とにかく映画が好きなんです【本館】

とにかく映画が好きで、特にアメリカ映画大好きです このブログは、ネタバレありの映画鑑賞日記です。主にハリウッド映画と韓国映画をメインに感想を書いています


タグ:アナ・デ・アルマス



スコット・イーストウッド主演の映画「スクランブル」を試写会で観た。

クラシック・カー専門の車泥棒をしている兄弟が、フランスのマルセイユでマフィアの車を盗んだことで、マフィア同士の抗争に巻き込まれてしまうというカーアクション映画



満足度 評価】:★★★☆☆


車のことをよく知らない私でも、次から次へと登場するクラシック・カーはカッコイイと思うし、マルセイユの景色は美しいし、スコット・イーストウッドは、これまでの彼のキャリアを考えると、かなり健闘してると思う。

でも、登場人物のキャラクター、彼らがしゃべっているセリフ、最後のどんでん返しまで、全体的に薄味だった印象。

それぞれの材料は揃っているのに、なんで、残念な作品になってしまったのかなぁと、私なりに考えてみた。

その結論は、この後の感想のコーナーで。



「スクランブル」予告編 動画

(原題:OVERDRIVE)




更新履歴・販売情報

・2017年9月9日 試写会で観た感想を掲載

・2018年8月6日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正



映画「スクランブル」は、現在 U-NEXT で配信中!



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キャスト&スタッフ


出演者

スコット・イーストウッド
…(「ワイルド・スピード ICE BREAK」、「スノーデン」、「スーサイド・スクワッド」、「デンジャラス・プラン 裏切りの国境線」など)

〇フレディ・ソープ

アナ・デ・アルマス
…(「ブレードランナー 2049」など)

〇ガイア・ワイス

監督

〇アントニオ・ネグレ


2017年製作 フランス・アメリカ合作映画



映画「スクランブル」



あらすじ



クラシックカーを専門とするアンドリュー(スコット・イーストウッド)と、異母兄弟のギャレット(フレディ・ソープ)の車泥棒チームは、オークションで4100万ドルで落札されたブガッティを移送中に奪う。

しかし、そのブガッティを落札したのは、マルセイユを牛耳るマフィアのモリエールだった。

モリエールに捕まってしまったアンドリューとギャレットは、モリエールと敵対するマフィアのクレンプからフェラーリ250GTOを1週間以内に盗むという条件で解放されるのだが…!?



映画「スクランブル」スコット・イーストウッド



感想(ネタバレあり)


かっこいいカーアクションや車泥棒を描いた映画といったら…


華麗なカーアクションや車泥棒を描いた作品は、毎年たくさん作られている。

見た目に派手でかっこいいカーチェイスは、誰が運転していようが、それだけで観客を惹きつける力があるからだと思う。



最近、最も有名なカーアクション映画といえば、やはり『ワイルド・スピード』シリーズでしょう。

派手でかっこいいカーアクションをメインにし、出演している俳優たちもほぼ無名のところからスタートしたこのシリーズも、回を重ねるごとに人気を集め、今では、主演俳優たちがビッグスターへと成長した。

彼らがスターとなったのは、それぞれの際立ったキャラクターが俳優にマッチしていたのだと思う。

シリーズの途中で、主演のポール・ウォーカーがプライベートの事故で亡くなるという悲しいできごとがあったけれども、今年、第8作目にあたる『ワイルド・スピード ICE BREAK』が公開され、今でも人気を維持している。


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名車専門の窃盗集団を描いたカーアクション映画と言えば、ニコラス・ケイジ主演の『60セカンズを思い出す。

ちょっと頭の弱い弟をマフィアから救うため、『最高の車泥棒』であるニコラス・ケイジが、過去のチームを再結成。

「ベンツ、BMW、ポルシェ、マスタングなど50台の名車を72時間で盗み出す」というミッションをクリアしなければならなくなったという話。

「車を盗むのにかける時間は一台あたり60秒」という彼のルールからタイトルがきていて、そのスピード感と名車たちの美しさ、名優たちの共演とカーアクションが観どころだった。


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そして、これらの車泥棒、カーアクション映画に見事に殴り込みを入れたのが、先月に公開され、現在も公開中の『ベイビー・ドライバー』だ。

主人公のベイビーが、運転しながら聞いている音楽にピタリとはまったカーアクションが全編に流れ続けるという、これまで誰も見たことがなかった映像を作り出したこの作品。

ベイビーは、やり手の車泥棒でもあり、後半は車泥棒をしながら、カーアクションを繰り返す姿を観ることができる。



そして、ベイビー・ドライバー』を観てしまってからは、どんなカーアクションも物足りなくなってしまうという破壊力

正直、観客が『ベイビー・ドライバー』を観て、目が肥えてしまっている直後にカーアクションの映画を公開するなんて、かなり勇気あるなぁと思った。


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そして、この『スクランブル』である。

ワイルド・スピード』と『60セカンズ』のような、これまで作られてきたカーアクション映画のそれぞれの良いところをかいつまんでできた作品なんだなぁということがよく分かる。

おいしいどこどりをして作ってみたはいいけれど、結局、どちらも超えることができなかった

ワイルド・スピード』になりたかったけど、なれなかった

そんな印象を受けた。



それでは、なぜ、そんな結果になってしまったのか。

理由を考えていきたい。



映画「スクランブル」スコット・イーストウッド


サプライズをするなら、見せ方に工夫を


とにかく私が思ったのは、各キャラクターの個性の薄さだった。

例えば、『ワイルド・スピード』のポール・ウォーカーは、毎晩、チキンレース荒しをして名前を売りつつも、その裏の顔はFBIの潜入捜査官というメチャクチャなキャラだったし(笑)

ベイビー・ドライバー』のベイビーは、子供の頃に遭った交通事故が原因で耳鳴りが鳴りやまないが、音楽を聴いている時は、耳鳴りがやむため、音楽を聴きながらでないと運転できないという、際立ったキャラを持っていた。



なぜ、彼らがそれ程までに際立ったキャラを持っているかといえば、それぐらい際立たせないと、数あるカーアクション、車泥棒映画の中に埋もれてしまうからだ。

この『スクランブル』がまさにそれで、主人公アンドリューの特異な個性を裏付けるものが何も出てこない

キャラクターというのは、「うわっ。コイツ人と違ってておかしいな、おもしろいなぁ」と思って初めて、人の記憶の中に印象として残っていくのである。



それに、マフィアの抗争に巻き込まれる車泥棒というストーリー展開も『60セカンズ』を彷彿とさせるし、ラストのどんでん返しも、いまいちパッとしない

サプライズっていうのは、扉を開けた途端に、「サプラ~イズ!!」と言われて、「うわっ!!そうだったんだ!!知らなかった!!」ってなる。

それが、度肝を抜かれるということ。



この『スクランブル』のどんでん返しは、扉が開いた時は、「あれ、予定と違うじゃん。何やってんのかな?」と観客に思わせながらジワジワと始まり、最後に「サプラ~イズ!!」という驚きの結末がやってくる。

しかし、それまでにジワジワと始まっていたから、最後の「サプラ~イズ」の驚きがとても少ない。

友達が用意してくれていた誕生日のサプライズを、事前に感づいてしまった時の感覚に似ている

その結果、「あぁ、やっぱり。そういうことだったんだね」で終了してしまう

ここは、もう少し、見せ方を工夫して欲しい所だった。



映画「スクランブル」スコット・イーストウッド


ぞろぞろと登場するクラシックカーは本当にカッコイイ


とはいえ、全く見どころがないわけではない。

クラシックカーがぞろぞろと登場してくるカーチェイスのシーンは、本当にカッコイイと思った。

フェラーリ、マスタング、BMW、ベンツ、アルファロメオ、ポルシェ、ジャガーなど、車をよく知らない私でも聞いたことのあるメーカーのかっこいいクラシックカーがずらずら登場する。

それが、マルセイユの美しい街並みを走る姿はには、おぉーー凄いなぁと思う。

それ程車を知らない私でもそう思うんだから、車好きの人が見たら、きっと食いついて観てしまうことだろうと思う。



それに、主役を演じたスコット・イーストウッドは、これまで、偉大すぎる父(クリント・イーストウッド)の影で、なかなか主役を演じることができない中、大きな作品で主役を演じることになった。

これまで、あまり見せることがなかったアクションシーンもあったし、憎めない悪党も好演していたように思う

まだまだ、これからが伸び盛りの若手俳優である。



しかし、なんと言っても、南仏マルセイユの景色がとてもきれいだった

南に海岸があり、その海岸に沿うように渓谷がある。

最後に出てくる渓谷のカーアクションシーンは、マルセイユのドライブスポットの一つなんだろう。

眼下に海を観ながら、カーチェイスをしながら渓谷をくだっていくシーンは本当に美しかった。



映画「スクランブル」スコット・イーストウッド


マルセイユを外国にPRするための映画!?


そして、この作品は、フランスとアメリカの合作映画である。

舞台となっているのはフランスだけれども、しゃべっている言語が英語なので、製作国はフランスと聞くと「あれっ?ただのアメリカ映画じゃなかったんだ~」と思う。

しかし、その割に主演がアメリカ人とイギリス人で、フランス人がいないのはどういうことなのか

ということは、この『スクランブル』のターゲットの観客はフランス人ではない外国人観光客たちで、これは、フランスが作ったマルセイユへの観光客誘致のような映画なのかなと思った。



美しいマルセイユの景色のPRもかねて、『ワイルド・スピード』の脚本家に『ワイルド・スピード』のような作品を書いてもらい、アメリカのスタッフを招聘して、『ワイルド・スピード』に出演している俳優を使って、『ワイルド・スピード』のような映画を撮ってみた。

しかし、それは、ちょっと安易すぎた考えだったようで、

結局、出来上がったのは『ワイルド・スピード』の二番煎じだったということなんだろう。



先程も言ったけれども、それは、あまり車に詳しくない私が観たから、そう思えるのであって、クラシックカーが大好き!!という人が観たら、もっと違う感想が出てくるかもしれない

でも、本当にマルセイユを舞台にしてカッコイイ映画を撮りたいと思うのなら、せめて、フランスの俳優を主役にして、景色だけではない、マルセイユの生きた空気も伝えるような作品を作らないと、観客の心は動かせないように思う。



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ライアン・ゴズリング主演の「ブレードランナー 2049」をジャパンプレミアで観た。

前作「ブレードランナー」から30年たち、人間は絶滅の危機にあり、レプリカントに支配された世界を描く。


満足度 評価】:★★★★☆

後半は、予想外に泣きながら観ていた。

美しいものを見て素晴らしいと思い、涙を流すという感情こそが人間の素晴らしさであることが、この映画を観ているとよく分かる。

そして、それを知ってさらに涙が溢れ出る。


この映画には、私たちがこの30年で失ってしまったものと、新しく作り出したもの、そして、そこから生まれる希望が描かれていた。


「ブレードランナー 2049」予告編 動画

(原題:BLADE RUNNER 2049)




更新履歴・販売情報

・2017 年10月27日 ジャパンプレミアで観た感想を掲載。

・2018年7月21日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

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キャスト&スタッフ


出演者

ライアン・ゴズリング
…(「ファースト・マン」、「ナイスガイズ!」、「ラ・ラ・ランド」、「ドライヴ」、「きみに読む物語」など)

ハリソン・フォード
…(「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、「アデライン、100年目の恋」、「インディ・ジョーンズ」シリーズ、「42 ~世界を変えた男~」、「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」、「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」、「スター・ウォーズ/エピソード6 ジェダイの帰還」、「エアフォース・ワン」、「ブレードランナー」など)

アナ・デ・アルマス
…(「スクランブル」など)

シルヴィア・フークス
…(「ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!」、「鑑定士と顔のない依頼人」など)

ロビン・ライト
…(「ワンダーウーマン」、「フォレスト・ガンプ/一期一会」、「消されたヘッドライン」、「誰よりも狙われた男」、ドラマシリーズ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」など)

ジャレッド・レト
…(「スーサイド・スクワッド」など)

監督

ドゥニ・ヴィルヌーヴ
…(「メッセージ」、「ボーダーライン」、「プリズナーズ」など)


2017年製作 アメリカ映画



映画「ブレードランナー2049」



あらすじ



世界は人類絶滅の危機にあり、ウォレス(ジャレッド・レト)が開発した新型レプリカントに支配されようとししていた。

ブレードランナーのK(ライアン・ゴズリング)は、旧型レプリカントを抹殺する仕事を請け負う中、ある一体のレプリカントが庭の土の中に埋めていた箱の中に、世界を覆すような秘密が隠されていたことが分かる。

その真相を知るため、僅かな手がかりを元に、Kは30年前のブレードランナー デッカード(ハリソン・フォード)の行方を追い始める…。



映画「ブレードランナー2049」ハリソン・フォード、ライアン・ゴズリング



感想(ネタばれあり)


古いもは全て消去し、バージョンアップしたものをインストールする時代


あらゆる無駄をそぎ落としていくと、本当に描きたいものだけが浮かび上がってくる。

セリフで説明しなくても、美しい景色と、役者の演技があればそれだけで伝えたい思いは十分伝わってくる。

この映画は、そういうタイプのとても洗練された作品だった。



そこに写されている映像を浴びるように堪能しながら、そこに込められた思いを受け取り、感じ取る。

そんな体験をした映画だった。



前作『ブレードランナー』から30年。

人間は絶滅の危機を迎えていた。

そんな中、ウォレス(ジャレッド・レト)が新型のレプリカントを開発し、世界はレプリカントに支配されようとしていた。

そこで、旧型のレプリカントが不要となり、ブレードランナーたちは旧型を抹殺する任務についていた。



主人公Kは、自身も新型レプリカントであり、ブレードランナーである。

仕事は、旧型レプリカントを探し出して始末すること。



しかし、彼は任務の途中でレプリカントと人間の関係を覆すような事実を知ってしまい、30年前に姿を消したブレードランナーのデッカードの行方を追い始める。



そこは、コンピューターの中の世界にとても似ている

古いプログラムはパソコンの中に入れておいても不具合を起こすだけだから、一旦消去し、新しいバージョンをインストールする。

古いバージョンの方が機能が良かったのに…と思っても、もう古いバージョンには戻れない。



30年前にレプリカントが反乱を起こしたことで、全てのレプリカントは消去したはずだったのに、やはり、労働力が足りなくなったため、バージョンアップしたレプリカントを送り出す。

旧タイプレプリカントは、ウォレスでは制御できないため消去していく。

そして、新型レプリカントが世界を支配するようになると、彼らを生み出したウォレスは『自分こそが神』と勘違いするようになり、マッドサイエンティストと化していく



その混沌とした世の中で、人間の素晴らしさを浮き彫りにしたのが、この『ブレードランナー 2049』だった


映画「ブレードランナー2049」ジャレッド・レト



デジタルが理解できない感情や美しさは衰退していく運命なのか


世界を自分が生み出したレプリカントたちで満たし、神のような気分になっていたマッドサイエンティストのウォレスだったが、ここで大きく挫折する。

自分が作り出したレプリカントが、どうしても人間に近づけない機能があった。

しかし、30年以上も前に作られたレプリカントは、既に、その機能をクリアしていたことが分かる。



これは、古いものの中にも最新科学で表現できない素晴らしい機能があるという証である。

そこで考える。

旧バージョンが今の時代に合わず、不具合を起こすからといって、全て削除してしまうことは本当に正しいやり方なのか。

古いものの中にも新しいものよりも優れた部分があるのなら、古いものと新しいものを共存させることが進化への道なのではないか



新型レプリカントたちは、誰かが作った記憶や感情、知識を植え付けられ、その範囲の中でしか物事を理解しない。

だから、過去に人間たちがこよなく愛した芸術に触れる機会もない。



廃墟となったラスベガス。

埃をかぶったルーレットにバカラやグランドピアノ。

誰も聞かなくなったプレスリーやマリリン・モンローにフランク・シナトラ。



レプリカントたちにとって不要となったものは、自然と廃れていってしまう

それは、現代のデジタル世代に対する危機感でもある。



この映画の中で、デッカードがKに

「これは、俺の好きな曲だ」と言ったのは、プレスリーの「好きにならずにはいられない(Can't Help Falling in Love)」だった。

果たして、10代や20代の観客がそれを観て、どれだけの人が「あぁ。良い曲だよねぇ」と思うだろうか。

多くの人が、Kと同じように「ふーん。それ誰?」と思うだけなのではないだろうか。



この「ブレードランナー 2049」の中で起きていることは、決して未来の出来事ではない

既に、私たちの身の回りで起きていることなのだ。

今の時代は、「保存」ではなく、「上書き」の時代である。

古き良きものを保存して後世に伝えるのではなく、古きものは削除して、新しいもので上書きをする



そして、古い時代の良いものは少しずつ忘れ去られようとしている。

レプリカントよりも人間が優れているのは、芸術や自然の美しさを理解し、人間を愛したり憎んだりする感情である。

現代のデジタル時代は、その人間が持つ素晴らしい感情すらも捨て去ろうとしている。



2049年、今から30年後の未来は、デジタル世代の子供たちがこの世を支えることになる。

その時、私たちの周りにある素晴らしい芸術や自然のうちのどれだけが、この世に残されているのだろうか。

それは、果たして進化なのか衰退なのか…。



映画「ブレードランナー2049」ライアン・ゴズリング



豊かな感情があってこそ、科学技術は人間を進化させる


しかし、そんな人間にも未来への『希望』はある

それは、デジタルと人間の『共存』である。



この映画の中では、アナ・ステラインが希望となる。

彼女は、デジタルとアナログが共存したニュータイプであり、幼い頃から多くの人たちに見守られ、感情豊かに育てられた。

大人になると、彼女の感情を生かし、「夢製造人」として働くことになる。



彼女を見て思うのは、子供たちを外敵から守り、自然の美しさや素晴らしさ、人間の感情の素晴らしさを教えて育てるべきということ。

人間が知るべき様々な感情を知った上で、デジタルを使いこなすべきであり、世の中にある素晴らしいものを知らないままデジタルの世界で生きると、レプリカントKのような絶望を味わうことになってしまう。



本来なら、全ての子供たちが両親にとって『特別な子』であり、『選ばれし子』である

ところが、科学技術は自分の能力を過信させ、優れたスキルを持つ者は、『自分が特別な子』だと勘違いさせてしまう。

妻のジョイに「あなたは特別な人よ」と言われ続けたKは、自分が特別な人間だと勘違いするようになる。

しかし、それは、あらかじめジョイにプログラミングされていたものに過ぎなかった。



その事実はKを失望させる。

それが、レプリカントの限界なのだ。

そして、スキルや技術が優秀な者よりも、人を敬い、助ける者が素晴らしい人間であることをKは学ぶようになる。



世の中がデジタル世代になり、レプリカントのように人を簡単に殺す人間たちが出てくるのは、この「豊かな感情」欠けているからではないか。

彼らの創造主である、マッドサイエンティストのウォレス自身が、自分のことを神だと過信し、この「人を愛する・敬う」という感情が欠けているからこそ、彼が設計したレプリカントたちも、決定的な機能が欠落したまま生まれてくる。



映画「ブレードランナー2049」



私たちがこの30年で失ったものと、新たに生み出したもの。そして希望


そして、私たちは、前作の『ブレードランナー』から30年の間に何があったのかを知ることになる。

その間に世界には大停電が起き、全てがリセットされ、古き良きものは捨て去られ、新しいものが世界を満たしていく。

そうやって、バージョンアップを繰り返すうちに、古き良きものは忘れられていく



それは今、私たちが生きている時代と変わらない。

私たちはこの30年の間に、どれだけの物を捨て、どれだけ新しいものを生み出しただろうか

そして、その間にどれだけ素晴らしいものを失っただろうか



世の中はデジタルになって便利になっても、人間の感情は衰退していくばかり

かつて、デッカードの相棒だったガフが、30年間 折り紙を折り続けたように、私たちが後世に伝え続けるべきものがある。

映画・音楽・文学・芸術・自然。

私たちの希望は、それらの素晴らしいものたちと、デジタルを共存させていくところにある

だから、この映画も、何年も語り継がれるべき映画なのである




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