「ロマン・デュリスの偶然の殺し屋」をWOWOWで観た。
たまたま引き受けた仕事が「殺し屋」だったという失業中の男によるちょっと変わった職探しの顛末を描くコメディ映画。
劇場未公開の作品をどこよりも早く放送する「WOWOWジャパンプレミア」の一本。
【満足度 評価】:★★★☆☆
失業中で、生活のために仕事をしたいけれど、やりたい仕事が見つからない。
そんな時は、向いている向いていないに関わらず、誰もやりたがらないような仕事をしてみたら、意外と成果があって、次につながっていくことがあるかもしれない。
そんな「仕事」に対して、前向きなパワーを感じる作品で、軽く楽しめる作品だった。
◆オリジナルサウンドトラック:「Un Petit Boulot」
…(「パパは奮闘中!」、「ゲティ家の身代金」、「彼は秘密の女ともだち」、「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」、「ロシアン・ドールズ」、「スパニッシュ・アパートメント」など)
〇ミシェル・ブラン
〇アリス・ベレイディ
〇ギュスタヴ・ケルヴェン
〇シャーリー・デュポン
…(「幸せになるための5秒間」、「バツイチは恋のはじまり」など)
2016年製作 フランス・ベルギー合作映画

フランスのある田舎町。
工場が閉鎖してしまったため、ジャック(ロマン・デュリス)は失業してしまう。
暇を持て余すジャックに、知人のガルドー(ミシェル・ブラン)が「妻を殺して欲しい」と殺人の依頼をする。
お金が欲しかったジャックは、ガルドーの話を引き受け、彼の妻を殺すと、次の殺人の依頼が舞い込み…。

現在のフランスでは失業率の高さに悩まされているという。
この映画が製作された2016年のフランスの失業率は10.04%であり、10人に一人が失業中である。
同じく2016年の日本の失業率が3.12%であり、日本の約3倍という数字を見れば、フランスにおける失業率の高さがよくわかる。
(参考:世界経済のネタ帳 フランス、日本、失業率の推移)
そんなフランスの「失業事情」が、この映画のベースにある。
主人公のジャックの場合は、それまで働いていた工場が経費削減によって閉鎖になってしまう。
その「町にあった大きな工場が閉鎖して失業者が大量にあふれる」という田舎町の風景は、フランスに限らず、世界中のどこの国でもよく見られる話だ。
この映画では、そんな失業中に人たちに「一風変わった解決方法」を提示している。
ジャックはそれまで工場で働く日々を「単調でつまらない」と思っていたけれど、実際に仕事を失ってみると、生活していけなくなり、やはり、仕事が必要だと思うようになるのだが、だからといって田舎町には工場で働いていた全ての人を受け入れる程の仕事がない。
では、失業者はこれからどうやって生きていけばいいのか。
その失業者問題について描いているのが、この「ロマン・デュリスの偶然の殺し屋」であり、その解決策の一つとして、ジャックが引き受けるのが「殺し屋」なのである。
「殺し屋」というのは、発想がちょっと突飛だけれども、それが示すのは「誰もがやりたがらない汚れ仕事」である。
つまり、失業中の男が「誰もがやりたがらない汚れ仕事」を引き受けることで、彼自身の生活が変わっていくことをこの映画は描いているのである。
そう思ってこの映画を観ていると、「仕事をする」ということに対して前向きになり、「単調でつまらない日々」がどれだけ恵まれていることなのかがわかるようになってくるのである。

ジャックが殺し屋を引き受けたのは、はじめはお金のためだった。
お金が欲しくて知人ガルドーからの「妻を殺して欲しい」という依頼を引き受けてしまう。
そして、それがうまくいくと、ガルドーから次々と「暗殺依頼」が舞い込むようになる。
そうして、ガルドーの依頼を次々とこなしているうちに、ジャック自身の運が開けてくるようになる。
仕事を受けた時は失業者だったジャックだったが、受けた直後に友達トムの紹介でガソリンスタンドの職が決まる。
そして、さらに仕事を重ねていくと、殺人容疑で疑われた時に行った警察でアニタと出会い、やがて恋人同士になる。
また、トムと一緒に働いていたガソリンスタンドは、トムと共同で買収することになり、ジャックはトムと共に経営者になる。
そうしてジャックは、かつて工場で働いていた時のように「単調な日々」を送り始めるようになる。
しかし、同じ単調な日々でも、工場で働いていた時はつまらなかった日々なのに、ガソリンスタンドを買収した現在は充実した日々になっているのである。
アニタと出会ったのも「殺人」の仕事を引き受けたことで活動の幅が広がったからだし、トムと共にガソリンスタンドを買収したのも、「殺人」の仕事で稼いだ金が元手になったからである。
どちらも、「殺人」の仕事を引き受けたからこそめぐってきた運なのである。
だからこそ、人生はいつ何が起きるかわからないのである。

そもそも、なぜ、ジャックにはそんな風に運が舞い込んでくるんだろうか。
それはジャックの「オープンマインド」にあると思った。
とにかく「来るものは拒まず」で、どんな仕事も受けてしまう。
ドイツだろうが、スペインだろうが、仕事があれば出向く。
ときには、計画通りにいかず、予想通りの結果にならないこともあるけれど、それでも、めげずに次へと進む。
私は、そんなジャックの「断らないノリ」を観ていて楽しかった。
普通なら、なんだかんだと文句を言ってやりたくないアピールをするような仕事も、あまり深く考えずに「まぁ、なんとかなるだろう。とりあえずやってみるか」ぐらいに思っている。
それが、たとえ「殺人」という仕事であってもだ。
そんなジャックが、どんどん汚れ仕事を引き受けていくうちに、生活の活動範囲が広がり、運が開けていくのを観て「オープンマインド」っていうのは、幸運を呼び込むものなんだなぁと思うようになった。

私もこれまで様々な仕事をしながら生きてきたけど、どの仕事が自分に一番向いていたのかなんて、いまだによくわかっていない。
しかし、この映画を観ていると、仕事とは、自分が向いている向いていないを考えて選ぶものではなく、もしも、仕事がないのなら、たとえそれがどんな汚れ仕事であっても、「とりあえずやってみる」ということがあってもいいのではないかと思った。
この映画は、そのなかで「殺人」を推奨しているわけではなく、それは「だれもやりたがらない汚れ仕事」の比喩であって、その「だれもやりたがらない仕事」をしている中で、次第に本当にやりたいことが見えてくることもあるし、恋人に出会う可能性だってある。
とにかく動いたらいいのではと提案している。
失業中だからといって、家の中に閉じこもって腐っていても、人生は何も動かないのだ。
外へ出て、人と会い、会話をする中で、時には仕事の依頼を受けることもあるし、それが向いている向いていないに関わらず受けてみれば、思わぬ成果があって、それが次の仕事を呼び込み、やがて運が開けてくる。
本気で失業に悩んでいる人からしたら、ちょっと能天気な話のようだけど、「何もやらないよりはまし」ということだってある。
時間があるなら、外へ出て人と会うだけでもいい。
家の中でじっとしていても、仕事が勝手にやってきてドアをノックしてくれるわけではない。
また、ジャックを演じているロマン・デュリスには、のらりくらりとした感じが良く似合う。
彼の「なんとなくうまくいっちゃった感」がとても良かった。
この映画は、コメディタッチでフランスの失業事情を描きつつ、ちょっとした自己啓発ものだった。
そこに、フランスの地方の田舎を感じることもできたし、ちょっとした拾い物だった。
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◆オリジナルサウンドトラック:「Un Petit Boulot」
たまたま引き受けた仕事が「殺し屋」だったという失業中の男によるちょっと変わった職探しの顛末を描くコメディ映画。
劇場未公開の作品をどこよりも早く放送する「WOWOWジャパンプレミア」の一本。
【満足度 評価】:★★★☆☆
失業中で、生活のために仕事をしたいけれど、やりたい仕事が見つからない。
そんな時は、向いている向いていないに関わらず、誰もやりたがらないような仕事をしてみたら、意外と成果があって、次につながっていくことがあるかもしれない。
そんな「仕事」に対して、前向きなパワーを感じる作品で、軽く楽しめる作品だった。
「ロマン・デュリスの偶然の殺し屋」予告編 動画
(原題:Un petit boulot/英題:Odd Job)◆オリジナルサウンドトラック:「Un Petit Boulot」
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キャスト&スタッフ
出演者
〇ロマン・デュリス…(「パパは奮闘中!」、「ゲティ家の身代金」、「彼は秘密の女ともだち」、「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」、「ロシアン・ドールズ」、「スパニッシュ・アパートメント」など)
〇ミシェル・ブラン
〇アリス・ベレイディ
〇ギュスタヴ・ケルヴェン
〇シャーリー・デュポン
監督
〇パスカル・ショメイユ…(「幸せになるための5秒間」、「バツイチは恋のはじまり」など)
2016年製作 フランス・ベルギー合作映画

あらすじ
フランスのある田舎町。
工場が閉鎖してしまったため、ジャック(ロマン・デュリス)は失業してしまう。
暇を持て余すジャックに、知人のガルドー(ミシェル・ブラン)が「妻を殺して欲しい」と殺人の依頼をする。
お金が欲しかったジャックは、ガルドーの話を引き受け、彼の妻を殺すと、次の殺人の依頼が舞い込み…。

感想(ネタバレあり)
失業対策が殺し屋!?
現在のフランスでは失業率の高さに悩まされているという。
この映画が製作された2016年のフランスの失業率は10.04%であり、10人に一人が失業中である。
同じく2016年の日本の失業率が3.12%であり、日本の約3倍という数字を見れば、フランスにおける失業率の高さがよくわかる。
(参考:世界経済のネタ帳 フランス、日本、失業率の推移)
そんなフランスの「失業事情」が、この映画のベースにある。
主人公のジャックの場合は、それまで働いていた工場が経費削減によって閉鎖になってしまう。
その「町にあった大きな工場が閉鎖して失業者が大量にあふれる」という田舎町の風景は、フランスに限らず、世界中のどこの国でもよく見られる話だ。
この映画では、そんな失業中に人たちに「一風変わった解決方法」を提示している。
ジャックはそれまで工場で働く日々を「単調でつまらない」と思っていたけれど、実際に仕事を失ってみると、生活していけなくなり、やはり、仕事が必要だと思うようになるのだが、だからといって田舎町には工場で働いていた全ての人を受け入れる程の仕事がない。
では、失業者はこれからどうやって生きていけばいいのか。
その失業者問題について描いているのが、この「ロマン・デュリスの偶然の殺し屋」であり、その解決策の一つとして、ジャックが引き受けるのが「殺し屋」なのである。
「殺し屋」というのは、発想がちょっと突飛だけれども、それが示すのは「誰もがやりたがらない汚れ仕事」である。
つまり、失業中の男が「誰もがやりたがらない汚れ仕事」を引き受けることで、彼自身の生活が変わっていくことをこの映画は描いているのである。
そう思ってこの映画を観ていると、「仕事をする」ということに対して前向きになり、「単調でつまらない日々」がどれだけ恵まれていることなのかがわかるようになってくるのである。

「殺し屋」になってめぐってきた運
ジャックが殺し屋を引き受けたのは、はじめはお金のためだった。
お金が欲しくて知人ガルドーからの「妻を殺して欲しい」という依頼を引き受けてしまう。
そして、それがうまくいくと、ガルドーから次々と「暗殺依頼」が舞い込むようになる。
そうして、ガルドーの依頼を次々とこなしているうちに、ジャック自身の運が開けてくるようになる。
仕事を受けた時は失業者だったジャックだったが、受けた直後に友達トムの紹介でガソリンスタンドの職が決まる。
そして、さらに仕事を重ねていくと、殺人容疑で疑われた時に行った警察でアニタと出会い、やがて恋人同士になる。
また、トムと一緒に働いていたガソリンスタンドは、トムと共同で買収することになり、ジャックはトムと共に経営者になる。
そうしてジャックは、かつて工場で働いていた時のように「単調な日々」を送り始めるようになる。
しかし、同じ単調な日々でも、工場で働いていた時はつまらなかった日々なのに、ガソリンスタンドを買収した現在は充実した日々になっているのである。
アニタと出会ったのも「殺人」の仕事を引き受けたことで活動の幅が広がったからだし、トムと共にガソリンスタンドを買収したのも、「殺人」の仕事で稼いだ金が元手になったからである。
どちらも、「殺人」の仕事を引き受けたからこそめぐってきた運なのである。
だからこそ、人生はいつ何が起きるかわからないのである。

「どんなことも断らない」というオープンマインドが運を開く
そもそも、なぜ、ジャックにはそんな風に運が舞い込んでくるんだろうか。
それはジャックの「オープンマインド」にあると思った。
とにかく「来るものは拒まず」で、どんな仕事も受けてしまう。
ドイツだろうが、スペインだろうが、仕事があれば出向く。
ときには、計画通りにいかず、予想通りの結果にならないこともあるけれど、それでも、めげずに次へと進む。
私は、そんなジャックの「断らないノリ」を観ていて楽しかった。
普通なら、なんだかんだと文句を言ってやりたくないアピールをするような仕事も、あまり深く考えずに「まぁ、なんとかなるだろう。とりあえずやってみるか」ぐらいに思っている。
それが、たとえ「殺人」という仕事であってもだ。
そんなジャックが、どんどん汚れ仕事を引き受けていくうちに、生活の活動範囲が広がり、運が開けていくのを観て「オープンマインド」っていうのは、幸運を呼び込むものなんだなぁと思うようになった。

殺し屋とは、誰もやりたがらない汚れ仕事
私もこれまで様々な仕事をしながら生きてきたけど、どの仕事が自分に一番向いていたのかなんて、いまだによくわかっていない。
しかし、この映画を観ていると、仕事とは、自分が向いている向いていないを考えて選ぶものではなく、もしも、仕事がないのなら、たとえそれがどんな汚れ仕事であっても、「とりあえずやってみる」ということがあってもいいのではないかと思った。
この映画は、そのなかで「殺人」を推奨しているわけではなく、それは「だれもやりたがらない汚れ仕事」の比喩であって、その「だれもやりたがらない仕事」をしている中で、次第に本当にやりたいことが見えてくることもあるし、恋人に出会う可能性だってある。
とにかく動いたらいいのではと提案している。
失業中だからといって、家の中に閉じこもって腐っていても、人生は何も動かないのだ。
外へ出て、人と会い、会話をする中で、時には仕事の依頼を受けることもあるし、それが向いている向いていないに関わらず受けてみれば、思わぬ成果があって、それが次の仕事を呼び込み、やがて運が開けてくる。
本気で失業に悩んでいる人からしたら、ちょっと能天気な話のようだけど、「何もやらないよりはまし」ということだってある。
時間があるなら、外へ出て人と会うだけでもいい。
家の中でじっとしていても、仕事が勝手にやってきてドアをノックしてくれるわけではない。
また、ジャックを演じているロマン・デュリスには、のらりくらりとした感じが良く似合う。
彼の「なんとなくうまくいっちゃった感」がとても良かった。
この映画は、コメディタッチでフランスの失業事情を描きつつ、ちょっとした自己啓発ものだった。
そこに、フランスの地方の田舎を感じることもできたし、ちょっとした拾い物だった。
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