1969年に、若松孝二監督の助監督として働き始めた吉積めぐみの視線を通して、当時の映画業界の勢いや情熱を描く作品。
【満足度 評価】:★★★★☆
ピンク映画に情熱を注ぎ、どんどん撮るその勢いに、今の日本映画にない熱量を感じた。
ノリや勢いだけではなく、挫折や切なさもあって、まさに青春ど真ん中な作品。
そして改めて映画とは自己を表現する鏡だと思った。
目次
『止められるか、俺たちを』予告編 動画
更新履歴・公開、販売情報
・2019年7月6日 U-NEXT
にて鑑賞。

・2019年7月14日 感想を掲載。
現在、DVD、ネット配信、共に販売中。
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キャスト&スタッフ
出演者
〇
門脇麦
〇井浦新
…(「菊とギロチン」など)
〇山本浩司
〇タモト清嵐
〇毎熊克哉
〇岡部尚
〇伊島空
〇大西信満
〇藤原季節
〇高岡蒼佑
監督
2018年製作 日本映画

あらすじ
1969年。何かを成し遂げたいと思いつつも、何をしたらいいのか分からずにいた吉積めぐみ(門脇麦)は、当時ピンク映画を撮っていた若松孝二監督の若松プロダクションの門を叩く。
助監督として働き始めためぐみは、様々な経験をしながら、脚本を書いたり、短編映画を撮るチャンスを与えられるようになるのだが…。

感想(ネタばれあり)
当時の映画界にあった「情熱」「ノリ」「勢い」
ピンク映画は観たことがない。
「ピンク映画」と聞いてイメージするのは、新宿東口の裏通りや、横浜の黄金町あたりにあった薄暗い映画館だ。
最近は、DVDやネットが発達したせいか、ピンク映画専門の映画館をあまり見かけなくなった。
ということは、この映画で描かれているようなピンク映画をメインに撮影していた映画プロダクション
というのも、なくなってしまったんだろうか。
というわけで、私はピンク映画について知識もあまりないし、正直あまり良い印象も持っていなかった。
なので、この映画で描かれている「若松プロ」が、とても真剣に、情熱を持ってピンク映画を撮っている様子を見て、ちょっとビックリしてしまった。
悪いけど、もっと適当に撮っているイメージがあったからだ。
若いスタッフたちが映画ついて熱心に考え、どんな映画を撮りたいのかを真剣に語り合い、撮影後や、その合間には、酒を飲んで憂さ晴らしをする。
その様子は、まるで大学のサークルのようだった。
彼らはサークルではなく仕事なのだけれど、毎日がとても楽しそうで、無茶だと分かっていながら、高い目標に向かって突き進んでいく姿に大学生のような青さを感じたからだ。
でも、「青い」からこそ、勢いや力強さが映画に出たんだろう。
そんな「サークルのようなノリ」と「情熱」と「勢い」が、その当時の映画界にはあって、今の映画から感じられなくなってしまったものだと感じた。

映画とは心の中を映し出す鏡
そんな彼らが表現するのは「エロ」だけにとどまらない。
チェ・ゲバラの肖像画を部屋に飾っている彼らは、常に「革命」を語っている。
そして、当時の赤軍とイスラエルの状況を知るために、イスラエルまで撮影に行ってしまう。
つまり、ピンク映画を撮っている「ノリ」や「勢い」のまま、その情熱で撮りたい映画を撮るのだ。
性欲・政治・革命…。
日頃から思いついたことについて、心の赴くままに映像を撮っていく。
政治を批判するドキュメンタリー映画を撮って、配給できなくなったら、自分たちで全国を回って上映すれば良い。
彼らは国や政治や観客に好かれる映画を撮っているわけではなく、撮りたい映画、多くの人たちに知ってもらいたい映画を撮っているのだ。
そんな彼らの信念に直結した映画作りを見ていると、「映画」とは、監督の心の中にある全てが投影されるものであり、自己を表現するツールの一つなんだと、改めて思った。
ミュージシャンは歌詞や音楽で、画家は絵で自分自身の思いを表現するように、映画監督は映画で自分自身を表現するのだ。
「性欲」「政治」「革命」というのは、若松孝二監督の心の叫びなのだ。

良い時もあれば、悪い時もある…青春の日々
しかし、当然ながら良いことばかりではない。
資金稼ぎのために撮りたくない映画を撮らなけれいけないときもあるし、夢を抱いて、若松プロに入っても、挫折してしまうこともある。
主人公のめぐみは、特にこれといった夢もなく、かといって、このまま平凡な人生を終わらせたくもない。
「何かを成し遂げたい」と思い、あえて女性のいないピンク映画の世界に飛び込んだ。
たまたま知り合いから、人手不足だと聞かされたからだ。
そうして、助監督としてスタートし、いくつか現場を経験した後、短編のピンク映画を撮る機会を得る。
ところが、撮った映画は失敗作となり、そこからどうしていいか分からない壁にぶち当たってしまう。
さらに、映画監督として将来が見えないまま、妊娠が発覚。
出口が見えなくなってしまっためぐみは、自分で人生を終わらせる選択をしてしまう。
そんなめぐみと、彼女と共に働く彼らは、かなりいい歳をした大人たちだけど、青春しているなぁと思った。
心の赴くままに映画を撮り、革命に夢中になり、恋もするし、思い切り遊ぶ日もある。
働くというよりも心のままに生きている彼らは、キラキラと輝く青春の真っ最中だった。
その青春の日々は、めぐみの悲しい選択で終わりを迎えるけれど、その時の熱い思いが映画を作っていた時代なんだろうと思った。
良い映画を撮りたいわけではない。
彼らは撮りたい映画を撮っていただけなのだ。

この時の情熱はどこへ行ったのか
現代の日本映画の中で、この当時の若松監督のような「勢い」で映画を撮っている人たちがどれだけいるのだろうか。
経済的な理由で、そうしたくてもできない人もいるだろうと思う。
しかし、私は、その当時の彼らの「何が何でも、撮りたい映画を撮る!」という情熱は、日本映画よりも韓国映画の方が熱くて強いのではと思う。
だからこそ、今、この映画を観て、「映画を撮るということは、どういうことなのか」について考えるべきなのではと思った。
若松監督にもそういう時期があったように、「観客を呼ぶ映画」を撮る時があってもいいとは思う。
でも、時には、「どうしても、今、これを伝えたい」とか、「どうしても、今、これを撮りたいんだ」という情熱を感じる作品をもっと観たいと思った。
若松監督が映画を撮っていた頃、映画は自己表現の一つであり、芸術だった。
しかし、最近の映画は、その当時の情熱を失い、多くの作品が商業的になってしまった。
だからこそ、今、この映画を観て、多くの人が「映画とは何か」を考える機会になれば良いと思う。
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「止められるか、俺たちを」をU-NEXT で観た
70年代の若松孝二監督の映画製作現場を描く
ピンク映画に情熱を注ぎ、どんどん撮るその勢いに、今の日本映画にない熱量を感じた
ノリや勢いだけではなく、挫折や切なさもあって、まさに青春… https://t.co/GWE6POaJeO2019/07/07 23:34:33
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