とにかく映画が好きなんです【本館】

とにかく映画が好きで、特にアメリカ映画大好きです このブログは、ネタバレありの映画鑑賞日記です。主にハリウッド映画と韓国映画をメインに感想を書いています


タグ:キム・ヘスク



キム・レウォン主演の韓国映画「黄泉がえる復讐」を映画館で観た。

亡くなった者がよみがえり、殺した者に復讐するという「犠牲復活者」を描くサスペンス映画。


満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)

韓国の「恨」、「母の息子の強すぎる関係」、「キリスト教の『赦し』」など、韓国独特の思想、宗教、文化が盛り込まれたサスペンス。

復讐のために、この世に帰ってくる「犠牲復活者」という設定が面白いと思った。

この世で最も罪なのは「見て見ぬふりをする無関心」というのが心に残った。



目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「黄泉がえる復讐」予告編 動画

(原題:희생부활자(犠牲復活者))



更新履歴・販売情報


・2018年7月14日 映画館で「黄泉がえる復讐」を鑑賞。

・2018年8月7日 感想を掲載。

・2018年12月5日 DVD発売予定。

・2019年7月6日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。


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キャスト&スタッフ


出演者

…(「監獄の首領」など)





監督・脚本

…(「極秘捜査」など)

2017年製作 韓国映画



映画「黄泉がえる復讐」



あらすじ


弁護士のジンホン(キム・レウォン)は、7年前、強盗に母(キム・ヘスク)を殺害され、その容疑者が逮捕されたのだが、真犯人は別にいると信じて独自に捜査をしていた。

そしてある日、その母が何事もなかったかのように帰ってきた。

その知らせを聞いて母の元へ向かったジンホンだったが、母はジンホンの姿を見るなり襲い掛かってきた。

また「犠牲復活者」の存在について調査している国家情報院の捜査官ヨンテ(ソン・ドンイル)は、ジンホンの母が帰ってきたことを知り、7年前の事件を再捜査するのだが…。



映画「黄泉がえる復讐」キム・レウォン


感想


この映画の感想は、私が「ぴあ映画生活」に投稿したものを紹介します。


黄泉がえる復讐 (2017)

★★★☆ [70点]「恨が呼び起こす犠牲復活者」

すごく面白いというわけではないけど、なかなか興味深い作品だった。

検事のジンホン
キム・レウォン)は、母が7年前に殺害され、犯人だと思われていた男が死亡。

真犯人が別にいると確信したジンホンは独自に捜査をしていた。

そこへ、死んだはずの母親が7年ぶりに帰ってくる…



日本では「死んでも死に切れない」という言葉がある。

それは【そのまま死んでしまったら、この世への未練を断ち切れないほどの無念が残り、その遺恨を晴らすまで死ぬことができない】という意味だ。



この映画は、そんな状態で遺恨を晴らせないまま死んでしまった魂が、その思いを晴らすために「犠牲復活者」としてこの世に戻っきて復讐するというサスペンスだ。

その根底には、韓国らしい「恨」の感情があり、それに加えて「息子を思う母の気持ち」や、その母に対して「貧しいことが恥ずかしい息子の思い」が込められ、さらに、キリスト教的な「赦し」も描かれている。

ここにはそんな韓国の思想、文化、宗教が盛り込まれていて、そこがとても面白かった



その上で、この世で最も罪なのは「目の前で起きている現実から目をそらすこと」であり、「無関心」こそが最も許されない罪であるというのが強く心に残った

これが本当に起こりそうだなと思える作りにしているのも良かった。


Posted by pharmacy_toe on 2018/08/07 with ぴあ映画生活


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ハ・ジョンウ主演の韓国映画「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」を映画館で観た。

ある時突然起きたトンネル崩落事故。そこに閉じ込められた男性のサバイバルを描くパニック映画。


満足度 評価】:★★★★☆

次から次へと崩落していくトンネルの恐ろしさも面白かったが、その事故に対して何も有益なことをしようとしない政府、どんな小さなことでもネタにしようと待ち構えるマスコミ、被害者なのにひたすら頭を下げ続ける妻など、その周りの人たちの反応の描写が非常に興味深かった。



彼らの様子を見ていると、なぜ韓国でセウォル号事故が起きたのかが分かる気がする



「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」予告編 動画

(原題:터널)




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キャスト&スタッフ


出演者

ハ・ジョンウ
…(「1987、ある闘いの真実」、「お嬢さん」、「群盗」、「テロ、ライブ」、「ラブ・フィクション」、「ベルリンファイル」、「チェイサー」など)

ペ・ドゥナ
…(「ジュピター」など)

オ・ダルス
…(「朝鮮名探偵3 鬼(トッケビ)の秘密」、「殺人者の記憶法」、「MASTER マスター」、「国際市場で逢いましょう」、「朝鮮名探偵2 失われた島の秘密」、「朝鮮名探偵 トリカブトの秘密」、「7番房の奇跡」など)

キム・ヘスク
…(「黄泉がえる復讐」、「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」、「善惡の刃」、「お嬢さん」、「ソウォン/願い」、「カンチョリ オカンがくれた明日」など)

監督・脚本

キム・ソンフン
…(「最後まで行く」など)


2016年制作 韓国映画

韓国映画「トンネル 闇に鎖された男」


あらすじ


車のセールスマンをしているイ・ジョンス(ハ・ジョンウ)は、車で自宅に帰る途中に突然トンネルが崩落する事故に遭遇してしまう。

前も後ろも土砂で埋まってしまい、身動きがとれなくなってしまう。

その時に持っていたのはペットボトルに入った水が2本と娘のために買ったバースデイケーキ。

携帯電話は電波が弱いながらかろうじて通じる状態なのだが、充電の残りは78%。

そこから救急電話をかけて救助を要請したのだが…。



韓国映画「トンネル 闇に鎖された男」ハ・ジョンウ



感想(ネタバレあり)


利益優先の工事が引き起こす恐るべき人災事故


ある日突然起きたトンネルの崩落事故。

原因を調査した結果、打ち込まれているはずのボルトが打たれていないなど、利益優先の手抜き工事だったことが発覚。

そこから、その事故は起こるべくして起きた人災だったことが分かる。



そういえば、最近、同じような映画を観たなぁ…と思ったら、マーク・ウォルバーグ主演の「バーニング・オーシャン」だった。

バーニング・オーシャン」は、石油採掘工事の際に安全テストを怠ったために起きた火災事故を描いていて、こちらも人災の映画だった。

ただし、「バーニング・オーシャン」は実話で、この映画はフィクションという違いはあるけれど。



トンネルの中に閉じ込められた主人公のイ・ジョンスのライフラインは、ペットボトルの水2本、バースデイケーキ一つ、充電78%の携帯電話のみ。



本来ならば、真っ先にこのトンネルを建設した建築会社と設計会社が呼ばれて、このトンネルを最もよく知る者たちで、最も早い救出方法を探るべきなのに、彼らが全く登場しないのがとても不思議だった。

それは、韓国では当たり前のことなのか。



その分、彼の帰りを待つ妻、なんとか救い出そうと思う救助隊、何も有益なことをしようとしない政府、衝撃映像を待ち構えるハイエナのようなマスコミの姿などの描写に重点が置かれ、政府の無能さが浮き彫りにされる

ということは、事故の責任は建設会社よりも、政府にあるということなのか

それとも、建設会社は政府の庇護の元、責任を問われないということなのか…

その辺に韓国の社会事情が見えるような気がした。



韓国映画「トンネル 闇に鎖された男」ハ・ジョンウ



「つつましく」「腰低く」が求められる極東アジアの女性たち


そんな中、私が最もグッと来たのは、ペ・ドゥナ演じる主人公の妻セヒョンだった。

この事故で最も悲惨な目に遭っている被害者はイ・ジョンスである。

セヒョンは被害者の妻である。

にも関わらず、もっとも申し訳なさそうにしているのがセヒョンである。



救助隊のメンバーたちに頭を下げ、彼らのために食事の準備をする。

夫が帰ってくるまで、文句も言わずおとなしく待っている。

そんな彼女の姿に胸が締め付けられたし、彼女を見ているだけで泣けて仕方がなかった



同じ極東アジアで暮らす民族の日本人からしたら、そんなセヒョンの「申し訳なさそうな態度」も普通に見えてしまうかもしれない。

しかし、彼女は被害者である。

なぜ被害者の彼女がそこまで卑屈にならなければいけないのか。



前述した「バーニング・オーシャン」では、ケイト・ハドソンが主人公の妻を演じていたが、まるで違う。

ケイト・ハドソンは思いつく限り手あたり次第電話をかけ、夫が無事かどうなのかをひたすら確認し続ける。

そして、帰ってきた夫と水入らずで過ごすためのホテルまで用意されていた。



セヒョンはもっと声を大に訴えても良かったし、マスコミを利用して作業を急がせることだってできたはずだ。

しかし、そうではない「つつましい妻」の描き方に、極東アジアの国々が期待する「妻として女性像」を見た気がした



韓国映画「トンネル 闇に鎖された男」ペ・ドゥナ



セウォル号から浮かび上がる韓国「安全対策」への不安


そして、この映画を観ていて嫌でも思い出したのが、2014年4月に起きたセウォル号沈没事故である。

なぜならば、セウォル号沈没事故も利益重視で規定を大幅に上回る過積載をしたために起きた人災だったからだ。



その後、造船会社や運航会社だけでなく、救助が遅れたことや国の対応が問題視され、そこから朴槿恵元大統領の失墜が始まっていった。

さらに、それからしばらく手抜き工事が原因と思われる道路の陥没や電車の衝突事故などが続き、韓国の安全対策の在り方が問われるようになる。

その中で制作されたこの映画「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」があの事故と無関係なはずがない。



例えば救助隊。

主人公、イ・ジョンスの通報で駆け付けたは良かったが、彼を救出するのに一ヶ月という果てしない日数がかかっている。



しかも、途中で諦めようとしている。

これはちょっと日本では考えられない。

日本だったら現場の救助隊が自衛隊の応援を要請し、遅くとも2~3日で救助できたはずだ。



これが韓国の救助隊の「遅さ」を表し、その結果、助かるはずの人が亡くなってしまう



さらに、埋まっているはずのボルトがなかったり、7基あるはずの送風機が6基しかないという手抜き工事も発覚。

これが「韓国の公共事業の実態」なのだ。

これは「もしもトンネル崩落事故が起きたら」というシミュレーションの映画であるが、公共工事のずさんさと、救助作業の遅さにより、助かるはずの人が助からないことを暗示している



韓国映画「トンネル 闇に鎖された男」



政治家が必要とされるのは支持率をアップさせる演技力


もちろん、被害者を増やす要因は公共工事のずさんさや救助隊の遅さだけではない。



この映画の中で、キム・ヘスク演じる大臣は、無能な政府の象徴として登場する。

彼女は救助隊に対して「早く救助しろ」というだけで、具体的な対策は何一つ出さない



ただ沈痛な表情を見せながらマスコミの前に登場し、「悲しんでいる大臣」を演じきる。

決して大声でしゃべろうとせず、言いたいことは周りにいる役人たちにささやくのみである。

「沈痛な表情を演じきり、マスコミの前で余計な言葉を発しない」という彼女のマスコミ対策は完璧である。



しかし、大臣が来るというだけで現場の人たちの手が止まるのなら、彼女の存在はハッキリ言って無駄である。

それもそのはず、彼女はマスコミの前で支持率アップのための演技をするためだけに現場に登場するのである。



そして、現場では一刻も早く救出が待たれる人がいるというのに、大臣出席の元、意味のない「現状報告のみの会議」が開かれる

一体、それは誰のための会議なのだろうか。

生きている人がトンネルの中に埋まっているというのに



利益重視のために手抜きの公共工事が行われ、救助隊の作業は遅々として進まず、政府は支持率アップのための演出に必死になっている。

それこそが、韓国社会の機能していない「安全対策」メカニズムなのである。





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韓国映画「善惡の刃」を「反逆の韓国ノワール2017」で観た。

冤罪により10年間服役していた青年の再審を求め、奮闘する弁護士を描く。実話を元に映画化。


満足度 評価】:★★★★☆

「反逆の韓国ノワール2017」は4作品全部を観た中で、私はこれが一番面白かった。

決して良い弁護士とは言えない主人公が、冤罪によって人生を変えられてしまった青年と出会い、弱き者を助ける弁護士へと目覚めていく。

その姿には目が離せず、命がけで息子の汚名を晴らそうとする母の姿には号泣だった。

それにしても、「腐り切った警察・検察」を描かせたら、やっぱり韓国映画は圧倒的に面白いなと思った。

「善惡の刃」予告編 動画

(原題:재심




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キャスト&スタッフ


出演者

チョン・ウ
…(「レッド・ファミリー」など)

カン・ハヌル
…(「ミッドナイト・ランナー」、「二十歳」など)

キム・ヘスク
…(「黄泉がえる復讐」、「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」、「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」、「お嬢さん」、「ソウォン/願い」、「カンチョリ オカンがくれた明日」など)

監督・脚本

〇キム・テユン

2017年製作 韓国映画

善惡の刃



あらすじ


2000年8月全北益山市にある五叉路でタクシー運転手が殺害される事件(五叉路事件)が起きる。

警察は、現場でナイフを所持していた第一発見者の少年ヒョヌ(カン・ハヌル)を逮捕する。

ヒョヌは10年間の刑期を終えるが、被害者への賠償金の支払いのことで、目の見えない母(キム・ヘスク)と共に悩まされる日々を過ごしていた。

弁護士のジュニョン(チョン・ウ)は、妻と幼い娘を養っていかなければいけない立場でありながら、裁判で負けが続き生活に困っていた。

そんな中、ジュニョンは弁護士の友人を頼って大手弁護士事務所に就職しようとするが、「試験的に」無料法律相談を任される。

そこで、ジュニョンはヒョヌと母に出会い、ヒョヌの再審をして無実を証明すれば就職できるのでは…と考え始める。


善惡の刃2



感想(ネタバレあり)


賄賂・冤罪…は、韓国の腐り切った警察・検察によくある不祥事なのか?


毎度ながら、腐り切った警察と検察が出てくると、韓国映画はこうでなくっちゃ!と思う

時には多額の賄賂がやり取りされ、財閥や政治家の起こした不祥事はもみ消され、無実の市民が逮捕されてしまう。

賄賂に至っては、韓国の伝統芸能のようなもので、時代劇から現代劇まで必ずと言っていいほど登場する。



その中には、「えぇ?こんなこと(国の恥になるようなこと)描いちゃって良いの??」と思うこともあり、そういうところが、韓国映画の力強さであり、面白さなんだと思う。



この映画「善惡の刃」は、先日、「反逆の韓国ノワール2017」で観た作品「特別捜査 ある死刑囚の慟哭」と同じく『冤罪』をテーマにしている。

「賄賂」と同じく、「冤罪」も韓国の警察では良く起きる不祥事の1つということなのだろうか。

それとも、たまたまヒットした映画が『冤罪』を扱っていただけなのだろうか。



特別捜査 ある死刑囚の慟哭」は財閥の中で起きた殺人事件を隠蔽するために、市民に濡れ衣を着せるというフィクションだったけれども、「善惡の刃」は実際にあった事件を元に描かれている



2000年の8月。

サッカーワールドカップまであと2年となった年、韓国では犯罪者の検挙率を上げることに躍起になっていた



益山市の田舎町にある五叉路では、タクシー運転手をめった刺しにするという殺人事件が起き、警察は第一発見者で15歳のヒョヌを「ナイフを持っていた」という理由で容疑者として逮捕する。

その後の調べて、ヒョヌが持っていたナイフが被害者の傷の大きさと一致しなかったにも関わらず、ヒョヌが釈放されることはなかった



この時の警察の対応を見ていて恐ろしかったのは、ヒョヌを犯人にしようとしたリーダー(班長だった気がする)を始め、誰一人として「そんなことをしたらヤバい」という雰囲気がなかったこと。

ということは、これはヒョヌについての物語だけど、そうやって誰かを犯人にでっち上げ、後から適当につじつま合わせをするということを日頃からやっていたんだろうと思う。



警察の取り調べ室ではなく、地元のモーテルに監禁され、ヒョヌが「自分が犯人です」と言い出すまで殴る蹴るの暴行を加える。

それは、韓国の時代劇で良く見る「拷問の様子」とまるで一緒だった。

やはり、これも韓国の伝統芸能なのか。



殴られても蹴られてもヒョヌは無実を訴え続けるが、結局、殺人犯として実刑判決を受け、10年間刑務所で過ごし、さらに被害者への賠償金を支払わなければならず、糖尿病で失明している母と2人暮らしのヒョヌには到底払えない額だった。



善惡の刃3



「貧しい人」を助けて事務所のイメージアップに使おうとしていた弁護士ジュニョン


そんなヒョヌに救済の手を差し伸べたのは、弁護士のジュニョンだった

ジュニョンは「弁護士がサービスを提供し、勝ち取るべきものは金だ!!」と言い切っていた金儲け主義の弁護士だった。



しかし、野心を持って大手建築会社を相手に集団訴訟を起こしたところ負けてしまい、生活費も危うくなったジュニョンは友人の弁護士を頼って大手法律事務所に転がり込む。

事務所の代表は、能力がない人間を入れる訳にはいかないので、「多額の報酬を手にすることができたら、事務所のパートナーにしてやる」とジュニョンに言ったところ、ジュニョンは、その言葉に奮起する。



とはいえ、そんな彼が最初に行かされたのが、地方の無料法律相談だったのだが、それがきっかけで、お金のないヒョヌの母親の相談に乗ることになる。



改めて、ヒョヌの母親から話を聞かされたジュニョンは、事故当時、母親と携帯電話で話をしていたヒョヌが殺人犯にされているという矛盾点に疑問を感じ、もっとよく調べれば再審できると思った

そして、もしも彼の再審請求が通れば、貧しい人を助けたことが事務所にとってイメージアップにつながり、自分は再就職できるだろうと思っていた。

つまり、ジュニョンは、この事件を知った当初、ヒョヌを利用して再就職しようと思っていたのだ。

しかし、この冤罪の根は思ったよりも深く、ジュニョンとヒョヌの前には高い壁がそびえていた



善惡の刃4



警察と検事が手を組むと、ヤクザよりも恐ろしい


何よりも腹が立ったのは、真犯人が現れても警察は無実のヒョヌを助けようとしないことだった。

ヒョヌが刑務所に入ってから3年後、真犯人が明らかになったのだ。



しかし、それを知った検察は「警察に手落ちがあったと思われる」という体裁から、真犯人の存在をもみ消してしまう

さらに、ヒョヌが犯人であることを、より確かなものにするために、「本当だったら懲役15年のところを10年にしていやるから」と持ち掛け、ヒョヌに「自分が犯人だと認める」手紙を書かせた。



いや、もうここまでくると脅迫だから。

そして、真犯人の姿がはどこかに消えていた



もう、検察と刑事が手を組むと、ヤクザよりも怖い。

人を殺すことだってやりかねないし、何より他人の人生を壊すことを恐れていない。

警察も検事も、市民の名誉や正義よりも自分たちの体裁の方が大事なのだ。



いや、既に賄賂をもらいなれている刑事や警察官、検事たちは、金にならない市民に対する正義を守るなんていう意識はないのかもしれない

彼らを敵に回すと、自分の人生が恐ろしいことになるから、誰も反抗できないし、真相が語られないままお蔵入りになってしまう。

その悪循環が冤罪を生み出すんだし、検事まで息がかかっているから、冤罪を晴らすのも非常に難しいことなのだと良くわかる。



なんだろう、この腹の立つ、どうにもならないジレンマ。

一体、警察や検事がこうなってしまうと、どこに正義があるっていうんだろう。



善惡の刃5



「貧しさ」への偏見が冤罪を生む


ヒョヌのケースを扱うようになり、警察と検事の悪事を知り、ジュニョンは徐々に弁護士としての正義感に目覚めていく。

金のためでも、出世のためでもなく、ヒョヌの名誉を回復するためにジュニョンは奔走するようになる



そして、その結果、徐々に証人が出てくるようになる

もちろん、悪いのは一部の警察と検事だけで、中には「正しいことをしたい」と思っている市民もいるのだ。



しかし、この事件が起きた時から一貫して「息子の無実」を信じ、途中目が見えなくなっても海岸へ貝を取りに行き、少しでも生活の足しにしようとしている母の姿には頭が下がるし、涙が止まらない

そもそも、全ての始まりは、そのヒョヌ一家の貧しさにあるのだ。



15歳なのに喫茶店でバイトしてるような息子に濡れ衣を着せても構わないという、貧しい人間をまるで虫けらのように扱う刑事たち。



それは、「特別捜査 ある死刑囚の慟哭」でもそうだった。

特に韓国の中で、貧富の差に対する差別的な意識は顕著なのかもしれないし、韓国は日本に比べて貧富の差が激しいかもしれない。

それでも、多くの人間の中で、「貧しさに対する偏見」があるからこそ、こういった冤罪が生まれるんだろうと思う。



もしも、事件があった時に通報したのが金持ちの家の子供だったら、「犯罪を通報した良い話」として話題になったかもしれないし、もちろん、濡れ衣を着せられることもなかっただろう。

韓国の警察や検事が腐り切っているのも当然間違っているけど、多くの人の意識の中で「貧しい人は犯罪を犯す」イメージがあるからこそ、警察は彼らに濡れ衣を着せるんだろうと思う。

その人間の浅はかさが良くわかる映画だった。





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キム・ミニ主演、パク・チャヌク監督の韓国映画「お嬢さん」を試写会で観た。

日本統治下の朝鮮で、ある詐欺師が富豪の日本人令嬢をたぶらかして結婚し、財産を奪い取るという計画を立てる。

その計画に乗った1人の孤児が、令嬢の侍女としてお屋敷に入り込んだのだが…。


満足度 評価】:★★★★☆(4.5)

変態たちが集う豪邸を舞台にした痛快なエンターテインメント作品だった。

その変態も見せかけの表面的なものであり、その裏側では抑圧された世界に閉じ込められた女性たちがうめき声をあげていた。

エロティックな女たちにドキドキし、滑稽な男たちに笑い、先の読めない展開に何度もダマされた

そして最後には、檻を飛び出した彼女たちの幸せな開放感に溢れていた。


「お嬢さん」予告編 動画

(原題:아가씨)




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キャスト&スタッフ


出演者


…(「1987、ある闘いの真実」など)

ハ・ジョンウ
…(「1987、ある闘いの真実」、「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」、「群盗」、「テロ、ライブ」、「ラブ・フィクション」、「ベルリンファイル」、「チェイサー」など)

チョ・ジヌン
…(「悪魔の倫理学」、「最後まで行く」など)

ムン・ソリ
…(「悪魔の倫理学」、「ザ・スパイ シークレットライズ」、「オアシス」など)

キム・ヘスク
…(「黄泉がえる復讐」、「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」、「善惡の刃」、「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」、「ソウォン/願い」、「カンチョリ オカンがくれた明日」など)

監督・脚本

〇パク・チャヌク
…(「JSA」、「オールド・ボーイ」、「親切なクムジャさん」など)

原作

〇サラ・ウォーターズ著・「荊の城」


原作本「荊(いばら)の城」上

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原作本「荊(いばら)の城」下

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2016年製作 韓国映画



韓国映画「お嬢さん」


あらすじ


日本統治下にあった1930年代の朝鮮。

孤児で詐欺師一家に育てられたスッキ(キム・テリ)は、藤原伯爵を名乗る詐欺師(ハ・ジョンウ)と手を組み、日本人の令嬢・秀子(キム・ミニ)から莫大な財産を奪う計画を立てる。

そこでスッキは、秀子が叔父、上月(チョ・ジヌン)と共に暮らす豪邸で秀子の侍女として住み込み、伯爵は秀子をそそのかし、ゆくゆくは秀子と結婚し、日本へ連れて行ってから財産を奪った後、精神病院に入れてしまう計画だったのだが…。



韓国映画「お嬢さん」キム・ミニとキム・テリ


感想(ネタバレあり)


なぜ、昭和初期の日本が舞台だったのか


映画の舞台は1930年代、昭和初期の日本。

朝鮮の人里離れた豪邸に富豪たちが集まり、夜な夜な朗読会が開かれる。

ここで読まれるのは普通の小説ではない。

エロティックな描写が満載の官能小説だ。



それを一家の令嬢・秀子に読ませ、男たちはジッと聞いている…。

まさに、官能小説フェチな変態のための朗読会だ。



私はその変態ぶりを観て、この当時に活躍した日本を代表する小説家、谷崎潤一郎や江戸川乱歩を思い出した

彼らの世界観が、この映画にはふんだんに溢れて出ている



みずみずしい桃に「ぶしゅっーー」っと音を立てながらかぶりつく伯爵、地下室でうごめく大ダコ、秀子の口に指を入れ、出し入れさせながら歯を磨くスッキ。

その全てのエロティシズムが、谷崎潤一郎であり、江戸川乱歩の世界観を感じさせていた



それは、彼らの世界観を表現するために、時代背景を彼らの活躍した昭和初期にし、わざわざ日本語のセリフを多用したのではと思うほどだった。

谷崎潤一郎や江戸川乱歩の香りに導かれながら、ここにはめくるめく変態の世界が広がっている

この映画は、世界各国の映画祭や映画賞で非常に高い評価を得ている作品ではあるけど、もしかしたら、日本人が最もこの世界観を受け入れやすい国民なのかもしれない。



韓国映画「お嬢さん」キム・ミニ


観客をダマすための三部構成


この映画は、観客をダマすための三部作で構成されている。



第一部は、「お嬢さん」の侍女になったスッキの視点から描かれ、「えっ??この先どうなるの??」というところで終了している。

そこで、第二部は、その続きから新たな世界が展開されるんだろうな…と期待する。

ところが、その期待はあっさりと裏切られる。



第二部が始まったところで、物語は、また最初に戻る。

第二部はお嬢さんからの視点で、物語の裏側が描かれる

また、同じことの繰り返しかと思いきや、この映画は、この第二部が異常に面白い。



第一部は前菜でしかなく、第二部がお腹いっぱいのメインディッシュだった。

全ての事柄には裏があったのだ。



豪邸に閉じ込められ、夜な夜な変態な伯爵たちのために読書をしていた「お嬢さん」。

「お嬢さん」は、そんな変態の館を出たいと思っていた。



そこへ現れた救いの天使「スッキ」と、良いカモの「藤原伯爵」。

彼らのおかげでお嬢さんに脱出のチャンスが巡ってきた。

これは、「お嬢さん」の性奴隷からの解放を描いていたのだ。



そしてついに、お嬢さんがスッキの手を握り初めて家の敷居を越えた時、彼女の顔に現れた満面の笑みが何よりも印象的だった。



それだけでは終わらない。



第三部では、「お嬢さん」による叔父様と伯爵への復讐が描かれる。

ただ脱出するだけではなく、最後には落とし前をキチンとつけている

第一部で始まった物語が、第二部で全部覆され、「あ~騙された」と思っていると、第三部では、これまで恵まれなかった彼女たちに幸せが訪れる。

この三部までの構成が、全く想像がつかなくて、先の読めない展開に最初から最後までドキドキしっぱなしだった。



韓国映画「お嬢さん」ハ・ジョンウとキム・ミニとキム・テリ



虐げられて育った女性たちの復讐の物語


さっきもちょっと書いたけど、この三部構成を通して思ったのは、「抑圧された女性たちの解放」だった。



常にエロティックな描写がある本の朗読を強制させられる秀子。

彼女は、官能小説フェチたちの性奴隷だった。



そして、孤児であり、幼い頃から人をダマすことを教えられて育ったスッキ。

詐欺師たちの道具のように扱われていた彼女も、まるで奴隷のような生活を送っていた



そんな彼女たちが出会い、愛し合い、男たちをダマす計画を立てる。

力で戦ったら負けてしまう彼女たちは、色気で勝負する。



それは【秀子版】「上手な男の落とし方」だった。

キスをする、触らせる、伯爵の前で裸になる。

でも、最後まではいかせない。



そこは徹底的にじらす。じらす。じらす。

とことんじらした末、伯爵が自分に夢中になった瞬間が、復讐の機が熟した時

そこから全てが急展開する。



あの口移しのワインのシーンは、ドキドキしっぱなしだった。



韓国にしろ、日本にしろ、現代になっても女性の地位がまだまだ低く、家庭にしばられ、自由な生活を送れない女性たちがたくさんいる。

そんな女性たちへのメッセージのような映画だった。



どんな状況下であっても、勇気を持って自分の喜びを追及すれば、超えられない壁はない。

その向こうには、誰にも邪魔できない幸せがある。

だからこそ、女性たちよ、抑圧された世界から立ち上がれ!

そんなポジティブなメッセージを感じた作品だった。

いや~すごい映画だった。




韓国映画「お嬢さん」ハ・ジョンウとキム・ミニ


女性たちを解放したいと思ったのは、パク・チャヌク自身なのか


監督は「オード・ボーイ」のパク・チャヌク。

常に唯一無二の存在であり、誰にも真似できない世界観を持っている。



インタビュー記事を読んだところでは、パク・チャヌクは、原作「荊の城」を読んだ時に侍女がお嬢さんの歯を磨く場面を読んで映像化したい!と思ったそう。



ところが、この映画「お嬢さん」と「荊の城」では、ラストが違うのだという。

この「お嬢さん」では、パク・チャヌク監督自身が「こうなったらいいなぁ」という願望を込めてラストを書いたらしい

だから、完全な原作というよりも、インスパイアされたと言った方が近いらしい



なる程、虐げられて育った女性たちが解放されたら良いなぁと思っていたのは、パク・チャヌク自身だったのか

そんなことを言われたら、「荊の城」のラストが気になり、原作が読みたくなってしまった。



そして、これまでパク・チャヌクといったら、痛いとか、グロいというイメージが先行していた。

(もちろん、「オールド・ボーイ」のせいだけど…)

それが今回は、そのイメージを払拭し(多少痛いシーンはあるけれど)、痛快で、爽快な作品に仕上がっていたのが、パク・チャヌクの新しい魅力かと思った。



これまでの「暗」のイメージが一転して「明」に変わったぐらい、ガラリと変わった世界を観た気分になった。

となると、この「お嬢さん」を経たパク・チャヌクが次に見せてくれるのは、どんな世界のなのか…

次回作が、早く観たくなってきた…。




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ソン・ガンホ主演の韓国映画「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」をWOWOWで観た。

韓国・李王朝 第21代王・英祖(ヨンジョ)と、その息子『米びつ王子』思悼(サド)世子の物語。



満足度 評価】:★★★★☆


そもそもサド世子の話には興味があったから余計に、面白かった



ドラマや映画で観て良く知っているサド世子の物語も、切り口を変えて観ると、毎回新鮮な気持ちで観ることができる。

この映画は、韓国の歴史映画にありがちな、ドロドロとした政界の派閥闘争や陰謀を薄めにしているのが特徴で、息子を米びつに閉じ込めたことで歴史に名を残した父王ヨンジョと、悲劇の王子・サド世子との関係にスポットを当てて作られている。



王として生まれたために、息子を殺さなければならなかった父の苦悩が胸を打つ作品だった。


「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」予告編 動画

(原題:사도)




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キャスト&スタッフ


出演者

ソン・ガンホ
…(「タクシー運転手 約束は海を越えて」、「観相師-かんそうし-」、「シュリ」、「殺人の追憶」、「スノーピアサー」など)

ユ・アイン
…(「バーニング 劇場版」、「カンチョリ オカンがくれた明日」など)

〇ムン・グニョン


キム・ヘスク
…(「黄泉がえる復讐」、「善惡の刃」、「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」、「お嬢さん」、「ソウォン/願い」、「カンチョリ オカンがくれた明日」など)


監督

イ・ジュニク
…(「ソウォン/願い」など)


2015年製作 韓国映画



韓国映画「王の運命 歴史を変えた八日間」



あらすじ


朝鮮第21代王・英祖(ヨンジョ)(ソン・ガンホ)は、息子である王子・サド世子(ユ・アイン)が謀反を起こしたことに対し、サド世子の母・暎嬪(ヨンビン)が「サド世子を懲らしめて欲しい」と願い出たため、「サド世子を米びつに閉じ込め、一切の水・食料を与えない」という命令を下す。

果たして、サド世子は本当に謀反を起こしたのか、それまでの間、英祖とサド世子の間に何があったのか…。



韓国映画「王の運命 歴史を変えた八日間」ソン・ガンホ



感想(ネタバレあり)


王位につくことを運命づけられた父と息子の物語


韓国のテレビドラマシリーズ「イ・サン」や、ヒョンビン主演の映画「王の涙 イ・サンの決断」などに代表されるように、李王朝イ・サンと、彼の父であるサド世子、サド世子の父英祖(ヨンジョ)王の話は、よく映画やドラマの題材になる。

それは、「英祖王が王子を米びつに閉じ込め、飢え死にさせた」という話があまりに強烈だからだろう。

そして、この話にはいつも、宮中を牛耳る派閥のドロドロがつきまとっている。

たいていのドラマや映画では、当時の李王朝には、老論(ノロン)派と少論(ソロン)派がいて、その派閥同士の抗争に王と王子が巻き込まれ、彼らの陰謀により『米びつの悲劇』が起きたという描かれ方をしてきた。



だから、今回も、その派閥闘争についての映画なんだろうなと思った。

しかし、そうではなかった。

日本人である私でさえ、「派閥闘争だな」と思うぐらいなのだから、韓国人からしたら、それは「もう聞き飽きた」話なんだろう。

派閥闘争については最低限に抑え、主に、父と息子、そして妻たちにスポットを当て、『ある王族に起きた悲劇』という側面から、この物語を描いている



そして、そこから見えてくるのは、息子にさえも命を狙われるかもしれないと、日々怯え、誰も信用することなく王位に居座り続けた孤独な英祖(ヨンジョ)王の姿だった。



韓国映画「王の運命 歴史を変えた八日間」ユ・アイン



息子の勢いに怯えて生きる英祖王


なぜ、英祖(ヨンジョ)王は、息子を信用せず孤立してしまったのか。



英祖が王になるまでに、李王朝では、それまでの王たちが親や兄弟を殺して王位を奪還してきたという歴史があり、英祖も、いつか自分がそんな目に遭うのではと内心怯えていた。

そのことについて、英祖はまだ若いサド世子に「王は息子を仇のように育てるものだ」と教えている。

英祖はサド世子が王位継承者になった時から、息子に対して疑心暗鬼の気持ちを持っていたということである。



そして、サド世子が英祖にとって『仇』となる瞬間がやってくる。



勉強家で優秀なサド世子を政務執行代理に任命した時のこと。

会議の場で、サド世子は日頃から英祖のブレーンとなってきた老論(ノロン)派の意見を拒否し、少論(ソロン)派の意見を支持

その瞬間、英祖はサド世子に激怒し、息子を反乱分子として見るようになる



英祖は、そもそも気が小さくて、常に「いつか殺される」と思い、ビクビクと怯えながら生きているような人間だった。

だから、サド世子が英祖の政治を批判したことは、英祖を余計にビクつかせることになった。

彼はよくあるタイプの気が小さい男だったのだ



韓国映画「王の運命 歴史を変えた八日間」ソン・ガンホ



サド世子の謀反は起きるべきして起きたこと


英祖王の政治を批判した時のサド世子の『生意気な態度』について、老論(ノロン)派の役人が王に直接批判の言葉を耳打ちしたことから、英祖がサド世子を怯える気持ちはエスカレートしていく。



また、2人の性格の違いも、彼らの間にある距離を引き離していった

英祖は文字を書くのが得意で、サド世子のために、一冊の教科書を書き上げる程、文章で物事を考えるのが好きな論理派。

それに比べてサド世子は、絵を描いたり、音楽を楽しんだり踊ったりするのが好きな感覚派。

英祖から見たら、サド世子は「いつもフラフラして遊んでいる」ように見え、そのことが、ますます英祖をイラつかせることになった



英祖は、ますますサド世子に辛くあたるようになり、サド世子は自分が正しい行いをしているのに、なぜ父に冷遇されているのか分からず、飲めない酒を飲むようになって、精神が崩壊していく。



彼らの様子を最も冷静に見ていたのは、正妻・側室の妻たちだ

英祖の母である仁元王后(キム・ヘスク)は、英祖よりのサド世子の方が王の器だと見抜いていた人間だった。

気が小さく、サド世子を恐れていた英祖は王位から降りるべきと考えていたが、彼女のその想いは叶わない。

さらに、英祖が若い側室にメロメロになっていたことを嘆くが、英祖は母の言うことに耳を貸そうとしない。



その後、高齢の仁元王后が亡くなると、サド世子の強力な味方がどんどんいなくなってしまう。



英祖はサド世子に怯え、権力を振りかざし、サド世子は宮中で孤立してしまったことで追い詰められる

そして、ついに、『サド世子の謀反』が起きるのだ。



この流れを考えると、『サド世子の謀反』は起きるべきして起きたことのような気がしてならない

老論派も、少論派も、英祖も、妻たちも、全てがサド世子を追い詰める方向に動いていた。

英祖が、サド世子との会話で「これが運命(さだめ)だったのだ」と言ったのは、まさに、その通りである。

また、サド世子が刀を持って英祖の部屋に行った時、英祖がサド世子息子・サン(後のイ・サン)と共にいたことで、謀反未遂になったのも、運命だったように思う。



韓国映画「王の運命 歴史を変えた八日間」ユ・アイン



対立派閥に対する見せしめに息子を使った父王の苦悩


英祖王は謀反を企てたサド世子に対し、法的に処罰することなく、『母親が望んでいるので、懲らしめる意味で』米びつの中に閉じ込める。

もしも、法的に処罰した場合、妻や息子も追放しなければならないからだった。

それをせずに『懲らしめ』で済ませたのは、英祖が家族に見せた最低限の優しさだった。



この映画の原題は『サド』であり、英題は「Throne(王位)」である。

王位から降ろされることを怯え続けた英祖王の話と考えると、英題の方がピタリと来る。



愛すべき息子でさえも仇と考え、対立派閥にいる息子にいつか王位を降ろされると疑心暗鬼になり、息子を精神的に追い詰めていく父の姿

息子と最後に言葉を交わすシーンでは、その時には、英祖自身も宮中の動きをコントロールすることができず、息子を犠牲にしてしまった思いが伝わってきて強く胸を打たれた

結局、英祖は彼に歯向かう対立派閥に対する見せしめに、自らの息子を使ったのだ。



そして、それを冷静に見つめ、常に自分の息子の命だけはと願い続ける妻たちの様子。

宮中で暮らす王室一家の有様を観ていると、まるでギリシャ悲劇やシェークスピアの悲劇を観ているような気分になる。



誰もが知っている派閥闘争のトーンを極力落とし、家族の物語に集中して描いたのは、この映画をそういう「王家の悲劇」として描きたかったからだろうと思った。

王族に生まれなければ、もっと違う関係を築けたのに、互いに憎しみ合うまでになってしまったのは、全て「王位」を背負ったことによる運命(さだめ)である。



幼い頃に、そんな悲劇を目の当たりにしたイ・サンが、誰に頼ることなく、文武両道の賢人となり、後々、偉大なる王の1人と称えられるまでになったのは、とても皮肉な話である。

きっと、イ・サンは父と祖父の争いを見て、王位にしがみつくのは愚かなことだと学んだのだろうと思う。




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ソル・ギョング、オム・ジウォン主演の映画「ソウォン/願い」をWOWOWで観た

韓国で実際にあった幼女暴行事件を元に映画化した作品。

暴行事件に遭った少女とその家族が、深い悲しみから立ち直っていくまでを描く。

もぉぉぉぉぉぉぉぉ泣いたぁぁぁぁぁぁぁぁ。

最初から最後まで泣き続けた。

目を背けたくなるシーンもあるし、辛いこともあるけど、是非全ての人に観て欲しい一本

「ソウォン/願い」予告編 動画

(原題:소원)



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キャスト&スタッフ


出演者

ソル・ギョング


〇イ・レ



監督

イ・ジュニク
…(「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」など)


2013年製作 韓国映画



あらすじ

小学生のソウォンは、朝、登校している最中に、学校の近くで暴行されてしまう

警察から連絡を受けた父ドンフン(ソル・ギョング(「1987、ある闘いの真実」「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」「殺人者の記憶法」など))と、母ミヒ(オム・ジウォン(「MASTER マスター」など))が病院へ向かうと、ソウォンは血だらけの姿でベットの上でぐったりとしていた

その後の緊急手術で一命をとりとめたソウォンだったが、心の病からか、一言も言葉を発さないようになってしまう

その事態を重く見た母ミヒは、心理療法士の先生(キム・ヘスク)に心のケアをお願いすることに・・・

ソウォン



感想(ネタバレあり)


絶望の淵にいる少女の心を救ったのは、笑うことだった


薄汚い中年男の吐き気がするような欲望の果てに、一人の少女の傷つくことで、彼女はもちろんのこと、その周りにいるどれだけたくさんの人が辛い思いをして、地獄のような日々を送らなければならないのか

残念なことに、裁判所は彼らの味方をするどころが、さらに心をえぐるような判決を出す

それでは、どのようにして彼らはその地獄のような日々から抜け出すことができたのか

一番の力は、「笑うこと」だった

ソウォンが大好きなアニメのキャラクターの着ぐるみが踊っているのを見て笑った

それが、ソウォンの復活の兆しとなる

そして、その笑っているソウォンを観て、両親も心が救われていく

「笑い」が悲しみを癒し、心を救う一番薬だということに気付かされる場面だった

ソウォン2



事件から広がる心の傷は、思いのほか広く深い

ソウォンに起きた事件で、心が深く気付付けられたのは、家族だけではない

両親の友人たちや、ソウォンの同級生までもが、彼女を救えなかったことを悔やむ日々を過ごしている

小学生の男の子が、「どうして僕はソウォンを救ってあげられなかったんだろう」とワンワン泣く姿には、強く心を打たれた。

こんな小さい子までもが、罪悪感にさいなまれている

しかし、彼らもソウォンが元気になっていく姿を見て、徐々に心が救われていく

ソウォン3



納得のいかない判決に怒り

最後まで納得がいかないのは、この暴行事件の犯人が懲役12年だったということ

たったの12年

12年なんてあっという間、8歳のソウォンにとっては、12年後は20歳

彼女は、一番美しい時を出所した犯人に怯えながら生きていかなければならないのか・・・

判決を受けて、お父さんが犯人を殺しに行こうとした瞬間、それを止めるソウォンがあまりにも切なく悲しい

しかし、あそこでソウォンが止めなければ、誰も止めなかったのではなか

それぐらい、あまりにもむごい判決だった


ソウォン4



それでも前向きに生きようとする家族に救われる

そんなことがあっても、家族に新しい命を迎え、笑顔で生きていこうとする彼らの姿に心が救われる

映画の一番最後に画面に流れた一文が、いつまでも心に残る

「本当に辛いことがあった人が笑顔でいるのは、周りの人たちに辛い思いをして欲しくないためです」

この一文が、この映画の全てを表している

何よりも、ソウォンの笑顔が、彼ら一家を救う力の源だった

この映画は、実際にあった出来事を元に制作されたらしいけど、被害に遭った女性が、今でも毎日元気で幸せに生きていることを心から願う

是非、一人でも多くの人に観て欲しい作品だ





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ユ・アイン、キム・ヘスク主演の韓国映画「カンチョリ オカンがくれた明日」をWOWOWで観た。

痴ほうのお母さんを介護する息子の話なんだけど、ゲラゲラ笑えるところもあり、グッときて泣きそうになったところもあって、面白い映画だった

人間、悲しいこと、辛いことがあっても、やっぱり基本は家族!そう思える映画だった

もう、オンマ(韓国語でお母さんの意味)最高!(← 難点を言えば、ここは決して『オカン』ではなく、『オンマ』だから)

韓国映画「カンチョリ オカンがくれた明日」予告編 動画

(原題:깡철이)




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あらすじ

釜山に住むカン・チョル(ユ・アイン)は、母スニ(キム・ヘスク)と二人暮らし

母は、糖尿病や認知症などの病気を抱え、正気でいることが少ない

それでも、そんな母の病気を治したいと思うチョルは、必死で仕事をするが、なかなかうまいように稼ぐことができない

そして、ついに母に臓器移植のチャンスが巡ってきたチョルは、移植費用を稼ぐために裏社会の門を叩くことになり・・・


韓国映画「カンチョリ」



感想(ネタバレあり)


オンマの最後の言葉にグッときた


良い話だったなぁ。この映画「カンチョリ」

家族だからこそ、一緒にいて嫌なときもあるし、辛い時もあるけど、でも、やっぱり一番そばにいて守りたいのは家族だよねってしみじみと感じる映画だった

この映画「カンチョリ オカンがくれた明日」の中で、私の一番心に残るシーンは、ラストにオンマがお風呂屋さんの煙突に上っているシーン

そこで、オンマは生死をさまようチョリにメッセージを残す

「人生、辛いこといっぱいあるけど、人生の全てがお花畑だなぁって思える時が来るから」

もう、その時の、オンマの笑顔が本当に素晴らしくて、グッと来てしまったんだけど

この一言のセリフとオンマの表情に、伝えたい全てが集約されていたと思う


韓国映画「カンチョリ」キム・ヘスク、ユ・アイン


辛いのは、オンマの介護生活よりも貧しさ


オンマが伝えたかったのは、ボケてしまって言えなかったチョルへの感謝の言葉

「今まですごくつらかったのに、面倒見てくれてありがとう」

その思いが、その最後の一言を伝えるオンマの表情ににじみ出てる

しかし、本当にチョルを苦しめたのは、オンマの病気よりもむしろ、貧しさ

どんなに働いても金はたまらず、オンマの病気を治すことができない

それで、裏社会の門を叩くことになってしまうんだけど、チョルと、その友達の周りにいる人たちの貧しさがとても切ない

むしろ、ボケてしまっているとはいえ、いつも笑顔でニコニコしているオンマはチョルにとって救いになっていたこともあるんじゃないかと思う


韓国映画「カンチョリ」キム・ヘスク、ユ・アイン


「ギルバート・ブレイク」へのオマージュ??それともパクリ??


とはいえ、残念なところもあって、この映画のストーリーとか、全体の雰囲気は、映画「ギルバート・ブレイク」にとても似ている

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病気のオンマがお風呂屋さんの煙突に上るシーンでスタートしたり、オンマは本当は自分をとても恥じていたところとか、旅の途中で立ち寄った女の子を好きになったり、最後、彼女と一緒に旅に出て前向きに終了しているところまで共通している

私は、それをオマージュととらえて見ていたので、丸パクリとは思わなかったし、あぁ「ギルバート・ブレイク」みたいな映画作りたかったんだろうなぁと思った

では、「ギルバート・ブレイク」とは違うオリジナリティのある部分はどこかといわれると、それもちょっと即答しにくいのが残念なところ

せめて、ラストは違う描き方をする工夫は必要だったかなと思う


韓国映画「カンチョリ」ユ・アイン


残念なところもあった映画ではあるけど、演技力のある韓国の若手俳優ユ・アイン(「バーニング 劇場版」、「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」)と、超ベテラン名女優キム・ヘスク(「黄泉がえる復讐」、「王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間」、「善惡の刃」、「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」)の共演が最初から最後まで楽しめる映画だった

自分の親はもっと大切にしないといけないね。

なんか、そんなことをしみじみと考えた映画だった。






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