ロシアで元バレリーナがスパイとして育てられ、アメリカとのスパイ合戦に巻き込まれていくサスペンス映画。
【満足度 評価】:★★★☆☆
これは、私としてはかなり無理な感じだった。
冷戦が終わり、セクハラもなくし、新しい未来を切り開いていこうとしている世の中の動きから逆行している時代遅れな印象を受けた。
目次
「レッド・スパロー」予告編 動画
(原題:Red Sparrow)更新履歴・公開、販売情報
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キャスト&スタッフ
出演
〇ジェニファー・ローレンス…(「パッセンジャー」、「X-MEN:アポカリプス」、「ハンガーゲーム」シリーズ、「あの日、欲望の大地で」など)
〇ジョエル・エドガートン
…(「イット・カムズ・アット・ナイト」、「ラビング 愛という名前のふたり」、「ブラック・スキャンダル」、「ディーン、君がいた瞬間」、「ウォーリアー」<兼 監督作>「ある少年の告白」、「ザ・ギフト」など)
〇マティアス・スーナールツ
…(「フランス組曲」、「リリーのすべて」、「ベルサイユの宮廷庭師」、「ラスト・ボディガード」など)
〇シャーロット・ランプリング
…(「ともしび」、「ベロニカとの記憶」、「さざなみ」、「リスボンに誘われて」、「クリーンスキン 許されざる敵」、「評決」、「ハイヒールを履いた女」など)
〇ジェレミー・アイアンズ
…(「アサシン・クリード」、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、「リスボンに誘われて」、「キングダム・オブ・ヘブン」など)
監督
〇フランシス・ローレンス…(「ハンガー・ゲーム2」、「ハンガー・ゲーム:FINAL レジスタンス」、「ハンガー・ゲーム:FINAL レボリューション」、「コンスタンティン」など)
2017年製作 アメリカ映画

あらすじ
ボリショイバレエ団のプリンシパル ドミニカ(ジェニファー・ローレンス)は、公演中の事故によりバレリーナとしてのキャリアを絶たれてしまう。
その後、叔父 ワーニャ(マティアス・スーナールツ)の紹介で、美貌を最大限に利用して、ターゲットを誘惑して落とすロシアの兵器・スパローになるべく訓練を受けるようになる。
上官(シャーロット・ランプリング)の容赦ない教育により、一人前のスパローとなったドミニカはアメリカのCIA捜査官・ネイト(ジョエル・エドガートン)に近づいていくのだが…。

感想(ネタバレあり)
現代に、ロシアでハニートラップとして育てられたドミニカ…
ベルリンの壁が崩壊したのは1989年。
冷戦は終結し、共産主義はこの世から消えようとしている。
この映画の主人公・ドミニカはロシアのスパイとして育てられ、彼女は「身体を使ってターゲットを誘惑し」アメリカのCIA捜査官から情報を盗み出す任務を受ける。
ということは、アメリカとロシアの間はいまだに「冷戦状態」であることが、この映画の大前提となる。
さらに、昨年からアメリカで始まった #MeToo運動 では、「女性が強制的に身体を利用される時代は終わりました」と宣言していながら、この映画では積極的に女性の身体が利用されている。
正直言って、これは同じ女性としてなかなか気分の悪い映画だった。
冷戦を描くにも、女性がハニートラップとして教育されるのも、現代を舞台に描くには時代遅れであり、明らかに破綻していると思った。
これが、60年代~80年代を舞台にして描かれていれば、あまり違和感なく観られたような気がするのだが、なぜ、現代を舞台にしてしまったのか。
それが、残念でならない。

#MeToo運動 とは逆行するヒロイン
私は特にフェミニストではないけれど、セクハラは反対だし、男女同権を認めて欲しいと思っている。
その中で、昨年は、ハーヴェイ・ワインスタイン、ケヴィン・スペイシーへの告発から始まった #MeToo運動 があり、「ワンダーウーマン」や「アトミック・ブロンド」が新しい女性ヒロインの形を切り開いた。
そのムーブメントは、とても感動的で新しい時代の到来にワクワクするような出来事だった。
そして、2018年の1月に行われたゴールデングローブ賞では、性暴力に抗議し「強制的に身体を利用される時代は終わり」という意味を込めて、ノミネートされた人々が黒いドレスやスーツを着て出席した。
その動きの中で、この映画のヒロインであるドミニカは、男性たちの前で服を脱ぎ、股を開いた代わりに情報を得ることを強いられる。
それは彼女が望んでそのような役割を演じているわけではなく、病気の母親を「ほぼ人質」のように囚われた上で、彼女が身体を売らなければ母が殺されるという状況下にいたからで、それは「強制的に」情報を得るために身体を売らされていたのである。
それはまさに、昨年から続く女性たちを取り巻く動きの中で真逆に動いているヒロインだった。
百歩譲って、この映画はその #MeToo運動 が起きる前に作られた映画なので、仕方がない部分もあるかもしれない。
けれど、その中で、ちゃんど時代を読んで作られた「ワンダーウーマン」や「アトミック・ブロンド」のような作品もあるわけで、時代を読めていなかったのは確かである。
中でも、ジェニファー・ローレンスやシャーロット・ランプリングは、常に女性の模範となるような、女性が見てもカッコイイ女性たちだったので、余計に残念だった。

ベルリンの壁が崩壊してから30年が経とうとしている…
1989年にベルリンの壁が崩壊してからもうすぐ30年。
かつての大国は共産主義から自由経済へと移行し、いまや、中国やロシアの経済は世界の中心地にいる。
その時代の中で、アメリカがロシアから「命がけで欲しい情報」とは一体何なのか。
ジュリアン・アサンジや、スノーデンなどの「アメリカから追われるハッカーたち」がいるモスクワでITを使わずに、「身体で得たいほど」の情報とは一体何か。
この「現代のロシア」の描き方にも、かなり問題があると思った。
だいたい、ロシアはもう共産主義ではないのに、スパローたちの教育係であるシャーロット・ランプリングは、「冷戦は終わっていない」と言っているけれど、それは、この映画を作るための言い訳のように聞こえた。
だいたい、この情報時代に情報をフロッピーディスクでやりとりしているスパイたちがどれだけいるのか。
ネットで飛ばせば一瞬で済むようなことだし、ミニディスクにいれたら数センチの大きさで済むようなことを、あの、わざわざ大きなフロッピーディスクを数枚使ってやり取りするなんて、ちょっと呆れてしまった。
今どき、ロシアの一般人だってiPhoneを使っているような時代に、フロッピーディスクっていうのは、バカにし過ぎじゃないかと思った。
だいたい、フロッピーディスクが使えるノートパソコンを見つけるのだって難しい。
結局、このスパイたちが欲しがっていた情報が一体何なのかよくわからないまま終わってしまったけれど、そこに、説得力がないことにも問題がある。
ここで描かれている状況について、重箱の隅をつついているわけではなく、細部に気が配られていないということが言いたいのだ。
ナイスバディのジェニファー・ローレンスが見たいなら、もっと違う映画が作れたはずだ。
そうではなくて、「現代のスパイの苦悩」を描きたいなら、「今を感じる」映画にして欲しかったのだ。

舞台背景が冷戦時代だったなら…
という感じで「女性の描き方」についても、「スパイの描き方」についても、なんとも納得がいかないまま物語は終わってしまった。
しかし、それらの問題を全て一気に解決する方法がある。
それは、舞台を60年代~80年代の冷戦時代にしてくれたら、全て納得できたように思う。
ちなみに、同じくスパイの交換が行われる映画「ブリッジ・オブ・スパイ」は1960年を舞台にしている。
共産主義のソ連でハニー・トラップとして育てられた女性工作員が、アメリカの工作員との悲しい恋に落ちる。
という話にしてくれたら、「共産主義時代の市民の貧しさ」や「当時の政府の非人道的行為」が伝わってくる映画になっていたことと思う。
なぜ、この映画を「今」を舞台にして描かなければならなかったのか、その「理由」や「必然性」が感じられなかった。
どうも、スパイについても、女性工作員についても、あまりにもステレオタイプなイメージに囚われたような作品にしか見えなかった。
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