代劇は人を斬ることを軽く考えすぎていたのではと感じてしまう作品。


目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


『斬、』予告編 動画




更新履歴・公開、販売情報

・2018年12月8日 映画館にて鑑賞。

・2018年12月20日 感想を掲載。

・2020年1月19日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

詳しい作品情報につきましては、下記公式サイトをご参照ください。
 ↓
映画『斬、』オフィシャルサイト




キャスト&スタッフ


出演者

池松壮亮
…(「万引き家族」、「紙の月」、「ぼくたちの家族」など)


…(「悪と仮面のルール」など)

〇前田隆成


監督・製作・脚本・撮影


塚本晋也
…(<出演作>「沈黙-サイレンス-」、「シン・ゴジラ」など)



2018年製作 日本映画




あらすじ


江戸時代末期の小さな村。

そこで暮らす浪人の都築杢之進(池松壮亮)は、改革が進む江戸を目指しながら、隣人の農家の娘・ゆう(蒼井優)や、その弟の市助(前田隆成)と共に平和な日々を暮らしていた。

ある日、その村に武士の澤村次郎左衛門(塚本晋也)が訪れ、杢之進と市助に「一緒に江戸へ行って改革の手助けをしてくれないか」と声をかける。

その話を快く受けいていた杢之進だったが、ちょうどその時、ならず者たちがその村に居座っていて…。



映画「斬、」


感想(ネタばれあり)


きっかけは、ちょっとした小競り合い


きっかけは、小さな小競り合いだった。

農家の息子・市助が、ならず者たちにバカにされたため、奴らに向かって行ったら顔が赤く腫れるほど殴り返されたという事件が起きる。



そのことに怒ったのは、姉のゆうだった。

ゆうは杢之進に「弟をこんな目に遭わされて黙ってられない。なんとかしてくれ」と言ってけしかける。

しかし、杢之進は「あの人たちの根は悪くない。こっちから手を出したんだし、放っておきましょう」と言って、彼女をいさめる。



杢之進は、平和的解決を望んだのだ。

そこで逆上したら、ますます話は大きくなってしまうと思ったからだ。



しかし、たまたまその時、そこに滞在していた武士の次郎左衛門が「2~3人斬ってきました。これで奴らも手出しはしないでしょう」と言ったのだ。

それこそが、最も杢之進が恐れていたことだった。

その次郎左衛門による報復攻撃が、さらなる報復を呼び、ゆうの一家はゆうを除く全員が殺されてしまうのだ。



ここで描かれているのは「戦争の始まり」だ。

我が国の国民がテロの犠牲になったから、テロリストを支援している国に報復をする。

それは、いかにも「正義のため」に聞こえるが、果たして、暴力に対して暴力で返すことが本当の正義なのか



この映画では、その「正義」という大義の元で行使された暴力が本当に平和を招くのかどうかが描かれている。



映画「斬、」



暴力に暴力で返した結果に起きた報復の連鎖


武士の次郎左衛門が暴力による報復を行った結果、何が起きたのかというと、暴力の連鎖だ。

家族を殺されたゆうは「家族を殺された復讐に、あいつらを殺してください」と言って杢之進をけしかける。



しかし、杢之進は、これまで真面目に稽古を重ね、技術的には申し分のない武士なのだが、それまで人を斬ったことがなかったのだ。

彼は「人を斬ることができない」という致命的な欠点のある武士なのだ。

そのため、大切な家族を殺され「彼らを殺した人間に裁きをくださなければ」という思いはあるものの、それを実行することができない



そうして悩んで葛藤している間に事態はますます悪化してしまう。

愛するゆうが、彼の目の前でレイプされてしまうのだ。

それでも、杢之進は彼女をレイプしている男を斬ることができないのだ。



これはまさに戦場の残酷さを表している



軍人でも、ゲリラでもない無実の人々が、たとえば「人種が違うから」とか「信仰している宗教が違うから」という理由で殺されてしまう。

その上、そこで暮らす女性たちはレイプされ、その村に地獄のような光景が広がる。



杢之進が人を斬ることができず、葛藤している間に、次郎左衛門はならず者たちを一人残らず斬ってしまう。

そうして、次郎左衛門は精神的に杢之進を追い詰めていくのだ。



映画「斬、」



報復の連鎖が生み出したのは、破滅と狂気だった


では、次郎左衛門がならず者たちを一掃した結果、その村に平和が戻ってきたのだろうか

そうではない。

その村に残ったのは、レイプされ、何もかもどうでもよくなってしまったゆうと、人を斬ることができない自分に愕然とし、やがて狂気に満たされた杢之進だけなのだ。



あとは血に染まった家と、村中にころがっている死体だけだ。

これが「報復」がもたらした「平和」の姿なのだ。



それは「テロ支援国家」とされたアフガニスタンやイラクに対して、アメリカが報復攻撃をした後、それらの国々に平和が訪れたのかといえば、そうではなく、むしろ、秩序が乱され、混乱の時代がやってきたことに似ている。



アメリカから往復攻撃を受け、多国籍軍を敵とみなして戦い、そうすることで人を殺すことに慣れてしまった人々は、何のためらいもなく人を殺すようになり、新たなテロリストとなって、その怒りをアメリカへと向ける。

それが、「報復の連鎖」が生み出した結果なのだ。



映画「斬、」



正義のための暴力など、どこにもない


そして、この映画は「人を斬ることができない武士は、本当に意気地なしなのか」と観客に問いかけている。



ならず者が村にやってきたとき、杢之進が真っ先にしたことは、「彼らと対話をすること」だった。

そうして「彼らは見た目は怖いけど、そっとしておけば何も悪いことはしない」と、お互いに共存するための話をつけていたのだ。

それは友好条約のようなものだ。



ところが、その友好条約を次郎左衛門が「正義のために」破ってしまったために、村は破滅と狂気の世界へと向かってしまったのだ。

そのどこに正義があるのか。



それは、家柄や、武士としての見栄を守るためのエゴからくる愚かな行為でしかない。



これまで、私たちは時代劇で「お侍さんが、ならず者から弱い村人を守ってくれる時代劇」を当たり前のように観ていた

しかし、本当にその思考は正しいのかと、この映画は問いかけているのだ。



そろそろ思考を変えて「暴力は何も生み出さない」ことが本当の正義だと訴える時代がやってきたのだ。

これは、塚本晋也監督による反戦映画なのだ。



全てを観終わった後、ズシリと私に重くのしかかってきた。

これまでの常識は、これからの時代の非常識になる

どんなことがあっても、暴力で報復しても平和な世の中はやってこない。

その思いに、私もすごく共感した作品だった。




Twitterでも、映画情報や海外ドラマの情報を発信しています~



Instagramでも映画のレビューを日々更新しています~






↓ 人気ブログランキングに参加しています。クリックをお願いします

映画 ブログランキングへ

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村



Amazonプライムで観る:「斬、」

斬、

新品価格
¥400から
(2020/1/19 18:07時点)



DVDで見る:「斬、」

【Amazon.co.jp限定】斬、(非売品プレス付き) [Blu-ray]

新品価格
¥4,434から
(2020/1/19 18:08時点)