家族をテロリストによって殺害された女性が、犯人に報復するサスペンス映画。
【満足度 評価】:★★★★☆
これは、現在、世界中で起きている「外国人排斥」の動きを描く素晴らしい作品だった。
主人公・カティヤの二度目の決断に胸を締め付けられ、恐ろしくなる作品だった。
世界中にカティヤのような被害者を出さないためにも、一人一人が、「人はみな平等である」ということを考えるべき作品である。
この感想には結末に関するネタバレを含みます。映画をご覧になってからお読みください。
目次
「女は二度決断する」予告編 動画
(原題:Aus dem Nichts/英題:In The Fade)更新履歴・公開、販売情報
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キャスト&スタッフ
出演者
〇ダイアン・クルーガー…(「ラスト・ボディガード」、「7デイズ」、「不機嫌なままにメルシー!」、「バツイチは恋のはじまり」など)
〇デニス・モシット
〇ヌーマン・アチャル
〇ヨハネス・クリシュ
〇ウルリッヒ・トゥクール
監督・脚本・製作
〇ファティ・アキン2017年製作 ドイツ映画
第70回 カンヌ国際映画祭(2017年)主演女優賞受賞作品

あらすじ
夫・ヌーリ(ヌーマン・アチャル)と息子と3人で幸せな日々を送っていたカティヤ(ダイアン・クルーガー)だったが、ある日、ヌーリと息子が爆弾テロで殺されてしまう。
捜査の結果、それは「外国人排斥」を主張する極右団体によって仕掛けられたテロだったことが分かる。
その後、裁判が行われるが、被告側弁護士 ハーバーベック(ヨハネス・クリシュ)により、麻薬使用歴があるカティヤの証言には、証拠能力に欠けると指摘され、カティヤが敗訴し、被告が野放しになる可能性が強くなっていく…。
何があっても犯人たちを許せないカティヤは、ある決断をする…。

感想(ネタバレあり)
「外国人」を標的にしたテロで家族を失ったカティヤ
最近は多くの国で「移民は帰れ、外国人は帰れ」という動きが強くなっている。
それならば、もしも、そう主張する人々が何かの理由で自国にいられなくなり、他国に行かなければならなくなった時には、もしくは、海外に旅行に行ったときには「外国人」になる。
そして、その人たちが、その彼らの忌み嫌う外国で助けられたとしたら、それでも彼らは「外国人は帰れ」という主張を曲げないのだろうか。
どの国で生まれても、どこで暮らしていても、「人はみな平等であるという当たり前の事実」が当たり前でなくなっている現代について考えさせられる素晴らしい作品だった。
主人公のカティヤに起きた悲劇について、この映画は三部構成で語られている。
第一部は「家族」の物語。
彼女の家族について描かれる。
カティアは、大学時代に夫のヌーリと知り合う。
ヌーリはトルコ系移民であり、かつて大麻を売っていたことで懲役を受け、獄中にいるときカティヤと結婚。
その後、出所して間もなく息子が産まれ、その後、家族3人で幸せな生活を送っていた。
しかし、その夫と息子が「ドイツで暮らす外国人」を標的にした極右団体による爆弾テロによって殺されてしまう。
この物語は、そんな全てを失ったカティヤがネオナチの犯人たちに復讐するサスペンスである。

法律が守ってくれなかったカティヤ
普通に考えて、家族がテロリストに殺され、犯人が逮捕されたら、次は裁判が行われる。
そこで犯人に極刑を願うのが、残された家族としては当然のことだろう。
第二部の舞台は「裁判所」に移り、カティヤは「合法的に」戦い始める。
その裁判の序盤では、カティヤの証言により犯人が逮捕され、彼らがどのような方法で爆弾を置き、それをどう爆破させたのかが判明する。
そのカティヤの証言は、明らかに「彼らが犯人である」ことを示していた。
ところが、被告側のハーバーベック弁護士がカティヤに大麻やコカインの使用歴があることを暴露し、カティヤの証言には「証拠能力がない」と指摘したことで急に形勢が逆転し、被告側に有利に動いていく。
そのうえ、原告側の証拠はカティヤの証言しかなかったことから、「カティヤの証言能力が疑わしく、そのほかに決め手となる証拠がない」と言う理由で、犯人たちが無罪になってしまう。
この裁判では、カメラはひたすらカティヤの表情を追っているのだが、その表情が怒りから絶望へと変わっていくのがよくわかった。
なぜ、彼らが犯人だと明らかなのに「無罪」になってしまうのか。
きっと、カティヤだけでなく、その様子を観ている多くの観客が納得がいかなかったはずだ。
私は、その判決に現在のドイツに吹きつつある右傾化の動きが現れているのではと思った。
実行部隊であるテロリストがいて、その後ろでそれを支援する団体がいて、優秀な弁護士がつき、「どうすれば自分たちに有利な判決を出せるか」を熟知している。
目に見えているのは実行部隊であるテロリストだけだが、彼らを支援している闇は私たちが思っている以上に深いのだ。
カティヤは、そもそも「勝ち目のない相手」を敵に回してしまったのではないのだろうか。
それは、あってはならないことだし、明らかにカティヤの主張が正しいけれど、「そう思わない人」が想像以上に多いのだ。
そしてその裁判では、そのネオナチがギリシャの極右団体と結託していることが分かり、その右傾化の動きがヨーロッパ全土に広がっていることを示していた。
これは、ドイツだけで起きているできごとではないのだ。

なぜ、カティヤは一度目をやめ、二度目の決断をしたのか
第三部で、舞台は「海」へと移動する。
ドイツには海がないのに、なぜ海なのか。
そこは、ドイツではなく、ギリシャなのだ。
犯人たちは、裁判で無罪になったものの、マスコミや国民から叩かれ、国内にいられなくなってしまった。
そこで、裁判で助けてくれたギリシャの極右団体を頼って「国外逃亡」してきたのだ。
「外国人は帰れ」と言い、「帰らなければ殺す」とばかりにテロを起こした彼らも、そのギリシャの地では「外国人」なのである。
カティヤの夫を殺したテロ事件の裁判で彼らの主張が通り、無罪となったなら、「ギリシャにいる外国人」である彼らがテロで殺されたとしても、それは許されることなのではないか。
「ドイツにいる外国人は許されないけれど、自分たちは許される」はずがない。
その彼らの主張を通すために、カティヤは彼らを追ってギリシャにやってきたのだ。
そして、彼らが作ったのとまったく同じ爆弾を作り、トレーラーハウスに仕掛ける。
ジョギングに出た彼らが帰ってくるのを待って、爆破しようとしたのだが、一度はそれを中止する。
そして、二度目、彼女は「自爆テロ」となってトレーラーハウスに乗り込んでいく。
なぜなら、カティヤ自身も、そのギリシャの地では「外国人」だからだ。
彼らの主張の正しさを証明するためには、自分自身も死ななければならない。
一度目の爆破で彼らが帰ってくるのを待ちながら、彼女は自分も外国人であることに気付き、「二度目の決断」をするために、カティヤは一度目を中止したのだ。
この二度目の爆破には、胸を締め付けられ、私まで絶望的な気分になってしまった。
まさか、カティヤがそんな選択をすると思っていなかったからだ。
かなり過激なやり方だけど、はじめは合法的に解決しようとしても、それが法で裁かれなかったため、彼らの主張が間違っていることをカティヤが身をもって証明したのだ。

「外国人排斥」は、ドイツだけで起きている問題ではない
監督のファティ・アキンは、両親がトルコ移民で、自身はトルコ系ドイツ人二世。
主演のダイアン・クルーガーは、25年前にドイツを出て、海外で仕事をしてきた。
彼らもまた、外国人なのだ。
だからこそ、この映画は強い意味を持ち、説得力があるのだ。
ドイツでは、この映画で描かれた事件と同じように、「外国人だから」という理由でテロに遭い、殺されてしまうという事件が連続して起きたことがあったという。
ダイアン・クルーガーは、その事件の遺族たちに話を聞いて役作りをし、演じている時には、何かが乗り移っていると思うようなこともあり、それ以来、とてもパーソナルな作品になったとインタビューで語っていた。
(参考:「女は二度決断する」公式サイト)
映画で観ると「外国人だから」という理由で殺されるなんて、そんなバカなと思ってしまうけれど、これは現実なのだ。
どこの国で生まれ、どこの国で生活しようとも、人間はみな平等なはずなのに。
むしろ、多くの外国人に愛され、住みたいと思う国こそ、素晴らしい国なのではないだろうか。
これは、ドイツだけで起きている問題ではない、世界中で起きている問題である。
そして、誰もが「外国人」になる可能性を持っている。
「外国人を嫌う」前に、「もしも自分が他国の人から同じことを言われたら。同じことをされたら」と考えてみれば、そんなことは言えなくなるのではないかと思う。
自分が外国人よりも優れている。
自分は海外に行ったら、そんなことはしない。
と思い込んでいる人もいるようだけど、外国人からすれば、その他大勢に過ぎないし、母国の常識が他国の非常識になることもたくさんある。
その傲慢で思い上がった考え方を、この映画を観て改めるべきと思う。
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toe@とにかく映画が好きなんです@pharmacy_toe
舞台挨拶付き「女は二度決断する」の先行プレミア上映会に行ってきた
2018/03/23 22:19:55
もうもう、とにかくダイアン・クルーガーが美しかった舞台挨拶だった
映画は、テロリストに家族を殺され全てを奪われた女性カティヤが犯人に報復するサスペンスで、素晴ら… https://t.co/fc1X9TxnHz
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