ヘレン・ミレン主演の映画「アイ・イン・ザ・スカイ」を試写会で観た。
6年間追い続けたテロリストをケニアで発見した英米軍合同作戦本部。英軍はドローンからのミサイル攻撃を命令するが、そこには無実の少女がいて…。
【満足度 評価】:★★★★☆
最初から最後まで緊張感が途切れない展開、1人の無垢な少女に対する軍部の葛藤。
そして、最後の選択には涙が溢れてしまった。
「現代の戦争はカメラ越しに行われている」という現実にも驚かされる映画だった。
◆ネット配信で観る:アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(字幕版)
◆DVDで観る:「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」Blu-ray
◆参考図書:CIAの秘密戦争――「テロとの戦い」の知られざる内幕
…(「ロング、ロング・バケーション」、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」、「黄金のアデーレ 名画の帰還」、「消されたヘッドライン」、「クイーン」など)
〇アーロン・ポール
…(「トリプル9 裏切りのコード」、「パパが遺した物語」、ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」)
〇アラン・リックマン
…(「ベルサイユの宮廷庭師」、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」、「ギャラクシー・クエスト」、「ダイ・ハード」など)
〇バーカッド・アブディ
…(「キャプテン・フィリップス」)
…(「エンダーのゲーム」、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」)
2015年製作 イギリス映画

キャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、6年間追い続けてきたイギリス人テロリスト2名と、アメリカ人テロリスト1名が、ケニアのナイロビにある民家に集まるという情報を得る。
その情報に基づき、ミサイルを搭載した無人爆撃機で空から監視を続け、その民家の近くにはアフリカ人の地上部隊を配備。
アメリカのラスベガスでは、無人偵察機(ドローン)からいつでもミサイルを発射できるように、空軍兵士スティーヴ・ワッツ(アーロン・ポール)が待機していた。
そして、全員の準備が整い、その民家に標的のテロリストが現れ、ミサイルのボタンを押そうとした時、その場に1人の少女が現れる。
急遽、パウエル大佐とフランク・ベンソン中将(アラン・リックマン)は、少女が犠牲になるのを覚悟の上で、攻撃するべきか、しないべきかの審議を開始するのだが…。

この映画で描かれているのは、現代の戦争の姿。
地上にいる人間からは目視できない程の高さを飛ぶ無人偵察機(ドローン)。
そして、そのドローンが監視する民家の上空。
さらには、その民家に入り込む鳥や虫の形をした監視カメラ「バグbot」。
そして、ドローンやバグbotが送り込む映像をすぐに解析し、誤射を極力なくす。
そして、解析の結果を受けて、そこから命令する軍幹部。
これまで考えていた戦争の現場とは、全く違う現場がここでは描かれていた。
現場で手足を失う者はなく、作戦は会議室で紅茶を片手にクッキーを食べながら行われ、極端にミスと犠牲を減らした実戦がそこで繰り広げられている。
その全てが衝撃的で、驚かされることばかりだった。
現在の戦争とは、wifiがつながるところだったらどこからでもミサイルを飛ばすことができ、敵に重大なダメージを与えることができる。
戦闘機も、操縦士もスナイパーも必要ないのだ。

それは、ちょうど一年程前の映画「ドローン・オブ・ウォー」でも描かれていた。
「ドローン・オブ・ウォー」では、イーサン・ホーク演じる空軍のパイロットが戦闘機に乗って戦地へ行くことを希望していた。
しかし、彼は、ドローンの操縦が任務となってしまう。
そこではプレハブの中で、まるでテレビゲームをするようにミサイルのボタンを押すだけで、テロリストを殺すという日々が続き、精神的に病んでいってしまう姿が描かれていた。
この映画では、そのドローンが、テロリストとの闘いの中でのどれだけ重要で必要とされているのかが描かれていた。
「ドローン・オブ・ウォー」よりも、もっと大きな視野で描かれている作品のように見えた。
しかし、どちらの作品にも言えるのは、ミサイルのボタンを押す人間は現地のアフリカから遠く離れた地球の裏側にいるということ。
そして、遠く離れたところから攻撃することで、「人を殺す」ということに鈍感になっていくことへの危惧や、皮肉が描かれている。
だから戦争は起きてはいけないと世間は思うのか、それとも、この「モニターに向かってボタンを押すだけ」の行為がどんどんエスカレートしていくのか。

かといって、この作戦に関わっている人間がみな「とにかくミサイルのボタンを押せ」と思っているワケではない。
この映画の肝は、彼らの「本当に押していいのか」という葛藤にある。
ボタンを押せば、確実に少女が死ぬ確立が高い。
しかし、だからといってボタンを押さなければ、80人以上の人間が死ぬテロ事件が起きる可能性が高い。
ならば、1人の少女を犠牲にすることもやむなしと軍部は考える。
そんな中、作戦本部の中で最高の指揮権を握るパウエル大佐を支えていたのは、「テロリストを追ってきた6年間の執念」である。
これは、彼女が女性であるということがミソである。
母性が強い女性を指揮官にし「目の前で純粋無垢な少女が死んでいくこと」を彼女に想像させる。
だからこそ、誰よりも葛藤していたのはパウエル大佐だったはず。
しかし、彼女はその雑念の全てを振り払って作戦の遂行に思いを集中させる。
彼女をそこまで強くしたのは、テロリストを追い続けてきた執念である。
何度もテロを起こされ、悲惨な状況を目にし、なんとかこのテロを起こした犯人を捕まえてやる。
この一瞬の迷いでテロリストを逃がすわけにはいかない。
だから、多少、安全性の数字を変えても、とどめを刺すんだ。
その集中力と、執念があるからこそ、彼女はそのポストに座っているのだ。
決して、彼女が冷たい人間だという訳ではない。
彼女の背中には、その6年間に見てきた犠牲者たちへの思いと、テロリストを抹殺する任務がのしかかっていた。

そして、そんな作戦本部の任務を観ている観客も自身の倫理観について問われていく。
映画として、この作戦が正しいのか正しくないかの明言はしない。
彼らがしたことについて描き「この結末が正しいのか」という判断は観客にゆだねている。
罪もない少女を見殺しにするなんて許せないとか、いや、これで良かったんだとか…。
私は、散々泣いた後、あと5分待てなかったのか…と思った。
いや、でも、もしかしたら、あと5分待っていたら、テロリストはどこかの広場で自爆テロを起こし、もっと多くの犠牲者が出ていたのかもしれない。
だから、パウエル大佐の判断が最も正しかったんだと思う。
でも、やっぱり、どうにかならなかったのかと思ってジタバタするし、この後、きっとあの少女のお父さんはテロリストに協力する人間になっているんじゃないかと思った。
過激派に加わり、「アメリカは悪魔」と声高に叫んでいるんじゃないかと思う。
そうやって、テロリストを一人殺したところで、また新しいテロリストが生まれていくのだ。
だから、こんな戦争はやめてしまえと思う。
ハイテクの武力で制圧した気になっても、テロリストはなくならない。
それは、パウエル大佐もベンソン中将も承知なんだと、彼らのラストの浮かばれない表情を観て思う。
こんなこと、いつまで続けていくんだろうか。
〇「ドローン・オブ・ウォー」パイロットは戦闘機を操縦しなくなりモニターの前でボタンを押すだけ。ゲームのスキルが重宝され命の重さは軽くなる。イーサン・ホーク主演映画【感想】
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◆CIAの秘密戦争――「テロとの戦い」の知られざる内幕
6年間追い続けたテロリストをケニアで発見した英米軍合同作戦本部。英軍はドローンからのミサイル攻撃を命令するが、そこには無実の少女がいて…。
【満足度 評価】:★★★★☆
最初から最後まで緊張感が途切れない展開、1人の無垢な少女に対する軍部の葛藤。
そして、最後の選択には涙が溢れてしまった。
「現代の戦争はカメラ越しに行われている」という現実にも驚かされる映画だった。
「アイ・イン・ザ・スカイ」予告編 動画
(原題:EYE IN THE SKY)◆ネット配信で観る:アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(字幕版)
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キャスト&スタッフ
出演者
〇ヘレン・ミレン…(「ロング、ロング・バケーション」、「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」、「黄金のアデーレ 名画の帰還」、「消されたヘッドライン」、「クイーン」など)
〇アーロン・ポール
…(「トリプル9 裏切りのコード」、「パパが遺した物語」、ドラマシリーズ「ブレイキング・バッド」)
〇アラン・リックマン
…(「ベルサイユの宮廷庭師」、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1」、「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」、「ギャラクシー・クエスト」、「ダイ・ハード」など)
〇バーカッド・アブディ
…(「キャプテン・フィリップス」)
監督
〇ギャヴィン・フッド…(「エンダーのゲーム」、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」)
2015年製作 イギリス映画

あらすじ
キャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、6年間追い続けてきたイギリス人テロリスト2名と、アメリカ人テロリスト1名が、ケニアのナイロビにある民家に集まるという情報を得る。
その情報に基づき、ミサイルを搭載した無人爆撃機で空から監視を続け、その民家の近くにはアフリカ人の地上部隊を配備。
アメリカのラスベガスでは、無人偵察機(ドローン)からいつでもミサイルを発射できるように、空軍兵士スティーヴ・ワッツ(アーロン・ポール)が待機していた。
そして、全員の準備が整い、その民家に標的のテロリストが現れ、ミサイルのボタンを押そうとした時、その場に1人の少女が現れる。
急遽、パウエル大佐とフランク・ベンソン中将(アラン・リックマン)は、少女が犠牲になるのを覚悟の上で、攻撃するべきか、しないべきかの審議を開始するのだが…。

感想(ネタバレあり)
ドローンにバグbot 最先端の戦争はモニター越しに行われる
この映画で描かれているのは、現代の戦争の姿。
地上にいる人間からは目視できない程の高さを飛ぶ無人偵察機(ドローン)。
そして、そのドローンが監視する民家の上空。
さらには、その民家に入り込む鳥や虫の形をした監視カメラ「バグbot」。
そして、ドローンやバグbotが送り込む映像をすぐに解析し、誤射を極力なくす。
そして、解析の結果を受けて、そこから命令する軍幹部。
これまで考えていた戦争の現場とは、全く違う現場がここでは描かれていた。
現場で手足を失う者はなく、作戦は会議室で紅茶を片手にクッキーを食べながら行われ、極端にミスと犠牲を減らした実戦がそこで繰り広げられている。
その全てが衝撃的で、驚かされることばかりだった。
現在の戦争とは、wifiがつながるところだったらどこからでもミサイルを飛ばすことができ、敵に重大なダメージを与えることができる。
戦闘機も、操縦士もスナイパーも必要ないのだ。

戦争がテレビゲーム化していくことへの危機感
それは、ちょうど一年程前の映画「ドローン・オブ・ウォー」でも描かれていた。
「ドローン・オブ・ウォー」では、イーサン・ホーク演じる空軍のパイロットが戦闘機に乗って戦地へ行くことを希望していた。
しかし、彼は、ドローンの操縦が任務となってしまう。
そこではプレハブの中で、まるでテレビゲームをするようにミサイルのボタンを押すだけで、テロリストを殺すという日々が続き、精神的に病んでいってしまう姿が描かれていた。
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この映画では、そのドローンが、テロリストとの闘いの中でのどれだけ重要で必要とされているのかが描かれていた。
「ドローン・オブ・ウォー」よりも、もっと大きな視野で描かれている作品のように見えた。
しかし、どちらの作品にも言えるのは、ミサイルのボタンを押す人間は現地のアフリカから遠く離れた地球の裏側にいるということ。
そして、遠く離れたところから攻撃することで、「人を殺す」ということに鈍感になっていくことへの危惧や、皮肉が描かれている。
だから戦争は起きてはいけないと世間は思うのか、それとも、この「モニターに向かってボタンを押すだけ」の行為がどんどんエスカレートしていくのか。

母性、雑念を凌駕する6年間の執念
かといって、この作戦に関わっている人間がみな「とにかくミサイルのボタンを押せ」と思っているワケではない。
この映画の肝は、彼らの「本当に押していいのか」という葛藤にある。
ボタンを押せば、確実に少女が死ぬ確立が高い。
しかし、だからといってボタンを押さなければ、80人以上の人間が死ぬテロ事件が起きる可能性が高い。
ならば、1人の少女を犠牲にすることもやむなしと軍部は考える。
そんな中、作戦本部の中で最高の指揮権を握るパウエル大佐を支えていたのは、「テロリストを追ってきた6年間の執念」である。
これは、彼女が女性であるということがミソである。
母性が強い女性を指揮官にし「目の前で純粋無垢な少女が死んでいくこと」を彼女に想像させる。
だからこそ、誰よりも葛藤していたのはパウエル大佐だったはず。
しかし、彼女はその雑念の全てを振り払って作戦の遂行に思いを集中させる。
彼女をそこまで強くしたのは、テロリストを追い続けてきた執念である。
何度もテロを起こされ、悲惨な状況を目にし、なんとかこのテロを起こした犯人を捕まえてやる。
この一瞬の迷いでテロリストを逃がすわけにはいかない。
だから、多少、安全性の数字を変えても、とどめを刺すんだ。
その集中力と、執念があるからこそ、彼女はそのポストに座っているのだ。
決して、彼女が冷たい人間だという訳ではない。
彼女の背中には、その6年間に見てきた犠牲者たちへの思いと、テロリストを抹殺する任務がのしかかっていた。

そして私たちは考える。テロとの戦いは正しいのかと
そして、そんな作戦本部の任務を観ている観客も自身の倫理観について問われていく。
映画として、この作戦が正しいのか正しくないかの明言はしない。
彼らがしたことについて描き「この結末が正しいのか」という判断は観客にゆだねている。
罪もない少女を見殺しにするなんて許せないとか、いや、これで良かったんだとか…。
私は、散々泣いた後、あと5分待てなかったのか…と思った。
いや、でも、もしかしたら、あと5分待っていたら、テロリストはどこかの広場で自爆テロを起こし、もっと多くの犠牲者が出ていたのかもしれない。
だから、パウエル大佐の判断が最も正しかったんだと思う。
でも、やっぱり、どうにかならなかったのかと思ってジタバタするし、この後、きっとあの少女のお父さんはテロリストに協力する人間になっているんじゃないかと思った。
過激派に加わり、「アメリカは悪魔」と声高に叫んでいるんじゃないかと思う。
そうやって、テロリストを一人殺したところで、また新しいテロリストが生まれていくのだ。
だから、こんな戦争はやめてしまえと思う。
ハイテクの武力で制圧した気になっても、テロリストはなくならない。
それは、パウエル大佐もベンソン中将も承知なんだと、彼らのラストの浮かばれない表情を観て思う。
こんなこと、いつまで続けていくんだろうか。
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