とにかく映画が好きなんです【本館】

とにかく映画が好きで、特にアメリカ映画大好きです このブログは、ネタバレありの映画鑑賞日記です。主にハリウッド映画と韓国映画をメインに感想を書いています


タグ:社会派



「ザ・スクエア 思いやりの聖域」の試写会に行ってきた。

ある美術館を舞台に、芸術家たちが創り出すアートと、そこに込められた理想と現実との落差をあぶり出す。


満足度 評価】:★★★★☆

面白かった!

現代では作品を発表し、それが批判されて炎上してこそビジネスになるし「差別なき思いやりの領域」こそが差別ある現実を表している。

そのアート界が目指す理想と現実社会の落差の激しさが心に刺さった。


目次

  1. 予告編
  2. 更新履歴・販売情報
  3. キャスト&スタッフ
     出演者
     監督
  4. あらすじ
  5. 感想


「ザ・スクエア 思いやりの聖域」予告編 動画

(原題:The Square)



更新履歴・公開、販売情報

・2018年4月9日 試写会で観た感想を掲載。

・2019年5月23日 WOWOWでの放送に合わせて加筆・修正。

現在、DVD、ネット配信、共に販売中。


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キャスト&スタッフ


出演者

〇クレス・バング

エリザベス・モス
…(「チャック~”ロッキー”になった男~」など)

〇ドミニク・ウェスト

〇テリー・ノタリー

監督

〇リューベン・オストルンド


2017年製作 スウェーデン、ドイツ、フランス、デンマーク合作映画



映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」



あらすじ


スウェーデン コペンハーゲンの X-ロイヤル美術館。

キュレーターのクリスティアン(クレス・バング)が、次回展示する作品は「ザ・スクエア」

それは、床に描かれた一つの正方形であり、その正方形は「人はみな平等であり、互いに助け合う思いやりの領域です」という説明が書かれている。

そして、ちょうどその頃、クリスティアンは人助けをしている間に、携帯と財布を盗まれてしまい…。



映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」



感想(ネタバレあり)


現代アートを理解している自分はカッコイイ思ってしまう人間の悲しい習性


現代アートっていうのは「意味がわからないことを素晴らしいというアート」だと思っている。

たとえば、バスキアの絵は「その辺の少年が壁に描いた落書き」と言われれば「あぁそうかも」と思ってしまうし、ポロックだって誰かがカンバスにペンキをこぼし、それを学芸員の人が「これはポロックなんだよ」と言えば、「おぉ~そうなのかーーー!!」と思ってしまう。

 ↓ これがバスキア
バスキア



 ↓ これはポロック
ポロック



人は、自分が「意識高い系の人間、もしくはIQが高い人間」だと見せるために、たとえば国立近代美術館のような立派なところが「これが最先端の前衛アートだ」と言って紹介した作品を、「いかにも理解しています」風に見栄を張ってしまうという悲しい習性を持つ



この映画の舞台はスウェーデンのコペンハーゲンにあるX-ロイヤル美術館。

つまり、スウェーデンの由緒正しき王立美術館である。

主人公は、その美術館でキュレーターをしているクリスティアンである。



その彼が展示する新作が「ザ・スクエア」である。

それは地面に正方形を描いただけのものであり、「その正方形の中では、誰もが平等であり、互いに助け合わなければならない思いやりの聖域」という説明書きがある



それは現代の格差社会に問題を提起する作品だとして、多くの人を呼び込もうと考えた。

そこで、クリスティアンは広告代理店と共に「どのように宣伝するか」を考えていくのだが、それが思わぬ波紋を呼ぶことになってしまう。



クリスティアンとしては、美術館を訪れた人々にそこで立ち止まってもらい「格差社会」について考える時間を作り出す「アート」だと考えた。

しかし、広告代理店の人たちは「強烈なインパクトがないと人の目には止まらない」と考えたのだ。

その両者の意見の違いをちゃんと摺り寄せなかった結果、後に悲劇(クリスティアンからすれば)(いや、喜劇か(ブラックユーモア)?それともハッピーエンドか(金儲け)?)が起きてしまう…。



映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」


クリスティアンの潜在意識の中にある差別意識


そのアート作品「ザ・スクエア」こそが、スウェーデンのみならず、ヨーロッパの現状を表しているものだった。



私がそのアート作品「ザ・スクエア」を観た感想は、「こんな小さな領域でしか平等が得られないなんて」だった。

日常生活を普通に過ごしていて、「みんなが平等」なのも、「互いに助け合う」のも「当たり前のこと」じゃないか。

むしろ、そんな「平等にするための領域」などいらないはず

しかし、そう思えるのも、それは日本が単一民族で暮らす平和な国だからなのかもしれない。



ヨーロッパでは「平等が当たり前ではない」のだ。

私の中で印象的だったシーンの一つは、クリスティアンが子供たちとモールへ行った場面だ。

彼がベンチに座って電話をしている間に、子供たちを見失ってしまう。

探しに行きたいけれど、荷物があって探しに行けない。



そこで、彼はそばにいたホームレスの男性を「利用する」。

「ちょっと来て」と言って、金も渡さず、「子供を探してくるから、荷物を観ていてくれ」と言う。

はじめは、そのホームレスの男性が「めぐんでくれ」と言ってクリスティアンに声をかけた時には、無視をしたにも関わらず

クリスティアンにとって、ホームレスの男性は「自分の都合で勝手に使ってもいい人」なのである。



そして、心に切なさを残すのは、クリスティアンの「財布とスマホを奪った」という少年。

彼のスマホが「貧しい人たちが暮らすアパートにあるから」という理由で、上から目線で書いた広告をそのアパートにばらまき、「なぜ持っているか」の理由を聞かずに、少年を勝手に「泥棒」呼ばわりし、彼の家を訪ねてきた少年が階段から落ちても助けようともしない。



そのクリスティアンのホームレスの男性と、貧しい暮らしをする少年(移民)に対する態度は共通している。



彼は、自分が展示する作品の中で「平等・助け合い・思いやり」をうたっておきながら、明らかに彼の潜在意識の中には「階級意識」があって、「とても自然に」態度を表に出てしまっているのだ。

いくら表面的には「差別はいけない」と言い、その思いをアートで表現しようとしたって、潜在意識の中に眠る「差別意識」までは変えられないのだ。

彼の中にある「ザ・スクエア」は、とても小さく狭いものだったのだ。

このクリスティアンこそが、ヨーロッパの「格差社会」を表しているキャラクターなのだ。



彼らにとっては「差別のない領域」こそが「理想郷を表すアート」であり、それを「なんて素晴らしい」「差別があってはいけない」と言いながらも、現実には、はっきりとした「境界と階級格差」があるのだ。

所詮、アートはアートでしかなく、現実の世界はその理想とかけ離れているのだ。

なんとも、皮肉な話ではないか。



映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」


イマドキの宣伝は「炎上商法」「ノイズ・マーケティング」で


その美術館に展示する作品「ザ・スクエア」を宣伝するため、広告を代理店に依頼したら、アップされた動画がまた強烈だった。

「白人」で「金髪」で「ホームレス」の女の子を使っているところは、明らかに、ターゲットが「上流社会の人たち」を想定している



「モンキーマン」が登場した晩餐会でもわかる通り、この美術館を支えているのが、その「上流階級の人たち」であり、彼らの心に刺さる動画を作ってこそ、この美術館は潤うのだ。

そこで、彼らは「その領域の中では、そういうかわいそうな子もいなくなる」ことを示すために、「ちょっと刺激的な」動画を作ってアップしたのだが、これが見事に炎上する。



広告代理店が見ている先はあくまでも「ターゲットの人たち」であって、「貧しい人たち」や「非白人の人たち」に対する配慮が全くない

「思いやりの領域」を宣伝するはずが、全く思いやりのない広告ができてしまったのだ。

もう、これは笑うしかない。



しかし、「注目を集めることが仕事」の広告代理店にとっては、動画を作って炎上させるまでが彼らのパフォーマンスであり、どの新聞にも大きくスペースを割いて批判記事が出たことは、ある意味、大成功だったと言える。

その記事と同じだけの大きさの新聞広告を載せるには、相当な予算を割かなければならない。

たとえ、その動画が「最低な倫理観」を持ったものだったとしても、「このアートは、一体何だ」「観に行って批判してやる」と思った人がいれば、それで大成功なのである。




これこそが、日本でも良くあるタイプの「炎上商法」「ノイズ・マーケティング」なのであり、ここには現代社会の問題点に対するブラックユーモアがたっぷりと込められている



映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」


観客の潜在意識の中に眠る「差別意識」に問いかける


「意識高い系」の人たちにとって、現代社会を批判するような「現代アート」には、そこに込められた真意がたとえよくわかっていなくても「『いいね』と言ったらかっこいい」ような雰囲気がある

「バスキアとポロックが好きな私ってかっこいい」みたいな。



この映画ではそんなアートな人たちが、「ザ・スクエア」という作品を通して、「差別ない世の中」を訴える。



しかし、「差別しない領域」をアートにすること自体が差別であり、その異常さに誰も気づいていない

なぜなら、そこで働く彼らも裕福な暮らしをし、ホームレスや移民に対して壁をつくり、当たり前のように上から目線で話しかけ、彼らがけがをしても助けようともしない。



それでは、「芸術」とは一体なんのためにあるのか

自分を「意識高い系に見せる」ための自己満足なのではないか



クリスチャンは最後に少年に対する態度を変え「君を泥棒扱いしてしまい申し訳なかった。これは『富の再分配』だ」と言うのだが、「上から目線」の姿勢は何一つ変わっていない

どんなにつらい思いをして、人の痛みが分かったようでも、実際には姿勢が変わってなく、人々の心の中にある「ザ・スクエア」の大きさを変えることは無理なのではと思った。



しかし、私だって、映画を観て「差別はいけない」と分かっていても、実際に差別を全くしない行動をしているのかと聞かれれば「100%そうだ」と言う自信はない。

クリスティアンの言動は、クリスティアンだけのものではない。

きっと、誰の心の中にもクリスティアンはいるのだ。

この映画は、そんな人それぞれの心の奥底に眠る「差別意識」に「あなたは大丈夫ですか」と問いかける作品なのだ。



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ケン・ローチ監督の映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」を映画館で観た。

心臓病を患いながら一人暮らしを送るダニエルの生活を通して、イギリスの生活困窮者に対する行政の厳しさを訴える。


満足度 評価】:★★★★★

人が人らしく生きる権利はどこにあるのか。

あまりにも理不尽なできごとの繰り返しに、何度も泣いて、何度も腹を立てながら観た作品だった。

観終わった後は、エンドクレジットが終わってもしばらく涙が止まらなかった…。


「わたしは、ダニエル・ブレイク」予告編 動画

(原題:I, DANIEL BLAKE)




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キャスト&スタッフ


出演者

〇デイヴ・ジョーンズ

〇ヘイリー・スクワイアーズ

監督

ケン・ローチ
…(「この自由な世界で」、「ジミー、野を駆ける伝説」、「麦の穂を揺らす風」など)


2016年制作 イギリス、フランス、ベルギー合作映画

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」

あらすじ


大工のダニエル(デイヴ・ジョーンズ)は、心臓発作を起こして以来、医者から仕事をすることを止められている。

そのため、生活保護を受給しようと役所に行くが、審査の結果「仕事を探せ」と言われてしまう。

その審査に対し不服申し立てを行おうとするが、役人はパソコンを持っていない彼に対し、「申請はネットでしろ」の一点張り。

途方に暮れてしまう彼だったが、彼と同じく生活に苦しむシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)とその子供たちの一家と知り合い、互いに支え合うようになる。


映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」


感想(ネタバレあり)


予算削減のための政策が生活困窮者をさらに苦しめる


主人公のダニエル・ブレイクは生活困窮者である。

心臓発作を起こして倒れた後は、医者に「仕事を辞めなさい」と言われ、仕事ができないならと生活保護を受けようとしても、国には「仕事をしろ。仕事を探せ」と言われてしまう



そんなダニエルの生活を見つめるこの映画の中で、聞き慣れない言葉があった。

それは、「寝室税」である。



映画の中で、ダニエルが「『寝室税』だって払っているのに、なんでこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだ」と言うセリフがある。

あまりにも聞き慣れない言葉であり、どんな税金なのか想像もつかないので調べてみた

簡単に説明すると、こんなことらしい ↓

bedroom tax(寝室税)とは2013年4月にイギリスで導入された制度で、使われていない寝室の数に対し、低所得者向け住宅手当の支給額を削減する制度

 tax(税)の名称をとりながらも実際は金品を徴収するものではなく、手当を減額するシステムである。

財政支出削減の政策として行ったが、貧困層からの反発が強かったうえに裁判所による違法判決も出された。

eigonary より

つまり、財政難の国が低所得者層に対する給付金の予算を減らすためにひねり出した法案のよう。

なんとも理不尽で、急場しのぎの法案であり、貧しい人々の生活をより苦しめる法案であることは目に見えている。



この映画のダニエルのように、妻を亡くして一人暮らしをしている人は、妻と共に住んでいた家で暮らしていると、自動的に寝室が1つ多いと判断され、給付金が減らされてしまい、より生活が苦しくなる

ここで描かれる苦しみの全ての発端は、この訳の分からない「寝室税」にあり、国民の実情を考えずに法案を作った結果、余計に貧しい人たちを負のスパイラルに追い込んでしまったということが良く分かる。



映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」



日本でも起こり得る役所の理不尽な申請カット


ただでさえ、その「寝室税」で追い込まれていた主人公のダニエル・ブレイクは、生活保護受給申請でさらに追い込まれてしまう。



心臓発作を起こし、医者から「仕事はするな」と止められたにも関わらず、生活保護の申請を出すと「仕事をしろ」と言われる。

その件で不服申し立てをすると、「申請はネットで」と言われる。

そこで、パソコンを持っていないダニエルは図書館へ行って申請しようとするも、入力のしかたが分からず「エラー」が出てしまう…。



この堂々巡りは、まるでダニエルに対し、「生活保護を受けられるものなら受けてみろ!!」という国からの挑戦としか思えない



常にネットがそばにある私からしたら、「あらゆる申請をネットでできるようにして欲しい」と思うし、その方がありがたいとも思うけど、使えない人には使えない人用の申請方法があってしかるべきで、ハラスメントの1つに他ならない

それでも、私はそんなダニエルの様子を観ながら、「まさか日本ではこんな風に医者に仕事を止められた人まで働かせる自治体はないだろう」「イギリスは大変だ」などと思いつつ、ちょっと他人事のような感じで観ていた。



しかし、そうでもないらしい。

私が、この映画を映画館で観た時は、たまたま人権派弁護士の宇都宮健児氏のトークショー付きの回だった。



なので、直接彼から日本の現状について聞くことができたのだが、宇都宮氏によれば「日本でも同じようなケース(病気なのに働けと言われ生活保護を受けられなかった)が数件ある」ということだった。

そして、いずれも餓死したり、役所にたらい回しされたことが苦になって自殺したりなど、「死」まで追い込まれてしまったらしい。



私はそのトークショーを聞いて、今も日本のどこかに、ダニエル・ブレイクがいるかもしれないという現実を突きつけられた。



映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」



ちょっとしたミスさえも許されないお役所仕事が生活困窮者を追い詰める


ダニエル・ブレイクは、その堂々巡りの申請を行っている最中に、同じく生活困窮者でシングルマザーのケイティと知り合う。

ケイティはロンドンで生活保護を受けていたものの、2人の子供ともう少し広いところで暮らしたいと思い、郊外にあるダニエルが暮らす街へ引っ越してきた。



ダニエルはそんなケイティ一家と知り合い、ケイティが仕事探しをしている間、ダニエルが子供の面倒をみたり、それに対し、ケイティがダニエルに食事を作るなどして、互いに助け合うようになる。

「遠くの親戚よりも近くの隣人」そんな関係だろうか。



私がこの映画の中で、最も心に残ったのは、ケイティとダニエルがフードバンク(生活困窮者に対し、食料を提供する施設)へ行くシーンだった。

係りの人に言われた通りに食料を手にしていたケイティが、おもむろに缶詰を手に取り、一心不乱にむさぼりつく。



「あまりにもお腹が空いてしまって」と泣きながらへたり込むケイティ

あのケイティの一心不乱な姿は、あまりにも衝撃的だった。



仕事がないまま二人の子供を育て、生活保護を受けに行こうとすると、引っ越したばかりで道に迷い、ようやくたどり着いたかと思えば「遅刻した人は審査を受けられません」とはじき出される。

役所の人たちも「規則を破った時の責任」を問われることを恐れ、「これは規則だから」の一点張り。

そんな社会がケイティを追い詰める。



そこに彼女の気持ちが分かるダニエルがいて、「君は間違っていないよ」と言ってくれたから、まだ心が救われた。

もし、ケイティが1人だったら、きっと心が折れてしまっていたに違いない。



映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」



国が福祉の予算を削るたびに、貧しい人たちも国から削られていく


そもそも、法律や国の予算は国民一人一人が人間らしく生きるためのものである。

しかし、財政が悪化していく中、予算を削っていくと、それと同時に貧しい人たちの生活もまた削られていく。



彼らが求めているのは、生活困窮者に対する施しではない。

仕事をしたい人が仕事をして、仕事ができない人は仕事ができるようになるまで保護を受ける

そういう、当たり前の生活なのだ。



全ての人がトップランナーを目指さなくても良い

ただ、全ての人が最低限の生活ができるようになるボトムアップの政策が必要なんだと思った。

それが、人間らしい生活であり、生きる権利なのだと思う。

予算を削れば良いというものではない。



私だって、いつ生活困窮者になるのか分からない。

そうなった時、私にはダニエルとケイティのように頼れる友人はいるだろうか…。

いつか来るかもしれないそんな時を想像すると、なんだか背筋がゾッとするような恐怖を感じる

常に、社会の底辺で生きる人たちにスポットライトを当ててきたケン・ローチの傑作映画だと思った。


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マット・デイモン主演の映画「サバービコン」を試写会で観た。

1950年代後半、新興住宅地 サバービコンで起きた人種差別暴動と、その裏で暮らす白人一家に起きた事件を並行して描くことで、エスカレートする人間の暴力について描く。


満足度 評価】:★★★☆☆(3.5)

思った以上に社会派作品だった。

「そこで何が起こっているのか」をじっくり考えさせられる作品。

この中で起きる事件に共通するのは「人と融和できない者は排除」という身勝手なエゴ。

そんな他人に不寛容な時代に眉をしかめつつ、そこから進歩していない現代を思う。


「サバービコン 仮面を被った街」予告編 動画

(原題:Suburbicon)





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キャスト&スタッフ


出演

マット・デイモン
…(「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(製作のみ)、「ジェイソン・ボーン」、「オデッセイ」、「インターステラー」、「ミケランジェロ・プロジェクト」、「プロミスト・ランド」、「コンテイジョン」、「アジャストメント」、「トゥルー・グリット」、「インビクタス/負けざる者たち」、「世界で一番パパが好き!」など)

ジュリアン・ムーア
…(「キングスマン:ゴールデンサークル」、「マギーズ・プランー幸せのあとしまつー」、「ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス」、「ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション」、「トゥモロー・ワールド」、「メイジーの瞳」、「フライト・ゲーム」、「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」など)

オスカー・アイザック
…(「The Promise/君への誓い」、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「X-MEN:アポカリプス」「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、「ドライヴ」、「インサイド・ルーウィン・デイビス 名もなき男の歌」、「ワールド・オブ・ライズ」、「アレクサンドリア」、「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」、「極悪の流儀」など)


監督

ジョージ・クルーニー
…(「マネーモンスター」、「ミケランジェロ・プロジェクト」(監督・主演)、「フィクサー」、「素晴らしき日」など)


2017年製作 アメリカ映画



サバービコン仮面を被った街



あらすじ


1950年代後半、新興住宅地にあるサバービコン。

そこは「人々が仲良く平和に暮らす理想の街」であることをウリにしていた。

しかし、そこへ黒人一家が引っ越してくると、人々はその黒人一家に対して「出ていけ!」と暴動を始める。

そして、その黒人一家の裏で暮らすガードナー(マット・デイモン)家に強盗が入り、足が不自由なローズ(ジュリアン・ムーア)が亡くなってしまう…。



サバービコン仮面を被った街3



感想(ネタバレあり)


50年代、アメリカ政府が融和政策を打ち出し始めた裏で起きていたこと



1950年代のアメリカは、黒人への差別を撤回する公民権運動が最も盛んに行われていた時代だった。

平等を訴えるキング牧師の演説は人々の心を打ち、「バス内での人種分離(白人優先席)は違憲」とされたのは1956年のことだった。



この映画の舞台は、1959年の新興住宅地「サバービコン」である。

「みんなが仲良く平和に暮らす理想の街」というキャッチコピーの元、売り出された住宅地に、黒人一家がやってくる。

テレビでは「白人も黒人も仲良くすることが理想」という「融和政策」が大々的に宣伝される中、理想の街サバービコンでは、引っ越してきた黒人一家に対して「出ていけ!」と声高に叫び、それは次第に暴動へと発展していく。



これは、当時のアメリカで実際に起きた人種差別暴動を元に描かれている



また、その同時期に、その黒人一家の裏で暮らすガードナー一家の家には、強盗が侵入する。

そして、ガードナーの足が不自由な妻・ローズはその時亡くなってしまい、小さな息子ニッキーが残される。

そこで、ガードナーは妻の双子の姉・マーガレットはニッキーの母親代わりにと、ガードナーの妻になる。



しかし、それはガードナーとマーガレットが、邪魔になったローズを消すために事故に見せかけて仕組んだ殺人だった…。



この映画では、その黒人差別暴動とガードナー一家で起きている事件を並列して描き、黒人差別暴動を身近なことに置き換えて考えさせる作品になっている



サバービコン仮面を被った街4


「邪魔者は消してしまえ」という思いが不幸を招く



「黒人差別暴動」と「ガードナー一家の事件」は全く関係のないように思える二つのできごとの間には、共通していることがある。

それは「邪魔者は消せ」という人間の勝手なエゴである。



テレビでは「白人と黒人が融和することが理想」だと言われながら、「白人だけが暮らす理想の街」に黒人一家が引っ越してくると「出ていけ!」と言って暴動を始める。

ガードナー一家では、ことあるごとにガートナーと意見が対立するローズを疎ましく思い、殺してしまう。

人間は「肌の色」や「意見」が違う人に対して、「邪魔者」だと感じ、排斥しようとする

そもそも、はじめから「異なる者」に対して人は寛容になれないことを、この映画は示しているのだ。



そして、もしも本当にその「邪魔者」を排斥してしまった場合、「彼らはどんな運命をたどるのか」をガードナー一家は示している

ガードナーとしては完ぺきに隠ぺいしたつもりが、保険会社の調査員クーパー(オスカー・アイザック)に怪しまれ、次はクーパーを消さざるを得なくなる。

すると、他にその件を知っている人々を消さざるを得なくなり…と、どんどん暴力がエスカレートしていく…



「邪魔者を消せば幸せになれる」と思っていた彼らだったが、結局のところ、誰も幸せになれないのだ。



黒人差別暴動をしていた人たちの中でも、暴力がエスカレートして亡くなった人が出たし、ガードナー一家も、何の欲もない少年だけが助かる。

「邪魔者は排斥しろ」といって過激な行動に出た結果、因果応報によって命を落とすことになるのだ。

ガードナー家で一人残された少年も、その後、一人で生きていかなければならない。

「黒人差別主義者」が理想に掲げる世界では、結局殺し合いになり、誰も幸せになれないのだ。



サバービコン仮面を被った街2


「弱者」は文句も言わずにひたすら耐えることしかできない



サバービコンの中で、一番の弱者は黒人一家である。

ガードナー一家で、一番の弱者は息子のニッキーである。

彼ら弱者に共通しているのは「無口」なことである



周りで暴動が起きたり、人が殺されているにも関わらず、彼らは何も言わずじっとこらえている。

そうして、嵐が過ぎ去るのをひたすら待ち続けているのだ。



その一方で、加害者側は暴言を吐き、暴力をふるい、挙句の果てに亡くなっていく



えてして、こうした事態になると、弱者は何も悪いことをしていないのに、自分たちの権利を主張することもできず、暴力を訴えることもできないのだ。

それは、少年が恐怖に怯え続けているのと一緒である。

周りで起きていることの恐ろしさに表に出ることもできず、ただ、嵐が過ぎ去るのを待つのみなのである。



そこに、エスカレートしていく暴力の恐ろしさが現れている。

次第に、相手が人間であることも忘れているかのように、物を投げ、火をつける。

それに対し、弱者はひたすら耐え忍ぶしかないのだ。



サバービコン仮面を被った街5


少年たちが見せた希望はどこへ…



そうして暴力がエスカレートし、何人か死者が出たところで、嵐はひと段落して去っていき、サバービコンの街に静寂が訪れる。

そして、最後にこの町の希望が描かれる

黒人一家の少年と、ガードナー家のニッキーが互いの家の間にある垣根を隔ててキャッチボールをするのである。



その2人の姿には、何の差別も偏見もなく、きっと彼らが大人になった頃には、差別のない社会になっているだろう…という希望を持たせて物語は幕を閉じる



しかし、その時、私は考えてしまった。

この当時少年だった彼らは、現在60代後半か70代前半ぐらいにはなっている。

果たして、彼らが大人になった頃、差別のない社会になったかといったら、そうではないのが現実なのだ。

差別はいまだに続き、それどころか、アメリカはメキシコとの国境に壁を建てようとしている。



彼らは未来に向けてボールを投げるが、未来はそれをキャッチできる状態になっていない

それどころが、いまだに融和できないものを排斥しようとしているのだ。

そんなことをしても、誰も幸せにはなれないのに



黒人の少年と、白人の少年がキャッチボールをする姿は、とても希望を感じさせるし、それがこの映画の救いであるけれど、その後、その希望は実を結んだのか…と考えると、そうではないことにため息をついてしまう映画だった



サバービコン仮面を被った街6



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ケイト・ブランシェット主演の映画「ニュースの真相」をWOWOWで観た。

2004年、アメリカのテレビ局CBSが人気番組「60ミニッツ」で、

ブッシュの軍歴詐称疑惑を報じるドキュメンタリー番組を放送するが、

その内容にウソがあるとして制作陣が非難され、局を追われる羽目になってしまった実話の映画化。


満足度 評価】:★★★★☆

ニュースが作られている現場を見ることができて面白かったし、自分自身でも「ニュースを読み解く目」を持たなければいけないなと感じた作品だった。



例えば、日本の『加計学園問題』の場合、私たちが見極めるべきは、その「獣医学部が日本にとって必要か、必要でないか」が一番重要なのに、

それ以外の、例えば理事が首相と友人だとか、便宜を図ったとか、本筋とは離れたところに目が行きがちになってしまう。

もちろん、便宜を図ったり、友人だから優先度が上がるという問題はあってはいけないことだけれど、

そもそも、そこに大学を新設するべきかどうかを、まず見極めるべきなのではと思う。



この映画では、メディアが誘導した世論によって、

テレビ局が『本当に伝えたかった真実』を葬り去れてしまった実話
を描いている。

その時、『本当に伝えるべき真実』から論点が移ったことで得をしたのは誰だったのか。

なぜ、最後までブッシュを糾弾することができなかったのか。

私たち視聴者が考えるべきことは何か

映画の中では語られない、その「見えない裏側」が非常に面白い映画だった


「ニュースの真相」予告編 動画

(原題:TRUTH)





原作本:メアリー・メイプス著「大統領の疑惑」

大統領の疑惑

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キャスト&スタッフ


出演者

ケイト・ブランシェット
…(「オーシャンズ8」、「ブルージャスミン」、「ミケランジェロ・プロジェクト」、「シンデレラ」、「ヴェロニカ・ゲリン」、「エリザベス」)

ロバート・レッドフォード
…(「大いなる陰謀」、「ロング・トレイル!」、「オール・イズ・ロスト」、「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」)

デニス・クエイド
…(「僕のワンダフル・ライフ」など)

ブルース・グリーンウッド
…(「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」、「白い沈黙」、「ドローン・オブ・ウォー」、「パパが遺した物語」、「エレファント・ソング」、「デビルズ・ノット」、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」「スター・トレック」など)

ダーモット・マローニー
…(「ダーティ・グランパ」、「8月の家族たち」、「7デイズ」など)

監督・脚本

〇ジェームズ・ヴァンダービルト


2015年製作 アメリカ映画



ニュースの真相



あらすじ


2004年、アメリカ大統領選挙を目前にして、ブッシュ大統領の再選が確実視されていた頃。

CBSテレビ局の人気報道番組「60ミニッツ」のプロデューサー、メアリー・メイプス(ケイト・ブランシェット)は「ブッシュ大統領が軍歴を詐称している」という情報を入手する。

ブッシュ大統領が空軍に入隊したと思われる時期に在籍していた関係者などの取材をし、インタビュー動画を撮影、文書やメモなどを入手し、社内の規定通りに鑑定を行った。

そして、全ての証拠が揃い、アンカーマンのダン・ラザー(ロバート・レッドフォード)司会で番組が放送される。

しかし、放送後の反響の中に、「番組で証拠として提示された文書は、当時はまだなかったマイクロソフトのWORDで作成されたものではいか」という指摘があり…。



ニュースの真相4



感想(ネタバレあり)


メディアが誘導した世論が、伝えるべき真実を葬り去る



テレビ局CBSの人気報道番組「60ミニッツ」では、再選目前だったブッシュ大統領の軍歴詐称についての情報を入手した。

その大まかな内容は

大物政治家の息子として、空軍に「裏口入隊」したブッシュだったが、そこに籍があるだけで、特に活動もしないまま軍歴を終えたにも関わらず、「優秀な空軍パイロット」という華やかな経歴の持ち主になっている。」というもの。

もし、これが本当ならば、保守派である共和党代表の大統領候補としては、「支持者を裏切った」候補者となり、ブッシュの再選に向けて大打撃となるスクープだった



CBSでも敏腕プロデューサーだったメアリーは、情報に基づき、当時、ブッシュの周りにいる人々にインタビューし、それが事実だったのかどうかの確認や、当時の軍幹部が残した文書やメモなどを入手。

文書やメモは社内の規定に沿って専門家に鑑定を依頼し、全てが事実であるという裏をとって放送に踏み切った。



しかし、放送後の反響の中で

「証拠だとされた文書は、当時はなかったはずのWORDで作成されたものでは??」という指摘が出る。

たちまち、マスコミからは「文書を偽造したのでは?」と総攻撃を受け

話題は「ブッシュの軍歴詐称」よりも、「『60ミニッツ』の文書偽造」へ移っていってしまった



そして、輝かしいはずのスクープも、真相がぼやけてしまい、そのうち、誰も信用しなくなってしまう

しかし、その時のCBSに対する一斉攻撃には疑問が残る

なぜ、他局や新聞社などのマスコミはCBSの報道を受けて「ブッシュの軍歴詐称」について調査をしなかったのか。

なぜ、CBSは再度調査をすることができなかったのか。



さらに、なぜ、CBSはこれまで数々の優秀な番組を作ってきたメアリーをかばうことなく、内務調査にかけることになったのか



そこにあるのは、真実よりも大切な「視聴率主義」、「発行部数主義」があって、さらには見えない圧力もあったはずで、

結局、私たち視聴者は「真相を知らないまま」、各メディアに振り回されてしまう

時代はテレビからネットへと移行していく中で、私たちはニュースとどう向き合うべきかを考えさせられる作品だった。



ニュースの真相2


ブロガーがプロのジャーナリストを超える時代の到来



面白いなぁと思ったのは、この騒動がたった一件のブログの書き込みからスタートしていること

それが、新聞でも、雑誌でもなく、ブログだったということ

これは、2004年に起きたできごとだから、今から13年も前の話になるけれど、

既に、その時からブロガーが世論を引き起こす力を持っていたということ。



人々のテレビ離れが加速し、

ニュースはテレビや新聞よりもネットで読むよという人が増えている現代では、

ネットの世界で大きな影響力を持つインフルエンサーたちの力が

時に、プロのジャーナリストたちの持つ力を軽々と超えてしまう
ことを示している。



実際に、そのブログの書き込みがきっかけで、

名プロデューサのメアリーと、人気アンカーマンのダン・ラザーは局を離れることになってしまった。



最近、日本のテレビで放送されているワイドショーなどを見ると、

「昨日は、こんなことがTwitterで炎上していました」というネタが取り上げられている。

私はそれを、「Twitterで盛り上がっているネタをテレビで報道するようになったらおしまいだな」と思いながらいつも見ている。



たとえば、「こんな事件がありました」というコメントと共に上がっている写真は、合成写真かもしれない。

しかし、フォロワーたちは、それが「本当かウソか」の確認もしないまま拡散してしまう。

キチンと裏を取って(と思いたい)報道しているテレビ局よりも、はるかにウソの確立が高いのがネットなのに、人々はそれを信じ切ってしまう。



テレビや新聞は、そんなネットの世界に迎合するよりも、むしろ、正しい道を示す場であって欲しいと思う

にも関わらず、この時は、そのブログの書き込みにより、メディアが騒動を起こし、結局、会社が揺れ動く事態にまで発展してしまった



ニュースの真相5



なぜCBSが一斉砲火を浴び、メアリーは退社する羽目になったのか



そんなCBSが世論に振り回されている事態を見ながら、Netflixで配信されているドラマシリーズの「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のことを考えていた。



このドラマは、ケヴィン・スペイシー演じる下院議員のフランク・アンダーウッドがアメリカ合衆国大統領に登りつめ、アメリカで最高の権力を手に入れようとしている姿が描かれている。

もし、フランクが「軍歴詐称」だと言われたら、どう動くだろうか。

首席補佐官のダグ・スタンパーを使って、CBSの裏から手を回し、メアリーをクビにすることで幕引きさせるだろうなと思った。

もちろん、CBS以外のテレビ局や報道には、「文書捏造問題」にフォーカスをあてるように根回しをするに違いない。

そんなことを想像しながら、その騒動を見ていた。



もちろん、それは私の行き過ぎた想像でしかないし、そもそも、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」はフィクションである。

しかし、「ホワイトハウスが裏から手を回すなんてあり得ない」と言い切れるだろうか

物事の裏側には、必ず『得した人』と『損した人』がいる

今回のできごとの場合、『得した人』はブッシュであり、『損した人』はメアリーである。

『得した人』は、その利益を他の人に分配することで自分の味方につけることが可能である。

一方で、『損した人』は、ちょっと足をくじいただけで、味方が一気にいなくなり、そのうち、どん底へと突き落とされる。



そう考えると、この映画の中では一切描かれたかったけれども、ホワイトハウスの中で何が起きていたのかは容易に想像できる

全く描かれなかったからこそ、浮かび上がってくる闇の世界なのである



ニュースの真相3


視聴者に求められるのは「流されない力」


結局のところ、ブッシュは再選し、メアリーは責任を取って局を離れ、ダンはアンカーマンを降ろされる

「たった一枚の文書の疑惑」だけで、『ブッシュの軍歴詐称問題』は闇の中へと葬り去られてしまった

それが、この騒動の後に残された真実。


世の中が、テレビからネットへと移行していく中で、

プロのジャーナリストではなくても発言力を持つ時代になったことで、

私たち個人に求められるのは、「真相を見極める力」である

周りに流されることなく、知るべきことは何か、何が正しくて、正しくないのかを見極める力が必要とされている。



私たちが全く知らない「見えない裏側の暗闇」に世の中を操作されることがないように、

常に疑問を持つことが必要なのである。


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ユン・ゲサン主演の韓国映画「国選弁護人 ユン・ジンウォン」をWOWOWで観た。

警官殺しの容疑者の弁護を国選弁護人として引き受けることになったユン・ジンウォンだったが、それがきっかけで国を相手に戦うことになっていく法廷サスペンス映画。


満足度 評価】:★★★★☆

見応えのある作品だった。

裁判をする前にゼネコン、警察、検察が既に書いたシナリオがあって、主人公はそのシナリオを覆そうとするが、あらゆる妨害を受ける。

本来ならば、市民の味方であるはずの警察や検察、裁判所までもが貧しい人たちに背を向け、彼らをおざなりにして、簡単に捨て去ってしまう様子に、ただただ唖然としてしまった。


「国選弁護人 ユン・ジンウォン」予告編 動画

(原題:소수의견(少数意見)




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キャスト&スタッフ


出演者

…(「ゴールデンスランバー」、「犯罪都市」など)

ユ・ヘジン
…(1987、ある闘いの真実」、「タクシー運転手 約束は海を越えて」、「コンフィデンシャル/共助」、LUCK-KEY/ラッキー」、「あいつだ」、「極秘捜査」など)

キム・オクビン
…(「一級機密」、「悪女/AKUJO」など)

イ・ギョンヨン
…(「名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」、「インサイダーズ 内部者たち」、「メモリーズ 追憶の剣」、「パイレーツ」、「提報者~ES細胞捏造事件」、「群盗」、「テロ,ライブ」など)

キム・ウィソン
…(「ゴールデンスランバー」、「ザ・キング」、「プリースト 悪魔を葬る者」、「新感染 ファイナル・エクスプレス」など)


監督・脚本

〇キム・ソンジェ


2015年制作 韓国映画

国選弁護人ユン・ジンウォン



あらすじ


ソウル市内。大手ゼネコンによる都市開発が予定された土地で、強制撤去を拒んだ住民による抵抗が始まってから1年。

これまでセキュリティ会社(ヤクザ)による地上げが行われていたが、急遽、警察が強制撤去を行ったところ、市民と警察の衝突により、少年1名、警察官1名、計2名の死者が出てしまう。

そして、その殺された少年の父親であるパク・ジェホ(イ・ギョンヨン)が警察官を殺害した容疑で逮捕される。

弁護士ユン・ジンウォン(ユン・ゲサン)は、パク・ジェホの国選弁護人に指名される。

警察と検察側は、これが簡単に終わる裁判だと思っていた。

しかし、ユン・ジンウォンはパク・ジェホが正当防衛を主張したことから、事件の詳細を調査し始めたところ…。

国選弁護人ユン・ジンウォン2



感想(ネタバレあり)


ソウル市内で未だにはびこる地上げ屋と、それに抵抗する人々の戦い


韓国映画を観ていると、韓国の社会問題がいろいろと分かって面白い。

公務員は賄賂まみれで、それが青瓦台(大統領府)までつながっているとか、貧富の差がまだまだ激しいとか。

国民性が日本人よりも熱い人たちだとか。

隣の国で、見た目もそっくりなのに、お国事情や国民性は随分と違うんだなぁと思う。

この映画「国選弁護人 ユン・ジンウォン」もそんな韓国の社会事情を知ることができる作品の1つ。

事の発端は、ソウルで大手建築会社が推し進めている都市開発の現場で起きた事件だった。

その建築会社は、あるセキュリティ会社(実態は地上げ屋)に住民の立ち退きを依頼した。

ところが、住民たちは思った以上に手強く、1年以上も不法占拠を続けた。

いつまでも工事が開始されないため、その都市開発に参加していた企業たちは、「この企画に見込みなし」と踏んで、事業からの撤退を決定し、建築会社には投資した資金を返却するように要求する。

既に返却する金などない建築会社は裏から手を回して警察に出動を要請。

「民事不介入」でなければならない警察は、あまり国民に知られないように、速やかに、何事もなく、住民を撤退させようと現地に向かうが、そこで住民と警察の衝突が起きてしまい、警官1名、住民(少年)1名の死者を出してしまう。

しかし、警察は少年を殺したのはセキュリティ会社(地上げ屋)の人間だと偽り、不法占拠者に警官が殺された事件として済ませようとしていた…。

本当は、警官と住民がもみ合いになって、2人の死者を出した事件だったにも関わらず…。

そこで、主人公のユン・ジンウォン(ユン・ゲサン)は警官を殺したとされる容疑者パク・ジェホ(イ・ギョンヨン)の国選弁護人に指名され、担当検事は事を荒立てることなく裁判を済ませようとしていた。

ユン・ジンウォンも、警官殺しの事件として弁護をしようとしていたが、事件をよく調べてみると、その裏には警察、検事、建築会社、地上げ屋、青瓦台(大統領府)たちのそれぞれの思惑が隠れていることを知る。

日本だと、ちょうどバブル期あたりの都市開発の頃、地上げ屋が世の中を怖がらせていた時代を思い起こさせる社会的背景だった。

韓国では、未だにソウル市内でも開発する余地があって、人を強制退去させることで儲けている人たちもいるだなと思った。

そういった状況の中、強制的に人を排除することで貧しい人たちが犠牲になり、都市開発とは一体誰のための事業なのか、また、その事業に反対する貧しい人たちの声には誰も耳を貸さないのかという、韓国の社会状況が描かれている。

国選弁護人ユン・ジンウォン3



結審するまえから、警察・検察・裁判所の間で判決が決まっていた


まず、この都市開発事業を推し進めようした建築会社が、「このまま不法占拠されたらマズイ!」と思った時に、即刻警察を動かしている。

ということは、その建築会社と警察は賄賂でつながっている。

いや、もしかしたらもっと上、青瓦台までつながっていた可能性が高い。

さらに、本来は、事件の容疑者であり、殺された少年のお父さんであるパク・ジェホには、大手弁護士事務所から国選弁護人がつくはずだった。

しかし、その大手弁護士事務所は、その仕事を無名で若手の弁護士ユン・ジンウォンに譲ってしまう。

なぜならば、その裁判は勝ち目がない裁判、つまり結審をする前に判決が決まっている裁判だと大手弁護士事務所は知っていたからだった。

ということは、本来ならば市民の味方であるはずの、警察も、検事も、弁護士も、裁判所でさえも、一切パク・ジェホから事情を聞くことがないまま、話が進んでいたのである。

その上、検事は地上げ屋の1人を買収して少年を殺害した犯人に仕立て、その犯人自体は数年で出てこられるように準備していた。

本当に少年を殺したのは、警察官だったにも関わらず。

つまりは、この裁判は強制退去に抵抗した市民の言い分も聞かず、ただただ警察と検察の体面を守るためだけに行われるはずの裁判だったのだ。

国選弁護人ユン・ジンウォン4



国を相手に賠償金100ウォンの訴訟を起こす


その全貌を知り、弁護士としての使命感に燃えたのがユン・ジンウォンだった。

警察・検察・裁判所・青瓦台までもがつながっていると知り、「賠償金100ウォン」を求めて国に裁判を起こす。

彼が求めていたのは、この訴訟をマスコミに取り上げてもらい、警察と検察が最も恐れていた「市民にこの事件を知らせること」であり、「国が非を認めること」だった。

しかし、彼は行く先々で「資料開示拒否」や、検事による嫌がらせに遭い、中々前に進むことができない。

それでも、マスコミや地上げ屋を味方につけることで、彼の前に徐々に道が開けてくる。

それはまさに「捨てる神あれば拾う神あり」だった。

韓国映画を観るたびに思うことなんだけれども、韓国でもしも事件があったら、誰を信じて、誰に通報すれば良いんだろうか。

大げさに考えたら、事件の相手が大手財閥の御曹司や姫君だったら、私が犯人にされてしまう可能性だって無きにしも非ず。

このユン・ジンウォンも「弁護士として傷がつく」と脅され、資格停止処分の危機に遭いながらもパク・ジェホの弁護を続けていた。

この国で、「国を相手取り訴訟を起こす」なんてことは、非常に危険なことだということが良くわかる。

国選弁護人ユン・ジンウォン5



貧しい暮らしをしている不法占拠者になど、誰も耳を貸そうとしない


検察が証人を買収したことがマスコミで騒がれ、裁判では陪審員が正当防衛を認めたにも関わらず、結局、判決では容疑者が有罪になってしまう。

(韓国の陪審員制度の「質問状」のくだりが、かなり面白かった。)

結局のところ、どんなに被害者と弁護士が「正当防衛」を主張して、それなりに証拠を集めたところで、最初から決まっていた判決が変わることはなかったのだ。

マスコミがどう記事にしようが、陪審員が何を言おうが、最初から判決は決まっていた。

ただ、誰かを警官殺しの犯人にしたかっただけ。

そうすれば、あの時、警察が不法占拠を制圧したことが正当化できたとでも思っているんだろうか。

しかし、世の中は非情なもので、有罪になったパク・ジェホはこれから一生「人殺しの前科者」である人生を生きることになる。

ただでさえ貧しい暮らしをして、息子が彼の支えだったのに、3年後に出所したらどうやって生きていくのだろうか。

正当防衛が認められて無実になるのと、警察の体面を保つために3年間刑務所に入るのとでは、今後の人生が大きく変わってくる。

しかし、そんな彼の主張には警察も検事も裁判官も耳を貸そうとしない。

ラストシーンでマスコミに囲まれ、「有罪判決が出ましたが、今のお気持ちをお聞かせください」と言われたパク・ジェホは、「私は人を殺してしまいました。ただそれだけです」と答えた。

私は、そんな彼の潔さに涙が出てしまった。

本当だったら、もっと言いたいことがたくさんあるのに。

言っても無駄だと分かっている。だから余計なことは何も言わない。

どうせ彼の言葉になど、誰も耳を貸してくれないから。



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ブリー・ラーソンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した映画「ルーム」を観た。

7年間、納屋の「ルーム」に監禁されていた女性と、その間に彼女が産んだ5歳の子供が、ルームから脱出し、新しい生活を始める姿を描く。

満足度 評価】:★★★★★

始まってから15分後ぐらいに泣き始め、ほとんど最後まで泣きながら観ていた。

この映画をたくさんの人が観て、ジョイのような女性が、この世界からいなくなることを願っての★5つ。

人生の一番楽しい時期に監禁という地獄のような生活を過ごしたジョイ。

彼女のこれからの人生が素晴らしく輝かしいものでありますようにと願う。

「ルーム」予告編 動画

(原題:Room)




「ルーム」DVD

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キャスト&スタッフ


出演者

ブリー・ラーソン
…(「キャプテン・マーベル」、「フリー・ファイヤー」、「ショート・ターム」、「ギャンブラー/熱い賭け」など)


ジョーン・アレン
…(「ボーン・スプレマシー」、「フェイス/オフ」、「ボビー・フィッシャーを探して」など)

ウィリアム・H・メイシー
…(「君が生きた証」、「シー・ビスケット」、「エアフォース・ワン」、「ボビー・フィッシャーを探して」など)

〇ショーン・ブリジャース

〇トム・マカムス

監督

レニー・アブラハムソン
…(「FRANK-フランク-」、「リチャードの秘密」など)

2015年製作 アイルランド、カナダ合作映画

room

あらすじ


ジョイ(ブリー・ラーソン)は見知らぬ男に誘拐され、納屋「ルーム」に監禁されてから7年。

2年経った頃に生まれた息子ジャック(ジェイコブ・トンプレイ)は5歳の誕生日を迎えたばかり。

どんどん大きくなり、世界を知らないジャックの成長を見ながら、ジョイはルームから脱出することを決意する。

そして、ジャックに「死んだふり」をして、この部屋から出る方法を教える…。


ルーム4

感想(ネタバレあり)


ドキュメンタリーのような生々しさのある監禁生活

男が少女を誘拐し、監禁するという映画はそんなに珍しくない。

例えば、「羊たちの沈黙」のようなサスペンス映画だったら、よくある話だ。

この映画は、それらの「よくある監禁もの」とは明らかに違う。

まるで、ドキュメンタリー映画でも観ているかのような生々しさがある。

薄暗く、いかにも不衛生な監禁部屋。

毎晩、性的欲求を満たすためだけにやってくる「オールド・ニック」。

そして、妊娠してしまったジョイと、憎むべき男との間に生まれてしまった息子ジャック。

その全てが異常に生々しい。

これは誘拐した男の変態性を問うサスペンスではなく、7年間監禁されたとこで、普通の人生を歩めなくなってしまった女性の心理状態にスポットをあてた人間ドラマである。

ジャックと共に「ルーム」で暮らしていた時は、ジャックのために常に気を張って生きていたジョイ。

しかし、「ルーム」を脱出してからは、その緊張の糸が緩んだのか、心が壊れてしまう。

そんな彼女を観ているのが、とても痛々しい映画だった。


ルーム6

ジャックはジョイを助ける救いの天使


そんな彼女をいつも救ったのは、5歳になる息子のジャックだった。

ジャックは本当に神様がジョイに送った贈り物のように、純真で心優しい男の子。

「死んだふり」ごっこでオールド・ニックの車から逃げて母を救い、解放されてから自殺未遂をした母を救い、入院中の母に力を届ける。

そんな健気なジャックの姿にジョイは常に助けられ、観ているこちらも泣けてきてしまう。

そのジャックに対する、ジョイの両親の態度の違いがとても印象的だった。

ジョイの母(ばぁば)はジャックと出会った時から孫として受け入れ、ジャックもすぐに仲良くなった。

しかし、ジョイの父(じぃじ)は違う。

決してジャックとは目を合わせようとしない。

ジャックの姿にオールド・ニックを重ね合わせるんだろう。

その辺の男女の感覚の違いがこれまたリアルで、生なましかった。

それに比べてばぁばのボーイフレンドのレオはとてもオープンな上、さりげない気遣いもできる大人の男性という感じがして良かった。

じぃじはジャックのことが愛せないというわけではなく、ジョイのことを愛し過ぎていた。

だから、どうしても許せなかったんだ。

でも、だからこそじぃじジョイのために愛してあげてよ。


ルーム3

なぜ、この男はこんなことをするんだろう


このオールド・ニックという監禁男は、観ているだけで気持ち悪かったし、今すぐスクリーンの中に手を伸ばして首を絞めてやりたいと思いながら観ていた。

この男、何が腹が立つって、一番腹が立つのは、勝手にジョイを誘拐してきて、監禁しているくせに

「無職で金もないのに、面倒見てやっているんだ。感謝しろ」だって。

なんなんだよーーーー。だったら、今すぐ解放してくれよ!!!!

もう、本当に気持ち悪いから死んでくれと思っていた

それでも、ジョイは、あの男を殺せないと言う。

なぜなら、「オールド・ニックが死んでしまったら、一生ここから出られないと思って怖かった」

そんな理由でジョイは、地獄のような毎日を送らなければならないなんて、本当に心が痛くなる。

ルーム

出演者はオスカー女優のブリー・ラーソン、監督はレニー・アブラハムソン


主演のジョイを演じているのは、ブリー・ラーソン

この映画の演技で、アカデミー賞主演女優賞を受賞している。

ブリー・ラーソンの鬼気迫る演技がなければ、この映画は成立しなかっただろうと思うぐらいに素晴らしい演技だった。

この映画で、彼女のことを知った人は、是非、「ショート・ターム」も観て欲しい。

「ルーム」のブリー・ラーソンに匹敵する彼女の演技を観ることができる。

他の出演作に「ギャンブラー/熱い賭け

ルーム2


監督はレニー・アブラハムソン

前回の監督作品は「FRANK-フランク-

ちょっとなるほどなぁと思った。

FRANK-フランク-」は、自分を「かぶりもの」という世界に閉じ込め、そこから自分を解放するフランクの話だった。

この世の中では生きづらい人たちの、世界に踏み出す初めの一歩を応援しているところが、二つの作品に共通している。

興味がある人は、観てみて欲しいおススメの作品。

他の監督作品に、「リチャードの秘密」など

ルーム5

これからは「声をかけられたら疑え」という悲しい世界に


日本でも、この「ルーム」のような事件がたまに起きる。

ジョイは、この映画の中で、「アイツの犬を助けてあげようと思って声をかけたら誘拐されてしまった」と言っている。

ということは、「困っている人は助けてあげましょう」という世の中ではないのかなと思うと、すごく悲しい。

この世から性善説はなくなり、「声をかけられたら疑え」という時代がやってくるような気がしてならない。

もう、既にそうなっているのかもしれないけど。

どうしたら、こんな悲しい出来事がなくなるんだろうと思い巡らせるけど、残念ながら、その考えに対する出口が見つからない…。





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モフセン・マフマルバフ監督・脚本の映画「独裁者と小さな孫」をWOWOWで観た。

長い間、独裁政権を執行し、国民を苦しめてきた大統領。ところが、クーデターが勃発して失脚、小さな孫を連れ隣国を目指し逃亡するのだが…。

満足度 評価】:★★★★☆

ラスト、泣いたなぁ。主人公は独裁者だと重々分かっていたけれども、やはり彼も人間で、その行動を観るうちに同情心を持つようになっていた。

なぜ、一部の人間が富みを搾取している国では、独裁政権や内戦がなくならないのか。

その仕組みが分かったような気がする映画だった。

ラストにあるのは、希望か絶望なのか。ここで止めないと、長く続く負の連鎖が始まってしまう。


出演:ミシャ・ゴミアシュヴィリ、ダチ・オルウェラシュヴィリ

監督脚本:モフセン・マフマルバフ 2014年 ジョージア、フランス、イギリス、ドイツ合作映画


「独裁者と小さな孫」予告編 動画

(原題:THE PRESIDENT)




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あらすじ


ある小さな国では、長い間、1人の大統領(ミシャ・ゴミアシュヴィリ)による独裁政権が続いていた。

しかし、時代が変わり、不穏な空気が流れ始めたのを感じた大統領の家族は、飛行機で国外逃亡をする。

ところが、「大統領と残りたい」と言った孫(ダチ・オルウェラシュヴィリ)は残され、家族は大統領と孫の二人きりに。

空港で家族を見送った帰り、宮殿へ帰ろうとする大統領と孫だったが、その間にクーデターが勃発。

大統領は失脚し、「逃亡犯」となってしまう。

そこで、大統領は小さな孫を連れ逃亡生活を始めるのだが…。


独裁者と小さな孫


感想(ネタバレあり) 贅沢三昧な暮らしをしてきた大統領一家


主人公は、ある架空の国の大統領。

彼は長い間、独裁政権を行ってきた。

しかし、そこでクーデターが勃発。小さな孫を連れて逃げることになった。

その独裁政権では、どんなことを行ってきたのか、具体的な話は一切出てこない。

大統領とその家族は、お城のような大きな官邸に住み、贅沢三昧をしてきたことは良く分かる。

孫は「アイスが食べたい」と言えば買ってもらえる。そんな生活だ。

ところが、彼らに税金を納めるために働いている国民たちは、アイスを買うお金どころか、夕飯の食事代さえもまかなえないような生活をしていた…。

独裁者と小さな孫2

失脚して初めて国民の生活を知る大統領


孫を連れて逃亡生活を送るうちに、大統領は様々な国民たちと出会うことになる。

床屋の家族、農家、軍人、政治犯、昔の恋人…。

彼らの多くが「国に逆らった」として、家族のうちの誰かが投獄されるか、殺されるかという状況にあり、そこに貧しさも重なって、大統領と政権に強く恨みを持っていた。

それまで、残念なことに、その国民の困窮した生活を、国で最も理解していないのは大統領だった。

皮肉なもので、クーデターが起きて、国を追われるようになって、ようやくその現実を知るようになる。

正直、彼らの生活を観ていて、目をそむけたくなるような場面が多々あった。

その日が結婚式の新婦が軍人にレイプされるシーンがあったり、大統領のかつての恋人が軍人たちの娼婦になっていたが、軍人たちは扱いが酷い上に、金を払おうとしないこととか…。

幼い子供たちが、何も分からないまま働かされていたり…。

生まれた時から贅沢な暮らしをしてきた大統領の孫は、その生活になじむことができない。

すごく純真で、全く罪のない孫が心を痛めている姿や、ホームシックになっている姿には、胸が締め付けられるような思いで観ていた。


独裁者と小さな孫3

かつての敵に助けられる大統領


しかし、あと一息。船で海を渡ればそこに隣国が…。

という状況になって、大統領が見つかってしまい、国民に取り囲まれてしまう。

怒れる国民たちは、大統領を囲むと「殺せ!血祭りにしろ!」と言って大騒ぎになっている。

ところが、そんな時に大統領を助けたのは、1人の政治犯だった。

実は、彼は、大統領の息子夫婦を殺したグループの1人だった。

その彼が、怒れる国民たちと大統領の間に立って「大統領を殺すなら自分を殺せ」と言う。

なんという皮肉なんだろうと思った。

彼は政治犯で投獄されて、散々拷問されて、旧政権に酷い思いを散々してきたのに。

それでも、大統領を助けようとするなんて。


独裁者と小さな孫4

独裁者を殺しても、国民は平和にならない


大統領を助けた彼は、こう主張する。

「家族を殺された恨みからここで大統領を殺しても、憎しみしか生まれない」

「大統領を殺した後は、国民同士が憎しみ合うんだ」

「そうやって、負の連鎖が続いていくんだ」

彼の主張には、おぉと思わされることが多かった。

それは、モフセン・マフマルバフ監督がイラン出身であり、内戦や戦争というものを身近に感じて生きてきたからなのか。

これまでの恨みから独裁者を殺しても国民は平和にはならない。

それは、すごく重い真実だと思った。

ラスト、大統領と孫はどうなったのかについては、観た人の想像に任せて終了している。

私は、彼の演説が人々の心を動かし、大統領は命が助かったのだと思う。

もちろん、この後逮捕されたことには違いないけど。

しかし、心配なのは孫だ。

なんとか、彼のピュアな心をそのまま育ててくれる人に出会っていて欲しいと思っている。

私は、性善説で生きて行きたいから。

どんな国にも、良心があるひとがいると信じたい。



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パク・ギウン主演、キム・キドク脚本の韓国映画「鰻の男」をWOWOWで観た。

中国産の汚染された食べ物が流通する実態を描く社会派映画。

満足度 評価】:★★★☆☆

つまらない作品ではないけど、全体的に作りが緩くて衝撃がなく、伝えたいことがあまり強く伝わってこない作品だった。



「鰻の男」予告編 動画

(原題:MADE IN CHINA)




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キャスト&スタッフ


出演者


〇ハン・チェア


監督

〇キム・ドンフ


2014年 韓国映画




あらすじ


中国人のチェン(パク・ギウン)は、父親が経営する鰻の養殖場で働いている。

しかし、韓国へ輸出した鰻から水銀が検出されたため、廃棄処分となってしまい、父が倒れてしまう。

そこで、チェンは、自分の鰻が安全であることを証明するために、船で密入国をして食品検査場まで自分で育てた鰻を生きたまま持ち込んだのだが…。

鰻の男



感想(ネタバレあり)


全てが「中国産=悪」ではない…?


スーパーで食品を買う時、必ずと言っていい程、「産地」を確認する。

それが生鮮食品で、なおかつ産地が中国だった場合、この映画の韓国人たちと同じように、私も買わない。

その現象は、韓国や日本だけで見られる光景ではない。

汚染された食品や、性能が劣悪な製品を大量に生産し、世界にばらまかれている中国産(MADE IN CHINA)のものは買わない「China Free」というスローガンは、アメリカやヨーロッパでも聞かれることだ。

しかしその一方で、中国の現地では、この映画の主人公チェンのように、汚染されたとは知らずに、毎日真面目に働いている人もいるし、物によっては中国産だから使えないというものばかりでもない。

つまり、「中国産=悪」という考えを、そろそろ改めませんか…?というのが、この映画のメッセージだ。

鰻の男2



汚染された食品が流通している現実


主人公のチェンは、中国人。

父が作った鰻の養殖場で働いている。

しかし、彼が輸出した鰻について、韓国の食品検査で水銀が検出され、廃棄処分となってしまう。

その知らせを受けた父は倒れてしまったことを受けて、身の潔白を証明するために生きた鰻を持って、韓国へ密入国してきたのだ。

ところが、彼を待ち受けていた現実はクロだった。

身の潔白どころか、検査結果は高い水銀の値を示していた。

ところが、話はそれだけでは終わらない。

廃棄処分となったはずの彼の鰻は、廃棄業者によって安く横流しされ、何事もなかったかのように飲食店で提供されていたのだ。




本当の悪は生産業者なのか、流通業者なのか…?


となると、ここでの「真の悪」は、その鰻を作った養殖業者ではなく、その廃棄処分の鰻を横流しした廃棄業者となる。

ここでは、本当は出回らないはずの汚染食品がなぜか流通し、そしてそれを口にした人によって「中国産は汚染されている」と言われてしまう悪循環が描かれている。

実際、この映画のチェンのように生産農家は真面目に食品を生産している。

しかし、彼らは中国の空気や、土や、川が汚染されていることに気付いていない。

チェンのように、検査を受けて初めて汚染されていることに気付くのだ。

となると、その場合、本当の悪は何も知らない真面目な生産農家なのか、それとも、汚染されていると知っていて横流しする業者なのか…。

この横流しの構図は、現在、日本でも話題になっているCoCo壱番屋のカツの流出経路に似ていて非常に分かりやすい。

つまりは、いつも「中国産=悪」だと言っていた人たちも、何も知らずに「安くておいしい」飲食店へ行き、「美味しい。美味しい」と言いながら、中国産の食べ物を食べているというのが実態なのだ。

鰻の男4



うーーーん。中国産。されど中国産。


私も、何を買うにも、まず生産国を確認し、「中国産かぁ」と思い、物によっては買うことを止めてしまう人間なので、あまり偉そうなことは言えない。

しかし、よく思うのは、人は人、国は国、食品は食品ということ。

国の政策が気に入らなかったとしても、食品が汚染されているとしても、個々の人は、それとは全く別の話であり、「中国人=悪」ではないということ。

ただし、この映画のラストシーンの鰻の大量死のように、いつまでも汚染された食品を送り出すような国は世界の経済の戦いで勝ちぬいていくことは難しい。

中国側も輸出量を増やしたいなら、環境改善が必要だし、それを受け入れる側も、「中国産=すべて悪」という色眼鏡は、気持ちは分かるけど、ちょっと考え直す余地はあるんじゃないかなと思う。





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ジェイソン・べイトマン主演の映画「ディス/コネクト」をWOWOWで観た。

日常生活がうまくいかず、心のつながりをSNSの世界に求め、その結果、犯罪に巻き込まれてしまう人たちの群像劇。

満足度 評価】:★★★★☆

「これ、SNSであるあるだなぁ」と思うことが次々と起きて、世界に引き込まれてしまう見応えのある映画だった。

面白かったなぁ。

「ディス/コネクト」予告編 動画

(原題:DISCONNECT)




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キャスト&スタッフ


出演者

ジェイソン・ベイトマン
…(「ザ・ギフト」、「ズートピア」(声の出演)、「モンスター上司」、「ディス/コネクト」、「ファング一家の奇想天外な秘密」、「あなたを見送る7日間」、ドラマシリーズ「オザークへようこそ」(製作総指揮・主演)など)

アレクサンダー・スカルスガルド
…(「ターザン:REBORN」、「メイジーの瞳」、「キヴァー 記憶を注ぐ者」)

ミカエル・ニクヴィスト
…(「間奏曲はパリで」、「ジョン・ウィック」、「コロニア」、「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」、「ミレニアム2 火と戯れる女」、「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」など)

ホープ・デイヴィス
…(「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」、「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」など)

フランク・グリロ
…(「スカイライン-奪還-」、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」、「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」、「パージ:大統領令」)

監督

〇ヘンリー=アレックス・ルビン

2012年製作 アメリカ映画

あらすじ


弁護士のリッチ・ボイド(ジェイソン・べイトマン)は、高校生の息子・ベンが自殺未遂を起こしてしまう。

その理由を知りたくなったリッチは、ベンのPCを開き、彼が見ていたサイトを観ていると、彼がSNSで頻繁に会話をしている女性ジェシカにたどり着く。

シンディ(ポーラ・パットン)は、生まれたばかりの子供を失い、それ以来、夫(アレクサンダー・スカルスガルド)との仲もギクシャクしていた。

その寂しさを癒すようにチャットルームで会話をしていた日々の中、インターネットを通じてクレジットカード詐欺の被害に遭っていることに気付く。

ジャーナリストのニーナ(アンドレア・ライズブロー)は、未成年の男女がネットの前で裸になってライブ中継して金もうけしている性犯罪の実態を取材するため、その中の1人、カイルに近づくのだが…。


ディス/コネクト

感想(ネタバレあり)


いつでも、どこでも誰とでもつながれる便利な世の中

便利な世の中になったなぁと思う。

LINEがあれば、いつでも友達とお話できるし、趣味があってtwitterやfacebookに入れば、共通の趣味を持った友達を作ることが簡単にできる。

リアルな日常でつらいこがあって、SNSで愚痴をこぼせば、誰かしら寄ってきて慰めてくれる。

それで本当に心が救われた瞬間は、「あぁなんてありがたい世の中なんだ」と、SNSを開発してくれた人に感謝したくなる。

でも、そうやって人が心のよりどころをSNSに頼るようになったことで、人と人とのスキンシップや心のつながりが希薄になっているのでは…と、この映画は訴えている。

ディス/コネクト4

家族のコミュニケーションがあれば自殺は防げたのか


もしも、リアルな世界で親子や、夫婦や職場でしっかりと人間同士、目を見つめ合ってコミュニケーションがとれていたら、ここで起きるような事件が起きなかったのでは…ということばかりが起きてしまう。

例えば、高校生の息子が自殺未遂を起こした家庭。

父はやり手の弁護士で、仕事を家に持ち込み息子や娘と会話をすることが無く、彼らが何が好きで、何に悩んでいたのかすら知らない。

それは、高校生の男子に特有の思春期が、親と息子の間に壁を作ってしまうこともあったかもしれない。

それでも、もしも日頃から頻繁に会話をしている親子だったら、父は息子ベンがジェシカに入れ込む前に気付いて、何か手助けをすることができたかもしれない。


ディス/コネクト6


夫婦仲が良ければカード詐欺に遭わなかったのか


クレジットカード詐欺に遭ってしまった夫婦はもっと明らかで、夫婦仲がよくて、しっかりとコミュニケーションが取れていたら、妻は心の寂しさを吐き出すためにチャットルームへ行くことなんかなかったように思う。

しかし、彼らの場合は、災いが転じて、この事件を通して夫婦仲が良くなったようだから(笑)

終わり良ければ総て良しだったのかな。

でもね、使いこまれたお金がちゃんと帰ってくるといいけどね。

パソコンにウィルス対策ソフトをインストールしましょうね(笑)

ディス/コネクト7

SNSはリアルな日常を表す鏡のようなもの


とはいっても、私はSNSが大好きで、スマホが手放せない生活をしている。

だから、SNSが全部悪いと思っていないし、SNSを使ってすごくHappyになったこともたくさんある。

いや、むしろ、SNSに日常助かっていることの方が多い。

でも、思うのは、リアルな日常生活でコミュニケーションが苦手で、トラブルを起こすような人は、きっとSNSでもトラブルを起こすんじゃないかということ。

日常生活でコミュニケーションが苦手な人が、SNSの中では、すごくコミュニケーション上手っていうのは考えづらい。

日常生活でコミュニケーションが希薄になっている人は、SNSでのコミュニケーションも決して濃いものではなく、希薄だから、問題が起きるのではないかと思う。

だから、この映画のように、日常生活でコミュニケーションがなく、寂しくなってSNSに助けを求めたところで、中の世界でも同じく問題が起きてしまうんじゃないかと思う。

ディス/コネクト3

出演者はジェイソン・べイトマン、アレクサンダー・スカルスガルド


高校生の息子が自殺未遂してしまう弁護士ボイドを演じるのは、ジェイソン・べイトマン

つい先日、「あなたを見送る7日間」を観たばかり

仕事にばかり夢中になって、息子の悩みに気付いてやれなかったお父さんを演じている。

「あなたを見送る7日間」とは、ほぼ真逆と言っていい程、笑顔が全くない役。

この人は、隣にいそうな親近感がいいんだろうなぁ。

ディス/コネクト2


もう1人、気になったのは、妻がカード詐欺に遭ってしまう夫デレックを演じた、アレクサンダー・スカルスガルド

初めは、不愛想で暗い人だなぁと思っていたら、そのうち、だんだん、「元海兵隊員」だという本性が出てきて、最後には、ちょっと怖い人になっていた。

今年(2016年)が、ブレイクの年になる予感大の俳優さん。


ディス/コネクト5

問題はSNSというよりも、その人の日常生活や環境にあるのでは…


ネットの中のSNSの世界と、リアルな日常世界が交差する世の中だからこそ、日頃の人間同士のコミュニケーションが大切だと、この映画は訴える。

SNSは、この世界の美しさも汚さも、そのまま映す鏡だから。

この映画に描かれているようにSNSの世界には、悪もあれば、闇もある。

でも、心に隙があって、ダマされてしまうのは、SNSの中だろうと、日常生活も一緒だ。

だから、最後にお父さんが「僕の大切な者たち」と言って家族を抱きしめたように、日頃から、周りの人たちとコミュニケーションを取ることで、心の隙を減らし、だまされにくくなると考える。

SNSはただのツールであり、人の心の問題は、日常生活や日頃の環境にあるんじゃないかなぁと私は思う。



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リース・ウィザースプーン主演の映画「グッド・ライ~いちばん優しい嘘~」をWOWOWで観た。

スーダンの内戦で難民となった人たちが移民としてアメリカに渡り、社会に溶け込んでいく様子を描く。

【満足度】:★★★★☆

素晴らしい映画だった。

観て良かった!!!

毎日、ご飯を食べて、ぐっすり眠れることが、どれだけ幸せなことかとしみじみ実感した映画。


「グッド・ライ ~いちばん優しい嘘~」予告編 動画

(原題:THE GOOD LIE)





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スーダン内戦のロストボーイズの物語

空から火の玉が・・・ (南スーダンのロストボーイズ 1987 - 2001)



あらすじ


アメリカのカンザスシティの職業安定所で働くキャリー(リース・ウィザースプーン)は、空港へアフリカから来た青年、マメール、ジェレマイア、ポールの3人を引き取りに行く。

キャリーの仕事は、彼らに仕事を紹介すること。

しかし、彼らは仕事をした経験もなく、電話すら知らない人たちだった…。


グッド・ライ

感想(ネタバレあり) 幸せな毎日に感謝


これ、本当に素晴らしい映画だったんだよね。

毎日、寝る場所があって、おいしくご飯を食べられるということがどれだけ幸せなことか。

それを実感できただけでも、感謝したい映画だった。

グッド・ライ5


内戦の戦火の中、逃げ惑う子供たちに胸が痛くなる


ここに登場するのは、3人の男の子。

彼らはスーダンの内戦で、命からがら難民キャンプへ逃げ、そこからアメリカへ渡ってきた移民たち。

この映画の前半、1時間ぐらいは、彼らがアフリカでどのように戦火の中難民キャンプまで運よく逃げることができたのかが描かれている。

これが、なかなか衝撃で。

頭の中で分かってはいるけど、実際に、小さな子供たちが逃げ惑う姿を見ていると心が痛くなるよね。

できることなら、テレビから彼らの前へ手を入れて、「いいから、こっちへおいで」って、こっちの世界へ引きこみたくなる。

いっぱい美味しいご飯を作ってあげて、お風呂に入れてあげて、ぐっすり眠らせてあげたい。

今、偶然、我が家には空き部屋があるので、そこを使えるんじゃないかとか、考えたよね。

しかし、そんな私の妄想をよそに、彼らは無事難民キャンプへと逃げ込むわけだけど、残念ながら、そこはゴールではない

難民キャンプへ無事にたどり着いてから、13年後、彼らはめでたくアメリカへ移民として渡れることになる。

グッド・ライ4

自分を犠牲にして彼らを思う気持ちに感動


この映画で、最も感動するのはアメリカへ渡ってからのこと。

もちろん、世の中いろんな人がいて、それぞれに理由がある。

だから、彼らに好意的ではない人たちもいる。

しかし、彼ら移民に対してともて親切な人たちの温かい心に、すごく感動した

本当は、すごく親切で優しいことをしているのに、それがまるで当たり前のことかのように振る舞うキャリーや、困っている彼らを察知して、その心に直接手を差し伸べるジャック。

アメリカという社会になかなか溶け込めない彼らに対し、親切な言葉をかけたり、優しくしてあげることは、誰でもできること。

彼らが本当に望んでいることを聞きだし、彼らのために、自分の生活すらも犠牲にすることができるのが、本当の優しさ

結局は、自宅すら彼らのために明け渡すことになったキャリーの深い優しさに心が温かくなった。

グッド・ライ6

出演者はオスカー女優のリース・ウィザースプーン


キャリーを演じるのは、リース・ウィザースプーン

あまり社会派のイメージが無い、元ロマコメの女王のキャスティングは、良い意味で私たちの期待を裏切り、しっかりと、田舎の普通のおばちゃんしてた。

しかし、意志が強く、頑固な感じは、いつものリース・ウィザースプーン健在。

さっきも書いたけど、すごく大変なことを、当たり前のようにするキャリーがすごく良かったねぇ。

他の出演作には、「デビルズ・ノット」、「わたしに会うまでの1600キロ」「ウォーク・ザ・ライン」、「キューティ・ブロンド」など

グッド・ライ2

実際にあったことを寄せ集めてできた物語


アメリカに「失われた子たち(ロストボーイズ)」と言われたスーダン内戦孤児のことを知った脚本家が、アメリカ国内を回って、1000人以上の孤児の話を聞いて、この映画の脚本ができあがったという。

ということは、この映画の中に、1000人以上の孤児たちの人生についての様々なエッセンスが詰め込まれている。

彼らが常に家族を思いやることも、アメリカの文化になかなか適応できないことも事実なら、親切なアメリカ人たちがいたことも、そうではない人たちがいたことも事実。

そんな様々な経験を乗り超えた人たちだから、最後にマメールのような立場になったら「良い嘘をついて、自分を犠牲にして人を助けるに違いない」そう思わせてくれる映画だった。

私も、いつか機会があれば、彼らのような境遇の人を助けるようなことがしたいなぁ。



グッド・ライ3



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スーダン内戦のロストボーイズの物語

空から火の玉が・・・ (南スーダンのロストボーイズ 1987 - 2001)





















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