アルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」を東京国際映画祭で観た。
1970年代のメキシコを舞台に、家政婦の視点で当時の中流階級の家庭を描いた作品。
【満足度 評価】:★★★★☆(4.5)
1970年代のメキシコを舞台に、ある中流家庭と家政婦の美しい関係が描かれる。
上下の関係を越え、一家が家政婦を家族のように慕う姿に涙が溢れた。
キュアロン監督の経験が織り込まれているそうで、これは監督の家の話かなと思った。
目次
『ROMA/ローマ』予告編 動画
(原題:Roma)更新履歴・公開、販売情報
・2018年11月2日 東京国際映画祭にて鑑賞。
・2018年11月17日 感想を掲載。
・2018年12月14日 Netflixにて配信スタート。
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キャスト&スタッフ
出演者
〇
マリーナ・デ・タビラ
〇ヤリャッツァ・アパリシオ
〇マルコ・グラフ
監督
〇アルフォンソ・キュアロン…(「トゥモロー・ワールド」など)
2018年製作 メキシコ・アメリカ合作映画

あらすじ
1970年代のメキシコシティのローマ。
クレオ(ヤリャッツァ・アパリシオ)は、ある中流家庭に仕える家政婦をしていた。
夫婦と4人の子供たちがいる家庭だが、夫は外で二重生活を送るような人で、妻のソフィアが家庭を支え、子供たちを育てていた。
クレオは、そんなソフィアを支え、時には子供たちの遊び相手になったり、家事をこなしながら、忙しい日々を送っていた。

感想(ネタばれあり)
1970年代、経済成長期を迎えたニューメキシコ
ROMAと言っても、イタリアのローマではなく、メキシコシティのローマ。
時代は1970年代初頭。
メキシコシティでは、1968年にオリンピックが行われたばかり。
東京オリンピックの後、東京が高度経済成長期を迎えたように、その当時のメキシコシティも経済成長に湧いていた。
経済が成長する中、冷戦時代の当時は、亡くなったばかりのゲバラによる革命の影響を受け、一部の左翼運動家によりデモ行進が行われたりもしていた。
家政婦のクレオが付き合っていたボーイフレンドも、革命のために身体を鍛えていた様子が描かれていたり、町に出た奥さんとクレオがデモ行進に巻き込まれてしまう場面を見ると、その様子が伝わってくる。
そのように、その当時のメキシコは激動の時代を迎えていて、1961年に生まれたアルフォンソ・キュアロン監督は、ちょうどその頃にメキシコシティで幼少期を過ごしていた。
ここに描かれるドラマは、そんな監督自身の経験が込められたものだと言われている。
家を支えていたのは、母と家政婦のクレオ
そんな時代だったからか、男性たちはとても浮ついていたような印象だった。
ある者は、仕事が忙しく動き回り、ある者は革命に燃える。
クレオが仕えていた一家の主であるお父さんは、同居する母と、妻と4人の子供たちがいながら「出張だ」と言って外へ出て行き、なかなか帰って来ないような生活をしていた。
そのため、一家を支えていたのは妻だった。
とはいえ、仕事から子供たちの世話まで一人でこなすことはできない。
なので、大半の家事をこなしていたのがクレオだった。
家の掃除から、洗濯、食事の支度や、子供たちの遊び相手までクレオがこなしていた。
子供たちにとって、クレオは、時にお母さんであり、お姉さんであり、友達だったように思う。
それでも、時には休みをもらって、友達やボーイフレンドと遊びに行くクレオの楽しそうな顔がとても印象的だった。
家にいる時は、お掃除している家政婦でも、外に出れば彼女は20代のまだ若い女性なのだ。
きっと、もっと、他の女の子たちと同じように遊びに行きたいと思ったこともあっただろうに、嫌な顔一つせず、全てをこなすクレオの顔が心に残っている。
それはきっと、キュアロン監督にとっても同じで、監督の家にいた家政婦も、嫌な顔一つしていなかったんだろうと思う。
神は、クレオも子供たちも決して見捨てない
子供たちがクレオを家族だと思っていたように、クレオにとっても、子供たちは自分の子供のように思っていたに違いない。
そう思わせるのが、ラストの海のシーンだった。
夫に頼らない生活をすると決めた母が、子供たちを連れて海へ行き、そこで「お父さんはもう帰って来ない」と告白する。
母がクレオを同行したのは、彼女にとってクレオは、雇い主と家政婦という関係を越えて、家族だと思っているからだ。
そして、遊びに行った海で波にのまれてしまう子供たち。
その頃、クレオは失意の底にいて、体調も良くなかったのに、子供たちが溺れそうだと知ると、海の中へ服のままグイグイと入っていく。
その姿に涙が止まらなかった。
それは、クレオにとっても、まるで自分の子供たちのように思っているからに違いない。
その時、クレオは自分の死産について「良かったと思ってしまった」ことに罪悪感があった。
それは、もしも一人で子供を産んだら、養ってくれる人間もおらず、家も追い出されてしまうと思ったからに違いない。
でも、これほどまでに強く結びついた家族が、クレオをクビにするはずもないし、きっとクレオの子供も一緒に育ててくれたに違ない。
クレオの中でも、きっとそう思いながら、甘えてはいけないと思っただろうし、路頭に迷ってしまうという不安もあっただろう。
海から出たクレオが子供たちを抱きしめているところへ後光がさしている場面は、この映画で最も美しく心に残るシーンだ。
神は決して子を失ったクレオのことも、父を失った子供たちのことも見捨てはしない。
そう思えた、とても感動的で涙が止まらないシーンだった。
キュアロン監督にとって輝ける幼少時代の思い出
キュアロン監督の実体験が込められた作品というだけあって、これは監督にとっての「家政婦の思い出」だ。
だからこそ、この作品を白黒で撮影したんだろう。
もしかしたら、当時、監督が見ていたテレビは白黒だったかもしれない。
とはいえ、白黒なのに、とても画面が鮮やかなのだ。
これがこの映画の驚異的なところ。
海は海の色に見えるし、山は山の色をしている。
監督にとって当時のニューメキシコはキラキラと輝いているのだ。
だから、映像も、こんなにも輝いているのだ。
また、映画の中に「ゼロ・グラビティ」への影響を感じさせる「宇宙からの脱出」の映像があったりして、今の監督を育てた様々な土壌を知った気がした。
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きっと監督にもクレオのような家政婦がいて、お父さんが帰って来なくても寂しい思いをすることなく、すくすく育ったんだろうと思う。
「ゼロ・グラビティ」にしても、「トゥモロー・ワールド」にしても、そこに女性たちの強さと、女性たちへの優しさが描かれているのは、この映画に描かれているような幼少期を過ごしたからだろう。
とても優しくて温かい作品だった。
Netflixで配信されるので、ぜひ、観て欲しい。
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