エミール・クストリッツァ主演・脚本・監督の映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」を試写会で観た。

戦争中の村で、ミルクを戦地に運んでいた男が、その村にやってきた花嫁に恋をして逃避行をするコメディ映画。



満足度 評価】:★★★★☆

旧ユーゴスラビア出身のクストリッツァ監督による、山奥の小さな村を舞台にしたおとぎ話。

この映画には動物がたくさん出てきて、私たちを笑わせてくれるけれど、

その動物たちの行動をよく見ていると、そこには、戦争の悲惨さを伝えるメッセージが込められている



西側が正義だと主張して行っていた軍事行動は、東側の人たちからしたら、ただの暴挙でしかない

思わずハッとするような、その事実に気づかされた作品だった。

ユーゴスラビア出身のクストリッツァ監督だからこそ描けた作品。

目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「オン・ザ・ミルキー・ロード」予告編 動画

(原題:ON THE MILKY ROAD)




更新履歴・公開、販売情報

・2017年9月5日 試写会で観た感想を掲載。

・2018年11月7日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVD、ネット配信、共に販売中。



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キャスト&スタッフ


出演者

〇エミール・クストリッツァ

〇モニカ・ベルッチ




監督・脚本

〇エミール・クストリッツァ


2016年製作 セルビア・イギリス・アメリカ合作映画



オン・ザ・ミルキー・ロード




あらすじ


戦地へミルクを運ぶ仕事をしているコスタ(エミール・クストリッツァ)は、村一番の兵士・ジャガの元に花嫁としてやってきた美女(モニカ・ベルッチ)と恋に落ちてしまう。

ジャガは花嫁と、コスタはジャガの妹と結婚することになっていた。

彼らの結婚式の当日、村は多国籍軍からの砲撃を受け、多くの村人が殺され、コスタは花嫁を連れ逃亡しようとするが、多国籍軍の兵士に見つかり、二人は追われることになってしまう。



オン・ザ・ミルキー・ロード4





感想(ネタバレあり)


クストリッツァ監督は、旧ユーゴスラビアの出身である


この映画を監督したエミール・クストリッツァは、東欧の旧ユーゴスラビア出身

他民族国家の旧ユーゴスラビアは、冷戦後の1990年代に各民族が対立し、長い間紛争を繰り返してきた

Wikipediaによれば

この国家は、後に『七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家』と言われる程の多様性を内包していた。

Wikipedia「ユーゴスラビア紛争」より

と言われる程の多様性だった。



また、そのWikipediaのページによれば、

その紛争は、NATO、国連軍の介入により終結した

と書かれている。



その、「ユーゴスラビアは民族同士の対立による紛争を繰り返してきた」ことと、

「紛争はNATO、国連軍の介入によって終結した」という二つのできごとを頭の片隅に起きつつ、

この映画を観ると、いろいろなことが見えてくる。



いつもハリウッド映画ばかりを観て、「西側からの主張」が自分の正義の中心にあった私には、紛争の中の人(クストリッツァ監督)が描くこの物語にハッとさせられた

そして、未だに、国連軍や、平和維持軍、アメリカなどが「正義のため」に行っている戦争で犠牲になるのは、なんの罪もない国民たちで、彼らにとって大国の『正義』は、ただの暴挙でしかない。



オン・ザ・ミルキー・ロード5


隣村との和平協定は、人間同士の結婚のようなもの


この物語を構成しているのは、『寓話』である。

私たちが幼い頃によく読んだイソップ物語のように、よくいる平凡な村人と動物たちが、この『オン・ザ・ミルキー・ロード』をリードしていく。



主人公のコスタの住む村では、いつも隣の村と戦争をしていた。

そこへ、ハヤブサが飛んできて、ヘビをくわえて飛んでいく。

これは、弱肉強食を示していて、その映像のすぐ後には、ヘリコプターが飛んできて食料を落としていく。

つまり、この時のハヤブサはNATO・多国籍軍を示し、ヘビは弱者である村人たちを示す

ここから、NATO軍は早くから、村人たちの行動を制御しようとしていたことがうかがえる。



その後、コスタの住む村は、隣の村と和平協定を結ぶことになる。

それを、この映画では人間同士の結婚で表現している。

人々は、「これで、長い冬も終わり、私たちも幸せになる」と喜んでいたのもつかの間、

再びNATO・多国籍軍のヘリコプターがやってきて、村人たちを1人残らず殺してしまう。

NATO・多国籍軍にとっては、村同士が争っている方が都合がよく、その和平協定が『裏切り』でしかなかったからだった



NATO・多国籍軍による攻撃は、多くの無実の人々を殺し(映画の中では羊たちで表現されている)、気付いた時には、村中が焼け野原になっていた。

(後半部分で、羊たちがいなくなった後、上空からの俯瞰の映像で、多くの焼け跡が表現されている。)



オン・ザ・ミルキー・ロード3


ただ空襲が終わるのを黙って待ち続けた国民たち


クストリッツァ監督は、その中で、戦争の悲惨さを動物たちをモチーフにして表現している。



たとえば、真っ白なアヒルが牛の血で真っ赤に染まる場面の後には、必ず悲惨なことが起きたり

無抵抗で何の害もない羊の群れが地雷で犠牲になるが、その羊の群れとは、何も知らない善良な国民のことを示している



そして、ヘビが人間たちに恐怖を知らせる使いとして登場する。

もしも、目の前に大きなヘビがいて、身体に巻き付いてきたら、誰だって「怖い!!」と思うだろう。

だからといって、無茶にほどこうとすると、逆に殺されてしまう。

ただじっとして、ヘビが過ぎ去るのを待てばいい。



これは、戦争での実体験を示していて、目の前に大きな恐怖があった時、無理にそこから動こうとしてはいけない。

動かず、何も言わずに、ただ、恐怖が過ぎ去るのを、じっと待てばいい

コスタはヘビに巻き付かれた時に、その恐怖感から逃げ出そうとするが、ただじっとヘビとのにらみ合いを続けたことで、戦火を逃れ、ヘビに命を助けられる。

空襲に襲われたら、ただただそこで、じっとして過ぎ去るのを待つしかない



隣の村との和平が進み、コスタが住む村には、待ちに待った休戦が宣言される。

しかし、NATO・多国籍軍により和平協定は破綻し、村は破壊され、残された国民が、復興のために細々と暮らす生活がやってくる。



ラストで、羊たちが大勢殺され、焼け野原となった場所へと石を運び続けるコスタ。

羊たちの大虐殺は、NATO軍による大虐殺を示す

その場所は、愛する人が殺された場所でもあった。

コスタが運ぶ石は、殺された人の数



その後、映像は上空からの俯瞰映像になるが、そこに、おびただしい数の石が並べられていることが分かる。

コスタは、15年間、石を並べ続け、死者たちに哀悼の意を捧げている

どれだけ多くの人が、ユーゴスラビアで犠牲になったことか

白い石の色がそれを示し、広かった国土も、ほんのわずかな大きさになってしまったことも分かる。

その空からの映像を見て、胸が締め付けられる思いで、この映画を観終えることとなった。



オン・ザ・ミルキー・ロード2



どんな理由があっても、他人のケンカに首を突っ込んではいけない


私が、この映画を観て衝撃だったのは、ユーゴスラビアの人たちは、『平和維持軍』と名付けられたNATO・多国籍軍に、村をめちゃくちゃにされたと考えていることだった。

彼らが来なくても、自分たちの力で和平協定を結ぶことができたのに、それをめちゃくちゃにしたのはNATO・多国籍軍だったということ。



確かにそれは、当人同士の結婚について、見ず知らずの他人がやってきて、「そんなものは、裏切りだ!!」と言っているようなもので。

その表現のうまさに、思わずハッとしてしまった。



本来だったら、戦争の最中であっても歌って踊る陽気な人たちなのに、多くの村人が殺されてしまった後は、ただ黙々と復興に向けた作業を行っている姿はとても切ない。

本当だったら、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをしている人たちのはずなのに…。



しかし、亡くなった人たちを取り戻そうとしても、時計を止めることはできない。

(この時計がとても強烈で、止めようものなら怪我をする噛みつき時計…)

西側による分断により、多くの国民を失い、国土は狭められることになったけれども、亡くなった人への思いを忘れずに、前に進み続けるしかない。



この寓話の教訓は、どんな理由があれ、他人のケンカに首を突っ込むなということ

小さな民族同士の対立について、正当な理由をでっち上げ、大国が軍事介入をしたところで、悲しい思いをするのは無垢で善良な国民である。



西側諸国からすると、きっと今では平和に暮らしているんだろうと、思い上がった正義で旧ユーゴスラビアの人々を見てしまうけれど、当人たちは、その悲しみから、まだ抜け出せずにいた。

熊だって餌を与えれば、人間と仲良くすることができるのに、なぜ、人間同士は戦争をしてしまうのか。

その、戦争による一人一人の命の軽さが胸を締め付ける作品であり、

旧ユーゴスラビア出身の、クストリッツァ監督による、西側への皮肉がタップリと込められた寓話だった。




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