シャーロット・ランプリング主演の映画「さざなみ」をWOWOWで観た。
結婚45周年を迎える夫婦。夫に届いたある一通の手紙が妻の心を打ち砕く。
【満足度 評価】:★★★★☆(4.5)
最後にシャーロット・ランプリングが見せた表情が私の心にこびりついて離れない。
結婚45周年を迎えた夫婦を描く人間ドラマにも関わらず、サスペンスのような恐ろしさ、ドキドキ感もある作品だった。
観終わってから時間が経てば経つほど、この映画の良さがジワジワと沁みてくる作品。
◆「さざなみ」DVD
…(「ともしび」、「レッド・スパロー」、「ベロニカとの記憶」、「リスボンに誘われて」、「クリーンスキン 許されざる敵」、「評決」など)
〇トム・コートネイ
…(「リスボンに誘われて」など)
2015年製作 イギリス映画

イギリスの田舎町で暮らすケイト(シャーロット・ランプリング)とジェフ(トム・コートネイ)の2人は結婚して45年の夫婦。
もうすぐ、友人たちを招いた結婚45周年パーティを開催しようと準備をしていた矢先に、スイスから夫に一通の手紙が届く。
そこにはアルプスの山中でジェフの昔の恋人と思われる女性の遺体が発見されたと書かれていた。
ジェフは、スイスへ遺体を引き取りに行きたいと言い、ケイトはジェフの話を聞きつつも心中が穏やかではなく…。

結婚45周年の夫婦。
私の両親と同じ世代だなぁと思いながら観始めた。
初めはそれで良かった。
しかし、観進めていくうちに、なんだか両親の知ってはいけない秘密を知ってしまったような気分になってしまった。
両親の過去の恋愛話など、聞いたことがないし興味もない。
でも、もしもこの映画の夫・ジェフのように、ある日突然、まるで昨日のことのように父がペラペラと昔の恋人の話をし始めたらどうするだろうか。
「そんな話は聞きたくない」と言って拒絶するんじゃないだろうか。
そう思うと、主人公・ケイトの「妻としての寛大なそぶり」は、胸の中にあらゆることをため込んでいそうで恐ろしい。
そして、その全ての結果がラストの表情にあるのではないかと思う。

ことの発端は、ジェフの昔の恋人のものと思われる遺体が発見されたことを知らせる手紙だった。
そして、おかしなことに、ジェフはその時から、その「美しい昔の恋人」について、「毎日」ケイトに語り続ける。
二人で行ったスイス旅行や、楽しかったできごとなど。
まるで、息子が母親に新しい恋人ができたことを報告するみたいに…。
この様子を見るに、夫にとって妻は「恋人」ではなく「家族」なんだと思った。
二人の間に子供はいないのに、それでも夫にとって妻は「母親」であり、「同志」のような存在なのかと…。
45年もいれば当然「ときめき」のある恋心は消えてしまうけど…。
それでも、ひたすら「僕の愛した元恋人」について、何の申し訳なさもなく語り続ける無神経さ、デリカシーのなさ…。
その夫の振る舞いに、イライラし、腹が立つ。
しかし、夫にはまるで悪気がない。天真爛漫そのものだ。
その様子をを見ると、彼はやはり「妻は恋愛感情のないただの家族」だと本気で思っているに違いない。

ジェフの行為で、最も腹が立ったのは、「夜中に起きて、元恋人の映像を観ていた」ことだった。
映像の中の彼女は、若く美しく、そして妊娠していた…。
ケイトとジェフの間に子供はいないのに…。
ジェフは、映像の中の妊娠している恋人を眺めながら何を思っただろうか。
本当は生まれたであろうはずの自分の子供のことだろうか…。
さらにやっかいなのは、見つかった元恋人が「若い美しさを保ったまま、冷凍保存されている」状態だということ。
妻はそれから45年たち老いているにも関わらず、ライバルである元恋人は美しいまま夫の心に残っており、そして、見つかった姿も美しいまま。
それはなんだか氷河の奥底で眠っていた元恋人が、45年経った今、ジェフを奪ったケイトに対し復讐をしているかのような気がして、これにはゾッとするような恐怖を感じた。
こんな相手に勝てるはずがない…。

そして、ケイトはこれまで過ごした45年間という時間について考える。
ジェフはこれまで、ケイトを見つめながら、その向こう側に元恋人のことを見つめていなかったか。
ケイトにくれたプレゼントは、元恋人の趣味だったのではないか…。
この45年間は一体何だったのか…。
そして、その長い長い時間の蓄積は、一瞬にして崩壊する。
スイスの山奥の氷の下で眠っている元恋人のせいで。
結婚45周年記念パーティーの席でジェフは涙ながらにケイトを称えるスピーチをするが、毎日「美しい恋人」の話を聞かされた今となっては、それも白々しい。
きっとジェフの心にウソはなく、全てが真実なんだろう。
元恋人のことへの思いも、ケイトを称える言葉も。
しかし、だからこそ、その無邪気さがなんとも腹立たしい。
45年間かけて築き上げた信頼がもろくも崩れ去っていく姿が、最後のケイトの表情に現れている。
共に時を刻んだ45年間の驚くべき軽さをまざまざと見せつけられ、「結婚とは何か」について考えさせられた作品だった。
ということで、この映画のタイトルは原題のまま「45Years(45年間)」が適切だったように思うけど、なぜ、この邦題になってしまったのか。
最後まで理由が分からなかった…。
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結婚45周年を迎える夫婦。夫に届いたある一通の手紙が妻の心を打ち砕く。
【満足度 評価】:★★★★☆(4.5)
最後にシャーロット・ランプリングが見せた表情が私の心にこびりついて離れない。
結婚45周年を迎えた夫婦を描く人間ドラマにも関わらず、サスペンスのような恐ろしさ、ドキドキ感もある作品だった。
観終わってから時間が経てば経つほど、この映画の良さがジワジワと沁みてくる作品。
「さざなみ」(予告編 動画)
(原題:45 YEARS)◆「さざなみ」DVD
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キャスト&スタッフ
出演者
〇シャーロット・ランプリング…(「ともしび」、「レッド・スパロー」、「ベロニカとの記憶」、「リスボンに誘われて」、「クリーンスキン 許されざる敵」、「評決」など)
〇トム・コートネイ
…(「リスボンに誘われて」など)
監督・脚本
…(「荒野にて」など)
2015年製作 イギリス映画

あらすじ
イギリスの田舎町で暮らすケイト(シャーロット・ランプリング)とジェフ(トム・コートネイ)の2人は結婚して45年の夫婦。
もうすぐ、友人たちを招いた結婚45周年パーティを開催しようと準備をしていた矢先に、スイスから夫に一通の手紙が届く。
そこにはアルプスの山中でジェフの昔の恋人と思われる女性の遺体が発見されたと書かれていた。
ジェフは、スイスへ遺体を引き取りに行きたいと言い、ケイトはジェフの話を聞きつつも心中が穏やかではなく…。

感想(ネタバレあり)
知りたくもない夫の過去
結婚45周年の夫婦。
私の両親と同じ世代だなぁと思いながら観始めた。
初めはそれで良かった。
しかし、観進めていくうちに、なんだか両親の知ってはいけない秘密を知ってしまったような気分になってしまった。
両親の過去の恋愛話など、聞いたことがないし興味もない。
でも、もしもこの映画の夫・ジェフのように、ある日突然、まるで昨日のことのように父がペラペラと昔の恋人の話をし始めたらどうするだろうか。
「そんな話は聞きたくない」と言って拒絶するんじゃないだろうか。
そう思うと、主人公・ケイトの「妻としての寛大なそぶり」は、胸の中にあらゆることをため込んでいそうで恐ろしい。
そして、その全ての結果がラストの表情にあるのではないかと思う。

妻は家族であって恋人ではないのか
ことの発端は、ジェフの昔の恋人のものと思われる遺体が発見されたことを知らせる手紙だった。
そして、おかしなことに、ジェフはその時から、その「美しい昔の恋人」について、「毎日」ケイトに語り続ける。
二人で行ったスイス旅行や、楽しかったできごとなど。
まるで、息子が母親に新しい恋人ができたことを報告するみたいに…。
この様子を見るに、夫にとって妻は「恋人」ではなく「家族」なんだと思った。
二人の間に子供はいないのに、それでも夫にとって妻は「母親」であり、「同志」のような存在なのかと…。
45年もいれば当然「ときめき」のある恋心は消えてしまうけど…。
それでも、ひたすら「僕の愛した元恋人」について、何の申し訳なさもなく語り続ける無神経さ、デリカシーのなさ…。
その夫の振る舞いに、イライラし、腹が立つ。
しかし、夫にはまるで悪気がない。天真爛漫そのものだ。
その様子をを見ると、彼はやはり「妻は恋愛感情のないただの家族」だと本気で思っているに違いない。

ライバルは、45年間一つも老いることなく若さと美しさを保ち続けた元恋人
ジェフの行為で、最も腹が立ったのは、「夜中に起きて、元恋人の映像を観ていた」ことだった。
映像の中の彼女は、若く美しく、そして妊娠していた…。
ケイトとジェフの間に子供はいないのに…。
ジェフは、映像の中の妊娠している恋人を眺めながら何を思っただろうか。
本当は生まれたであろうはずの自分の子供のことだろうか…。
さらにやっかいなのは、見つかった元恋人が「若い美しさを保ったまま、冷凍保存されている」状態だということ。
妻はそれから45年たち老いているにも関わらず、ライバルである元恋人は美しいまま夫の心に残っており、そして、見つかった姿も美しいまま。
それはなんだか氷河の奥底で眠っていた元恋人が、45年経った今、ジェフを奪ったケイトに対し復讐をしているかのような気がして、これにはゾッとするような恐怖を感じた。
こんな相手に勝てるはずがない…。

45年間かけて築き上げた信頼がもろくも崩れ去る瞬間
そして、ケイトはこれまで過ごした45年間という時間について考える。
ジェフはこれまで、ケイトを見つめながら、その向こう側に元恋人のことを見つめていなかったか。
ケイトにくれたプレゼントは、元恋人の趣味だったのではないか…。
この45年間は一体何だったのか…。
そして、その長い長い時間の蓄積は、一瞬にして崩壊する。
スイスの山奥の氷の下で眠っている元恋人のせいで。
結婚45周年記念パーティーの席でジェフは涙ながらにケイトを称えるスピーチをするが、毎日「美しい恋人」の話を聞かされた今となっては、それも白々しい。
きっとジェフの心にウソはなく、全てが真実なんだろう。
元恋人のことへの思いも、ケイトを称える言葉も。
しかし、だからこそ、その無邪気さがなんとも腹立たしい。
45年間かけて築き上げた信頼がもろくも崩れ去っていく姿が、最後のケイトの表情に現れている。
共に時を刻んだ45年間の驚くべき軽さをまざまざと見せつけられ、「結婚とは何か」について考えさせられた作品だった。
ということで、この映画のタイトルは原題のまま「45Years(45年間)」が適切だったように思うけど、なぜ、この邦題になってしまったのか。
最後まで理由が分からなかった…。
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