ケン・ローチ監督の映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」を映画館で観た。

心臓病を患いながら一人暮らしを送るダニエルの生活を通して、イギリスの生活困窮者に対する行政の厳しさを訴える。


満足度 評価】:★★★★★

人が人らしく生きる権利はどこにあるのか。

あまりにも理不尽なできごとの繰り返しに、何度も泣いて、何度も腹を立てながら観た作品だった。

観終わった後は、エンドクレジットが終わってもしばらく涙が止まらなかった…。


「わたしは、ダニエル・ブレイク」予告編 動画

(原題:I, DANIEL BLAKE)




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キャスト&スタッフ


出演者

〇デイヴ・ジョーンズ

〇ヘイリー・スクワイアーズ

監督

ケン・ローチ
…(「この自由な世界で」、「ジミー、野を駆ける伝説」、「麦の穂を揺らす風」など)


2016年制作 イギリス、フランス、ベルギー合作映画

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」

あらすじ


大工のダニエル(デイヴ・ジョーンズ)は、心臓発作を起こして以来、医者から仕事をすることを止められている。

そのため、生活保護を受給しようと役所に行くが、審査の結果「仕事を探せ」と言われてしまう。

その審査に対し不服申し立てを行おうとするが、役人はパソコンを持っていない彼に対し、「申請はネットでしろ」の一点張り。

途方に暮れてしまう彼だったが、彼と同じく生活に苦しむシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)とその子供たちの一家と知り合い、互いに支え合うようになる。


映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」


感想(ネタバレあり)


予算削減のための政策が生活困窮者をさらに苦しめる


主人公のダニエル・ブレイクは生活困窮者である。

心臓発作を起こして倒れた後は、医者に「仕事を辞めなさい」と言われ、仕事ができないならと生活保護を受けようとしても、国には「仕事をしろ。仕事を探せ」と言われてしまう



そんなダニエルの生活を見つめるこの映画の中で、聞き慣れない言葉があった。

それは、「寝室税」である。



映画の中で、ダニエルが「『寝室税』だって払っているのに、なんでこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ」と言うセリフがある。

あまりにも聞き慣れない言葉であり、どんな税金なのか想像もつかないので調べてみた

簡単に説明すると、こんなことらしい ↓

bedroom tax(寝室税)とは2013年4月にイギリスで導入された制度で、使われていない寝室の数に対し、低所得者向け住宅手当の支給額を削減する制度

 tax(税)の名称をとりながらも実際は金品を徴収するものではなく、手当を減額するシステムである。

財政支出削減の政策として行ったが、貧困層からの反発が強かったうえに裁判所による違法判決も出された。

eigonary より

つまり、財政難の国が低所得者層に対する給付金の予算を減らすためにひねり出した法案のよう。

なんとも理不尽で、急場しのぎの法案であり、貧しい人々の生活をより苦しめる法案であることは目に見えている。



この映画のダニエルのように、妻を亡くして一人暮らしをしている人は、妻と共に住んでいた家で暮らしていると、自動的に寝室が1つ多いと判断され、給付金が減らされてしまい、より生活が苦しくなる

ここで描かれる苦しみの全ての発端は、この訳の分からない「寝室税」にあり、国民の実情を考えずに法案を作った結果、余計に貧しい人たちを負のスパイラルに追い込んでしまったということが良く分かる。



映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」



日本でも起こり得る役所の理不尽な申請カット


ただでさえ、その「寝室税」で追い込まれていた主人公のダニエル・ブレイクは、生活保護受給申請でさらに追い込まれてしまう。



心臓発作を起こし、医者から「仕事はするな」と止められたにも関わらず、生活保護の申請を出すと「仕事をしろ」と言われる。

その件で不服申し立てをすると、「申請はネットで」と言われる。

そこで、パソコンを持っていないダニエルは図書館へ行って申請しようとするも、入力のしかたが分からず「エラー」が出てしまう…。



この堂々巡りは、まるでダニエルに対し、「生活保護を受けられるものなら受けてみろ!!」という国からの挑戦としか思えない



常にネットがそばにある私からしたら、「あらゆる申請をネットでできるようにして欲しい」と思うし、その方がありがたいとも思うけど、使えない人には使えない人用の申請方法があってしかるべきで、ハラスメントの1つに他ならない

それでも、私はそんなダニエルの様子を観ながら、「まさか日本ではこんな風に医者に仕事を止められた人まで働かせる自治体はないだろう」「イギリスは大変だ」などと思いつつ、ちょっと他人事のような感じで観ていた。



しかし、そうでもないらしい。

私が、この映画を映画館で観た時は、たまたま人権派弁護士の宇都宮健児氏のトークショー付きの回だった。



なので、直接彼から日本の現状について聞くことができたのだが、宇都宮氏によれば「日本でも同じようなケース(病気なのに働けと言われ生活保護を受けられなかった)が数件ある」ということだった。

そして、いずれも餓死したり、役所にたらい回しされたことが苦になって自殺したりなど、「死」まで追い込まれてしまったらしい。



私はそのトークショーを聞いて、今も日本のどこかに、ダニエル・ブレイクがいるかもしれないという現実を突きつけられた。



映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」



ちょっとしたミスさえも許されないお役所仕事が生活困窮者を追い詰める


ダニエル・ブレイクは、その堂々巡りの申請を行っている最中に、同じく生活困窮者でシングルマザーのケイティと知り合う。

ケイティはロンドンで生活保護を受けていたものの、2人の子供ともう少し広いところで暮らしたいと思い、郊外にあるダニエルが暮らす街へ引っ越してきた。



ダニエルはそんなケイティ一家と知り合い、ケイティが仕事探しをしている間、ダニエルが子供の面倒をみたり、それに対し、ケイティがダニエルに食事を作るなどして、互いに助け合うようになる。

「遠くの親戚よりも近くの隣人」そんな関係だろうか。



私がこの映画の中で、最も心に残ったのは、ケイティとダニエルがフードバンク(生活困窮者に対し、食料を提供する施設)へ行くシーンだった。

係りの人に言われた通りに食料を手にしていたケイティが、おもむろに缶詰を手に取り、一心不乱にむさぼりつく。



「あまりにもお腹が空いてしまって」と泣きながらへたり込むケイティ

あのケイティの一心不乱な姿は、あまりにも衝撃的だった。



仕事がないまま二人の子供を育て、生活保護を受けに行こうとすると、引っ越したばかりで道に迷い、ようやくたどり着いたかと思えば「遅刻した人は審査を受けられません」とはじき出される。

役所の人たちも「規則を破った時の責任」を問われることを恐れ、「これは規則だから」の一点張り。

そんな社会がケイティを追い詰める。



そこに彼女の気持ちが分かるダニエルがいて、「君は間違っていないよ」と言ってくれたから、まだ心が救われた。

もし、ケイティが1人だったら、きっと心が折れてしまっていたに違いない。



映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」



国が福祉の予算を削るたびに、貧しい人たちも国から削られていく


そもそも、法律や国の予算は国民一人一人が人間らしく生きるためのものである。

しかし、財政が悪化していく中、予算を削っていくと、それと同時に貧しい人たちの生活もまた削られていく。



彼らが求めているのは、生活困窮者に対する施しではない。

仕事をしたい人が仕事をして、仕事ができない人は仕事ができるようになるまで保護を受ける

そういう、当たり前の生活なのだ。



全ての人がトップランナーを目指さなくても良い

ただ、全ての人が最低限の生活ができるようになるボトムアップの政策が必要なんだと思った。

それが、人間らしい生活であり、生きる権利なのだと思う。

予算を削れば良いというものではない。



私だって、いつ生活困窮者になるのか分からない。

そうなった時、私にはダニエルとケイティのように頼れる友人はいるだろうか…。

いつか来るかもしれないそんな時を想像すると、なんだか背筋がゾッとするような恐怖を感じる

常に、社会の底辺で生きる人たちにスポットライトを当ててきたケン・ローチの傑作映画だと思った。


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