とにかく映画が好きなんです【本館】

とにかく映画が好きで、特にアメリカ映画大好きです このブログは、ネタバレありの映画鑑賞日記です。主にハリウッド映画と韓国映画をメインに感想を書いています


タグ:メラニー・ティエリー



ベニチオ・デル・トロ主演の映画「ロープ 戦場の生命線」を映画館で観た。

1995年、内戦が停戦したバルカン半島で住民たちに衛生的な水を提供するNGO団体が、井戸に捨てられた死体を除去するために四苦八苦する様子を通し、戦場における力関係の複雑さを浮き彫りにする。


満足度 評価】:★★★★☆

紛争地帯にある井戸を舞台にし、その井戸を通して、そこで暮らす村人たち、紛争が起きている民族対立、国連の役割を描き、その上で、平和を願うNGO団体にできることは何かを描いていて、とても面白かった。

そして「戦争も紛争もなくならないんだな」と思うと絶望的な気分になる映画でもあった。

この感想には結末に関するネタバレを含みます。映画をご覧になってからお読みください。


目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想
  6. 関連記事


「ロープ 戦場の生命線」予告編 動画

(原題:A Perfect Day)



更新履歴・公開、販売情報

・2018年3月23日 映画館にて観た感想を掲載。

・2019年3月24日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVD、ネット配信、共に販売中。


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キャスト&スタッフ


出演者

ベニチオ・デル・トロ
…(「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」、「ボーダーライン」「ガーディアンス・オブ・ギャラクシー」など)

ティム・ロビンス
…(「デッドマン・ウォーキング」など)

オルガ・キュリレンコ
…(「ディバイナー 戦禍に光を求めて」、「スパイ・レジェンド」など)

メラニー・ティエリー
…(「天国でまた会おう」など)

〇フェジャ・ストゥカン

〇セルジ・ロペス


監督・脚本・製作

〇フェルナンド・レオン・デ・アラノア


2015年製作 スペイン映画



ロープ戦場の生命線




あらすじ


1995年、停戦協定が結ばれたばかりのバルカン半島。

NGO団体「国境なき水と衛生管理団」は、ある小さな村の井戸に投げ捨てられた人間の死体を引き上げる作業をしている最中に、ロープが切れてしまう。

そこで、リーダーのマンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)とビー(ティム・ロビンス)は、近くの村を回ってロープを探しに行くのだが…。



ロープ戦場の生命線2




感想(ネタバレあり)


1995年 バルカン半島にある小さな村の井戸に投げ込まれた一体の死体


紛争地帯(表面的には停戦中)でのNGO団体の活動の難しさを通して、戦争が国民に与える影響や、様々な利権が絡んだ複雑さを描いた作品。

とても面白い作品だった。



バルカン半島では、冷戦の終結後、東欧の民主化にともない民族対立が発生。

それがユーゴスラビア紛争に発展したが、1995年ごろに沈静化し、停戦協定が結ばれたばかりだった。

とはいえ、停戦協定が結ばれたはずなのに、空爆は引き続き行われていて、その様子は旧ユーゴスラビア出身のエミール・クストリッツァ監督作「オン・ザ・ミルキー・ロード」でも描かれていた。



そんな状況の中で、NGO団体「国境なき水と衛生管理団」は井戸に落ちた死体を引き上げる作業をしていた。

しかし、もうすぐで引き上げられると思ったところで、死体を結んでいたロープが切れてしまう。

そこで彼らは、新たなロープを手に入れるために、周辺の村を回ることになった。



ところが、たかがロープ一本をなかなか手に入れることができない。

道中には牛の死体に埋め込まれた地雷が置かれ、村にたどり着けば、住民がほぼ全滅状態で人気のない村もあるし、国連に助けを求めてもらちが明かない。



様々な民族が入り混じるこの国では、大人たちの力関係が子供たちにも影響を与え、嫌われた人種の子供たちはカツアゲやいじめに遭う。

その現実を見つめながら、彼らは「命の危険にさらされた国民のために何をすべきか」を問い続けながら作業を続ける

その活動を通して、紛争地帯でNGOが活動することの難しさ、そして、国連とは一体何のために存在しているのかについて考えさせられる作品だった。



ロープ戦場の生命線3



死体によって汚染された井戸が示すものとは


人間は水を飲まなければ生きていけない

ということは、この映画の舞台のように、上水道が整備されていない山間部の小さな村にとって、村の中心にある井戸は村人たちの「命の源泉」である。

その命の源泉に、死体が投げ込まれ、汚染されてしまったということは、彼らNGO団体がしていることは「村人の命を助ける作業」である。



では、なぜ、そんな貴重な場所に死体が投げ込まれたのか

それは、その井戸のそばで「水を売っている人々」がいるからである。

「戦争によって金儲けをしたい人たち」が、紛争の混乱に乗じて死体を投げ込み、井戸を使えないようにし、自分たちは貧しい村人たちに水を売って金を巻き上げるのである。



ということは、「この井戸を村人の命」と考えると、そこにいきなり落ちてきた死体は、「戦争ビジネスで儲けたい人々によって引き起こされた紛争」を示していて、その中身は肥大し腐りきり、周辺の命を汚染する。

そして、なんとかしてそれを引き上げようとするロープは、「彼らの命をなんとしても救いたいと願う命綱」なのである。



周辺の村にその「命綱(=解決の糸口)」を探し歩いても見つからず、国連には拒絶され、たどり着いたのは民族浄化によってほとんどの村人が殺された村であり、ようやく見つけたロープは、死体を吊り下げていたものだった。

つまり、そのロープで死体を吊り上げた場合、井戸の汚染除去によって助かる命とは、他の村人たちの犠牲の上に成り立っているものなのである。



ロープ戦場の生命線4



純粋に平和を願う人々と、戦争をしたい人々の狭間で


しかし、そうして、多くの人々を犠牲にしてまで死体を引き上げ、もうすぐ除去できるとなった時、村人たちの目の前で、再びその綱は切れてしまう。

しかも、国連軍の手によって、それは無情にも切られてしまうのだ。

それは、衝撃の結末だった。



つまり、平和を願う人々によって紛争がもうすぐ終わるとなった時、その平和を壊したのは国連軍だったのである。

実際に、この時、和平条約が結ばれていたにも関わらず、いつまで空爆を続けていたのは国連軍だったのである。

その当時の様子は、前述した「オン・ザ・ミルキー・ロード」でも描かれていた。



この時、国連軍は「平和を維持する」ことを目的でこのバルカン半島に入っていたのに、むしろ、平和を壊し、その裏には「戦争ビジネスで金儲けしたい人たち」の存在が見え隠れしている。



では、NGO団体「国境なき水と衛生管理団」(明らかに「国境なき医師団」を示していると思われる)は、もしかしたら、間違って地雷を踏んで爆死してしまうかもしれないという危険と背中合わせで活動しているのだが、純粋に平和を願う彼らが、その地でできることはあるのか。

必死で紛争地帯(表向き停戦中)の人々の命を助けようとしても、国連が彼らの目の前で、その苦労を水の泡にしてしまう



そこに、平和を願うNGOの活動の難しさがある。

井戸の周りに集まってその中を覗き込み、「あの死体をどうやって取り除いて、村人の命を助けようか」と頭を悩ませたところで、村人たちからすれば「所詮、高みの見物」でしかないのである。



ロープ戦場の生命線5



たとえ数人であっても、人の命を救った日は「素晴らしい一日」


結局、目の前でロープを切られてしまい、絶望的な気分になっている彼らが受けた指令は「簡易トイレのつまり除去」だった。

その「たかだか下水のつまり」を治すような、たとえ誰でもできる仕事であっても、その村で簡易トイレを使っている数千人を疫病から救うことができる

それでも「何もしないよりはまし」なのだ。



そして、その道すがら、彼らが「不当に拘束されている」と通報した捕虜たちが乗った国連軍のバスとすれ違う。

もしかしたら、彼らも「民族浄化されてしまう人々だったかもしれない」と考えれば、多くの命を救ったことになる

それもまた、「何もしないよりはまし」なのだ。



たとえそれが数人であっても、人々の命を救った日は、彼らにとって「A Perfect Day(素晴らしい一日)」(原題)なのだ

そのためにNGO団体に入ったのであり、そのために命の危険を顧みず紛争地帯にいるのである。

そう思わないと、絶望して唖然とするような現実がそこにはあるのだ。



この映画の原作は「国境なき医師団」に所属する医師によって書かれたものなのだとか。

唖然とする現実をその目で見た人ならではの、かなり痛烈な皮肉のこもった作品だった。

一体、「平和維持軍」とは何のために存在し、何をするために紛争地帯に入っているのか。

現在、世界中で起きている紛争地帯で、この映画と同じことが起きているのでは…と考えると憂鬱な気分になる作品だった。






関連記事


バルカン半島の民族対立・紛争を描く

「オン・ザ・ミルキー・ロード」



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フランス映画「天国でまた会おう」をフランス映画祭で観た。

第一次大戦後のフランスで、顔に重傷を負ってしまった青年が企てた前代未聞の詐欺についての物語。


満足度 評価】:★★★★☆

観ている間は映像の美しさと物語の面白さに引き込まれ、観終わった後には、この映画の素晴らしさがじわじわと湧き上がってきて、戦争の理不尽さが胸に迫ってきた作品だった。

目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「天国でまた会おう」予告編 動画

(原題: Au revoir là-haut)



更新履歴・公開情報


・2018年6月24日 「フランス映画祭 2018 横浜」にて鑑賞。
(鑑賞時タイトル:シー・ユー・アップ・ゼア(See You Up There(英題)))

・2018年7月30日 感想を掲載。

・2019年3月8日 映画館にて再度鑑賞。

・2019年3月12日 感想を加筆修正。

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キャスト&スタッフ


出演者


〇アルベール・デュポンテル

〇ローラン・ラフィット

〇ニエル・アレストリュプ

〇エミリー・ドゥケンヌ

…(「ロープ 戦場の生命線」など)


監督・脚本

〇アルベール・デュポンテル

2017年製作 フランス映画



シー・ユー・アップ・ゼア





あらすじ


第一次世界大戦で、エドゥアール(ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート)は、友人のアルベール(アルベール・デュポンテル)を助け、負傷してしまう。

命は助かったエドゥアールだったが、顔に重傷を負ってしまったことにショックを受け、裕福な家に帰ることを拒否。

戦争が終わり、エドゥアールは戦死兵として偽装し、全く違う人間として、アルベールと共に生活し始める。

そして、戦時中に理不尽な命令をくだした上官のプラデル(ローラン・ラフィット)が財産を築いていることを知り、前代未聞の詐欺を思いつく…。


シー・ユー・アップ・ゼア2





感想


なぜエドゥアールが戦場にいたのか


この物語は、兵士エドゥアールが、第一世界大戦の戦地で負傷し、顔の半分を失ってしまうところから始まる。

その後、自分の顔に驚愕し、絶望したエドゥアールはそれまでの身分を捨て、違う人間として生き、ある詐欺を思いつく。

そして、戦友のアルベールは、そんなエドゥアールの詐欺を手伝うようになる。



そもそも、エドゥアールは、上流階級の息子で、戦地に行くよりも家で絵を描いている方が好きなタイプの青年だ。

そのエドゥアールがなぜ、戦地に送られたのか

それは、フランス人の「ノブレス・オブリージュ」(直訳:高貴さは(義務を)強制する)という考え方からきている



その「ノブレス・オブリージュ」について、Wikipediaを引用すると

一般的に財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴うことを指す。




つまり「財力や権力を持ち、社会的地位の高い人は、他の人々の模範となるような生活をするべきで、誰もよりも積極的に義務を全うするべき」という考え方。



アメリカのセレブたちが積極的にボランティア活動をしたり、多額の寄付をしたりするのは、彼らにとってそれが義務であり、当たり前のことだからなのだ。

むしろ、欧米で一切奉仕活動をしないセレブは批判の対象になってしまうのだ。



で、その「ノブレス・オブリージュ」をこの映画の話に戻すと、第一世界大戦当時は、上流階級の人々が「ノブレス・オブリージュ」を全うするために、息子たちを戦地に送っていた

フランスの権力者の息子として生まれたエドゥアールも例外でなく、彼の意志とは関係なく、父の社会的地位を維持するために戦地へ送られたのだ。

そして、彼は顔面の半分を失うという大けがを負い、犠牲者となってしまうのだ。



天国でまた会おう3





なぜ慰霊碑詐欺なのか


しかし、戦後、社会に戻ってみると、戦場で亡くなった人々は称えられるにも関わらず、エドゥアールのような負傷者に対しては冷遇する世の中になっていた

それは、アルベールがエドゥアールのモルヒネを調達するために、負傷した兵士たちを襲っていたが、彼らはみな貧しい生活を強いられていたことからもわかる。



そこで、エドゥアールは「戦没者慰霊碑詐欺」を思いつく

「戦没者慰霊碑を作ります」と言えば、それこそ「ノブレス・オブリージュ」の精神でエドゥアールのお父さんのような人たちが、大金を払うのは確実だからだ。

エドゥアールは、そうして大金を集めて、慰霊碑を建てずに持ち逃げしようと考えた

誰よりもエドゥアールが、彼らのそうした考え方を知っていたからこそ、思いついた詐欺だった。



そして、戦友のアルベールは、そのエドゥアールの案を手伝うことにしたのだ。



天国でまた会おう4





エドゥアールが仕掛けた詐欺の真意とは…


戦争をすることに決めた政治家や、息子たちを戦地に送った上流階級の人々、エドゥアールの上官プラデルのように戦地で指揮をしていた者たち。

彼らは、戦後も裕福な暮らしをしている。



その反面、戦争によって負傷した者たちは、身体の一部を失い、生活が不自由になるだけでなく、仕事につくこともできず、貧しい生活を強いられていた。



その不条理さが深く胸を打つ作品だった。

エドゥアールのように詐欺をして人をだますのはよくないことだけれど、そのお金で戦争の犠牲者の生活を支えることは、それこそ「ノブレス・オブリージュ」ではないのか。



貧富の差の不条理から生まれた詐欺だったけれど、エドゥアールの真意は「父への復讐」にあった。

エドゥアールは死んだことになっていたが、慰霊碑のデザイン画を見た父は、エドゥアールを思い浮かべるのではないかと思った上で、あの詐欺をしかけているのだ。



そして、その通り、父がエドゥアールが訪ねてくる。

その時、父はエドゥアールとの「和解」を希望していたはずだ。

それまで冷たく当たり、自分の社会的な地位のために息子を戦場に送った父だったが、いざ、亡くしてみると息子の存在の大きさに気付かされるのだ。



しかし、だからこそ、エドゥアールは、その父の思いを裏切るような行動をする

それこそが、父に対する最高の復讐になるからであり、「天国でまた会おう」というタイトルが胸にしみるのだ。



天国でまた会おう5





思いは、最後に残る「悲しみ」


第一世界大戦は、非常に多くの犠牲者を出したことで未だに語り継がれる戦争になった。

しかし、戦死した者は称えられ、戦争によって富める者が生れ、身体が不自由になってしまった者は貧しい生活強いられるという不条理を生み出すこととなった。



いつの時代もそうだけど、戦争をするならば、戦争をしたい人が、最前線に行って銃を構えるべきなのだ。

「市民は国が決めた戦争に参加するのが義務だ」という理由で、戦争に行きたくない人々が戦地に送られ、多くの若い命を失ったり、または身体が不自由になって帰ってくるのは、なんという理不尽なことなのか。



エドゥアールは、そんな世の中に対して「どうしたら、この苦しみを父や父の仲間たちに理解してもらえるのか」と考え、詐欺を思いつき、それによって父をおびき寄せたのだ。

見事にエドゥアールは復讐を果たすことができたが、残された人々には深い悲しみが残った。



どんな形であれ、戦争の後には「悲しみ」が残るのだ。

だから、戦争はしてはいけないのだ。



これは、この世に戦争による犠牲者を出さないためにも、一人でも多くの人に観て欲しい作品なのである。







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